東南アジアで労働者の権利を求める闘い
2020-09-15
<JCM記事要約>
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東南アジアの組合は、闘争や提言による労働者の権利の擁護、労働協約における安全衛生問題の制度化、女性と若者のための能力構築を前もって計画している。
インダストリオールは8月から、インドネシア、マレーシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、フィリピンの加盟組織と国別戦略計画会合を開催し、100人を超える組合指導者が参加した。
東南アジアの労働者は、大量のレイオフや一時帰休、解雇でコロナウイルスによって大打撃を受けている。カンボジア、ミャンマー、タイ、インドネシアでは、使用者がCOVID-19を口実に使って組合幹部・組合員を解雇している。
これに対して労働組合は、ストやデモを実施したり、国際連帯キャンペーンを要請したり、グローバル枠組み協定を利用してメーカーに圧力をかけたりしている。
フィリピンとインドネシアの組合は政府にCOVID-19を職業病と宣言するよう要求しており、マレーシア政府は2020年4月に職業病に指定した。
3カ国の組合は、労働者の権利を擁護するために労働法改革を提唱している。
- マレーシアの組合は、植民地時代の労働法の改革を求めて運動するために、他のグローバル・ユニオン加盟組織と労働法改革連合を結成した。
- フィリピンの組合は、身分保障法案に関して議員と協調し、政府に契約雇用の廃止を強く要請している。
- インドネシアの加盟組織は、いわゆる雇用創出に関するオムニバス法案に反対しており、この法案は現在の権利と給付を取り除くと述べている。
組合員がCOVID-19に感染しているため、労働組合は安全衛生に対する懸念を深めている。フィリピンの金属部門労組は、労働協約の安全衛生条項の強化を勧めている。これは最近の若年労働者との会合で繰り返され、シンガポールの加盟組織が安全衛生、雇用保障および技能向上に関して労働協約を改善するよう主張した。
アニー・アドビエント・インダストリオール東南アジア地域事務所所長は言う。
「地域の加盟組織は第183号条約や第190号条約の批准など女性の権利キャンペーンに取り組み、若年労働者が年次交流フォーラムに参加している。女性と若者のための能力構築を続けると同時に、組合の力を強化していく」
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。
「連帯によって難題を克服し、公正な職場、健全な医療制度、民主的社会の構築に取り組む必要がある。労働者を組織化して権利を保護する手段として、労働安全衛生を利用しよう」
南アジアの組合、社会的保護、安全衛生、労働者の権利を最優先
2020-09-09
<JCM記事要約>
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南アジアのインダストリオール加盟組織は一連の会合で、COVID-19の壊滅的な影響、安全衛生面の課題、労働者の権利に対する新たな攻撃を取り上げた。危機を克服するための対策は、普遍的な社会的保護、労働者の権利の擁護、団結である。
南アジア諸国が長引くCOVID-19ロックダウンと封じ込め措置を経験している中で、加盟組織は、無数の労働者の失業と人員削減の増加を報告した。
多数の不安定労働者が職を失い、ロックダウン中に賃金をまったく支払われなかったり、減額されたりしている労働者も多い。失業の壊滅的な影響は、衣料・繊維、在宅労働、インフォーマル・セクターで顕著に見られ、そのような部門では労働者の大多数が女性である。
効果的な社会的保護が不足しており、地域の労働者や市民は人道危機にさらされている。各国政府が救済措置を発表しているが、多数の人々が救済を受けていない。インダストリオール加盟組織は、資源の結集、現地社会組織との協力、調理済み食品や穀類の配布による救済の提供に関与している。
ロックダウン措置が緩和され、工場が操業を再開するに伴い、労働者が徐々に職場復帰している。ほとんどの職場は物理的距離を保つためのスペースを提供することができず、安全衛生リスクが高まっている。多数の労働者とその家族が日々COVID-19感染のリスクに直面している。
インドでは、無計画の操業停止や生産工程の再開で事故が多発している。
インドでは、多くの州政府がCOVID-19を口実に、労働者の利益に反する労働法変更を発表。スリランカでも、労働法の変更が提案されている。削減・レイオフ規則が守られておらず、地域全体で何百万もの労働者が法律に定める補償を支給されていない。
労働協約が実施されていない。インダストリオールのグローバル枠組み協定の実施は、この期間中、特に衣料・繊維部門で厳しい課題に直面している。
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。
「COVID-19は前例のない苦難と絶望をもたらしている。政策決定プロセスにおいて組合代表と対話することが極めて重要だ。特にインド、スリランカの労働者の権利に対する攻撃の激化は嘆かわしい。民主的な意思決定プロセスと全レベルの労働者間の団結は、労働者の利益と公平な未来を守るうえで特に重要だ」
「インダストリオールは、加盟組織への連帯支援を強化する戦略的活動に力を入れる。公正な経済・産業政策(普遍的な社会的保護など)を目指して他のグローバル・ユニオンと協調し、職場の安全衛生に対する権利の確保が労働者の基本的権利とみなされるようにしている」
アプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長は言う。
「これらのオンラインイベントを利用して、加盟組織に意見を求めるとともに、COVID-19パンデミック下における労働者の権利保護、組合の力の強化、持続可能な貿易・産業政策に関する加盟組織の行動への支援に向けた活動を計画した」
全国組合行動や南アジア戦略計画を議論する一連の会合は、9月1日にスリランカの加盟組織との間で始まり、続く9月2日にはバングラデシュとネパール、その後9月3日、4日にはそれぞれパキスタン、インドの加盟組織と討議した。
写真は2017年11月にスリランカのコロンボで世界中の加盟組合とともに開催されたインダストリオールの集会
インドの組合、有害な環境規則に反対
2020-09-03
<JCM記事要約>
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組合は政府に対し、環境影響評価規則の通知案を取り下げるよう促している。この通知は、気候変動との闘いへのインドの取り組みと2030年の持続可能な開発目標に反するからである。
環境影響評価(EIA)規則は、インドの環境規制枠組みにおいて重要な役割を果たしている。この規則は、1984年にボパール産業災害後に制定された1986年環境保護法に由来する。当初の目的は、産業プロジェクトやインフラ・プロジェクトの環境影響を適切に評価し、プロジェクトの影響を受けた人々の意見を聞いたうえで承認を与えるよう確保することだった。
2020年EIA案に対しては、広範囲にわたる反対や法的な異議申し立てが出されている。
労働組合は、この案を「2006年に制定された規則からの大きな逸脱」と呼んでいる。この草案は、石炭などの鉱業のような一部の部門で企業の利益を促進しているように思われる。
新しい草案は、企業の利益となるように土地利用管理を改革しようとしていると同時に、環境に大きな悪影響を及ぼす。社会の脆弱な層、特に指定部族は、この有害な規則の悪影響にさらされるだろう。おまけに2020年EIA案は、インドで使われている言語のいくつかに翻訳されていない。
INTUCとインダストリオール加盟組織INMFの会長を務めるG・サンジーバ・レディー博士は言う。
「現在の草案は国際的な環境基準や手続きに沿っておらず、人々に破滅的結末をもたらす。経済効果もなく持続可能な開発にもつながらず、インドの組合は団結して草案の撤回を要求している」
欠点は以下のとおり。
- 企業が事前の環境認可なしで事業を開始することを許可し、事後承認を提案している。
- 産業プロジェクト案のためにすべての環境影響データを集める十分な時間を提供していない。
- 公の協議の通知期間を短縮している。
- プロジェクト文書を現地語で作成する必要がなく、真の公の協議プロセスを制限している。
- 環境認可の効力を強めてプロジェクト提案者による長期の土地所有を許可し、土地収奪への道を開いている。
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。
「国際労働基準を希釈して環境基準を弱めることは、底辺への競争のきっかけになりかねない。COVID-19パンデミックが難題をもたらし、労働災害が増えている中で、環境的持続可能性を最優先すべきであり、政府は2020年EIA案を再検討すべきだ」
インドの造船所事故で安全上の危機が露呈
2020-08-31
<JCM記事要約>
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8月1日にヒンドゥスタン造船所(HSL)で事故が発生し、労働者10人が死亡した。この事故もまた、インドにおける安全上の危機の実例を示している。
HSL従業員たちが70トン・クレーンの荷重試験をしていたとき、クレーンが大きな音を立てて倒れ、労働者10人が死亡した。
亡くなった従業員10人の内訳は、ヒンドゥスタン造船所4人、グリーンフィールズ社3人、リード・エンジニアリング2人、EMMSスクワッド・セブン1人である。
報告によると、このクレーンは2009年5月にグジャラートに拠点を置くアヌパム・インダストリーズに発注して建てられた。アヌパム・インダストリーズは2017年に設置を開始したが、HSLは試運転の段階で、いくつかの修理と負荷試験の実施を求めた。しかし、同社は作業を完了せず、この仕事を2019年にグリーンフィールズ社に外注した。8月1日に死亡事故が発生したのは、グリーンフィールズ社が負荷試験を実施していたときのことである。
警察は第304A条(過失致死)に基づいて、HSLとグジャラートのアヌパム・インダストリーズならびにグリーンフィールズ社に対する事件を登録した。事故の直後に2件の調査(HSLによる調査とビシャカパトナム県長官による調査)が開始された。最近提出された報告書は、設計と建設の不備が事故原因であることを強調している。
ヒンドゥスタン造船所従業員・労働者組合のラム書記長は言う。
「HSL経営陣は、死亡者の扶養家族に500万ルピー(6万8,000米ドル)の補償金を支払うと発表した。この補償金は、死亡した常用労働者と契約労働者の両方に、法定給付に上乗せして支払われる」
「組合は補償金の受け取りにあたって遺族を支援している。会社側からは、犠牲になったHSL常用従業員の家族1人に常用雇用を提供することも通知された」
松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤担当部長は言う。
「HSLは公共部門企業であり、安全操業のために最高レベルの基準を設定しなければならない。この欠陥は以前に確認されていたが、速やかに修正されず、回避できる死亡事故を招くことになった。調査を行うべきであり、担当者に責任を負わせなければならない。そして、犠牲者の遺族に適切な補償金を支払うべきだ」
造船・船舶修繕における安全衛生に関するILO実務規程改訂版(2018年)は、この産業でOSHを改善する方法に関する包括的な指針を盛り込んでおり、改善にあたって政府、船主、使用者、労働者および労働者代表がどのように協力すべきかを規定している。
インダストリオールは、この規程(ヒンディー語版もある)に基づいて、組合に労働安全衛生訓練を提供する予定である。