第19回「海外での建設的労使関係構築」国内労使セミナー開く
中核的労働基準遵守と中国事例などを研さん
11月9日、電機連合会館で、加盟産別労使など103名が参加
金属労協は、2016年11月9日午後、都内・電機連合会館で、第19回「海外での建設的な労使関係構築」国内労使セミナーを開催した。セミナーには、加盟産別労使99名(会社側23名)をはじめ友誼組織などから合計103名が参加した。
同セミナーは、年2回開催しており、主に中核的労働基準遵守の取り組み推進と、海外における建設的な労使関係構築に資することを目的に開催している。今回は、東京オリンピック、パラリンピックの開催が4年後に迫るなか、最近の国際的な動向について「国連指導原則」などについて紹介すると共に、企業の社会的責任に関する国際ルールなどについて解説してもらった。最後に国別の動向として、日本からの投資が一番多い中国について、特に労働組合や関連するNGOの動向について講演を受けた。
冒頭、主催者を代表して、相原金属労協議長が挨拶に立ち、「労働基本権を守るためのルールがいろいろな所で作られている。中核的労働基準は各国の批准の有無にかかわらず遵守すべき重要な原則だ。このセミナーにおいて東南アジア諸国をはじめ各国の労働事情を紹介しているのもこうした観点からの情報共有という側面がある。またJCMは年2回、インドネシアとタイで現地労使ワークショップを開催している」「海外での労使紛争は頻発している。紛争防止を目的とするのではなく、なぜそうした紛争が起きるのかという原因から探っていくが重要だ。労使関係がお互いの顔が見える関係になっているのかどうか、なぜ日本で出来ていることが出来ないのか、現地労組との関係が疎遠では無いなど、深く検討することが求められている。」「JCMは建設的な労使関係の必要性を提唱しており、また事が重大になる前の話し合いによる解決を強調している。」「2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、世界の視線がわが国に集まる。日本の働きかた、長時間労働、ジェンダーの進展、その他諸々の改善への格段の努力が求められてくる。労使にとり、生産性を高め、よりよい職場や雇用を作っていく必要がある。」等と述べた。
続いて、アジア経済研究所の佐藤寛氏から「持続可能なサプライチェーン構築のために日本の政労使に求められていること」をテーマに講演を受けた。佐藤氏は2015年国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)について、企業の果たすべき役割が大きくなっていることを指摘した。また、これからの経済成長はこれまでのような経営資源の使い方や働き方ではなく、ディーセントワークを担保するような成長が求められていることを強調した。
ついで日本ILO協議会企画委員の熊谷謙一氏からは「多国籍企業の社会的責任と国際ルール」と題して講演を受けた。この分野における日本の労使の取り組み経過について、社会貢献を中心としたコンプライアンスの段階では役割を果たしたが、2005年以降の進化するCSR(国際CSRへの合流)への対応は残念ながら十分ではなく、キャッチアップする必要があると指摘した。また国際的にも新たな方針提起がすすむなか、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた労使のCSRへの取り組みの重要性を課題提起した。
最後に明治大学の石井知章教授からは「最近の中国の労働事情」と題して、特に労働NGOの最近の動向について講演を受けた。教授は、総工会の現状は労組としての役割を果たしておらず、労使紛争のなかで活躍しているのはNGOになっていると指摘した。また頻繁な中国での現地調査を踏まえ、政府はNGOの活動を制限しようとしているが、外資系企業や中小企業で活動しているのは、労組ではなく労働NGOであると述べた。