広報ニュース

第56号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2016年6月16~30日)

ILOで労働者の権利侵害にスポットライト

2016-06-16

  ジュネーブの2016年ILO(国際労働機関)総会でILO基準適用委員会は、ILO条約に定める権利の行使にあたって、ますます弾圧や困難に直面するようになっている世界中の労働者の証言を聞いた。

   ILOの基準適用委員会(基準委員会またはCAS)は6月、バングラデシュやインドネシア、カンボジア、メキシコといった国々に特に焦点を絞って、労働者の権利の侵害に関するいくつかの苦情を取り上げた。

 バングラデシュの組合代表は委員会で、主要衣料産業では安全性の向上に進展が見られるが、結社の自由は依然として問題だと語った。

 バングラデシュの既製服部門では、2013年のラナ・プラザ災害の直後に多くの新組合が登録された。組合登録は過去2年間に次第に困難になり、特に独立組合が申請する新規登録の約7割が却下されている。

 

バングラデシュの労働者に対する攻撃的な組合つぶしについて報告したアプールバ・カイワール・インダストリオール地域事務所所長

バングラデシュの労働者に対する攻撃的な組合つぶしについて報告したアプールバ・カイワール・インダストリオール地域事務所所長

 アプールバ・カイワール・インダストリオール地域事務所所長は基準委員会で、経営側による攻撃的な組合つぶしが原因で活動的な組合が減少し、労働者はまったくと言っていいほど使用者から保護されなくなっていると述べた。加えて、バングラデシュの輸出加工区では労働組合が完全に禁止されている。

 国内で反組合的な情勢が強まり、結社の自由と団結権に関するILO第87号条約に基づいて労働者の権利を確保するために経営側が十分努力していない現状を受けて、ILO基準委員会はバングラデシュを「スペシャル・パラグラフ」とも呼ばれる「ブラックリスト」に載せた。

 インドネシアの労働者代表は、警察と武装した暴漢による激しい労働者攻撃について証言した。

 

発言するインドネシアのプリハナニさん

労働者に対する侵害を止めるようにインドネシア政府に要求するプリハナニさん

 

 インダストリオール加盟組織FSPMIのプリハナニ・ボエナディさんが、政府に対し、労働者に対する侵害をやめるとともに、国家の安全保障を理由に結社の自由に対する権利を抑圧しないよう要求した。例えば2015年11月にジャカルタで、賃金決定プロセスから労働者が締め出されている現状に抗議したことを理由に、25人のデモ参加者が逮捕された。

 基準委員会は「数多くの申し立てに関して深い懸念を表明し」、インドネシア政府に対し、労働者が自由に関与できるようにするとともに暴力行為の責任者を告発するよう促した。

 

カンボジアの組合に対する侵害について語るアス・ソーン

カンボジアの組合に対する侵害について語るアス・ソーン

 カンボジアのインダストリオール加盟組織CCAWDUのアス・ソーンが、労働組合指導者に対する暴力、組合幹部の違法な解雇、政治的干渉、短期契約、妊娠中の労働者に対する差別について報告した。

 委員会は、カンボジア、インドネシア、フィリピン、スワジランド、カザフスタン、モーリタニアにILO直接接触ミッションを派遣し、CASの結論に関連する進展を評価することを決定した。

 

メキシコにおける保護協約の普及の阻止を求めるナポレオン・ゴメス

メキシコにおける保護協約の普及の阻止を求めるナポレオン・ゴメス

 メキシコの鉱山労組ロス・ミネロスの会長でインダストリオール執行委員でもあるナポレオン・ゴメスは基準委員会で、黄色労働組合と企業が労働者の同意を得ないで締結している保護協約の普及や、労働組合に対する威嚇・脅迫を取り上げた。ゴメスは2016年4月の案に基づく労働法改革の即時完了を求めた。

 メキシコ政府はILO総会に、政労使代表70人から成る代表団を送った。しかし、代表団の中に民主的組合の代表は1人しかいなかった。

 基準委員会は政府に対し、法律上の義務を果たすとともに、「労働組合が結社の自由に対する権利を実際に行使できる」よう確保することを要求した。

 

 

インダストリオール加盟組織、韓国の組合指導者を支援

2016-06-30

 

インダストリオールは韓国の組合を支援するデモに参加(2016年3月)

インダストリオールは韓国の組合を支援するデモに参加(2016年3月)

 世界のすべての地域のインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織約64団体が韓国大統領に抗議文を送り、韓国民主労総(KCTU)指導者のハン・サンギュンに対する刑事告発を非難した。

 7月4日判決予定のサンギュンは、検察官の勧告により8年の実刑判決を言い渡される可能性がある。サンギュンは、反労働者的な労働法改革に反対する集会に何度か参加したことに関連する容疑で起訴されている。この容疑には公務執行妨害、公共財破壊、往来妨害、禁止された場所での集会の開催が含まれている。

 ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は次のように述べた。「ハンに対するすべての告発が、組合幹部という立場での合法的・平和的な労働組合活動に関連しているという事実を遺憾に思う。残念ながら、組合活動を理由に刑事告発されている労働組合員はハンだけではない。600人近くの組合指導者や組合員が最近の抗議行動に参加したために逮捕され、うち20人が拘留、7人が今も獄中にあり、残り13人は8カ月から1年6カ月の実刑判決を言い渡されたことが分かっている」

 2015年12月にプノンペンで開かれたインダストリオール執行委員会は、政府の弾圧に抵抗している韓国の組合への支援を求める決議を可決した。いくつかのインダストリオール加盟組織も自国の韓国大使館との会談を求めており、韓国大使館に接触している組織もある。インダストリオールと他のグローバル・ユニオン・フェデレーションは、サンギュンの有罪判決に抗議するために団結している。

 インダストリオールは今年3月、韓国の組合と連帯する国際労働組合代表団を主導した。韓国の組合は指導者が投獄され、事務所を強制捜査され、集会・結社・表現の自由に対する権利を攻撃されている。

 ライナは韓国の朴大統領への書簡で次のように付け加えた。「私たちは貴国政府に対し、平和的かつ合法的な労働組合活動の一環として実施された行動を理由とする、ハン・サンギュンら労働組合員に対する起訴をすべて取り下げるよう強く促します。さらに、将来そのような侵害を防止するために、労働組合ならびに市民社会組織と協議して国家の法的枠組みを見直すことも要求します」

 

現代サプライヤーでの組合つぶし中止を要求

2016-06-23

「ハンの死を無駄にさせるな」 41歳のハン・グァンホは労働組合活動を理由に絶えず攻撃されていた。

「ハンの死を無駄にさせるな」
41歳のハン・グァンホは労働組合活動を理由に絶えず攻撃されていた。

 

韓国現代自動車の部品サプライヤーで41歳の組合オルグ、ハン・グァンホ(写真)が自殺してから、6月24日(金)で100日になる。

 インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織、韓国金属労組(KMWU)の支部で選出組合役員として活動していたハンは、現代自動車の主要サプライヤーであるユソン企業で、労働組合活動に対する報復として5年にわたり威嚇や弾圧、攻撃にさらされた。

 今年1月、現代がユソン企業および労務管理コンサルタント会社チャンジョと共謀し、工場で組合をつぶそうとしていることが明るみに出た。会社側の大規模かつ攻撃的な反組合キャンペーンは2011年に始まり、今日に至るまで続いている。

 ハンは自ら命を絶つほんの数日前、懲戒委員会でユソンからの質問に答えるよう求める召喚状をまた受け取った。これは同社が工場での合法的な労働組合活動を理由に報復した多くの方法の1つにすぎない。2013年7月から12月にかけて、ユソンは11回にわたってハンを警察に告発した。自殺の時点で、ハンに対する虚偽の刑事告発2件がまだ係争中だった。

 ユソンは進行中の反組合キャンペーンの中で、経営側寄りの組合の設立、組合員に対する下劣で差別的な懲戒処分、組合活動家に対する刑事・民事訴訟、組合員の日常的な監視・観察などを行っている。

 ユソン工場におけるKMWU労働者の処遇は実にひどく、メンタルヘルス調査によると、深刻な鬱のリスクが高い労働者の割合は、韓国の一般国民の平均7%に対して43%である。

 2016年1月に韓国労働部が実施した別の調査で入手された文書によると、現代自動車はユソンでの組合つぶし活動に関する日報を受け取っており、ユソンCEOおよびコンサルティング会社チャンジョ経営陣と定期会合を開いていた。

 韓国の組合によると、現代はヴァレオESK、ボッシュ・エレクトリカル・ドライブズ、コンチネンタル、万都、サンシンブレーキといった主要サプライヤーで、組合つぶしキャンペーンを主導している。

 KMWUの組合幹部と組合代表は没後100日にあたり、6月24日金曜日にソウルの現代・起亜自動車本社前でハンの追悼式典を開催する。

 「Justice For Han」を要求し、現代に同社サプライヤーでの組合つぶし中止を求めるレイバースタート請願書に署名してほしい。

 

キャタピラー・ネットワーク、デトロイトでデニス・ウィリアムズUAW会長と会談

2016-06-17

 

4大陸のキャタピラー労組代議員29人がデトロイトで会合開く

4大陸のキャタピラー労組代議員29人がデトロイトで会合開く

 4大陸のキャタピラー労組代議員29人が6月15~16日、インダストリオール・グローバルユニオンとアメリカの加盟組織である全米自動車労組(UAW)の招きにより、ミシガン州デトロイトで会合を開いた。

 キャタピラーは、建設・鉱山機械、エンジン、農業機械・設備、その他の機械エンジニアリング製品を製造する米国トップの多国籍メーカーである。この多国籍企業はこの部門の大手企業であるため、同社における労働組合活動の調整は非常に重要である。代議員は、これまでに行われた活動を評価し、将来のプログラムについて合意した。

 キャタピラー労働組合ネットワークでは、デニス・ウィリアムズUAW会長と、ネットワークの議長も務めるノーウッド・ジュエル副会長が挨拶した。 デニス・ウィリアムズ会長は実に率直に語り、UAWの取り組みを強調しながらも、この極めて反組合的な会社において、労働組合ネットワークが全世界の労働者のために付加価値を生み出すことを期待していると明言した。

 2015年9月に発表された再建計画の結果、いくつかの国々で大規模な余剰人員解雇が実施されている。特に憂慮すべきは日本の状況で、経営側は再建計画の実施にあたって、インダストリオール傘下のキャタピラー労組との長年にわたる社会的パートナーシップを部分的に放棄した。ヨーロッパでも、相次ぐ余剰人員解雇で数千人の雇用が失われたが、リストラはその一因にすぎない。

 代議員は、特にマッピング作業によって将来の組織化活動の土台を作るために、欧州従業員代表委員会とグローバル・ネットワークとの協力を改善することで合意した。

 

発言する日本代表団

発言する日本代表団

 日本代表団は、さまざまな国や地域に影響を与える企業発表があった場合に、より迅速に対応できるようにする警告システムの導入によって、今後ネットワークの効率性と柔軟性を高めていけるよう支援と知識を提供した。ノーウッド・ジュエルに代わってネットワーク議長を務めたティム・ブレスラーと、マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング・素材産業担当部長に対し、適宜に組織機構を開発するよう要望が出された。

 出席した国々の一部における政情は失望や論争の主な原因となっており、ブリグジット(イギリスのEU離脱)の脅威だけでなく、ブラジルの政治経済危機もある。どちらもキャタピラーの経済・経営状態に影響を与えており、その結果、関連各国にとどまらず他の国々のキャタピラー労働者にも影響を及ぼす。

 6月16日のジョー・コックス英労働党議員殺害事件が、この会合に影を落とした。黙祷が捧げられ、イギリスの加盟組織ユナイトのトニー・マーフィーの要請で、ネットワークを代表して弔意が伝えられた。この黙祷のあと、ネットワークは集中して真剣に活動を進めた。

 マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール担当部長は次のように述べている。「キャタピラー経営陣が受け入れるか否かに関係なく、私たちはグローバルな交流を開始しており、今後、必要に応じて共同行動を起こす。公正な対話のために手を差し伸べるが、必要があれば紛争もいとわない」

 

 

ジョン・ディア関連労組が協力強化に向けて会合

2016-06-17

 

デトロイトで開催されたジョン・ディア・ネットワーク会議の参加者たち

 

 北米、ブラジル、スペイン、ドイツのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織が6月13~14日にミシガン州デトロイトで会合を開き、インダストリオールのジョン・ディア労働組合ネットワークを促進した。

 加盟組織は、この全世界で活動する米国系農業・建設・林業機械メーカーにおいて、連携を深めてネットワークを強化するために具体的な措置を講じることで合意した。

 インドからの参加者はビザの問題で出席できなかった。フィンランドも参加できなかったが、フィンランド金属労組はネットワークへのコミットメントを表明した。

 参加者は、厳しい経済環境や各国におけるジョン・ディアとの団体交渉の状況について情報を共有した。ネットワークの議長でもある全米自動車労組(UAW)代表のティム・ブレスラーが、米国と世界のジョン・ディア製品市場の実態を伝えた。

 前年のネットワーク会議で合意したとおり、議論の焦点となったのは具体的な問題、特に会議に出席した国々の労使関係制度の比較である。参加者は今年、スペインとドイツの労働組合制度をじっくり調べた。政治経済危機がこの部門のインダストリオール加盟組織にとって最大の課題となっているブラジルにも、強く焦点を当てた。

 参加者は、ネットワークの目標を定めた前年採択の共同作業プラットフォーム「インダストリオール・ジョン・ディア・ネットワークの指針と原則」を再確認した。この作業プラットフォームの実施によって、ネットワークは対象地域のさらなる拡大に取り組み、各国で労働組合による組織化を支援する。

 ノーウッド・ジュウェルUAW副会長がネットワークを訪問し、ネットワークの支援と強化に対するUAWの方針を確認した。ティム・ブレスラー(UAW)とトルステン・ヤン(IGメタル)、マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング・素材産業担当部長が、ネットワークの進展と今後の活動を担当する。ネットワークは来年の会合開催も決定した。

 マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール担当部長は次のように確認した。「インダストリオール・グローバルユニオンはジョン・ディア・ネットワークを育成するために懸命に取り組んでいる。このネットワークはインダストリオールの機械エンジニアリング部門で最も重要な労働組合ネットワークの1つだ。部門のみならず企業別ネットワークにおいても、団結して労働組合の連帯を示すことが重要であり、特にブラジルで闘争中の同志や、今回は出席できなかったがインドの同志とも連携しなければならない」「同時に、女性がジョン・ディア・ネットワークで積極的な役割を担うよう奨励するために尽力しなければならない」