第38回JC上級コースフォローアップ研修会

半年間の活動報告と新たな課題の討議でフォローアップ
終了後全員で記念撮影
第38回労働リーダーシップ上級コースのフォローアップ研修会が、2005年5月13日(金)13:30から14日(土)11:00まで、東京・町田市にある「セミナープラザすずかけ台」で開催された。同研修会には、第38回上級コース修了生8名が、ゼミ担当講師でもある運営委員の3名の先生方と共に参加、コース終了後半年間の各人の課題解決に向けた実践の活動報告と新たな課題について、ゼミ討議、活動報告、全体討議を通じて、フォローアップを行った。
1日目:2005年5月13日(金)
【開会式】
●主催者代表挨拶
若松事務局次長が挨拶

開会式では、主催者を代表してJC本部の若松英幸事務局次長が挨拶し、まず上級コース半年後のフォローアップ研修会に修了生全員が元気に参加できたことを喜ぶと共に、この激動の半年間の世界、日本におけるできごとを振り返り、今回のフォローアップ研修会の目的について「半年前の上級コースで、ゼミでのディスカッションを中心に、各人が考えた職場や組合における課題についての解決策について、この半年間、各人がどのように実践してきたのか、実際にやってみた中で、出てきた新たな問題や経験についてみんなで振り返ると共に、新たな課題などについてもざっくばらんに意見交換、経験交流をして、これからの各人の活動の参考にしていってほしい」と述べた。




●運営委員挨拶
大平浩二・運営委員長 神田 良・運営委員 石井康彦・運営委員
◆大平浩二・運営委員長
(明治学院大学教授)
「各人のこの半年間の経験交流について振り返り、忌憚のない意見交換をしてほしい。この振り返りの機会を大切に有意義なものにしてほしい」
◆神田 良・運営委員
(明治学院大学教授)
「半年後の研修は非常に効果があると言われている。仮設を立てる→半年間の実践→そしてフォローアップ研修というのがいいリズムと言われているので、是非有意義な研修にしてほしい」
◆石井康彦・運営委員
(高千穂大学助教授)
「Plan→Do→Checkが重要である。是非この一泊のフォローアップの機会を有意義に活用してほしい」
【ゼミ別討議】
この後、13時45分から16時半まで、二つに分かれてゼミ別討議を行った。 ゼミ別討議では、各人が上級コースでまとめた課題解決案に基づいて、この半年間の活動について報告しあい、その課程で出てきた新たな課題や問題点などについてゼミ別に意見や経験を述べ合った。


【活動報告】
つづいて、全員で「自分の課題解決案とその後の対応」について活動報告を行った。最後に3人の講師先生からコメントをいただき、1日目の研修を終えた。
受講生氏名・組合名 課題テーマ
大森隆正 日本発条労組 「従業員の活性化への道筋」
伊藤太郎 フジクラ労組 「新賃金体系への改善」
宮健一 電機連合 「電機連合・職業アカデミー構想に関する考察」
菊川英児 日野自動車労組 「少子高齢化時代の働き方の改善」
堀井説也 三菱電機労組神戸支部 「電子コミュニケーションの改善」
福本 薫 三菱重工労組工機支部 「労組執行部と機関要員のあり方」
山本義臣 三菱重工労組下船支部 「組合員数減少に係わる対策」
江川裕輔 ヤマハ発動機労組 「組織の活性化に向けて」

●運営委員からのコメント
講師コメントの概要は以下の通り。
◆大平浩二運営委員長
 「個々の課題を把握した上で、後はそれをどう解決するのか、方法・手段が重要である。その場合、発想の転換が必要である」





◆神田 良運営委員
 「修了生の活動報告を通じて大きく二つの流れが浮き彫りになったと思う。一つは、キャリア開発や評価制度、賃金制度などの面で、会社からすると、コアでない人間(女性、中高年労働者、非正規労働者)をどうするのか、落ちこぼれた人間(キャリアアップできない組合員、会社にとってリストラ対象となる組合員)をどうケアするのかが、労働組合の役割として重要になってきている。例えば、キャリア開発を考えるにしても、労働組合の視点をきちんと持って、組合としてそれらの弱い立場の組合員をどうキャリアアップさせていくか、雇用のセーフティーネットとしてのキャリア開発を考えていく必要がある。会社側と同じ発想では意味がない。昔は、会社側と組合側とで矛盾していた課題が、今は共通化してきている。今までは、良い会社とは、一律に賃金・労働条件が良いのが良い会社の定義であったが、現在は違ってきている。女性、中高年労働者を上手に活用している会社とか、保育所を完備しており女性が働きやすい会社とか、有給休暇をきちんと取得できる会社とか、環境など社会的責任を果たしている会社などが、良い会社と言われるようになってきた。
 労働組合としても組合員からの情報の集め方など転換すべき過渡期に来ている感じがする。組合の機能とは何か、再定義する時に来ている。組合費を払っている意義は何なのか。組合員が労働組合に求めてるものは何か。顧客である労働組合員のニーズを知ることが大切。顧客自身がまだ感じていない本当のニーズを組合として抽出してそれを実現することこそが、真の顧客満足、組合員満足と言える。労働組合として、やらなくてもいいことはやらないという、大胆な発想転換が必要である。会社の役割と労働組合の役割をもう一度再定義する必要がある。
◆石井康彦・運営委員
「組合として取り組んでいるのは、組合員と経営者の間に入って相互理解を確立する。お互いに理解しあえるよう相互理解の役割を果たしていると言える。アダム・スミスは『自由経済は、市場に従って動けばよい』と述べている。自由市場が機能する条件として、法律が必要であり、道徳規範(倫理観)が必要である。労働組合の役割は、何でも頂戴というのではなく、社会規範(道徳規範)を基盤とした役割が求められている。労働組合として、社会正義の実践、弱者を守る活動が大事である」


半年ぶりに集いあった修了生 再会を祝して乾杯ー夕食交流会
半年ぶりに集いあった修了生 再会を祝して乾杯ー夕食交流会


晩には、運営委員の先生方も交えて修了生全員で夕食交流会を行い、さらに交流を深めた。


2日目:2005年5月14日(土)9:00〜11:00
2日目午前中は、大森副学生長を座長に、「課題解決へのフォローアップ対応と新たな課題」をテーマに全体討議を行った。全体討議では、現在やっている「労働組合活動の中で不必要な活動は何か?」労働組合の活動のスクラップ・アンド・ビルド、労働組合活動の優先順位などについて全員で討議した。

●運営委員(ゼミ講師)コメント
神田 良・明治学院大学教授:
組合幹部は非常に忙しすぎる。限りある時間と金の中で何を削るべきか。その場合に2点ある。@単体を見ていく場合、形骸化していないか?本来の目的を達しているか見ていく。
A相対的に優先順位をつける。多くのものは、目的は一つではない。副次的なものを含め、目的が複合化している。効果にしても、短期的効果、中期的効果、長期的効果がある。全体概観を意図的につくり、見る必要がある。
一つの行事や活動を削る場合、全てを止めた場合にどうするか?開催頻度をどうするか?多目的化・複合化できないか?効率的な会議の持ち方についても考える必要がある。転化することも必要。他のところに一任するとか、独自でやらずにどこかと連携してやるとか考える必要がある。
削減のための項目を上げる。組合員のためと言って要望があるものは何でもやるというのもおかしい。例えば、子どもが「これがほしい」と言ったからといって、親が何でも与えるのはおかしい、のと同様に、組合員からの要望があるからと言って何でも与えるというのはおかしい。組合役員がその中で優先順位をつけ、取捨選択すべきことは当然である。
大平浩二・明治学院大学教授:
スクラップ・アンド・ビルドが大事だ。組合の活動について、0か1でなく、濃淡をつける、すなわち、優先順位をおよそつけることが大事だ。春闘、運動会、ボランティア活動などいろいろな組合サービスがあるが、やったら終わりというのではなく、フォローアップ、継続的なイベントを企画していくことが大切だと思う。
 次に、一般的な組合員の意識と、組合役員の意識の違いがあると思う。この意識の格差是正が必要である。
 組合のあり方の変化がベースとしてあると思う。労働組合のコアについて、新しい組合像の再構築、組合理念の再構築が今こそ必要である。
 上級コースのカリキュラムでも検討しあう機会を設ける必要がある。  
石井康彦・高千穂大学助教授:
今の世代は、労働組合第三世代であり、知らない内に賃金をはじめいろいろなことを獲得していた、恵まれた世代と言える。第一世代の場合は、変えなくてはいけない状況があったが今は違う。現在、よそのケースや、過去のケースをもう一度検証した上で、やるべき何かをイメージ的に合意することができれば、組合の存在意義はあるのかも知れない。
 ユニオンショップ制も官僚化している。組合として、今、明確なポリシーを持たないと運動のための運動からの脱却が難しい。組合員に労働組合の必要性を理解させるためには、イメージ的に提示する必要がある。  
若松英幸事務局次長:謙虚さと向上心、そして初心を忘れずに、組合活動においては、透明性の確保、継続性を大事にしながら、頑張ってほしい。