第48回定期大会

議長 西原浩一郎
来賓挨拶


日本の労働者をとりまく
諸課題の解決へ
JCが引き続き運動の先頭に
牽引役を期待




高木 剛 連合会長

   

おはようございます。JCの大会が、このように成功裡に開催されますことを、連合を代表して、心からお喜び申し上げたいと思います。日ごろは、地方で連合の諸活動に対しまして、JCの皆さんには何かとご理解、ご協力を頂いておりますことを冒頭、心から御礼申したいと思います。今日は皆さんいろいろありがとうございます。

また、連合本部の活動につきましては、今ご挨拶をされていました西原JC議長(自動車総連会長)をはじめ、JC副議長でいらっしゃる中村電機連合委員長、河野JAM会長、内藤基幹労連委員長の皆さんは、それぞれ連合副会長という立場でお力添えを頂いております。また連合本部にはJCの皆さんからお出しいただきました古賀事務局長、あるいは團野副事務局長をはじめ、多くの皆さんに連合の活動にお力添えをいただいております。このことは皆さんのご理解があってのことと、心から感謝をいたしているところです。


◆第45回衆議院選挙の結果

大会議長のご挨拶、あるいは今の西原議長のご挨拶にもありましたが、一昨日8月30日、第45回目の衆議院選挙が実施され、投開票が行われたところです。結果は皆さんご存知のとおりですので多くを申しませんが、民主党だけで308議席、連合と政策協定を結びました社民党、国民新党を含みますと319議席、それに無所属で、連合推薦で出ていただいている方が、また1、2名おられますので、320議席には達していると私たちは認識をしているところです。だから3分の2の採決を自公政権と同じようにやるということを申しているのではありません。トータルの結果で320議席に達しているということです。

戦後64年、初めて、総選挙の結果で政権が代わるという選挙に今回の選挙がなったのです。連合の長い間の悲願がここにひとつ実現をしたということです。本年は時あたかも連合結成20周年の年にあたっております。20年前の連合結成大会に先立つこと数年に亘りまして、私どもの先輩は労働戦線を何とか統一しようではないかという思いで、熱心に議論をなさってこられました。

その過程の中で、「なぜ連合を」というのが、当時は連合という名称がまだついてはいませんでしたが、「なぜ労働戦線を統一するのか」、この「なぜ」の中の大きなポイントが、「政権交代可能な政治体制を構築することこそ、労働者の生活と権利の改善にとって非常に大きなインパクト、手段になる、だからこそ労働戦線を統一しようではないか」というその最大の理由として、「政権交代可能な政治体制を作る」という議論をなさったのです。

昨日、連合初代会長の山岸さん以下、現在連合の顧問をお願いしています諸先輩にお電話をさせていただき、先輩たちが悲願にされた政権交代可能な政治体制作りを、今回の総選挙でとりあえず形はできましたと、そのご報告を申しまして、先輩たちのかつての思いに共感の意を表させていただいたというところでしょうか。

何人かの先輩からは、「まさにこの日を皆で待ち望んでいろいろな運動をやってきたのだ」と、「良かった」と、「よく頑張った」というふうにお言葉を頂いたところです。このようなことで政権交代が行われることになりましたが、今、現在の最大のポイントは、民主党を中心とする新しい政権がスムーズに船出ができるのかどうかということです。政党間の話し合い、あるいは政府の運営制度をどのようなかたちで形成をしていくのか、また政策決定のシステムをどのように変えていくのか等々たくさんの課題が民主党を中心にとして目の前にあるのですが、私たち連合もこの選挙に大きく関わった当事者の一角として、この新しい政権のスタートに向けてどのようなサポートをしていけばいいのか、いろいろ考えなければならないことがあります。

私たち労働組合は政党ではありません。そのような意味では、あくまで政党のサポーターという、こちらのサイドにいる存在だと思っています。とは言いましても、先日もある政治評論家の方が私のところにお見えになりまして、「選挙が終わった後の連合の関わり方は大変重要だ」とおっしゃいました。「私たちは政党ではありませんから」という話をしておりましたら、「そんな御為ごかしのきれいごとを言うな」と叱責されました。「連合にはそのような意味で、制度運営責任というのがあるのだ」という立場も含めて、「あなた方に責任が無いとは言わせない」というふうにその方はおっしゃられました。確かにそのような面もあるのかもしれません。

ただ、われわれは労働組合としての則(のり)を越えず、我々の立場でどんなサポートがしていけるのか、謙虚にこの問題にも対応していく必要があると思っています。

もちろんまだ具体的にどのようにしてくれ、あのようにしてくれと今日段階ではまだ受けているわけではありませんので、具体的なお話がありましたら、前向きにいろいろなサポートの仕方を考えていきたいという心積もりでいるところです。

明日、連合の三役会、および中央執行委員会、その後連合の皆さんの関係の会議等をやりまして、今申しましたことも含めて今後の対応について意思疎通を図っていきたいと考えているところです。ともあれこの結果に浮かれず、また来年7月には次の参議院選挙もやってまいります。次の参議院選挙でもう一度勝利をすると、ホップ・ステップ・ジャンプで仕上がります。

私たちは4年前小泉政権のもとで、私たちが支援する政党が惨敗を帰しました。その後の小泉政権の在りようを選挙後半年ぐらい見ていましたが、このまま行ったら日本の社会はひどいことになる。いろいろな切り口で見た格差はどんどん広がり、またトータルに見た時の労働分配率は下がりますし、社会保障のほころびも目立って、まさに日本の社会が不安と不振の方向に向かっている、このまま放置しているわけにはいけないということで、皆さん方のご理解も得まして、「ストップ・ザ・格差社会キャンペーン」と銘打っていろいろな運動をお願いしてきたのです。

その運動のひとつの節目が2年前の参議院選挙だったと思っています。これは皆さん方の懸命な活動のおかげで参議院において与野党の議席数を逆転するという、世に言う「逆転の夏」という結果を出していただきました。けれども参議院だけで過半数を占めたといって、政治が全部変えられるかというとそのようなことにはならないので、自公政権は衆議院の3分の2以上の議席で再議決するという政権運営を続けてまいりました。そのような中で「格差社会ストップ・ザ・キャンペーン」をやめる状況にはとても至らず、さらに第2弾と称して、今日まで運動を続けてきているのです。

その2段階の仕上げといいますか、締めが今回の衆議院選挙であったと思います。それも皆さん方に結果を出していただきました。もうワンステップ、来年の参議院選挙で参議院ももう少し議席数を増やして、衆参両院で賛成多数で政権が運営していけるような体制を作ることが「ストップ・ザ・格差社会キャンペーン」の仕上げではないかと思います。もちろん非正規雇用の問題、あるいは社会保障のセーフティネットのほころびの繕い等々たくさんの課題がありますが、そのようなことも意識してもう一段階ステップを前に進めたいと思っています。


◆日本経済の現状と来春季生活闘争の展望

今、西原議長から春季生活闘争の話があり、来年の議論について少しふれられましたが、連合全体でまだその議論は、まさにこれから進めていかなければならない状況です。それから、私のような立場が来年のことはあまり言わないほうがいいのではないかということもあろうかと思います。あまり申しませんが、分配という意味での日本の労働者の置かれている状況、あるいはディーセント・ワークやワークライフバランスという観点から見た時の、われわれの仕事の仕方と毎日の生活の在りよう、そのような観点からもわれわれはたくさんの課題を抱えていると思います。

このような課題をひとつでも前に進めていくために、JCの皆さんにはその運動の先頭に立っていただく、そのような大変な役割を担っていただかなければならないということに変わりは無いと思います。どうぞ来年の生活闘争につきましても、いろいろご検討をいただいた上で、日本の牽引役をぜひ来年も続けていただきたいということだけお願いしたいと思います。

世界経済、アメリカのサブプライムローンなどでまだまだ大きな課題を抱えた状態が続いています。当時、日本はそのような大きい影響を受けないのではないかと話もありましたが、いざ具体的に動いてまいりますと、日本が受けたダメージは非常に大きなものであったということです。それは当然です。経済の海外依存度が日本ほど高い国は無いと言ってもいいぐらい、海外との密接な関係を持っているのが日本の経済の実態です。

その相手先が皆辛くなるのですから、その影響が日本に帰ってこないわけがないということで、大きなダメージを受け、皆さん方の金属産業におきましても、今回非常にスピーディに在庫調整あるいは生産計画の先延ばし等々の措置が取られています。また、雇用の関係にもいろいろな対策が導入されたのです。

そのようなことで、これは何とか一日も早く経済が良い方向へいくことが大切です。しかし、従来の不景気と同じように不況なれば一層のドライブをかけて景気回復して行くのだというパターンだけでいいのか、そのようなパターンで今回も動くとすれば、日本の経済構造という意味での脆弱性が一向に解決されないというジレンマにわれわれは逢着するのです。大変険しい道かもしれませんが、いろいろな方策を検討していかなければならないのではないかと思うのです。

◆G20サミットでの主要課題は雇用問題

このような社会の状況を含め、9月24-25日とアメリカのピッツバーグで第3回目のG20のサミットが予定されています。そのサミットで単に金融問題だけでなく、世界各国での雇用問題が非常に大きな課題になっています。6月にILO総会で決められました「グローバル・ジョブズ・パクト」という約束事も決められました。そのようなことを含めて、経済・金融そして雇用の問題等がこの場でいろいろ論議をされるだろうと思っています。

この会議に先立ちまして、9月23、24日に同じピッツバーグでG20の労働組合会議もやるので連合にも出てくるようにという召集を受けています。そこでいろいろ労働組合としてもG20サミットの議題といいますか協議が予定されている事項につきまして考え方をまとめ、それを各国の代表に事前に、あるいは現地で伝えようという役割を持って、私自身もピッツバーグに行ってこようと思っています。

その中でも大きなテーマになっているのが雇用問題です。われわれ日本の中でも非常に大きな課題となっています。ご承知のように総選挙の直前に最新の雇用統計が発表されました。失業率5.7%、これは統計が取られて最悪の数字です。有効求人倍率0.42、これは全国平均ですから、ひどい地域では0.2などという地域もたくさんあるのです。これも戦後最悪の状況です。このような雇用状況を、どのようにしたら改善をしていけるのか、まだまだ予断を許さない、私の勝手な個人的な予測を申しますと、この5.7という数字は6に行ってしまうのではないかという心配をしています。

現在、男性だけで見ますと6%、それから若い人たちの失業率は10%になろうとしています。この状況を放置するわけにはいかない。どのようにしたら失業問題を良い方向に向けていけるのか、それこそ正念場だという認識でやらないといけないのではないか。そのような意味では金属産業は日本の雇用の中に占める位置は大きなものがあります。どうぞ金属産業の立場で雇用問題、そして非正規問題についてもご議論を頂きたいと思うところです。

企業経営の在りようを巡ってもいろいろな議論があります。IMFの新会長になられたドイツ金属労組の会長、フーバーさんが、「昨今の企業の経営ガバナンスというのは、利益が上がった時は利益の私有化に非常に一生懸命で、ひとたび赤字になれば赤字の社会化、赤字を社会の責任で始末してくれという対応が目立つ。このような企業のガバナンスのあり方でいいのか。」ということを述べておられるのを私は何かの新聞で読んだことがあります。

そのようなことを含めまして、企業のあり方、存在の仕方がどうあるべきなのか、特にCSR(企業の社会的責任)という観点も含めて問われているという側面もあるのではないかと思っています。

取り留めない話になってしまいましたが、国際活動はますます重要です。インドネシア東芝の件も、電機連合、あるいはJCの皆さんの努力で良い方向に行くことができました。大変ありがたく思っています。世界的な課題の中で日本はどのようなポジションを得ながら多くを考えていくのか、地球環境問題等にも取り組んでいく必要もあろうかと思います。

多くを申しませんが、このようないろいろな切り口で見た私どもの運動のあり方を一緒になって模索し、すばらしい日本の勤労社会を作りたいという思いでいっぱいです。

この第48回のJCの皆さんの定期大会が、白熱したご議論の下で一層の運動の発展のための大きなステップになりますことを心から念じながら、冒頭の来賓というかたちでのご挨拶にさせていただきます。どうぞ皆さんよろしくお願いします。ありがとうございました。(拍手)