ブラジル事例とISO26000学ぶ
IMF-JCは、第6回となる「海外労使紛争防止に関する労使セミナー」を2010年6月11日午後から東京一橋にある電機連合会館大会議室で開催した。同セミナーには、金属労協の加盟単組・企業の労使120名余が参加した。
冒頭、主催者を代表して金属労協の前田雅昭副議長(JC政策委員長、全電線中央執行委員長)が挨拶に立ち、「本セミナーは、2006年以降、年に2回、定期的に開催しており、過去5回の労使セミナーに、これまで延べ600名以上の労使の方に受講いただき、好評を得ている」と前置きした後、本セミナーの目的について、「日系企業の海外における労使紛争が増加している中で、『海外労使紛争の防止』に向けて日本の親会社の労使がどのような認識を持つべきか、あるいは、現地法人の健全かつ建設的な労使関係を構築しているために、どのような取り組み・手助けがでくるかを考えていく場としたい」と述べ、最後に、「今回のセミナーが各社労使の皆様の取り組みの一助となり、海外事業拠点における健全な労使関係の構築に邁進されることをお願い申し上げる」と結んだ。
講演1として「ブラジルの労務問題・労使紛争と対応」と題して、立命館大学経済学部の小池洋一教授から講演を受けた。国別事例として、これまで過去5回のセミナー参加者から要望の多かったブラジルの日系企業の労務問題や労使紛争の事例を取り上げた。講師には、こうした労務問題や労使紛争事例をまとめた日本在外企業協会の「海外派遣者ハンドブック」の編集にも携わってきた小池教授から話を聞いた。
続いて、講演2として、「ISO26000の動向と労使の対応」と題して、国際労働財団の熊谷謙一副事務局長から講演を受けた。ISO26000とは、「中核的労働基準」、すなわち、団結権・結社の自由、団体交渉権の保障、強制労働の不使用、児童労働の不使用、差別の撤廃を含む、「社会的責任」に関する国際ガイダンス規格の名称のことで、この「ISO26000」が2010年末までに成立が見込まれている。講師には、このISO26000規格の策定にあたり、日本側代表団委員の一人として、作業部会の共同議長として重要な役割を果たされてきた熊谷国際労働財団副事務長から、同規格発効後の企業・労組への影響も含めて解説してもらった。
続いて、本部報告として「海外労使紛争および紛争解決に関する事例集」の概要について松崎寛政策局主任が報告した。2010年7月に最終的なとりまとめを予定している「海外労使紛争および紛争解決・未然防止に関する事例・資料集」の概要を、実際の事例を交えながら、報告した。この事例集に関しては、これまでのセミナー・アンケートにて、労使の参加者から大変ご要望が多かったこと受けて、今回、初めて体系的に事例集としてとりまとめるものであり、活用が期待されている。
最後に、若松英幸IMF-JC事務局長が、「各産別・企連・単組におかれては、海外事業拠点における労働問題、労使関係について、状況の把握を行い、経営側との情報交換、情報の共有化を行い、徐々に日本の労使が連携していくための取り組みを、本セミナーを参考にしていただきながら、検討いただければありがたい」等とセミナーまとめを行い、閉会した。