新着情報(アジア金属労組連絡会議)

第4回アジア金属労組連絡会議(2011年6月23~24日)

2011年06月24日

3GUF統合など喫緊の課題を 地域で議論、意識を共有化

2011年6月23、24日の両日、韓国・ソウルの三井ホテルにおいて、IMF-JC主催による第4回アジア金属労組会議を開催した。今回は、韓国のIMF加盟2組織であるFKMTU(韓国金属労連)とKMWU(韓国金属労組)の受け入れ・協力のもとで開催した。

会議には、IMF-JCから西原議長をはじめ、産別代表など14名、アジア太平洋地域の12カ国からIMF加盟組織18組織の代表44名余が出席した。IMF本部からもフェルナンド・ロペス書記次長、アレックス・イワノフ広報担当部長の2名が、IMF南アジア地域事務所からはスダルジャン・ラオ・サルデ代表らが参加した。

会議では、目下の最大課題である3GUF統合についてIMF執行委員立場で、西原IMF-JC議長が基調報告を行い、これまでの論議経過と今後の方向性を含め3GUF統合についての全体像をわかりやすく説明し、全体論議を行い、本年12月ジャカルタでの3GUF統合について確認するIMF中央委員会に向けて、アジア太平洋地域としての課題について認識の共有化を図った。2日目は午前に「多国籍企業の労組ネットワーク構築」について、IMF-JCおよび自動車総連から事例報告を行った後、全体議論を行った。午後には「組織化」について、パネル討論を通じて、アジア太平洋地域における取り組み課題について、情報交換と経験交流、問題意識の共有化を行った。

会議は野木正弘IMF-JC事務局次長(国際局長)の司会のもとスタートした。

開会式

主催者挨拶:西原浩一郎IMF-JC議長

第4回アジア金属労組連絡会議を、韓国・ソウルの地で韓国金属労組2組織の合同の受け入れで開催できたことに、感謝申し上げたい。また、東日本大震災に際しては、IMF本部をはじめ、アジア・太平洋地域のIMFの仲間の皆様から多くの励ましのメッセージと多大な真心の義援金をいただいたことに心から感謝申し上げたい。 今回の会議では、3GUF統合問題、TNCネットワークづくり、組織化の3つのテーマについて論議する。特に本日は、3GUF統合問題について、率直な意見交換を行い、アジア太平洋地域として、何らかの方向性、課題を明確にしたい。参加者皆様の積極的なご協力をお願いしたい。

受け入れ組織代表挨拶:パクKMWU委員長

現在の労働組合にとっての最大の問題は、国際的投資の統制の問題である。現在、ハンジン重工業において6カ月にわたりストを行っている。ハンジン重工業の資本側は、フィリピン・ツービックに造船工場を新たに建設し、韓国造船の仕事をそちらに回して、ハンジン重工業の労働者170人を強制的にリストラしようとしたことに対抗し、工場の中に籠城してストを続けている。この会議で是非この問題についてアジア太平洋のIMFの仲間からの連帯をいただきたい。

受け入れ組織代表挨拶:ジョン・イルジンFKMTU副委員長

IMF活動もヨーロッパ中心からアジアにシフトしつつある。そういう意味でこのアジア金属労組連絡会議はとても重要である。3GUF組織統合問題については、韓国においても、2003年に製造業産別の統一が完成する寸前で失敗した経緯がある。現在、韓国では非正規労働者が増加し、1500万人の労働者の内、880万人が非正規職である。政策制度としては、不法派遣・不当請負のガイドラインを作成しているところである。李明博政権は4年目に入ったが、政治的に混乱の時代に入っている。20対80の正規・非正規の格差問題、中小・大手の2極化問題は、社会に不安感を与えており、政府のきちんとした対応が必要である。

来賓挨拶:フェルナンド・ロペス

IMF書記次長 日本は、3月に大震災を受けたのにもかかわらず、今回もこの第4回アジア金属労組連絡会議を開催された。アジアにおける責任と役割を厳然と果たそうとするIMF-JCの姿勢に深く感謝申し上げたい。今回の会議では、議題として3つの重要なテーマを掲げている。一つは、来年にも実現の予定である3GUF統合の問題、2つ目は、TCNネットワークづくり。多国籍企業の経営側のネットワークに対抗する労働組合のネットワークは重要である。3つ目は、組織化の問題。このアジア・太平洋地域の組織化は非常に遅れているのが現状である。今後、全ての労働者を組織化することが労働組合の使命であり、協力・連携しながら進めていきたい。この会議の成功を祈りたい。

議題1.「3GUF統合について」

基調報告「3GUF統合について」西原浩一郎IMF執行委員(IMF-JC議長)

冒頭、西原議長から、IMF執行委員の立場で、これまでの3GUF統合の合同タスクフォース会議、IMF執行委員会、IMFアジア・太平洋地域会議での議論経過、および今後の方向性など3GUF統合問題の全体像について、執行委員等役員数、財政、加盟費、資産利用・処分、地域組織機構などの具体的課題についてパワーポイントを使ってわかりやすく説明した。その内容について、IMF本部のロペス書記次長とオーストラリア代表から補足説明がなされた。  その後、各国組織が3GUF統合によって受ける影響と課題について、日本(若松IMF-JC事務局長)、オーストラリア、インドネシア、韓国2組織、および東南アジア事務所より報告を受けた。

全体討議

野木次長のコーディネートの下、全体討議に入った。冒頭、西原議長から以下の通り3点にわたって追加の課題提起がなされた。①「この3GUF統合の背景は欧州からのトップダウンの傾向jがある。欧米以外ではこの3GUF統合については寿運議論されていない。今回のアジア・太平洋地域での議論内容をできるだけ多くIMF本部に伝えていきたい」。②「それぞれ異なる文化・歴史・状況・課題が異なる多様性のあるアジア・太平洋地域で、3GUF統合問題について新しい理念に落とし込んでいきたい」。③「3GUF統合についてそれぞれの組織で日々のチャレンジの中での試行錯誤しながら、前向きの取り組みが必要である」

各国参加者からは、3GUF統合にあたって、国内の関係組織が多すぎることや、その間の連携が全くとれていないことの問題点や不安、IMF以外の2GUFの活動が全く見えていないことに対する不安や懸念、3GUF統合後のIMFで行っている活動が継続されるのかどうか。人事や地域機構はどうなるのかといった質問、まだ多くの問題が残っている統合スケジュールの問題、執行委員の地域配分の問題などについて懸念する意見が多数だされた。

これに対し、西原IMF-JC議長、ロペスIMF書記次長、野木IMF-JC事務局次長から現時点での考え方について適宜回答した。その後、議論の総括として、西原議長が「本年12月のIMF中央委員会に向けて、アジア・太平洋地域での3GUF統合に関わる期待や課題を共有化することができた。その意味で今会議は非常に有意義なものになった」②「問題は各組織がこの3GUF統合をどういうスタンスで取り組むかである。リスクととらえるか、チャンスととらえるかである。リスクをチャンスととらえ、今回の議論をキックkオフとして、各国組織が国内で十分論議し、12月の中央委員会に臨んでほしい」③「新GUF結成大会までに全ての課題をクリアすることはできないかもしれないが、4年間の移行期間も含めて課題をみんなで論議しながらくりあしていきたい」とコメントした。最後に、小島正剛IMF-JC顧問から、3GUF統合問題についてキーワードとして①「透明性のある議論」、②「皆で統合議論に参加」、③「社会的拮抗性のある新しいスーパーGUF」の3つを挙げた。

2日目

議題2.「多国籍企業の労組ネットワークの構築について」

「基調報告」と「各国報告」

2日目午前、議題2「多国籍企業の労組ネットワークの構築」では、冒頭野木IMF-JC事務局次長が、TNCネットワーク作業部会委員の立場も含めて、IMF-JC及びIMF本部の進めている「多国籍企業の労組ネットワーク構築」について基調報告を行った。IMF本部のコメントは、ロペス書記次長が国会でのハンジン重工業労使紛争の記者会見のため欠席しているのでラオIMF南アジア事務所代表が代わりにコメントし、「何か起きたからするとか、困った時のネットワークだだけではいけない。日常的に、定期的に情報の共有が必要。情報を共有するだけでなく、きちんとした関係の構築が大事。年に1回このようなアジア・太平洋地域の定期会議を行い、後は日常、Eメールなどで情報交換し関係を作っておくことが重要である」とコメントした。その後、各国報告として、日本(市ノ渡自動車総連国際局長)、フィリピン2組織、韓国、タイ、オーストラリアより現状の取り組みと課題について報告がなされた。

この後、全体討議が行われ、各国参加者からは、日本報告に対して「日本のTNCネットワーク構築に向けての今後の進め方」についての質問や、「多国籍企業の労組ネットワークも確かに必要であるが、その前に今回の会議の参加者レベルでの日常的な地域ネットワークづくりが必要ではないか」「IMFがIFAの締結に関与することを通じて、労働条件の向上にも関与できないか」などの意見が出された。全体討議の最後に西原議長が総括として、①「この問題においても、考え方や背景は、多国籍企業ごと、国ごとに考え方はかなり違うので、まずは現地の組合が強い力を持ち、責任を持って問題解決に努めるでき」②「しかしながら、このようなネットワークの取り組みなどを通じて、現地労組の求めに応じて、適切なサポートをIMF本部も、本国親労組も行っていく」等とコメントした。

議題3.「組織化について」

「組織化」についてのパネルディスカッション

議題3「組織化」については、冒頭、事例報告として、インドネシアと韓国(KMWU)から「組織化」についての報告がなされた。その後、パネルティすかっションに移り、野木JC事務局次長のコーディネータの下、議論を進めた。パネリストのオーストラリア、インド、インドネシア、ロペスIMF書記次長から各国の組織化の取り組み課題について報告がなされた。契約社員や社内請負労働者など非正規労働者が増加していること、それにつれて組合組織率が低下していることがアジア太平洋地域の金属労組で共通していることが改めて浮き彫りになった。パネル討論では、「組織化は労組の生命。韓国の場合、組織率が10%しかないということは、反対にそれだけ拡大のチャンスがあるということだ。全国労組と協力しながら組織化を進めてほしい。IMFの仕事は組織化の援助をすることだ」(ロペスIMF書記次長)、「オーストラリアの組織率は18%。非正規労働者の組織化こそが最優先事項であることを確認し、組織化プロジェクトのために基金を作っている」(オーストラリア)、「デリーでは非正規労働者は正規の6~7倍いる。契約労働者など非正規の賃金は月5000ルピー(100ドル)以下。正規労働者の生活・権利を守るためにも、非正規の組織化が大事」(インド)等のコメントがパネリストから出された。その後フロアとの党議に移り、参加車からはそれぞれの国での組織化についての現状や課題についての意見交換がなされた。パネルディスカッションのまとめとして、ロペスIMF書記次長から、「何とか組合を魅力あるものとして、組織率を向上させ、労働者の権利を向上させていきたい。組織化は簡単なことではない。組織化の好事例や失敗事例など、より一層の情報の共有化が必要。IMFとしてもそうした事例を積極的に収集し、紹介していきたい。IMFとして契約労働者など非正規労働者の組織化を推進していきたい」と述べた。

小島JC顧問が2日目の総括コメントを行い、まず議題2「TNCネットワークづくり」については、「TNCネットワークづくり」はIMFの最重要活動であり、国際労働運動の本流である。今から40年前は強い組合が弱い組合を助けるのが国際労働運動と言っていたが、現在は慈善事業でなく、強い組合も弱い組合も対等であり、相互不可侵、相互信頼、相互連帯が国際労働運動の世界標準となっている。そういう時流の中で進める多国籍企業の労組ネットワークづくりは、あくまで手段であり、基本は、親組合も、海外の系列の組合も、共に対等であり、相互不可侵、相互信頼と相互連帯の精神を忘れないことが大切」とコメントした。議題3「組織化」については、「組織化は労組の生命線である。各国でディーセントワーク(働きがいのある労働)を確保していくことこそ労組の使命である。組合は社会保障が完備されている雇用を組合員に確保し、組合があって良かったと感謝されてきた。ところがリーマンショック以降、不安定な非正規労働者が増大。インフォーマルセクターの労働者、移民労働者がアジアに非常に多い。ILO8条約である中華的労働基準がアジア太平洋地域で守られていない状況を何としても改善しなければならない」等とコメントした。

「次回の会議について」

西原議長から、次回の会議開催について「通例ではこの会議の最後に次回の開催地とその内容について確認するところであるが、明年は新しいGUFが来年6月に結成されるので、次回のことについては議論の状況を見ながら提案していきたいのでここでは決めない。JCとして従来通りのスタンツでコミットしていきたい」との提案がなされ、確認された。

ロペスIMF書記次長は、「とても有意義な会議であったと感じている。主催されたIMF-JCに心から感謝申し上げたい。IMF本部としてもIMF加盟組織と連携しながら、より良い新GUF組織を作るように頑張りたい」と挨拶した。 最後に西原議長が、「全ての参加者に感謝。我らの将来に関わる重要な3つのテーマについて率直に話し合うことができた。雇用、労働条件など国民の安心をどう築いていくのかが労働組合の役割である。その意味で労働組合の役割は重要である。その中で、金属労組はそのトップランナーに立っている。開催受け入れ組織そして通訳の皆さんに感謝したい」と閉会の辞を述べ終了した。

第4回アジア金属労組連絡会に参加したアジア太平洋地域の金属労組の仲間たち(ソウル)