第47回定期大会
加藤裕治
JC議長挨拶
労働界全体でゆるぎない
共闘体制の確立を


金属労協議長 加藤裕治

第47回定期大会に多くの方々に参加していただき感謝している。本大会は21世紀最初の10年を締めくくる今後2年間の運動方針と、それを主導する運営役員を決める大変重要な大会となる。 本日の来賓として、高木連合会長、マレンタッキIMF書記長、鎌田IMF書記次長のほか、世界14カ国・地域の17組織の関係者に参加していただいた。


◆取り巻く環境の変化―大きな革新の潮目に
  私たちはまさに時代の重大な転換点に差し掛かっている。福田首相が昨晩辞任会見をした。そのことも含めて、大きな革新の潮目に来ていると思う。ここで世界と日本の状況について総括したい。
東西冷戦の終焉から20年、市場経済が拡大し、BRICsが台頭する時代となっている。特に中国はその間にGDPが4倍増となり世界第3位の経済大国となっている。「強い米国」への一極集中の時代は終わり、グローバル化の陰の側面が表面化している。市場では投機マネーの過熱により原油・食糧が高騰し、人々の生活を直撃している。こうした中、豊かさを目指す経済競争が激しさを増している。先進国、発展途上国を問わず、格差と貧困が拡大している。そうしたグローバル化の影の部分を放置していると、20世紀前半のような暗い時代に逆戻りしかねない。
しかし希望はある。世界では自由主義と民主化が拡大していて、それが政治を変えつつある。実際に、そうした力がブラジルでのルラ大統領や豪州でのラッド首相の誕生につながったと認識している。米国でも、バラク・オバマが「Change」をスローガンに民主党の大統領候補となった。
多国籍企業が国境を超えて存在感を高める中で、世界の労組も連帯のグローバル化を掲げ、一昨年にITUCを誕生させた。不安定労働の解消をめざして闘う力は強化されつつある。ITUC、IMFとしても、世界中の労働者がそのことを訴えるべく10月7日を「不安定労働に対抗する世界行動デー」と定め、世界中で準備が進んでいる。我々も連合と協力し、アピール行動を計画している。こうした転換・変換を求める労働者・市民の声がそれぞれの国で政治を変えるところまで高めていく必要がある。労働組合をはじめ良識ある勢力がもっと力を結集し、変化の兆しを現実のものにしていかなくてはならない。

◆日本の政治・経済の状況
日本では「失われた10年」からの景気回復は実現したが、企業収益が増えても、そのために努力してきた労働者へは利益が殆ど還元されなかった。それどころか、人件費を抑制する目的から企業は非正規雇用を拡大し、それが社会不安の拡大を招いている。また、小泉・安倍政権の社会保障政策も格差拡大に拍車をかける結果となった。同時に、日本経済の舵を取ってきた官僚・行政の腐敗が明るみに出たこともあり、これまで政治に無関心だった若者も変革の必要性を認識しだした。それが昨年の参院選における民主党勝利につながったと思う。
昨年9月に誕生した福田政権は突然の政権放棄という形で幕を下ろした。自民党が政権を任せられるような信頼に足る政党ではもはやないことは明らかだ。総選挙・政権交代が間近に来たことを確信する。

◆取り巻く状況を踏まえたJCの諸活動
そのような中、IMF-JCは国内外での取組をさらに強化しなければならない。日本の金属産業は全世界で300万人を雇用している。海外雇用者のうち200万人がアジア地域にあり、日本企業がアジアで労使紛争に係る件数も増えている。そうした中、IMF−JCはCOC、IFA締結に向けて取り組んできたが、残念ながら企業の理解を得るには至らなかった。
国内では主に、労働者に対する利益還元の少なさと非正規の増加という問題があり、そのことによるものづくりの質、競争力、技能の低下が懸念される。デフレ下の賃金闘争でも、「賃金改善」というコンセプトを打ち出したことで一石を投じたと認識する。また、従来の大企業中心の運動から中小企業での待遇改善に視点を移してきた。他にも、ものづくり政策、若年者雇用政策、外国人雇用政策に関しても積極的に提言をしてきた。

◆JCの今後のあり方と当面の課題
今後のJC運動のあり方として、まずはJCとしての基本的方向を引き続き推進した上で、国際的労働運動の担い手としてIMFの方針をさらに積極的に推進しなければならない。来年には4年に1度のIMF世界大会がスウェーデンで開催されるが、それに向けてJCとしても積極的に提案していきたい。IMFの国際労働運動に関してもうひとつ重要なのはアジアでの取り組みである。そうした認識から、アジア地域の労組役員やIMF関係者を集めた大きな会議が、5月末に京都でIMF執行委員会が、そして6月末にマレーシアで第1回アジア金属労組連絡会議と今年2度開催された。さらに、COC(企業行動規範)やIFA(国際枠組み協約)についても来年4月には交渉に向けた大きな決断をしなければならない。国内においては中央、地方の双方で活動を強化しなければならない。景気後退、企業減益、物価高の中で迎える来年の春闘は労組の存在価値を問われる闘いとなる。勤労者の生活を守るため、労働界全体でゆるぎない共闘体制をつくる必要がある。

◆最後に
自分は本日で議長を退任する。労組運動を通じて内外に多くの友人を得た。大変有意義な活動ができたと思う。これまでの活動を支えていただいたIMF−JCの関係者一同に感謝したい。そして今後のご健闘をお祈りしたい。