広報ニュース

第46号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2016年1月)

インダストリオール、タイの自動車労働者の復職を要求

2016-01-29

 

1月にタイの労働省前で集会を開いたロックアウトされた労働者

1月にタイの労働省前で集会を開いたロックアウトされた労働者

タイでロックアウトされている600人以上の自動車労働者を復職させなければならない、とインダストリオールはタイ政府と日本企業三光合成株式会社への書簡で述べた。
  インダストリオールはタイ政府に対し、軍に監視されていると報告してきた労働組合員と活動家に対する威嚇の中止も要求している。
   新団体交渉協約をめぐる交渉が決裂したあと、労働者は2015年12月20日からロックアウトされており、賃金を支給されていない。タイの自動車部品メーカー三光合成テクノロジー(三光合成株式会社の子会社)は、代わりに契約労働者を低賃金で雇い入れた。
   タイの加盟組織TEAMを通してインダストリオールに加盟している三光合成労組は、ボーナス(0.6カ月)と賃上げ(1%)に関する使用者側の要求を飲むことに同意した。しかし、労働者はまだロックアウトされており、会社側は非妥協的である。
   ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は、「三光合成テクノロジーが直ちにロックアウトを終了し、労働者を復職させ、労働組合と誠実な交渉に入るよう要求する。組合は、とりわけボーナスと昇給に関する会社側の提案を受け入れることによって、この紛争の解決に助力する意思を明らかに示している。したがって私たちは、三光合成テクノロジーがそれに応じて行動し、交渉の場に戻り、調停プロセスによって有意義かつ公正に政府・組合と協議することを期待する」とコメントした。
   インダストリオール加盟組織JCMも日本の三光合成本社に接触、同社に対し、この事態において先導的な役割を担い、タイの三光合成テクノロジー紛争の友好的な解決を確保するよう求めた。
インダストリオールは2015年10月、タイ政府を労働組合権の侵害で国際労働機関に提訴した。
  「この紛争が満足できる形で直ちに解決しなければ、インダストリオール・グローバルユニオンは、三光合成テクノロジーの紛争を訴状に追加することを検討しなければならないでしょう」とライナ書記長は、労働大臣のシリチャイ・ディタクン大将への書簡で述べている。
   1月、ロックアウトされた労働者500人が労働省前で開いた集会を解散させるために、公共集会法が適用された。組合幹部は連行されたり、常に監視されたり、当局に何時間か携帯電話を押収されたりした。
   ユルキ・ライナ書記長が12月に労働省事務次官との会談で三光合成事件を取り上げ、事務次官が「政府はインダストリオールと同じく、労働者を保護しようという意思を持っている」と述べたことを考えれば、この事態の悪化は特に残念である。

 

韓国の労働組合員が事務所に立てこもり

2016-01-28

 

共戦を誓うリ・ヨンジュ(左)ケンペール書記次長(KCTU事務所で)

共戦を誓うリ・ヨンジュ(左)ケンペール書記次長(KCTU事務所で)

「 リ・ヨンジュは数週間、ソウルのKCTU労働組合事務所から出ていない。外に出れば、同僚のハン・サンギュン韓国民主労総(KCTU)委員長のように逮捕・投獄されると恐れているからだ。そこで彼女は事務所で生活しており、家族は彼女に会うために事務所まで来なければならない」と先週韓国・ソウルを訪問し、KCTU事務所でヨンジュに会ったインダストリオール・グローバルユニオンのモニカ・ケンペール書記次長は語った。ヨンジュの仲間の労働組合員も何人か事務所に立てこもっている。
 ケンペール書記次長は韓国へのインダストリオール連帯ミッション中に、獄中のハン・サンギュン委員長と面会した。サンギュン委員長は違法な集会を組織したかどで告発されており、刑法と集会・デモ関連法の8つの罪で起訴された。
 サンギュン委員長は、昨年11月14日に数千人がソウルの街頭でデモを繰り広げ、労働者を解雇しやすくする労働改革案に抗議したあと、警察に狙われた。
 集会後、サンギュン委員長は曹渓寺に避難したが、結局12月10日に警察に出頭した。
「ハン委員長は心を強く持ち続けている」と面会したケンペール書記次長は述べ、10分間の面会中にはスピーカーからは騒々しい音楽が流され、ほとんど話ができなかったことを説明した。「常に見張られていて、会話はすべて記録・録音された」と語った。
 KCTUは、サンギュン委員長に対する起訴に強く反論し、「警察・検察は共謀して、KCTUを暴徒の一群に仕立て上げようとしている。そのような悪意ある試みは成功しない。KCTUは我が国の労働者2,000万人の基本的生存権を守るためにこれからも政府と闘い続ける」と声明した。
 11月14日の集会を受けて、警察はKCTUとインダストリオール加盟組織・韓国金属労組(KMWU)の事務所に対する強制捜査も行い、コンピューターや文書を押収した。
 韓国では政府が取り締まりを強化する中で、少なくとも16人の労働組合員が拘留されており、400人以上が警察の取り調べを受けた。伝えられるところによれば、警察は合計1,000人以上の労働組合員を取り調べている。
 もう1つ不穏な動きがある。韓国の裁判所は1月、KCTU傘下の教員組合が解雇された労働者を擁護するのは違法との判決を下し、これによって組合の基本的役割が非合法化されたことである。
 

共戦を誓うリ・ヨンジュ(左)とケンペール書記長(KCTU事務所で)

共戦を誓うリ・ヨンジュ(左)とケンペール書記長(KCTU事務所で)

モニカ・ケンペール書記次長は韓国滞在中、1月23日土曜日にKCTUその他の労働組合がソウルで開催した5,000人の集会で演説し、「労働者を黙らせようとする当局による必死の試みはうまくいかない。韓国の勇敢な労働組合員はを政治的迫害に負けない。韓国政府は国民の声を聞いて、民主的な自由に対する抑圧をやめなければならない」と訴えた。

 

労働組合がダボスで社会的公正を要求

2016-01-27

ダボス会議でのパネル討論

ダボス会議でのパネル討論

 世界の組合指導者はダボスの世界経済フォーラムで政治指導者と企業経営者に対し、社会的公正に基づく社会を築き上げ、進行中の産業・エネルギー革命において労働者に配慮する必要があると主張した。
 ダボスで毎年開かれる世界経済フォーラム(WEF)は、素晴らしい特別な行事である。毎年1月、3,000人近くの政治指導者や企業経営者、市民社会代表が、鉄道やバス、あるいはヘリコプターでスイス東部の雪に覆われた高山の町に集まり、3日間にありとあらゆる問題をめぐって討議する。何百人ものコンサルタントが集まり、高価なサービスを売り込もうとする。
 エリートの会議であることは間違いないが、独特の雰囲気に包まれている。巨大な会議センターの廊下では、側近を引き連れた女王や皇太子、大臣、CEO、俳優たちに出くわす。その気になれば誰とでも話ができる。カフェで国連高官と話していたら、隣のテーブルでギリシャ首相とウクライナ大統領が会談を始めた。権力も金もすべてごく身近にある。
 世界の組合指導者が毎年恒例のWEFセッションに出席するようになってから、もう20年以上になる。これは正しい決定だったと思う。私たちが出席しなければ、これまで以上に失業が増えて不平等が悪化している中で旧態依然を維持することはできない、と政治家や経営者に訴える者がいない。
 労働組合はダボスで社会的公正を要求する存在であり、労働者の懸念を表明する。このような理由で、WEF創設者のクラウス・シュワブは20年前に組合指導者に出席を求めた。
 ダボスは、考えをまとめて主張に磨きをかける場所である。私は今回、製造業とグローバル・サプライチェーン、貿易・投資の未来に関する討議で発言した。
 インダストリー4.0が進展している。これは社会革命であると同時に技術革命でもある。製造業の変化に伴い、大掛かりな再訓練計画と新規雇用の創出に向けた積極的な労働市場政策が必要になるだろう。
 グローバル・サプライチェーン全体で多国籍企業の責任を強化しなければならない。企業の不正に関するITUCの最新報告書は、上位50社の多国籍企業が直接雇用している労働者が全体の6%にすぎないことを明らかにした。残りの94%、すなわち1億1,600万人の労働者は、多くの場合劣悪な労働条件で、サプライヤーや下請業者に雇われてこつこつ働いている。
2015年10月に環太平洋12カ国間の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が締結されたあと、欧州連合とアメリカが環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)をめぐって交渉しており、貿易協議が続いている。
 TPPの最も大きな問題の1つは、多国籍企業に主権国家を訴えて不可解な仲裁に持ち込む権利を与える投資保護メカニズムISDSである。世論の圧力のおかげで、EUは11月に投資裁判制度を提示し、より透明で民主的な制度だと主張している。
ITUCのシャラン・バロウ書記長はWEF共同議長の1人であり、気候変動と持続可能な開発に関する労働組合の考えをまとめ、「エネルギー生産の抜本的な変革が必要だが、産業転換に労働者のための公正な移行を含めなければならない」と述べた。
 議論・討議を重ねたとは言え、私たちの未来はダボスで決まるわけではない。未来は、世界中で労働者を組織化して組合の力を強化しようとする毎日の闘いを通じて、持続可能な変化、生活賃金に基づく質の高い雇用および労働組合加入権を求めて結集する私たちの能力を通じて、現場で決まるのである。
(ユルキ・ライナ インダストリオール・グローバルユニオン書記長・記)

 

東京でアジア太平洋地域執行委員会・女性委員会を開催

2016-01-20

インダストリオール・アジア太平洋地域執行委員会(2016年1月20日、東京・UAゼンセン会館)

インダストリオール・アジア太平洋地域執行委員会(2016年1月20日、東京・UAゼンセン会館)

 1月20日に東京・UAゼンセン本部でインダストリオール・グローバルユニオンのアジア太平洋執行委員会が開催され、大会準備や活動、プロジェクトをめぐり討議した。
 執行委員会は、エイボン・フィリピン従業員組合の労働者と解雇された組合員、豪アルコアの労働者とAWU傘下組合を支援する決議を採択した。
相原康伸アジア太平洋執行委員会議長は、この会合について次のように述べた。
 「これは非常に有用な会合であり、域内の労働組合運動に影響を与える問題をはじめ、数々の重要な討議が行われた。この地域におけるインダストリオールの今後の活動に関して、多くの建設的なアイデアを交換した」
 また、前日19日には、アジア太平洋女性委員会が同会場で開かれ、インダストリオールの全レベルで女性参画率40%を達成するという2015年9月のウィーン世界女性会議の決定を支持した。
 モニカ・ケンペール・インダストリオール書記次長は、「アジア太平洋地域は執行委員会の女性参画率40%達成によって、進むべき方向を示した。これは他の地域にも、この重要な目標の達成に向けて刺激を与える成果だ」と述べた。

アジア太平洋地域女性委員会(2016年1月19日、東京)

アジア太平洋地域女性委員会(2016年1月19日、東京)

 

アルコアがオーストラリアで乗組員を強制下船、アメリカで工場を閉鎖

2016-01-14

 1月13日深夜、30人の警備員がアルコアの発動機船(MV)ポートランドに乗り込み、シンガポールに向けて出発したばかりの船から組合加入乗組員5人を降ろし、外国人船員を乗船させた。
 MVポートランドの乗組員は、インダストリオール・グローバルユニオンの姉妹グローバル・ユニオンである国際運輸労連(ITF)傘下のオーストラリア海員労組(MUA)が組織化している。MUAは船主と紛争中であり、船主は貨物船ポートランドを解体のためにシンガポールまで航行させたあと、乗組員を解雇しようとしている。
 MVポートランドは、ウェスタン・オーストラリア州からアルコアのポートランド製錬所まで鉱物を輸送するために利用されてきた。オーストラリアの法律によると、MVポートランドのような沿海航行船はオーストラリア国籍とし、オーストラリア人船員を乗船させなければならない。
 この船の修繕維持が必要になると、アルコアはオーストラリア政府から一時許可を受けた。ところが、関連資本修繕費は支払われず、オーストラリア人労働者の代わりに、賃金が少なく労働条件の悪い外国人乗組員が雇われた。
外国人乗組員と免税船に取って代わられた組合員は、MVポートランドのシンガポールへの最後の航行を阻止することに決めた。
 まだ争議が解決していないというのに、アルコアは代替船の運航を開始した。MUAの見解によると、アルコアは代替船を利用してオーストラリア人労働者の権利と労働条件を引き下げようとしている。
 2015年12月にプノンペンで開かれたインダストリオール執行委員会は、権利を求めて闘うオーストラリア人船員への支援を表明してアルコアに関する特別決議を採択した。
 アルコアは過去にも利益を増やすために、労働組合のある施設の閉鎖など論議を呼ぶ行動に出たことがある。
アルコアは1月上旬、アメリカの施設のうち2カ所、ウォリック郡製錬所とポイントコンフォート精製プラントの閉鎖を発表した。どちらの施設も、インダストリオールに加盟する全米鉄鋼労組(USW)の組合員が運転しており、この閉鎖は労働者とその家族、地域社会に大きな影響を及ぼす。
 同社は、これらの施設は競争力を失っていると主張している。しかし同時にアルコアは、アメリカへの違法な中国製鉄鋼輸入を取り締まろうとする努力を支持しておらず、サウジアラビアに製錬所を建設した。USWの考えでは、この施設を利用すれば米国市場へのアクセスを維持しつつ、アメリカから生産を移転し、組合に加入していない労働者を配置することができる。
 「アルミをはじめとする素材産業は世界的な過剰設備に陥っており、市場と価格状況が全体的に悪化している。アメリカの労働者はなぜ、そのような不要な過剰設備が世界的に見られる状況下で、不当・違法に取引される製品と競争しなければならないのだろうか。その過剰設備の観点から、我が国の通商法を本格的かつ公正に再検証し、刷新する必要がある」とトム・コンウェイUSW国際副会長は言う。

 

インダストリオール、タイの労働組合員に対する弾圧を非難

2016-01-07

 インダストリオール・グローバルユニオンは、タイの軍事政権が2015年公共集会法に基づく新たな権限を発動し、昨日(1月6日)バンコクで労働組合員による穏やかな抗議をやめさせたことを強く非難した。
 これに先立って同日、日系自動車部品サプライヤー三光合成でロックアウトされた労働者500人が労働省前で集会を開いた。

チャリー・ロイソーンTLSC副委員長・TEAM顧問は当局の取り調べを受けた指導者2人のうちの1人

チャリー・ロイソーンTLSC副委員長・TEAM顧問は当局の取り調べを受けた指導者2人のうちの1人

 午後7時、警察の3部隊と軍が配備され、労働省で夜を過ごす予定だったデモ参加者を追い払った。その直後に2人の組合指導者、チャリー・ロイソーン・タイ労働者連帯委員会(TLSC)副委員長と、TEAMを通してインダストリオールに加盟する三光合成労組のアモンデット・スリムアン会長が、当局の取り調べを受けた。
 その際、携帯電話と身分証明書を一時押収され、トイレに行くときまで常に監視された。
2人の組合指導者は日中、外で集会が開かれていた間、三光合成および労働省との調停交渉に参加していた。
 「政府が公共集会法を利用して、平和的に集会を開く労働者の正当な権利を制限しようとしていることを深く懸念している。これはすべての規範と国際基準に反する」とユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は述べた。
公共集会法は、公共サービスの混乱や中断を引き起こす行為に対し、最高10年の懲役刑を定めている。

2015年12月14日、バンコクでプンタリック・サミティ労働省事務次官と会談するユルキ・ライナ・インダストリオール書記長

2015年12月14日、バンコクでプンタリック・サミティ労働省事務次官と会談するユルキ・ライナ・インダストリオール書記長

 12月の会談で前向きな反応があり、労働省事務次官が『政府はインダストリオールと同じく、労働者の権利を保護しようという意思を持っている』と述べたことを考えれば、今回の弾圧は特に残念だ」とライナ書記長は付け加えた。
インダストリオールは2015年10月、重大な労働組合権侵害を理由にタイ政府を国際労働機関に正式に提訴した。
 新団体交渉協約とボーナスをめぐる交渉が決裂したあと、600人を超える三光合成労働者(全員が組合員)がロックアウトされている。同社は利益を上げていないと主張していながら。その一方で、ロックアウトされた労働者の代わりに臨時労働者を雇い入れている。
 会社側は争議を利用して組合をつぶし、常用労働者を下請労働者と入れ替えようとしている、と三光合成労組は非難している。
 伝えられるところによれば、労働大臣のシリチャイ・ディタクン大将は、次の労使調停会合に出席すると約束したという。
 詳細については下記まで問い合わせのこと:インダストリオール・グローバルユニオン、コミュニケーション担当者、レオニー・ググエン(lguguen@industriall-union.orgまたは電話:+4179 137 5436)

 

インドで船舶解撤労働者訓練センターの定礎式

2016-01-29

 

船舶解撤労働者向けの新しい訓練センターの定礎式

船舶解撤労働者向けの新しい訓練センターの定礎式

 2016年8月までにインドのアランに新しい訓練センターが完成する予定で、船舶解撤産業の組合員1万8,000人以上が恩恵を得る。

 労働者、全国労働組合指導者、使用者代表、政府当局者など約800人の代議員が、1月17日に世界最大の船舶リサイクル・センターで新しい訓練センターの定礎式に出席した。

 同センターはインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織、アラン・ソシヤ船舶再利用一般労組(ASSRGWA)の組合員向けに建設される。安全衛生問題や労働者の権利に関する船舶解撤労働者の認識を高めるうえで、さらに一歩前進する措置である。

 ASSRGWA創設10周年記念も兼ねたこの式典ではビジャーダール・ラネー同労組書記長が挨拶に立ち、訓練センターの重要性を強調するとともに、この取り組みが労働条件改善を役立つことを念願した。同書記長は、インダストリオールとその加盟組織がASSRGWA結成以来、同労組の取り組みを一貫して支援してきたことも強調した。

船舶解撤労組の創設10周年記念も兼ねた式典に800人以上が出席

船舶解撤労組の創設10周年記念も兼ねた式典に800人以上が出席

 インダストリオール南アジア地域事務所のファヒムディン・パシャ教育・プログラム担当者がASSRGWA10周年を祝福し、「創設10周年記念を迎え、ASSRGWA指導部には、インダストリオールの戦略目標と部門のアクション・プランに沿って、不安定雇用との闘いと労働者の権利の擁護によって組合の力を強化する決意を新たにしてほしい」と述べた。

 この訓練センターは、日本基幹産業労働組合連合会(基幹労連)の支援により建設される。

 船舶解撤産業は世界で最も危険な仕事の1つである。南アジアの船舶解撤労働者の大部分は、安全衛生問題に関する訓練をまったく受けずに船舶解体に従事している。船舶解撤場では事故が多発し、毎年何百人もの労働者が亡くなったり重傷を負ったりしている。安全衛生問題に関する基礎訓練は労働条件改善に大いに役立つ。

 ASSRGWAは創設以来、労働条件改善、賃上げ、労働者の権利に関する認識向上に焦点を当てて船舶解撤労働者を組織化してきた。ASSRGWAはインダストリオール・グローバル・ユニオンならびにオランダの加盟組織FNVとともに、造船所の組織化方法、さまざまな船舶の構成、連絡系統、スチールケーブル/配管/タンク/カラーコードの安全な処理の理解をはじめ、船舶解撤の具体的な側面を取り上げるトレーナー向けワークショップを何度か開催した。

 ワークショップで訓練を受けた多くの受講生が、すでに新規労働者の教育に携わっている。

 船舶解撤は主としてインド、バングラデシュ、パキスタン、中国、トルコで実施されている。

 

全米鉄鋼労組、アルセロール・ミッタルに公正な協約を求めて結集

2016-01-28

 

シカゴ本社前で開かれた2016年のUSW集会

シカゴ本社前で開かれた2016年のUSW集会

 全米鉄鋼労組(USW)の組合員、退職者および支持者約100人が、2016年1月27日朝のラッシュアワーにシカゴ中心部のアルセロール・ミッタル本社前で集会を開き、ラクシュミ・ミッタル同社グループ会長兼CEOに直接「今すぐ公正な協約を!」という明瞭なメッセージを伝えた。

   ミッタルと退任間近のルー・ショーシュ・アルセロール・ミッタル南北アメリカCEOが、社内からUSWの集会に歩み寄って組合員代表団を招き入れ、コーヒーを飲みながら諸問題をめぐり簡潔に討議した。

   代表団は社内に入るとミッタルとショーシュに対し、協約に関するアルセロール・ミッタルの要求に数万人の現役・退職労働者が連帯して反対していること、USWとしては同社が組合員の権利・給付を奪い取ることを認めるわけにはいかず、退職者の健康保険料を3倍に増額することは許容しないと伝えた。

「会社側の要求を飲めば組合員と退職者の生活水準がたちまち下がってしまう」と、アルセロール・ミッタルとの交渉を主導するUSW第1地区責任者のデービッド・マッコールは語った。「さらに、会社側の案は明らかに、今後の交渉で組合員の給付を守るUSWの能力を弱めようとしている」と述べた。

 2015年9月1日にアルセロール・ミッタルとの協約が失効して以来、インディアナ、イリノイ、オハイオ、ペンシルベニア、ウェストバージニア、ミネソタ、サウスカロライナ、ルイジアナ各州の同社施設では、1万3,000人以上の労働者が旧協約の条件に基づいて働き続けており、経営側が大幅な譲歩を要求しているために新協約をめぐる交渉が遅れている。

 USWの報告によると協約交渉はある程度進展しているが、アルセロール・ミッタルは現役・退職労働者の給付計画の大幅な変更をはじめ、不公正・不必要な譲歩をしつこく要求している。

 「これらの要求をかわし、数十年分の団体交渉の進展を帳消しにしようとする同社の際限のない執拗な試みをくじくために、これからも団結しなければならない」とマッコールは述べた。

 USWはアルセロール・ミッタルとの公正な協約に向けて誠実に交渉すべく取り組み続けており、交渉委員会は同労組が目的を果たすと確信している。

 フェルナンド・ロペス・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長はUSWのこの闘争に対して、「インダストリオール・グローバルユニオンは加盟組織である全米鉄鋼労組(USW)を支援し、アルセロール・ミッタルに対し、約束された給付に対する権利を有する労働者の正当な要求に耳を傾けるよう要求する」と述べた。

 

ブラジルの金属労働者が金属産業の課題に対応

2016-01-22

 ブラジルのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織CNM/CUTは、1月22日にポルトアレグレでワークショップを開いて書籍を発表し、金属産業が直面している課題に取り組んだ。

 この活動は、8月にカナダのモントリオールで開かれる世界社会フォーラム2016に向けて行われるテーマ別イベントの一部である。

 金属労組CNM/CUTは、ワークショップ「工業化とブラジル/ラテンアメリカの労働者階級が直面する課題」への公開招待状を発表した。この行事には、インダストリオール・ラテンアメリカ・カリブ海地域事務所のマリーノ・バニ副所長がインダストリオール代表として出席する。

 「ワークショップの目的は、産業労働者が適正な労働条件の促進を主眼に、経済的・社会的進歩を求めて闘っていることを示すことだ」とロリカルド・デ・オリベイラCNM書記長は説明した。

 この行事では、『ブラジル金属産業の様相:労働組合の闘いへの貢献』も発表する。この書籍はブラジル金属産業の6部門を総合的に評価しており、CNM/CUTが労働組合研究組織DIESSEと共同で出版する。

 今年の世界社会フォーラムには、2万団体以上が参加すると予想される。このフォーラムは市民社会のメンバーによる大規模な年次会合で、世界が直面している問題の解決策について議論する。

 「毎年のフォーラムの終わりに、全世界に向けて文書が発表され、持続可能性に関する案を示す。産業変革案を提示する責任を果たしたい」とロリカルド・デ・オリベイラは語った。

 インダストリオール・グローバルユニオンのフェルナンド・ロペス書記次長は「世界社会フォーラムは重要な取り組みであり、社会運動関係者が、より公正な社会を生み出すための共同行動を検討・計画し、利潤を増やしたいという大企業の願望よりも人々の利益と地球の持続可能性を優先できるようにすることを目指している」と述べた。

 

 

英政府が船舶解撤条約を支持

2016-01-20

インダストリオールは船舶解撤浄化キャンペーンの一環としてバングラデシュの船舶解撤場を訪問

インダストリオールは船舶解撤浄化キャンペーンの一環としてバングラデシュの船舶解撤場を訪問

 英国政府は、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約を批准する意向を表明した。
 パトリック・マクローリン英運輸相は、イギリスのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織ユナイトへの書簡で、「EU規則の条項が完全に実施されたら、香港国際条約の批准に焦点が移ります。同条約の批准により、必要な国内法がすべて導入されることになるでしょう」と述べた。
 この書簡は、イアン・ウォッデル・ユナイト造船担当全国役員がデービッド・キャメロン首相に書簡を送り、イギリス政府による早急の条約批准を求めたことに対する回答である。
 松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤担当部長は、今回の英政府の対応について、「香港条約を支持する英政府の意向を歓迎し、政府が批准プロセスを加速させることを期待している。この条約は、世界の商船の総トン数の40%を占める15カ国以上が批准するまで効力を生じない。イギリスは世界有数の船舶所有国なので、このプロセスにおいて重要な役割を果たす可能性がある」とコメントした。
 インダストリオールは、世界で最も危険な仕事の1つとみなされる船舶解撤の浄化キャンペーンを主導している。

 英政府の回答を読むには下記参照:
http://admin.industriall-union.org/sites/default/files/uploads/documents/Campaigns/Hong_Kong_Convention/let_from_rt_hon_mcloughlin_11.01.16.pdf

 

クラウン・ホールディングスにOECD指針の遵守を要求

2016-01-18

 OECD多国籍企業行動指針の米国ナショナル・コンタクト・ポイント(USNCP)は最終声明で、クラウン・ホールディングスは労働者の権利の尊重を確保するために「指針の実施に明確に取り組む」べきだと勧告した。
 USNCPは、米国系多国籍製缶会社クラウンが、カナダとトルコで問題になっているクラウン子会社の行為に関する調停に参加しようとしないことにも遺憾の意を示した。
 この声明は、それぞれカナダとトルコでクラウン労働者を代表しているインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織、全米鉄鋼労組(USW)とビルレシク・メタル・イスによる申し立てを1年以上かけて検討した結果、2015年12月24日に発表された。
 USNCPは声明で「クラウン・ホールディングスはOECD指針を実施し、労働者の権利が尊重されるよう確保すべきである。この権利には、自ら選んだ労働組合を設立し、そのような労働組合に加入する労働者の権利や、同社の事業活動の影響を受けるその他の個人の権利が含まれる」と勧告している。
 声明によると、「会社側は回答の中で、すべての問題は各国の司法・行政制度によって取り組まれている」と述べている。「多くの場合、OECD指針は現地法の尊重だけを要求しているわけではない」、とUSNCPは指摘した。したがって、企業は国内法に従うだけでは、必ずしも指針を遵守していることにならない。
 USW(全米鉄鋼労組)はカナダでオンタリオ州労働関係委員会にもクラウンを提訴した。両当事者は2015年7月8日に何とか合意に達し、8月10日に職場復帰の実現を報告、カナダの労働者とその家族に打撃を与えた22カ月に及ぶストが終結した。
 トルコのクラウン子会社ベブキャンでは2012年2月、組織化に関与した労働者が初めて解雇されたが、この問題もまだ解決していない。USWとビルレシク・メタル・イスからの報告によると、クラウンはオスマニエとイズミットの2工場で労働者を威嚇し、組合加入を阻止しようとしている。
 クラウン・ベブキャンは法的障壁も利用して、ビルレシク・メタル・イスを労働者の合法的な代表として承認する手続きを遅らせた。
 その後、クラウン・ベブキャンは団体交渉に参加したが、組合との公正な協約の締結に興味を示さなかった。組合が合法的なストを組織すると、同社は労働者に圧力をかけ、ストを支援する労働者33人の署名を強制的に撤回させてストを妨害し、このストを違法と宣言した。
ビルレシク・メタル・イスの報告によれば、同社は組合組織化活動への関与を理由に26人の労働者を解雇した。会社側は、この解雇が組合差別の結果であることを否定している。
 ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は、「アメリカのナショナル・コンタクト・ポイントによる本件の検討プロセス全体を通じて、クラウン・ホールディングスは組合と交渉する意思を示さなかった。それどころか、有意義な対話を行おうとする加盟組織のあらゆる取り組みを妨害しようとした。同社は調停に入ることを拒否し、多国籍企業の行動を規制するOECDガイドラインを尊重する意思を示していない。これは責任ある企業の行動ではない。クラウンがすべての労働者の権利を尊重するまで、同社との闘いは終わらない」とコメントした。
 この指針は、OECD諸国の領土で、またはOECD諸国の領土を拠点に活動する企業を対象とする、国際投資と多国籍企業に関するOECD宣言の一部である。
 最終声明全文は下記リンクで閲覧可能
http://www.state.gov/e/eb/oecd/usncp/specificinstance/finalstatements/250856.htm