2017年闘争推進集会ひらく
「強固な職場」「強固な金属産業」「強固な日本経済」の
構築に向けて金属労協5産別が結束し
それぞれの役割をフルに発揮し闘争勝利へ運動展開を誓う
金属労協(JCM)は、2017年1月24日午後、電機連合会館で、加盟産別・単組等から約170名出席のもと、2017年闘争推進集会を開催した。井上事務局次長の司会のもと、冒頭、相原議長が挨拶した後、「消費拡大のカギを握る賃上げの実現」と題して、ニッセイ基礎研究所経済研究部の齋藤太郎経済調査室長から講演を受けた。次に、本部報告「2017年闘争に臨む金属労協の主張」を浅井政策企画局長から報告した。続いて、金属労協加盟5産別の書記長・事務局長をパネラーに、浅沼金属労協事務局長のコーディネーターの下、パネルディスカッション「2017年闘争に向けた各産別の取り組み」を行い、2017年闘争の情勢や各産別の特徴的な取り組みを中心に認識を深めた。最後に、相原議長の音頭で、金属労協・各産別書記長・事務局長と共に、参加者全員で、金属労協5産別が結束を強化し闘争勝利に向け、「ガンバロー」三唱を行い、閉会した。
★議長挨拶要旨(相原金属労協議長)
各産別で中央委員会を開催し、機関決定が進んでいる。
2017年の経団連「経労委報告」では、将来不安払拭に皆で取り組むことや、社会保障改革など政府の役割が小さくないことなどの基本的な認識は一致している。しかし、賃金引き上げについては、必ずしも賃金引き上げだけが選択肢ではない、年収ベースで所得を引き上げていくことも選択肢である、ベースアップは不定期である、ライフステージや求められる役割に応じてベースアップは重点配分されるべき、などと言っている。賃金引き上げによって、付加価値や消費を伸ばすことをめざす金属労協と立場が異なっている。経団連の対応は、総じて従来姿勢と変わりないと受け止める。
金属労協では、この3年間の大変な努力をもってしても、中小労組の賃上げ獲得組合は5割に達していない。多くの中堅・中小労組に対して役割を果たすことができたのか、更なる努力が求められている。若年層を金属産業に引きつけ、次世代を育てることによって、魅力ある産業・企業とするためにも、2017年闘争は意義深い取り組みとなっている。
経労委報告では、生活防衛的なマインドを変えるための努力をすべきと言っている。プレミアムフライデーもその一つになるかもしれないが、一考の余地があるのではないか。正規・非正規、男女にかかわらず、将来に向かって安定的に恒常的に所得が増えれば、自ずと消費は拡大する。
経労委報告では、連合が「大手追従・大手準拠からの転換」と言いながら、大手を基準に格差是正をいうのは矛盾ではないかと言っているが、とんでもない間違いである。中堅・中小では、賃上げができる環境が整っているにもかかわらず、大手以上の賃上げを獲得できない、大手以上の要求さえ掲げられないキャップがはめられてきた面がある。中小労組が伸びやかに要求を掲げ、堂々と獲得できるようにする文化を求めることが、2017年の大きなテーマである。国際競争力、職場のやりがい、ディーセントワークなどさまざまな見方があるが、賃金の社会性を発揮し、2017年における横のつながりだけでなく、次世代に向けても、賃金の社会性を発揮していく心構えが私たちには必要である。堂々とした成果を上げて、次の人たちにバトンを渡し、良い職場を作っていきたい。
同一労働同一賃金のガイドラインについては、職能給、勤続給の制度であっても同一労働同一賃金を確保できることを明らかにしたことは評価できる。今後、ガイドラインを法律に入れ込むことが議論されることになるが、職場の実態を知っているのはここにいる皆さんである。いかなる働き方をもって労働時間を短縮し、生産性を上げるか、職場にふさわしい働き方と評価のされ方、賃金のセットの仕方は、職場の皆さんにしかわからない。そこに労働組合の役割の発揮がある。労働組合が参加した上で、働く側から提起することが大事である。職場の実態に即した議論をすることの必要性を確認したい。
強固な職場、強固な金属産業、強固な日本経済の構築に向けて、2017年で礎を固めるべく、5産別が結束して、それぞれの役割をフルに発揮して、運動を展開していきたい。
★講演「消費拡大のカギを握る賃上げの実現」(齋藤ニッセイ基礎研究所経済調査室長)
ニッセイ基礎研究所経済研究部経済調査室長の斎藤太郎氏より、「消費拡大の鍵を握る賃上げの実現」と題して、マクロ経済の視点でみると、他の需要項目に比べて民間消費の伸びが低いこと、消費低迷の主因は所得の伸び悩みであること、家計の所得分配率が過去最低になっていること、家計部門への所得分配を増やすには賃上げが効果的であること、物価上昇に賃金上昇が追いつかず今後物価上昇が見込まれることから、実質賃金上昇率がマイナスに陥る恐れがあること、など、データに基づいて説明を受けた。
★報告「2017年闘争に臨む金属労協の主張」(浅井政策企画局長)
浅井茂利政策企画局長より、経団連「経営労働政策委員会報告」の主張に対して、金属労協が取りまとめた「2017年闘争 交渉参考資料」に基づいて、労働側の主張のポイントを説明した。 → 2017年闘争交渉参考資料
★パネル討論「2017年闘争に向けた各産別の取り組み」(パネラー:5産別書記長・事務局長)
つづいて、浅沼金属労協事務局長によるコーディネートの下、5産別書記長・事務局長をパネラーに「2017年闘争に向けた各産別の取り組み」と題してパネルディスカッションを行った。パネラーからは、各産別の産業動向と闘争方針の概要を説明した後、2017年闘争における特徴的な取り組みを紹介し、相互の理解を深めた。→2017年闘争各産別要求内容(原案)
各産別パネラーからの主な発言内容は以下の通り。
【自動車総連 郡司典好 事務局長】
* 賃上げは、3,000円以上とした。中小労組や非正規労働者の処遇改善の流れをより力強いものとし、「底上げ・格差是正」の定着と前進を果たすとともに、適正な成果配分と更なる成長に向けた人への投資を求める。
* 自動車総連一体となって、企業規模・業種、正規・非正規によらず、産業を支える全ての仲間が、自らの賃金課題を継続的・安定的に改善し、底上げしていける状態を実現し、総合生活改善における真の意味の構造転換を果たす。
* 職場全体のチームワークで生み出した成果は、職場全員で共有することが基本との考え方で、非正規労働者の処遇改善に取り組んでいる。原則として賃金改善分を設定し、時給20円を目安に取り組む。20円は、賃上げ額3,000円を168時間で除した金額である。
* 働き方の改善として、全単組年間540時間以下となるよう、36協定の年間特別延長時間の引き下げに計画的に取り組む。
* 2016年に「付加価値の最適循環運動」を立ち上げ、経営者団体との理念の共有、関係省庁・経緯者団体と連携強化と確認した。2017年は、中央最適循環委員会とタスクフォースを設置し、労連と連携しながら推進していく。テーマは、A)産業内の適正取引促進、B)生産性・付加価値の向上、C)人材確保に向けた産業の魅力向上、D)地域における協力強化、などとしている。春季生活闘争でも、労使で議論する。
【電機連合 神保政史 書記長】
* 2017年は、「生活不安、雇用不安、将来不安」の払拭とともに、電機産業の持続的な発展をめざし、継続して「人への投資」に取り組む。
* 賃金については、継続して組合員の生活の維持・向上をはかり、生活不安の払拭につなげる観点から、3,000円以上の賃上げを求める。
* ワーク・ライフ・バランス推進の観点から適正な総実労働時間を実現していく取り組みと、過労死等を防止し健康を守る取り組みの観点から、総実労働時間の短縮に取り組む。
* 2016年に非正規労働者の実態調査を行ったところ、4万数千人いた。ともに働くパートナーとして、処遇改善に取り組む。有期契約労働者の無期転換に関する取り組みでは、無期転換者は正社員とすることを基本とする。やむを得ず「多様な正社員区分」を設定する場合には、不合理な労働条件がないことを確認するなどの取り組みを行う。
* 統一闘争強化、規模間格差の是正の観点から、何としても守るべき領域と各組織が独自に取り組む領域を設定した。「政策指標」を4段階設定し、自らの立ち位置を明確にしながら、自主的に取り組むこととした。2016年も十数組合が大手を超える賃上げを獲得しており、着実に前進させていく。
【JAM 河野哲也 書記長】
* 人手不足により、3分の2の企業で経営に影響がでている。賃金水準は下げ止まっているが、JAM組合員の賃金データを分析すると大手と中小の賃金格差は拡大しており、中小の中でも格差が拡大している。2014年の中小企業白書では、90年代半ばから、大手と中小の価格転嫁力の格差が広がっていると指摘している。
* 2014年以降の春闘を振り返ると、大手追従の春闘からはいまだに脱し切れておらず、「上げ幅」だけでなく、賃金水準にこだわる交渉にする必要がある。2017年は、個別賃金要求基準を前面に出し、30歳の到達基準260,000円、目標基準280,000円、35歳の到達基準305,000円、目標基準320,000円とする。賃金構造維持分を除き、賃金改善分を6,000円基準、平均賃上げ要求基準を10,500円以上とする。
* 非正規労働者に関しては、JAMで労働契約法のチェックリストを作成しており、第18条、19条、20条に対応していく。正社員への転換、処遇改善に関して労使協議をしていく。
* 春闘と合わせて、「製品の価値(公正取引)」と「労働の価値(賃金水準)」を正しく評価させ、「価値を認めあう社会の実現」をめざして運動を展開する。
【基幹労連 神田健一 事務局長】
* 2年を1つのパッケージとして、政策実現と労働条件改善に取り組んでいる。2017年は個別年度の年であり、業種別の格差改善に特化する。賃金改善は、2016年に決めた2年で8,000円の方針の下で、部会ごとのまとまりをもって取り組む。
* 格差改善の取り組みは、「賃金」「退職金」等については、「当面の目標」に向けて、業種別部会ごとに取り組んでいる。年次有給休暇の初年度付与日数、時間外・休日割増率、労災・通災付加補償を「速やかに改善すべき3項目」とし、これを基本に各種労働諸条件の改善項目を検討する。その他の格差改善は、15の業種別部会でまとまりを持って検討する。本部に業種ごとの事務局長を配置し、業種別連絡会議で進めている。
* 「働く者全ての雇用確保と労働条件の底上げ・底支え」に向けて、60歳以降の処遇に関しては、職場の活力をどうつくるかということ、非正規労働者に関しては、コンプライアンスの徹底に取り組んでいく。
* 「働き方改革」は、困った人をどう助けるかが基本である。「労使話し合いの場」を通じて、職場を熟知している個別労使で良質な雇用に向けて取り組む。
* 産業政策・政策制度の取り組みは、国政フォーラム議員と連携し、省庁要請などに取り組む。
【全電線 佐藤裕二 書記長】
* 賃金は、35歳標準労働者の賃金を3,000円以上引き上げる。労働者の雇用の安定と生活不安・将来不安の払拭のため、継続した賃金引き上げの取り組みにより、経済の自立的・持続的な成長をめざす。
* 一時金は、要求基準を年間5カ月中心、産別ミニマム基準を4カ月としている。しかし、4カ月を獲得しているのは半数にとどまり、更なる努力が必要である。
* 退職金は、政策を見直し、高卒勤続42年・60歳で到達水準2,200万円とした。これまで、中卒勤続35年・60歳で1,600万円としてきたが、中卒が少ないことや、大手が2000年に到達して以来、改善がみられないことなどから、モデルを見直した。
* 年間総実労働時間1,800時間台を目標としつつ、1,900時間台の定着を目標に取り組んでいる。2017年は、現行の年間休日日数から1日増をめざす。1,800時間台の前提は年間休日125日だが、7割の組合が121日にとどまり、金属労協平均よりも2日少ない。「山の日」が自動的に休日になる組合との格差も広がっている。年休の取得率も50%程度と金属労協平均を下回っており、年休取得増にも取り組む。
★2017年闘争勝利に向けて、全員でガンバローを三唱
最後に、相原金属労協議長の音頭で、2017年闘争勝利に向けて、金属労協5産別200万組合員が結束を強化して、不退転の決意をもって交渉に臨んでいくことを誓い、全員でガンバロー三唱して、闘争推進集会を終了した。