広報ニュース

第114号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年10月31日)

東南アジアの組合、政府にILO基準の遵守を要求

2020-10-29

東南アジアの組合は各国政府に対し、ILO第87号条約および第98号条約を批准し、組織化にあたって結社の自由を保護するとともに組合差別を禁止するよう求めている。

10月27日に開催されたカンボジア、ミャンマー、タイの労働法改革に関する2回目のウェビナーで、労働組合指導者は、労働者の団結権・組合結成権を保護していない不十分な労働法に対する不満を隠すことができなかった。

使用者は、産業別組合の地方支部を結成しようとしている労働者を見つけると解雇することが多い。労働組合指導者は非常に大きな圧力を受ける。経営側は常にあら探しをし、ほんのわずかな違反で組合指導者を解雇する。

プラシット・プラソプサク・タイ産業労働組合総連合(CILT)会長は言う。

「タイ政府は、組合結成にあたって労働者を解雇から保護しなければならない。ILOの結社の自由に関する第87号条約と団体交渉に関する第98号条約を直ちに批准すべきだ」

「制限的な労働法を改革して平和的なストやデモを許可し、スト破りを禁止し、官民組合間の区別をなくさなければならない」

同様の組合差別に悩まされているミャンマー労働組合総連盟(CTUM)のドー・ピョー・サンダー・ソー書記長は言う。

「ミャンマー政府は第98号条約の批准を拒否している。法が執行されておらず、労働法の拘束力が弱いので、多くの企業が組合指導者を不法に解雇している」

「政府は組合の登録や労働争議の処理を意図的に遅らせている。多くの紛争の解決が長期にわたって先送りされ、組合は使用者と政府から圧力をかけられている」

カンボジアでは、政府がすべてのILO基本条約を批准しているので、労働法にはそれほど問題がない。けれども、2016年と2020年の法改正で労働者の権利が劣化した。労働者運動協同組合(CUMW)のパブ・シナ会長は言う。

「新しい法律では、連合団体は労働争議で労働者を代表できなくなり、組合は財務諸表を監視するために独立監査人を雇うことを義務づけられ、夜勤労働者の130%割増賃金の条項が削除された」

ケマル・ウズカン、インダストリオール・グローバルユニオン書記次長は言う。

多くの政府がパンデミック下で権威主義に転じている。民主主義的な制度が攻撃され、労働法が次の標的だ。団結を維持し、労働者の権利と人間中心の経済を擁護しなければならない

写真キャプション:2019年7月に開かれたカンボジア、ミャンマー、タイの労働組合員とのTGSL会合

 

グローバル・ユニオン、インドの組合運動と連帯

2020-10-29

インダストリオールとITUCは、インドの組合運動と連帯して団結し、モディ政権の反労働者的政策との闘いを支援すると誓った。

グローバル・ユニオン評議会の企画、インダストリオールの主催による共同ウェビナー「インドにおける労働法の変更:労働者階級に対する攻撃」が2020年10月28日に開かれ、世界中の労働組合指導者・代表が積極的に参加した。これはグローバル・ユニオン評議会が企画したウェビナーシリーズの1つであり、パンデミック下での労働者の権利と民主主義に対する重大な攻撃に焦点を当てた。

モディ首相が実施したインド労働法の反労働者的変更は多くの点で、国際労働基準、労働における基本的原則および権利、旧労働法で支持されていた社会的公正を弱めている。この変更は、ILO条約・宣言の中核となる結社の自由、団体交渉権、労働組合権(スト権を含む)に悪影響を与える。

シャラン・バロウ国際労働組合総連合(ITUC)書記長はこう述べた。

「今回の労働法変更は、インドの労働力のインフォーマル化をさらに進め、何百万もの労働者の基本的権利と社会保障・保護を奪うだろう。インドで尊厳とディーセント・ワークが破壊されることは許容できない。この状況を変えなければならない」

「新しい社会契約による回復、社会的保護と雇用、包括的な開発枠組みの復元力による回復が必要だ。現在、インドの労働組合運動は並外れた勇気を示している。世界中の人々が、団結しているインドの組合の粘り強さと勇気を称賛している。グローバルな労働組合運動は、インドの組合との連帯を再確認する」

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は次のように述べた。

「不十分なCOVID-19対策が労働者に壊滅的な影響を与える中で、インドの脆弱な労働市場規制枠組みが明るみに出ている。ロックダウン下で、無数の労働者が生計を失い、苦労しながら都市部から歩いて故郷に帰った。工場が稼働を再開すると、一連の労働災害で100人を超える労働者が死亡した」

多くの危機を背景に強行された法律変更は、現行法を強化するのではなく、企業だけに利益を与え、インドでインフォーマル労働と不平等を永続させる。インドのインダストリオール加盟組織は、先頭に立って政府の反労働者的政策に反対している。インダストリオールは、正当な闘いに取り組むインドの組合運動と協力し合い抵抗する

インド全国労働組合会議(INTUC)議長のG・サンジーバ・レディー博士は次のように述べた。

「モディ政権は発足当初から労働者に不利益を与えてきた。政府の政治力の源泉は、共謀する企業の利益と結びついた対立的な共同政治だ。インドの労働者は断固とした闘いを通じてのみ、この政府を打倒することができる」

「インドの労働組合は政治的な違いを超えて、一貫した闘いのための統一基盤を形成した。11月26日にも全国ストを計画しており、過酷な闘争が続くことをモディ政権を示す予定だ」

ウェビナー参加者の中には、ハーブハジャン・シン・シッドゥ・インド労働者連盟(HMS)書記長、マナリ・シャー女性自営労働者連合(SEWA)全国書記、労働法専門家のシャム・サンダー教授が含まれていた。このウェビナーの司会は、国際公務労連(PSI)のケイト・ラッピン・アジア太平洋地域事務所所長が務めた。

 

フィリピン政府、組合の圧力で13カ月目の賃金に関する方針を転換

2020-10-23

<JCM記事要約>

  • フィリピン政府は、COVID-19によって経済的制約を受けた使用者に法定の「13カ月目の賃金(13th month pay)」支払いの延期を許可するという前言を撤回した。これにより、すべての使用者は、全従業員に13カ月目の賃金を支払わなければならない。
  • 政府の方針の転換は、組合や労働組織が団結し政府を非難した結果である。組合は、GDPの60%が消費関連活動から生じており、13か月目の賃金とボーナスにより経済に利益をもたらすことができると主張している。
  • インダストリオールは、組合の団結により獲得に成功したことを祝福し、この勝利は、仕事の世界で労働組合が不可欠な役割を果たしていることを例示するものだ、と強調した。

 

インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織の合同労組(ALU)、全労働者同盟労組(AWATU)および統一労働組織による激しい非難を受けて、フィリピン政府は、COVID-19によって経済的制約を受けた使用者に13カ月目の賃金支払いの延期を許可するという前言を撤回した。

フィリピンのシルベストル・ベリョ労働大臣は10月8日、労働雇用省(DOLE)が経営不振企業に13カ月目の賃金の延期を認めることを検討している旨発表し、労働組合から抗議の嵐が起こった。

1976年大統領令第851号に従って、すべての使用者は、毎年12月24日までに全従業員に13カ月目の賃金を支払う義務を負う。

プレッシャーをかけられて、ベリョ大臣は10月13日に労働組合とのオンライン協議会合を開催した。ベリョ大臣は3日後、テレビ放送されたブリーフィングで決定を撤回し、すべての使用者が13カ月目の賃金を支払わなければならないことを確認した。これは本件をめぐってフィリピンの労働組合が団結した成果である。

組合との協議

 

ジェラード・セノALU執行副委員長は言う。

「ALUが13カ月目のボーナスの延期を拒絶する大きな理由は、このボーナスは労働者が過去12カ月間の労働によってすでに稼得している給付だからだ。ボーナスは最低賃金と同種の基本的な労働基準であり、取り上げたり延期したりすることはできない」

テミストクレス・デジョン・ジュニアAWATU-TUCP会長が付け加える。

13カ月目の賃金とクリスマスボーナスの全額支給によって、何百万もの労働者とその家族が支出するためのお金を手に入れ、それが経済に利益を与える。というのも、GDPの60%が消費関連活動から生じているからだ

エイブラハム・レイエス統一労働組織会長は労働大臣の新たな決定を歓迎しており、労働者、特に不安定労働者が法律に定める給付を享受できるだろうと述べた。

アニー・アドビエント・インダストリオール地域事務所所長は言う。

同労組がフィリピンで13カ月目のボーナスの獲得に成功したことを祝福する。この勝利は、仕事の世界で労働組合が不可欠な役割を果たしていることを例示するものだ。未組織労働者も含めて何百万ものフィリピン人労働者が、この闘いから利益を得る

 

 

スイス、多国籍企業のサプライチェーン責任に関する国民投票へ

2020-10-22

<JCM記事要約>

  • 11月29日、スイスは「責任ある企業イニシアティブ」に関する国民投票を実施する。このイニシアティブは、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づいて、他の国々で一斉に提案されている類似の法律の1つである。
  • イニシアティブの標的はスイスに本拠地を置く企業の活動であり、イニシアティブが票決されれば、これらの企業は世界中どこでも管理下の企業で発生した人権侵害や環境違反に対して法的責任を負うこととなる。
  • インダストリオールは、イニシアティブを投票にかけるプロセスに当初より関与しており、「責任ある企業イニシアティブ」は、企業に自社の行動に責任を負わせるための組合と市民社会組織によるグローバルな運動の一部だ、と強調した。

 

スイスは11月29日、責任ある企業イニシアティブに関する国民投票を実施する。イニシアティブが票決されれば、スイスに本社を置く企業はサプライチェーンの出来事に対して法的に責任を負う。

イニシアティブに関するドキュメンタリー映画

このイニシアティブは、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づいて、他の国々で一斉に提案されている類似の法律の1つである。

スイスの政治制度は、政党政治よりも直接民主主義を優先させている。大きな政策問題は、年に数回行われる国民投票で決定される。スイスの市民は国民発案によって連邦憲法修正を求めることができる。投票を実施できるようにするには、イニシアティブの支持者が18カ月間で10万人の署名を集めなければならない。成立させるには、有権者と州の過半数がイニシアティブに賛成票を投じる必要がある。

責任ある企業イニシアティブはスイス企業正義協議会が発案したもので、同協議会はスイスの人権・環境保護団体、宗教団体、労働組合(インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織のSynaとUNIAを含む)で構成される。このイニシアティブは、NGO120団体や国内のすべての教会をはじめ、幅広い一般の支持を集めている。協議会は1年足らずで12万人の署名を集め、後続の段階のために議会に提出した。

イニシアティブの標的はスイスに本拠地を置く企業の活動であり、グレンコアやラファージュホルシムなど、インダストリオールが関与する多国籍企業も含まれる。このイニシアティブが成功すれば、これらの企業とすべてのスイス企業は世界中どこでも、管理下の企業で発生した人権侵害や環境違反に対して法的責任を負うようになる。人権侵害や環境破壊の犠牲者は、スイスで補償を求めることができる。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長

 

キャンペーンを5年近く続けた末に、このイニシアティブを投票に付すことができた。企業ロビー団体はイニシアティブに猛反対しており、この国民発案はサプライチェーンのあらゆる場所で起こった侵害に対してスイス企業を「無罪が確定するまで有罪」とし、活動家による「脅迫」への道を開くものだ、と述べている。政府は当初、このイニシアティブは致命的な法的責任を負わせて企業の競争力を低下させると懸念し、イニシアティブの拒否を勧め、その後、骨抜きにされた反対提案を示した。

2018年の行事に出席したオーストラリアCFMEUのスティーブン・スマイスとインダストリオールのグレン・ムプファン

 

インダストリオールは、イニシアティブを投票にかけるプロセスに最初から関与してきた。インダストリオールは2018年、オーストラリア、コロンビア、コンゴ民主共和国のグレンコア事業の労働組合員をスイスに集め、海外での同社の行動について話した。

投票に向けた勢いが強まるにつれて、全国の窓やバルコニーに特徴的なオレンジ色のキャンペーンの旗が掲げられ、人々が支持を表明している。

バルコニーの旗

 

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。

あまりにも長い間、多国籍企業が、自社の悪しき行動が強調されるたびに一見もっともらしい反証を示し、上っ面の世間体の陰に侵害を隠すことのできる状況が続いてきた。責任ある企業イニシアティブは、企業に自社の行動に責任を負わせるための組合と市民社会組織によるグローバルな運動の一部だ

「私たちのメッセージはこうだ――私たちは企業に狙いを定めている。隠れる場所はない。企業に責任を負わせる」

 

インドネシアで組合ストに暴力的対応

2020-10-19

<JCM記事要約>

  • インドネシア・オムニバス法に抗議するため全国ストを行った労働者が放水砲により負傷し、さらに数人が逮捕された。その他にも、暴動に関与していると濡れ衣を着せられたり、規則に違反したとして逮捕されたりした労働者もいる。
  • インドネシアの組合指導者たちは、オムニバス法の可決は労働者が自分たちの問題を公の場に持ち出さざるを得ない状況に追い込んでいるとし、引き続き闘い続けることを強調した。
  • インダストリオールは政府に対し、労働者の表現の自由を尊重・保護するとともに、インドネシア政府が批准した市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)に違反した警官を処分するよう要求した。

 

論議を呼んだオムニバス法が国会で成立したあと、10月6〜8日に全国ストに入ったインドネシアの労働者・組合が暴行され、独断的に逮捕された。

インドネシア全国の組合員が10月、オムニバス法に抗議するためにストに入った。組合は4月、議会に法案の審議を停止させることに成功したが、結局10月5日に素早く可決されてしまった。

ストに対して暴力が加えられ、独断的な逮捕が行われた。報告によると、インドネシア金属労連(FSPMI)の組合員32人がブカシで放水砲によって負傷し、さらに10人がブカシとジャカルタで逮捕された。警察は、許可時間外にストをしたとして労働者を非難した。

FSPMIの運転手がブカシでジャカルタ警察に尋問されたあと、一晩拘留された。

インドネシア労働組合総連合(KSPI)とFSPMIの会長を務めるサイド・イクバルは言う。

「合法的な手段によって闘い続けるつもりであり、全国で抗議行動を計画している。憲法裁判所に司法審査を申し立てたり、オムニバス法反対キャンペーンを国際舞台に持ち出したりすることもあるかもしれない」

化学・エネルギー・鉱山労組(CEMWUSPSI)の組合員10人が、暴動にかかわっているとの濡れ衣を着せられ、ジャカルタでコーヒーを飲んでいたときに警察に拘束された。

さらに、インドネシア福祉労働組合総連合(KSBSI)の組合員5人が、ジャカルタ行政当局が課す大規模社会制限(PSBB)規則に違反したとしてジャカルタで警察に逮捕された。

エリー・ロジータ・シラバンKSBSI会長は言う。

「まだ拘留されている1人の組合員を釈放させるために警察と交渉している。労働者たちをソーシャルディスタンス規則違反で責めてはならない。政府と議会はオムニバス法の可決によって、労働者が自分たちの問題を公の場に持ち出さざるを得ない状況に追い込んでいる

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。

インドネシア政府に対し、インドネシアの労働者の表現の自由を尊重・保護するとともに、インドネシア政府が批准した市民的および政治的権利に関する国際規約(ICCPR)に違反した警官を処分するよう求める