経済の持続的な成長を実現に向けて、
「生産性運動三原則」に基づく「成果の公正な配分」による「人への投資」を
金属労協5産別が集まり、意思結集を図る
金属労協(JCM)は、2020年1月21日、電機連合会館において、加盟産別・単組等から約180名出席のもと、2020年闘争推進集会を開催した。冒頭、髙倉明議長の挨拶の後、「生産性運動三原則をめぐって」と題して、公益財団法人日本生産性本部の尾崎陽二理事の講演、「2020年闘争に臨む金属労協の主張」として浅井政策企画局主査の報告をそれぞれ行った。続いて、加盟5産別の書記長・事務局長をパネリストに、浅沼事務局長のコーディネーターの下、パネルディスカッション「2020闘争に向けた各産別の取り組み」を行い、2020年闘争の情勢や各産別の特徴的な取り組みを中心に認識を深めた。最後に、髙倉議長の発声により、参加者全員で加盟5産別が結束を強化し闘争勝利に向けた「ガンバロー」三唱を行い、閉会した。
■議長挨拶要旨(髙倉明議長)
金属労協は、12月4日に開催した第62回協議委員会において、2020年の闘争方針を決定した。現在、各産別が中央委員会を開催し、金属労協の方針に基づき、闘争方針を決定している。
<2020年闘争の意義>
2020年闘争の意義について述べたい。まず、第一に、経済の持続的な成長を実現することである。米中対立の激化、緊迫する中東・朝鮮半島、英国のEU離脱など、国際経済環境は激変し、不確実性が高まっている。こうした状況から、わが国経済を、国内外のさまざまな変動要因に耐えうる、個人消費がリードし、底支えする強固なものへと転換することが不可欠となっている。個々人の消費拡大にとって必要なのは、恒常的な所得の増加と生涯所得の見通しの向上であり、基本賃金の引き上げが不可欠である。
2つ目は、生産性運動三原則による「成果の公正配分」である。政労使が確認してきた「生産性運動三原則」においては、マクロ経済の状況を反映した成果配分が求められている。マクロの生産性向上に見合った成果配分、消費者物価の上昇を踏まえた実質賃金確保という考え方を基本として、賃金決定を行っていくことが重要である。わが国経済の底割れを回避し、安定的な成長を実現するためには、「生産性運動三原則」に基づく「成果の公正な配分」に則った賃上げを実施していく必要がある。
3つ目は、「人への投資」の拡充である。われわれの求める「人への投資」とは、働く者に対する労働の対価として、成果の「公正な分配」を行うことにより、職場全体のモチベーションを高め、より高い能力発揮と成果の創出を促すという、好循環につなげる「人への投資」である。経営環境変化に対応し、競争力の強化を成し遂げるのは、働く者の力、現場力である。「人への投資」によって、賃金・労働諸条件の引き上げ、底上げ・格差是正を通じて産業・企業の魅力をより高め、人材を確保し、職場全体のモチベーションの一層の向上を図っていかなければならない。
<賃金の底上げ・格差是正>
JC共闘ではこれまで、大手と中小の賃金格差是正、非正規労働者などの賃金底上げに強力に取り組み、その結果、2017年以降、3年連続で、中小の賃上げ額の平均が大手を上回っている。しかしながら一方、賃上げ獲得組合の比率は、金属労協全体で6割強にとどまり、中小労組では5割台となっており、すべての組合での賃上げ獲得がきわめて重要な課題となっている。
JC共闘では、従来から、賃金の底上げ・格差是正および日本の基幹産業にふさわしい賃金水準確立の観点から、賃金の上げ幅のみならず賃金水準を重視して取り組んできた。連合も、昨年から同じ方針の下で取り組んでいる。2019年闘争からは、JC共闘内における賃金水準の位置づけを各組合が確認できるデータの整備をめざして、金属労協の全組合を対象に、「35歳・技能職賃金水準の実態調査」を取りまとめている。各組合は、この調査に基づく実態や、各産別の示す指標、目標水準等を踏まえ、日本の基幹産業にふさわしい賃金水準確立の実現と賃金の底上げ・格差是正に取り組んでいただきたい。
<企業内最低賃金協定>
金属労協では企業内最低賃金の水準について、従来より、高卒初任給準拠を基本として取り組んできた。一方、2022年度には、地域別最低賃金の全国加重平均が1,000円程度、とりわけ、東京都、神奈川県では1,100円程度となることが見込まれる。こうした状況を念頭に、当面、少なくともこれに抵触しない水準として月額177,000円程度(時間あたり1,100円程度)をJC共闘の中期的目標とし、各産別でその達成をめざして計画的に取り組んでいくこととしている。
なお、特定最低賃金については、明日、全国の担当者、約300名が集まり、2020年度の取り組み方針の共有と意思結集を図ることとしている。特定最低賃金の取り組みは、春季生活闘争における「企業内最低賃金協定」の締結拡大と水準の引き上げがスタートとなる。未組織労働者や非正規労働者を含めた産業全体の賃金の底上げ・格差是正を図るため、企業内最低賃金協定の水準をしっかり引き上げていくことが重要である。
<結び>
第4次産業革命や国際経済環境の激変など、わが国の産業・企業は大転換期を迎えている。不確実性が高まる中、春季生活闘争の成果が今後の消費動向、さらには日本経済の行く末を左右すると言っても過言ではない。「社会的相場形成」を担う労働組合の責任の重みを強く認識し、5産別の強固な共闘の下で、闘争を推進していく。
■講演「生産性運動三原則をめぐって」(尾崎陽二・公益財団法人日本生産性本部理事)
「生産性運動三原則」の歴史的経過と今日的な意義と課題について、ご講演をいただいた。
■報告「2020年闘争に臨む金属労協の主張」(浅井政策企画局長)
浅井茂利政策企画局主査より、金属労協が取りまとめた「2020年闘争 交渉参考資料」に基づいて、①新たな経営環境と生産性運動三原則、②第4次産業革命の下で、働く者が安心して変革に邁進するために、③労働生産性と労働分配率、④賃上げの消費拡大効果、等について、労働側の主張のポイントを説明した。
■パネル討論「2020年闘争に向けた各産別の取り組み」(パネリスト:5産別書記長・事務局長)
つづいて、浅沼金属労協事務局長によるコーディネートの下、金子晃浩・自動車総連事務局長、神保政史・電機連合書記長、中井寛哉・JAM 書記長、津村正男・基幹労連事務局長、佐藤裕二・全電線 書記長をパネリストに「2020年闘争に向けた各産別の取り組み」と題してパネルディスカッションを行った。パネリストからは、各産別の産業動向と闘争方針の概要を説明した後、2020年闘争における特徴的な取り組みを紹介し、相互の理解を深めた。
→ 2020年金属労協各産別の要求内容
■2020年闘争勝利に向けて、全員でガンバローを三唱
最後に、2020年闘争勝利に向けて、相乗効果を高め、全体で格差是正をさらに進めていくことを誓い、髙倉金属労協議長の発声で、全員で「ガンバロー」三唱して、闘争推進集会を終了した。
以 上