日本の労働組合が雇用調整助成金の100%拡大を勝ち取る
2020-07-29
2020年7月29日、インダストリオール・グローバルユニオンの日本の加盟組織は、コロナウイルス禍における労働者の福祉を守る為、雇用調整助成金の100%拡大を勝ち取った。
2020年2月からの日本でのコロナウイルスの蔓延に伴い、UAゼンセンとインダストリオール・グローバルユニオンの日本の加盟組織は、政府による外出自粛要請の中で組合員の生活水準を保障するために、雇用調整助成金を拡大すべく、日本政府への働きかけを続けてきた。
日本政府はこの危機に対し、経済活動を支援し、雇用を守る為に様々な緊急対策を講じてきた。4月の緊急事態宣言は、1か月以上にわたり全ての日本国民の移動を制限し、労働者の収入に打撃を与えた。
UAゼンセンは緊急事態と外出自粛要請の中で収入を失った組合員を支援するために、厚生労働省に対して雇用調整情勢金の拡大を求め、要請を行ってきた。
特例措置として4月1日に雇用調整助成金の適用がコロナウイルスパンデミックで影響を受けた全ての企業に拡大された。助成率は大企業で67%、中小企業で80%に引き上げられた。
更に6月中旬、政府が助成金の金額上限を一人あたり1日8,330円から15,000円(140ドル)まで2倍に近い引き上げを発表した。助成率は大企業75%、中小企業100%に拡大され、UAゼンセンと日本のインダストリオール加盟組織は勝利をつかんだ。
松浦昭彦UAゼンセン会長は語る:
「3月より関係省庁と折衝し、雇用調整助成金の増額を求める要求を提出した。また、組織内国会議員と連携し、政府に働きかけた。」
「この制度変更が我々の組合員だけでなく、パンデミックで影響を受けた全ての日本の労働者にも及ぶことを喜ばしく思う。これは労働者の健康で安心な生活を前進させるために、政策提言者としての労働組合の重要な役割を示すものである。」
インダストリオールのアニー・アドビエント東南アジア事務所長は語る:
「雇用調整助成金の拡大というUAゼンセンと加盟組織の成功は、大変喜ばしいことである。UAゼンセンは製造・中小企業・サービス業・小売業の労働者も組織し、今回最も影響を受けた労働組合である。」
「日本の加盟組織のこうした努力は、東南アジアへ大きな影響力を持つ。日本経済の回復力がサプライチェーンの持続性を保証し、この地域の雇用機会を維持することに間接的に繋がっているからだ。」
<文責:インダストリオール東南アジア事務所>
マレーシア政府、安全性に関する懸念を表明した組合指導者に嫌がらせ
2020-07-27
マレーシアの組合指導者N・ゴパルキシュナムは、英チャンネル4ニュースの取材で安全性に関する懸念を表明したために、政府から嫌がらせを受けている。政府は嫌がらせをするのではなく、個人用保護具を輸出している工場で働く労働者の安全衛生を確保するために、しっかりとした措置を講じることに集中すべきだ、と同氏は考えている。
イギリスのチャンネル4ニュースは6月16日、世界最大のゴム手袋メーカーであるトップ・グローブが、マレーシア当局が課すソーシャルディスタンス規則に従っていないことを暴露した。この調査報道は、同社で働く移民労働者の劣悪な生活条件も明るみに出た。
全国輸送機器・関連産業労組(NUTEAIW)のN・ゴパルキシュナム書記長は、この労働条件にショックを受け、COVID-19防止手順の違反はトップ・グローブ労働者全員を危険にさらしている、とビデオの中でコメントした。同氏は英国民保健サービス(NHS)に対し、同社から医療用手袋を購入しないよう促した。
ゴム手袋工場の労働者と連帯したこのコメントを受けて、内務省当局者はゴパルキシュナムに数回電話をかけ、事前通知なしでNUTEAIW事務所を訪問した。7月24日午前に会合が設定された。
N・ゴパルキシュナムは言う。
「この会合で内務省当局者が、ビデオの制作者と工場内の私の関係者にしか興味を示さなかったことに、私は当惑している。なぜ工場の労働者の健康やソーシャルディスタンス規則違反を気にしないのか」
58の労働組合とNGOで構成される労働法改革連合が、7月23日に声明を出した。
「新政権は、労働組合運動と市民社会組織による批判に対する取り締まりを強化している。組合指導者だけでなく、選挙改革や難民、拘留中の死亡に関する問題を強調している社会運動家も、警察に呼び出されて取り調べを受けた。
「ムヒディン・ヤシン首相に対し、ゴパルキシュナムをはじめとする社会運動家への嫌がらせを直ちにやめるよう強く要請する。政府が、労働者や社会から取り残された集団の懸念を表明する組合・NGO指導者の民主的権利を尊重することが重要だ」
ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。
「インダストリオールはマレーシア政府に対し、この労働組合指導者の表現の自由を尊重し、ゴパルキシュナムに対する調査をすべて中止するよう求める。すべての国々の政府が、COVID-19と闘うために、コロナウイルス拡大防止に向けて職場で政府の目となり耳となる労働組合を必要としている」
バングラデシュの船舶解撤労働者34人が復職
2020-07-16
インダストリオール加盟組織BMCGTWFの先を見越した介入により、バングラデシュのM/Sモタラブ・スチール船舶解撤場で労働者34人が復職を果たした。
2020年7月6日、切断作業に従事する労働者17人が助手17人とともに、使用者から事前通告もなく、仕事がないのでM/Sモタラブ・スチール船舶解撤場に復職しないようにと言われた。
しかし、解撤場には船が1隻あったが、切断作業を開始できるまで少なくとも6日はかかり、その6日間について経営側は法律で義務づけられた日額勤務手当の支払いを回避しようとした。
労働者はこの決定に反対し、バングラデシュ金属・化学・衣料・縫製労連(BMCGTWF)の介入を求めた。
BMCGTWFは、抗議行動と訴訟手続きを開始するとともに、問題を解決するために政府に援助を求めると発表した。
影響を受けた労働者全員が解撤場の前に集まり、集団行動に直面した経営側は、復職を許可するだけでなく労働者34人の日額勤務手当の支払いにも同意した。
7月8日現在、解雇された34人の船舶解撤労働者全員が職場に戻っている。
モジブール・ラーマン・ブイヤンBMCGTWF書記長は言う。
「労働者の権利を擁護するには集団行動と組合連帯が必要だ。統一行動のおかげで、労働者は尊厳を持って職場に復帰した。これからも労働者の権利を守り続ける」
松崎寛インダストリオール船舶解撤担当部長は言う。
「これはチッタゴンの船舶解撤労働者にとって大勝利であるのみならず、組合組織率の低さを特徴とする産業の組合にとっても大勝利だ」
航空宇宙企業はモロッコとチュニジアで責任を負え
2020-07-15
COVID-19パンデミックは航空宇宙産業に打撃を与えており、この危機は3〜5年間続くと予想される。業績が悪化する中で、企業は広範囲なリストラを発表しており、世界中で1万人の労働者がレイオフされている。
MENA(中東・北アフリカ)地域で人員削減計画が発表されており、企業は責任を果たしていない。モロッコとチュニジアの労働者から大きな恩恵を得ていながら、企業は今、法律を無視して社員を解雇している。
インダストリオールMENA航空宇宙労組ネットワークは、米国とフランスの航空宇宙部門共同部会長とともに、COVID-19危機の影響と組合の対応をめぐって議論した。
参加者は、多国籍企業が国内法や労働協約、適切な社会的対話のルールを十分尊重せずに従業員を解雇していることを非難した。
MENA地域は、湾岸諸国(特にモロッコとチュニジア)だけでなく、航空宇宙産業ならびに航空機とエンジンの整備・修理・オーバーホールの重要な拠点になっている。モロッコとチュニジアでは250社以上で3万5,000人を超える従業員が働いており、ワイヤーハーネスが主要製品である。
ステリア(エアバス)、ボーイング、サフランのような多国籍大手航空宇宙企業は、低い人件費、有資格労働者、国によるインセンティブ(例えば経済特区)、ヨーロッパとの近さを理由に、過去20年間この地域に投資してきた。
しかし、労働条件は劣悪である場合が多く、長時間勤務が横行し、時給は2米ドルに満たない。多くの企業が労働者の組合結成権にも対抗し、組織化キャンペーンに気づくと労働組合員を解雇している。
チュニジアFédération Générale de la Métallurgie et de l’Electronique(FGME-UGTT)のタハール・ベルベリ書記長は、労働者の社会的保護がなく、失業すれば直ちに貧困に陥ると強調する。
「企業はこれを無視して責任を逃れている。現在、操業短縮や全労働者の時短など、余剰人員解雇の回避策について交渉したいと考えている。今後、労働協約に社会保障の要素を追加したい」
モロッコFédération Générale de la Métallurgie et de l’Electronique(SNIME-CDT)のブタイブ・ブーカチャク副書記長は言う。
「モロッコの労働法によると、経済的理由で余剰人員を解雇する場合、使用者には従業員に年1.5カ月分の賃金を支払う義務がある。実際は、それより少ない支払いで済ませようとすることが多い」
労働者が組織化されている企業では、組合が反撃しており、解雇者数を大幅に減らす代替案の取り決めに成功している。SNIME-CDTとUMTの代表の報告によると、争議行為と交渉によって、計画されていた余剰人員解雇が削減され、1年後に職場復帰する権利がある一時解雇など、社会的責任のある解決策に至った。
アトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長は言う。
「この部門で組合活動を強化するために、MENA地域の加盟組織と緊密に協力している。現在の危機を受けて、使用者は、組合との対話が長期的かつ持続可能な解決に達する方法であることを理解する必要がある」
グローバル・ユニオン、フィリピンの反テロリズム法を非難
2020-07-15
インダストリオール・グローバルユニオンを含むグローバル・ユニオン・フェデレーションは、ロドリゴ・ドゥテルテ・フィリピン大統領が2020年7月3日に反テロリズム法を承認したことを明確に非難した。
グローバル・ユニオン指導者は2020年7月9日付の共同プレスリリースで、民主的余地が縮小しており、ドゥテルテ政権がますます権威主義的な措置を講じていることに対する深刻な懸念を表明した。
この決定は、労働組合界と人権組織から国際的非難を浴びている。というのも、この法律の曖昧な条項が悪用され、労働組合員・活動家が司法審査権なしで14日間にわたって逮捕・拘留されるおそれがあるからである。
この法律に従って、警察は誰であれ60日間(30日延長可)の監視下に置く非常に大きな権限を与えられている。このように強大な権限がドゥテルテ政権に与えられれば、フィリピン国民の公民権が制限され、フィリピンの憲法に違反することになる。
ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。
「インダストリオールは反テロリズム法に強く反対する。ドゥテルテ政権はテロおよび薬物乱用との闘いを口実に使い、労働組合運動を弾圧している」
「私たちは昨年12月、フィリピンで暴力と労働組合員の赤札をなくすためにキャンペーンを展開した。労働組合員43人が誘拐・殺害されたが、今日までに誰も法に照らし処罰されることも有罪判決を下されることもなく、これは選出された政府の説明責任にかかわる問題だ」
この論争の的となる法律が採択される数日前、国連人権理事会で、少なくとも8,663人が殺害され、少なくとも248人の人権擁護者や労働組合員、ジャーナリスト、弁護士が活動を理由に殺されたことが報告された。
「労働組合員の人権・労働権を制限する非民主的な法律に抵抗するために、加盟組織を絶えず支援することを誓う。厳しい政治情勢にもかかわらず、いつも労働者に発言権を与えているフィリピンの同志と連帯する」とサンチェスは付け加えた。
「赤札」とは、左翼寄りの疑いのある個人の名誉を傷つけたり嫌がらせをしたりするフィリピンの政治方策である。