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民主党の動向と連合の対応
最初に、民主党の動向と連合の対応の問題について、基本的なスタンスだけ申し上げておきたい。9月の民主党の代表選のときに連合としてどうするのかという話は、全くノーコミット、ノーコメントにするということで貫かせてもらいました。人事問題等を含めて、それ以降も具体的な党への我々の言及というのは一切してこないで今日まで来ているわけです。そして、今回の新党、あるいは政党の結集に向けて、そして民主党の代表役員をめぐる今回の一連の動きについて、事務局長とも相談をしまして、全くのノータッチでいくということを基本的な対応にしてあります。したがって、政党間の問題、そして政党内部の問題については今回連合は言及もしなければ、いろいろなアクセスもしないということについてぜひご理解をいただいておきたいと思います。
ただ、1月18日に民主党大会が予定をされており、当然、12月13日の会期末をもって民主党の執行部が全員辞任をするという形になるはずですので、それ以降、どういう対応の中で民主党の人事が組閣をされ、そして連合にどのようなアクセスがされるのか、その対応を見た上で私どもとしては組織にいろいろな相談をさせていただきたいと思います。
2003春季生活闘争の闘い方
主題の中では2つ申し上げさせていただきたい。まず1つは、春季生活闘争2003の闘い方の問題です。今、鈴木議長のお話を伺っており、経済情勢、あるいは我々をめぐる環境については全く共通認識だと思います。その中で皆さん方にも何回もご参加をいただきまして、連合としての2003春季生活闘争方針については、最終的に11月の中央委員会で確認をさせていただいたわけです。基本的な考え方は4つあります。
1つは、全組合が賃金カーブ維持分の確保に努力をしてほしい。これについてはいろいろな状況がありますけれども、経済闘争を連合は放棄をするわけではありませんし、労働条件のアップ、生活向上についての労働組合としての役割をこれまた捨て去るわけにはいかない。そして、全体的な中では、今までの経済との整合性を含めて賃金の占める役割というのは既に四十数年にわたって確認をしてきたわけですから、その中でいろいろな状況の中でプラスアルファという昨年の表記から、今年度はベアという表記すら全く消し去った連合の方針にはなっておりますけれども、少なくとも全体的な賃金の底上げを図るという確認の中で、これはすべての組合が賃金カーブ維持分については全力で確保していただきたい、これがまず1つ目であります。
そして、その上でベアをとりにいくところ、これは先ほどの鈴木議長のお話にもありましたが、企業業績、そして状況の許すところについては敢然とベースアップに挑戦をしていただきたい。そして、その上でベアを闘い抜くという組織については、これは全体の支援の中で共通理解を超えて孤立をさせないという闘いについてもぜひ配慮をしていただければと思います。
2つ目は、雇用労働者全体に対して連合はメッセージを発信するということを去年の運動方針の中で確認をさせていただきました。その上で今年の2002春季生活闘争の中では、パート労働者の賃金の部分について初めて言及をし、取り組みをさせていただいた。2003年度の場合には、これをもう一つ進めてパートをはじめとする非典型労働者の労働条件について、協約も含めて勝ち取るという我々の運動方針も確立させていただいたわけです。これについては、いかにパートや非典型の人たちに対する取り組みに焦点を当てて、我々の条件と同等の取り組みの姿勢と、そしてそれを経営側に認めさせるという交渉展開をお願い申し上げておきたい。
3つ目は、それこそ労働運動の21世紀の方向性を左右する取り組みになると思いますが、不払い残業の撲滅の問題についてであります。ご承知かと思いますが、私は9カ月かけて全国47都道府県を回ってきました。行った先では各行政や経営団体やいろいろな方々とお話をしましたが、すべての47都道府県で厚生労働省の各県の出先機関である労働局との対応もさせていただいた。
県の実情が数字を含めて我々に示された中で、一番労働局として労働側に声を大きくして指摘されたのが、基準法違反の調査をすると、組合のあるところのほうが多いということです。これについて我々は忸怩(じくじ)たるものを覚えざるを得ない。その上でサービス残業を含めて、今のこれからの労働時間と生き方、働き方の問題を考えたときに、この不払い残業の撲滅、賃金の支払われない部分については働かない。ノー・ペイ、ノー・ワークということを徹底的に追求をし、そしてそれを企業に認めさせて、我々の働き方、生き方を変えるという展開の中にこの運動を大きな位置取りとして位置づけさせていきたい。
4つ目は、男女共同参画社会を当然、労働側の立場としてもつくり上げていかなければなりません。今までの働き方の中で不足をしていた部分、協約の中で足らざる部分、言ってみれば、これからの短時間労働に対する契約をどうするのか。育児、介護、社会的な問題についてどういうルール、システムをつくり上げるのか。これについても2003年春季生活闘争の中の大きな課題として取り上げていただければと思います。
5つ目は、全体をカバーする立場の中から鈴木議長も触れられましたが、中小、地場産業も含めたすべての働く人たちに対する指針、基準としてミニマムの設定もさせていただいたわけで、これは最低、これ以下では働かせないという、そういう思いの中からそれぞれの産業別、企業別の中にこの取り組みの徹底もお願いしたい。
最後の5つ目は、闘いの組み立て方、パターン設定の仕方については、ベアを基準にしながら闘いを仕組んできたという今までのパターンから大きく変わっていかなければならない中で、全体的な底上げを図っていくためにどういうような組み立て方をしたらいいのか。これについては年が明けた段階で連合としての相談をさせていただき、各構成機関にお願いを申し上げたいと思っています。
部門別の取り組みの全国展開について全地方連合へ指示
JCの皆さん方には、当然、今までの約50年にわたる春季生活闘争の中で果たされてきた役割があるわけです。そのことを踏まえてJCのほうから連合に対してJC共闘の部門別の取り組みについて全国展開をさせてほしいという要請が来ました。連合としては事務局長を中心にそのことを受けとめて、今週中に全地方連合に対して金属部門の県での部門別連絡会の設置について指示をさせていただきたいと思っています。これはこれからの新たなる取り組みの中で企業別、産業別中心の中から部門別がどういうふうに産業のエリアをまとめながら全体的な底上げ水準を図っていくという役割を負っていくのか、部門別強化は連合結成以来の課題になっているわけでありますので、この問題についての取り組みは連合としても大きな役割を果たしていきたいと申し上げておきたいと思います。
雇用問題への対応
課題の2つ目は、雇用問題についてです。10月末の失業率について5.5%、362万人という数字が発表されました。昨年以来、最高値の数字がまた示されたわけですが、5.4という高値の数字に、350万人を大きく超える失業者の数に、我々自身も麻痺をしてきた。しかし、この5.5%という数字は、言いかえれば、雇用に対する地獄の釜の蓋(ふた)が開いたという危機感を覚えざるを得ない。
今朝ほどもある機関の朝食勉強会で経済のシンクタンクの方から言われた数字は、不良債権処理を今の形でやっていった場合に、160万人の失業者が増えるという数字が示されました。今の数字に160万がプラスされた場合、500万人を超える失業者という形になるわけです。現在でも362万人という数字は1日1万人、1分間で70人という失業者が出ているという累積計算になるわけで、これ以上の失業をほんとうに許していいのかどうか。最近のマスコミ論調では、「これだけ失業率が悪化をし、雇用状況が危機的状況を迎えているのに、なぜか日本の労働組合はおとなしい」という論評を加えられました。
全国を回ってきて、地場産業の方々や労使を含めて何が寄せられたかといえば、景気の回復はもちろんだけれども、まず最初にやってもらわなければいけないのは雇用の改善であり、ナショナルセンター連合の役割として、ほんとうに取り組んでほしいという声が寄せられてきているわけです。永田町の人たちに会い、そして霞が関の人たちに会い、そして丸の内かいわいの人たちといろいろな話をしますけれども、雇用問題は深刻だと一様に言いますが、では、どこに困窮した人がいるのというのが、その次についてくるのです。 しかし、現実に我々の周りでどうかと言えば、もう生活破綻をしている人たちがたくさんいるわけで、雇用問題、失業問題というのは、働く人たちの連帯の助け合いがどのように示されるか、そのことによって社会連帯がどういうふうに維持されるかということのバロメーターにもなる。
私は10月の中央委員会で、後半の連合活動は雇用問題解決に運動を一本に特化をするということを宣言させてもらいました。それ以降、数字が動き始めた今、ちょうどタイミングがそこに合ってきたわけでありますけれども、11月26日に小泉総理のほうから政・労・使、官房長官、経産大臣、厚生労働大臣、そして日本経団連の奥田会長と私が呼ばれて、雇用問題に対して政府、労使を挙げて一致協力した解決策をぜひ早急に提示をしてほしい、との要請を受けました。
戦後の55年間、そして21世紀に入った2年間、戦後の57年間の中で時の総理が政・労・使のそれぞれの責任者に対して一致協力して事の解決に当たれというのは、今までの歴史にない。小泉総理はみずからが「画期的なことだと思いますが」という言葉をつけた。これは経済問題や雇用問題にあまりそういうことが念頭にないのではないかと思っていますし、具体的な中身は確かに示されておりませんが、このことの重大性の中で日本の政・労・使が挙げて雇用問題を解決してほしいという総理のこの要請に対しては、連合としても重く受けとめた対応をしていこう。過日、三役会議でもそのことについては理解をいただきました。
その後に雇用対策会議が開催され、連合としては草野事務局長を中心に本日まで内容的な詰めも行ってきました。明日8時から雇用対策会議を開催し、そのことで政・労・使の意見一致ができれば、総理にその考え方に基づく予算の裏付けも含めた政府の対応と経営側の対応と労働側の対応も具体的に示していただくことになっていくと思います。
私どもはそのときに、これも前々から申し上げておりますが、ほんとうの痛みの分かち合いになるかどうかということを労働側も求められるわけです。それぞれの立場で政府、経営、労働がなさなければならないことの原点に戻り、そしてその役割を果たすために提供できるもの、協力し合えるものを整理し合うということが今回の政労使雇用対策会議の中で具体的に項目として、予算として、対応策として打ち出されなければならないだろう。
そして、さらにその展開に対しては、雇用対策会議の中でさらにまた政・労・使が協議をして新しい項目をどんどん出していくということをしていかないと、増え続けるであろう。決して今の状況では減らない失業、雇用問題についての打開策は、これは示し得ないということになる。労働側もその責務を負う中での役割を果たしていく。ぜひこのことについてご理解をいただいておきたいと思います。
雇用保険の問題に対して
鈴木議長が挨拶で触れられた中で2つだけ、これは予定を超えてプラスをしたいと思いますが、1つは雇用保険の問題です。0.8、1.2、1.4、1.6にしようという数字が今出されておりますが、2年間で急速なアップです。これは想定景気雇用を見間違えた、経済指標を見間違えたという行政側の責任でもありますが、当然、このことについては鈴木議長も言われたように、働く仲間の助け合いとして我々も雇用保険の問題について全く嫌だということについての気持ちではない。このことは中央委員会でも申し上げました。
しかしながら、今の政府の考えている施策の内容は、働く側だけにこの痛みを押しつけようということで、労使に対する負担のみが押しつけられる内容になっているわけです。では、政府がそのことに対してどういう分かち合いをするのかということが示された上で我々の基本的な考え方がどうだということを出していくというのが、これは労働側として求めていけない話ではないわけです。
したがって、安易な給付の引き下げと安易な保険料率のアップについては、明日の雇用対策会議でも連合としては反対だということを表明させていただきたい。その上で全体的な予算、そして一般会計のみならず、特別会計も含めた中でどういうふうな配分をするのか。これは国民負担率と国民負担の問題と国民給付の問題を相対的なバランスの中でどう整理をするかということに私は問題を持っていくべきではないかと思っています。
公務員の雇用保険の問題に対して
2つ目は、公務員の雇用保険の問題についても鈴木議長が言及されました。公務員については、ILOに2月に提訴をし、11月にILOが公務員の労働基本権の問題について勧告を出しました。労働基本権問題については、働く人は当然労働基本権が保障されていなければならない内容であるにもかかわらず、人勧制度の中でそのことがネグられてきた。しかし、今回、連合が公務員労働者と一緒にILOに提訴していった中では、この労働基本権問題は当然、民間の労働条件や民間の働く人たちが国の政策の中で果たしている役割についても均等の対応をしてもらわなければいけないということも、そのコインの裏表の中にはあるわけです。
国家公務員110万人、地方公務員330万人、合わせて440万人の公務員の人たちが雇用保険の問題についてどういう対応をしていくのか。これについては、現在、労働基本権を取りに行くことを確定をさせるために、そうなった場合にどうするかというのは、今、公務員共闘の中で連合も入って相談をしている内容だということだけ申し上げさせていただきたいと思います。
いずれにしても、今の状況は極めて厳しいという言葉を超える、使えないほどの内容になっているわけで、ここから先の経済指標は当面よくなる見通しは全く立たないというのが実態的な数字だろうと思います。その中で我々が働く人たち、もっと言えば、未組織や全労働者のために影響力、波及力を展開させるための最大の牽引役が、JCの皆さん方に課せられていることも間違いないわけでありまして、連合としても全力を尽くしますが、JCの皆さん方の健闘と一層のそれぞれの企業内での厳しい交渉展開に努力をしていただくことを最後にお願い申し上げまして連合としてのごあいさつにいたします。
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