第48回定期大会

議長 西原浩一郎
海外代表挨拶

JCはグローバル金属労働者ファミリー
の要として役割発揮を!


 

ユルキ・ライナIMF書記長

 

皆さん、おはようございます。私の大変大事な友人であり、同僚であるペッカ・アロがこのようなことを言ったことがあります。「フィンランドと日本の労働組合というのは何か馬が合うよね。なぜなのだろうね」と言ったことがあります。なぜなのでしょう。もしかしたらフィンランド人も日本人もわりと内気で、そして初めての慣れない環境の中では自信の無い気持ちになるのでしょうか。

それとも自分たちは他の国の人たちとは違うのだ、そしてまたわれわれの言葉、日本語もフィンランド語も他の国の人にまったく理解されていないと思っているからでしょうか。もしかしたらフィンランド人も日本人も平和が大好きで、とても良い関係を大事にする、例えば私生活においても職場においても社会においても調和の取れた良い人間関係を大事にするからでしょうか。いろいろ理由はあるのですが、ともあれ日本に来るとまるで我が家に帰ってきたような気がします。それを言いたいがためにたくさん申したのです。

5月のIMF世界大会で書記長に選出、JCの支援に感謝

お陰様をもちまして、今年の5月の末に、スウェーデン・イェテボリのIMF世界大会でIMFの書記長に選んでいただきました。IMF-JCの皆様のご支援に感謝します。ありがとうございました。その時、日本から多くのJC代表団がいらして、嬉しかったのはその中に多数の女性の方がいらしたことです。しかもその方たちに本日この会場でもお目にかかれて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

私は100カ国以上のIMFの加盟組織、2500万の組合員を代表して皆さんにご挨拶ででますことを心から嬉しく思っています。皆さん方は非常に大きな、グローバルな金属労働者の家族の一員なのです。

この夏、書記長に選ばれてから、私はジュネーブのIMFの本部の中で、ずいぶん時間を使っていろいろなことを考え分析いたしました。IMFの仕事のやり方、過去はどのようなことだったかということも分析いたしましたし、また改革をはじめたいと考えています。私たちの組織をもっと開放的で、透明性があって、存在感があって、効果的なものにするにはどのようにすればいいかというようなことをいろいろ考えました。そのことは、新しい仕事のやり方、新しい人々を入れる、そしてまた重要な優先課題を決めるということも意味していました。

そして私は昨日または一昨日、IMF−JCの指導部の方たちと長い討議を行いましたが、そこで私たちは同じような目標を持っていることを確認しました。

IMFアクションプログラムの5つの優先課題

 今回のIMF世界大会では2009年から13年までのアクションプログラムというのが採択されましたが、そのアクションプログラムに沿って、これから5つの優先課題を実行していきたいということで、そのお話を中心にさせていただきます。

@ネオリベラルなグローバリズムを乗り越える新しい経済モデルの構築を

現在の金融・経済危機において、全世界の労働組合は自分たちの組合員、そして家族の雇用を守るために大変な努力をしています。これは政府に対して、また企業に対して働きかけるということを意味しています。

現在のネオリベラリズムによる危機を起こしたのは労働者ではありません。ですから政府が民主的な責任を取ろうとすれば、労働者にそのつけを払わせないということが重要だと思います。私は東京で、8月30日、日曜日の夜、テレビから目をそらすことができませんでした。そして自分の目で民主党の大圧勝の場面を見ることができました。ぜひ皆さん、新政権を助けて、公約が実現できるように努力をしてください。

政府は景気刺激策を生み出すことが必要ですし、企業も生産活動を続けるための融資を得ることが必要です。やはりそのためには、労働者に賃上げがあってはじめて購買力を高めることができますし、また経済を再び軌道に乗せることができるでしょう。しかし、金融市場は絶対に規制が必要です。規制をすることによって(無秩序な)投機を防止することができます。またその手の問題が二度と起こらないようにすることが必要だと思います。そのためには、ネオリベラルなグローバルリズムよりも新しいモデルをつくることが必要です。それは途上国に対しても先進国に対しても同様に言えることです。これが第1です。

A不安定雇用に反対する世界行動デーに共に参加を

第2として、世界の金属労働者たちが10月にグローバルアクションウィークと銘打ち、全世界で一斉に行動することになっています。その時にIMF−JCとしても、他のセクターの労働者たちと一緒に行動を取っていただきたいと思います。その目的は不安定労働の拡大、人材派遣機関の拡大に対し闘うということです。それを行うためにもやはり法制を変えなければいけません。またこれを労働協約の中に入れていかなければなりません。そして多国籍企業における調整の取れた行動を取ることが必要です。

それから、これは日本に対してぜひお願いしたいのですが、ぜひ組合の規約や機構を変えることによって非正規労働者が組合に入ることできるようにしていただきたいと思います。私たちは非正規労働者を組織して、平等な賃金と社会的な保護を得るために闘わなければならないのです。

Bグローバルな労働組合のネットワークの構築を

第3として、IMFはグローバルな労働組合のネットワークを多国籍企業において持つことが必要だと思います。多国籍企業が私たちの金属産業を支配しているからです。多国籍企業はグローバルな経営戦略を持っています。それであればわれわれ労働組合もグローバルな拮抗力を持たなければならないのです。そしてこのようなネットワークを作ることによって、全国的な労働組合の役員やそれから単組の役員が一緒になって、情報を共有し、同じようなかたちでイニシアティブを行い、未組織工場を組織化し、そして問題があれば相当の行動を取ることができるようになるのです。 あまりにも多くの多国籍企業が自分の進出している国において、労働組合を避けようとしています。それは日本、ドイツ、北欧、そしてアメリカの多国籍企業を含めてです。例えば、アメリカだけにおいても日本の金属セクターの企業は、なんと10万人の組合に組織していない労働者を雇用しているのです。これはアメリカの弱い労働法制を利用して行われているのです。

今、しかし世界はボーダレスになっていますから、これらの問題はあくまでもローカルな問題にとどまることがありません。ひとつの国で問題が起これば、われわれすべての人にとっての問題になるのです。ですからIMFの本部はシステマティックな形で加盟組織と一緒になって、未組織工場に焦点を当てて、そしてわれわれのネットワークを強化し、そしてグローバルな力を付けていくべく努力をしていくつもりです。

C海外労使紛争には効果的な連帯活動で対応

4つ目ですが、グローバルなIMFの家族は、もし労使紛争が起った時には、効果的な連帯活動を即とらなければならないということです。例えば今年の夏の話をしましょう。IMF−JCが二つの大きな労使紛争の解決のために尽力されました。6月にはIMF−JCとIMF地域組織が非常にすばやく効果的な介入をしましたので、タイのカワサキの労使紛争を解決することができました。おかげさまで900人の労働者が再び職場に復帰することができ、労使交渉を再開することができたのです。

もうひとつの例は、つい先週起こったことなのです。これは東芝インドネシアで4カ月に亘るストとロックアウトが行われていたのですが、それに対してようやく和解が成立しました。このことに対してはIMF−JC、電機連合、東芝労組に対して、この紛争においてしっかりした支援をしてくださったことに対し、心からお礼を申し上げたいと思っています。

これらの方たちの強い介入と、それからわざわざ7月にはジャカルタまで出張して解決に向けて尽力くださったのですが、それが無かったならば交渉を再開することはできなかったと思います。この交渉の再開のおかげで多くの雇用が確保され、組合も救われて、そしてこれがインドネシアにおける新しい形の労使関係の出発点になったと思っています。

D気候変動問題でIMFは積極的な役割を

5つ目は気候変動の問題です。やはり私たちは本年12月にコペンハーゲンで行われる気候変動枠組条約の締約国会議で大変に良い交渉が成立することを大いに期待していますが、IMFの家族としてもこれに対して積極的な役割を果たすべきだと思っています。そうでなければ世界の金属労働者にとって良い結果を12月に得ることができないと思うからです。

ぜひ皆さん、本年10月にドイツで私たちIMFはセミナーを行いますので、ご参加ください。IMFが化学・エネルギーの分野の同僚たちと協力しましてセミナーを開催します。このセミナーの目的は、産業的な組合にとっても良い対策を打ち立てることができるように、気候変動の締約国会議に先立って行うセミナーです。

持続可能な低炭素社会への移行というのは可能なのです。しかし持続可能な低炭素社会に移行するためには、相当な時間を取ることが必要だと思います。そのような意味で金属労働者は、積極的に役割を果たすことができると思います。例えば省エネ技術を使うことを促進したり、また研究・開発・訓練などを行うことができると思います。そして、新しい持続可能な技術はもしかしたら新しい雇用を生み出す可能性もあるかもしれないのです。

そして私が申しました新しい雇用というのはグリーン・ジョブなのですが、グリーン・ジョブも良質な雇用でなければいけない。しかもディーセント(人間らしい)な労働条件を持った雇用でなければいけないと思いますし、また労働組合の諸権利を尊重する仕事で無ければいけないと思います。よく産業というのは脅威だと言われることがありますが、しかしそうではありません。産業があってこそ持続可能な将来を目指すことができるのです。産業こそが将来への機関車の役割を果たすことができるのです。

IMF−JCはIMF金属ファミリーの要

 皆さん、IMF−JCはグローバルな金属労働者の家族の中の要ともなるべき存在だと思います。皆さんの役割はこれからもさらに重要になっていくと思います。と申しましてもIMFの国際的な労働組合運動の将来は、アジア太平洋地域でわれわれの運動が成功するかどうかにかかっているからです。 特に中国、インドなどのことを考えますと、それが言えると思います。したがって私たちは皆さんからの支援、皆さんからのご意見を大いにあてにしているのです。それはもちろん国レベルの組合だけではなく、企業別組合の皆さん方からも多くの支援と意見を頂きたいと思っています。 これからも皆さん方の協力を大いにあてにし、楽しみにしています。IMFの執行委員でもあり、IMF−JCの議長である西原浩一郎さん、そしてまたその他のJCの皆さん方とこれからもぜひ協力をさせていただきたい。期待しています。 そして皆さん方、本当にどうもありがとうございました。今回の大会のご成功と皆さん方のお仕事のご成功を心からお祈りいたします。どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)