広報ニュース

第67号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年5月31日)

グラスベルグのストが2カ月目に突入する中、フリーポートが労働者2,000人を解雇

2017-05-24

スト中のフリーポート・インドネシア労働者

 PTフリーポート・インドネシアは、インドネシア西パプア州の大規模なグラスベルグ銅・金山でスト中の労働者2,018人を解雇した。

 この鉱山の労働者は5月1日、会社側の一時帰休方針に反対してストに入った。組合は5月24日、さらに1カ月ストを続けると発表。同社は、これまでにスト中の常用労働者2,018人の契約を打ち切っている。

 米フェニックスを拠点とするフリーポート・マクモラン(FCX)の現地子会社であるPTフリーポート・インドネシアは、輸出承認をめぐるインドネシア政府との長期にわたる紛争を経て、コスト削減のために労働者の約10%に一時帰休(長期休暇)を取らせた。フリーポートは常用労働者1万2,000人、契約労働者2万人を雇用している。組合は、この解雇を同社の対政府交渉戦略の一環と考えている。

 経営側によると、一時帰休中の労働者が職場に復帰する見込みはない。1,100人が自発的離職プログラムを受け入れた。

 インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織の化学・エネルギー・鉱山労組(CEMWU SPSI PTFI)は、労働協約違反である一時帰休方針の一方的な押しつけに反対してストを開始した。

 フリーポートはストの合法性を認めようとせず、スト中の労働者を職務離脱とみなすと発表した。欠勤日が5日を超えた労働者は「希望退職」を受け入れたとみなされる。フリーポートは、これまでに2,018通の「希望退職」通知を発行しており、最終支払額は勤続年数にかかわらず給料1カ月分にすぎない。労働者の中には、会社に借金があるため返済を請求された者もいる。

 ストを理由とする労働者の解雇はILO中核的労働基準の違反である。

 解雇された労働者のうち634人がパプア人、1,384人が非パプア人である。状況は流動的である。ある組合活動家は、これは「パプア州ティミカ地域にとって悲劇」であり、「社会経済的影響が原因で市民の暴動が発生する可能性が高い」と説明した。

 西パプアの地位をめぐる紛争があり、独立運動はインドネシアによる資源の略奪を非難している。フリーポートはインドネシア軍に金を払って鉱山を警備させており、暴力事件が発生したこともある。

 インダストリオールは、この一触即発の状況が抑制しがたい暴動の勃発を招くことを懸念している。グレン・ムプファン・インダストリオール鉱業担当部長は、2012年に南アフリカで発生したスト中の鉱山労働者の大虐殺を引き合いに出し、このように語った。

「事態は非常に緊迫している。マリカナ事件の再発を防ぐために緊急に介入する必要がある」

 インダストリオールは5月初めにフリーポート・マクモランのCEOに書簡を送ったが、同社は書簡の内容をはねつけた。ヴァルター・サンチェス書記長は今日改めて同社に書簡を送り、子会社が招いた危機に注意を喚起した。

「私は貴殿に対し、グラスベルグのPTフリーポート・インドネシアで介入し、2,000人を超える労働者の解雇に起因する地域社会の社会的災害を回避するとともに、御社の子会社の無神経で非妥協的な姿勢の必然的な結果として起こる恐れのある暴動を防止するよう、緊急に要請せざるを得ません」

「PTフリーポート・インドネシアは、以前に解雇された労働者1,100人に加えて、5月22日に不当解雇された常用労働者2,018人を直ちに復職させなければなりません」

「PTフリーポート・インドネシアは、労働者がストを中止する前提条件として、グラスベルグの労働者の正当な要求に対応すべきです」

 インダストリオールはインドネシア大統領にも書簡を送付、緊急の介入を求めるとともに、今年ジュネーブで開かれる国際労働総会で労働者の権利の侵害を提起する見通しを示し、次のように述べた。

「2017年6月5~16日のジュネーブの国際労働総会に出席する4,000人以上の代議員に、グラスベルグにおける労働者の権利の甚だしい侵害への注意を促さなくてすむことを願っています」

「そこで貴殿に対し、インドネシア共和国大統領の立場で直ちに介入し、この紛争の公正かつ持続可能で平和的な解決を促進・確保するよう要請します」

 CEMWUは今日ジャカルタのアメリカ大使館当局者と会見し、介入してフリーポートが特別仲裁委員会の設置に関する組合案に同意するよう促すことを要請した。CEMWUは人的資源省とも会談した。

行動の実施

 インダストリオールは加盟組織、特に鉱業・素材金属部門の組織に、インドネシア政府に抗議文を送るよう求めている。添付の抗議文を送付のこと。貴組合のレターヘッドを入れ、最初の文に組合名を挿入し、署名して書簡の冒頭に記載のメールアドレスに送付してほしい。

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2017年5月

インドネシア共和国

ジョコ・ウィドド大統領

webmaster@setneg.go.id; redaksi_balitfo@depnakertrans.go.id;

info@indonesia-bern.org; konsuler@indonesia-bern.org;

mission.indonesia@ties.itu.int;

djmb@minerba.esdm.go.id; klik@esdm.go.id; press@industriall-union.org

 

インドネシア政府にグラスベルグにおける労働者の権利侵害の停止を求める緊急要請

大統領閣下

インダストリオール・グローバルユニオンの加盟組織である[貴組合名を挿入]を代表して、貴殿に本書簡をお送りします。この書簡の目的はインドネシア政府に、グラスベルグで介入し、2,000人を超える労働者の不当解雇に起因する地域社会の社会的災害を回避するとともに、PTフリーポート・インドネシアの非人道的・非妥協的な姿勢の必然的な結果として起こる恐れのある暴動を防止するよう、緊急に要請することです。

貴国政府に対し、PTフリーポート・インドネシアがインドネシアの法律・規則に定めるとおり、労働者の権利ならびに労働組合を尊重するよう確保することを要請します。先ごろ不当に解雇された2,000人を超える常用労働者の即時復職を実現するために、政府が介入することが絶対に必要です。

PTフリーポート・インドネシアは、CEMWU PTフリーポート・インドネシアとの交渉の場に戻らなければなりません。PTフリーポート・インドネシアは、労働者がストを中止する前提条件として、グラスベルグの労働者の正当な要求に対応すべきです。

私たちは躊躇せず、これらの違反がなくなるまで当組合の組合員と自国政府に対し、グラスベルグにおける労働者の権利の甚だしい侵害について広く懸念を提起します。

数千人の労働者と家族の暮らしに深刻な影響を及ぼしている、この紛争の公正かつ持続可能で平和的な解決を促進・確保するよう要請します。

敬具

 

 

UAW、フォルクスワーゲン株主総会で組合つぶしの中止を要求

2017-05-11

ハノーバーの年次株主総会で株主に語りかける
スティーブ・コクランUAW第42支部長

 5月10日にハノーバーで開催されたフォルクスワーゲンの年次株主総会で、スティーブ・コクランUAW第42支部長が発言し、テネシー州チャタヌーガ工場の雇用方針に関して同社に質問した。

 チャタヌーガ工場はフォルクスワーゲンの工場として世界で唯一、会社に承認された従業員組合が存在しない。それでも2015年12月、熟練労働者の70%を超える圧倒的多数が、インダストリオール加盟組織の全米自動車労組(UAW)による代表に賛成票を投じた。

 だがVWチャタヌーガは、米国政府から交渉開始を命じられたあともなお、UAW第42支部との交渉を拒否している。

 スティーブ・コクランUAW第42支部長は、年次株主総会で株主に次のように話した。
「フォルクスワーゲンはその行動によって、インダストリオールと締結したグローバル枠組み協定だけでなく自社の社会的責任の原則にも違反している」

 UAWは同社経営陣に対し、UAW第42支部をチャタヌーガのVW従業員の代表と認め、同支部と交渉に入るよう要求している。

 「VW経営陣は、基本的労働権とアメリカの労働法、自社の行動規範を無視しており、自社のイメージを大きく損なう危険を冒している」とゲーリー・キャスティールUAW書記長・財政部長は指摘している。

 チャタヌーガのVW工場の危険な安全衛生条件と反組合的環境の詳細については、アメリカ労働総同盟産業別労働組合会議(AFL-CIO)発行の報告書『At What Cost』で取り上げられている。

 世界中のVW労働者を代表するインダストリオール加盟組織が4月に会合を開き、VWの労使関係に関する情報を交換するとともに、チャタヌーガの労働者との連帯を表明した。

 「チャタヌーガの労働者は組合代表に賛成の投票をしたが、フォルクスワーゲンは相変わらず労働者に法的権利を与えていない」とヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。「フォルクスワーゲンは、これらの労働者を狙い撃ちするのをやめ、職場で組合を許可する必要がある」

 フォルクスワーゲンにチャタヌーガでの組合つぶし中止を求める請願書に、6万2,000人以上が署名した。

 「フォルクスワーゲンの利用者と株主を含む全世界6万2,000人以上のSumOfUsメンバーが抗議の請願書に署名し、フォルクスワーゲンのルール無視に嫌悪感を表明した」とSumOfUs運動家のオーエン・ダブスキーは述べた。

フォルクスワーゲンに対し、約束を守ってチャタヌーガで組合を許可するよう要求!

  ポスターと一緒に自撮り写真を撮り、インダストリオールをタグ付けしてソーシャルメディアで公表し、VWに組合つぶしの中止を要求しよう!

 

獄中の韓国人労働組合員ハン・サンギュンにFNV賞

2017-05-11

ハン・サンギュン韓国民主労総(KCTU)委員長(左)に賞を贈り、祝福するオランダFNV代表

 ハン・サンギュン韓国民主労総(KCTU)委員長が、オランダの労働組合総連合FNVの大会でフェーベ・ベラスケス労働組合権賞を授与された。

 この賞は2年に1回、人権や労働者の権利が欠如している国々で労働組合権の擁護・保護に例外的な貢献をした人に贈られる。

 ハン委員長は政略的な起訴によって韓国で投獄されているため、イ・サンジンKCTU副委員長が代わりに賞を受け取った。ハン委員長はグローバル・ユニオンのインダストリオール、BWIおよびIUFに推薦された。

 ハン委員長は、朴前政権によるネオリベラル労働改革法案の可決を阻止しようとするKCTUキャンペーンの一環として反政府デモを組織したことに関連する罪で、2015年12月から投獄されている。

 

エールを送るサンチェスIA書記長(中央)

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長はこう述べた。
「昨年11月に獄中のハン委員長を訪問したとき、委員長の謙虚な態度、不屈の精神、韓国の労働組合権・人権を求める闘いに取り組む姿勢に感動した」
「ハン委員長は、多大な犠牲を払い、何千人もの人々に刺激を与えて行動を起こさせた勇士だ。その行動の結果、朴前韓国大統領が解任・投獄された」

 皮肉にも、朴槿恵前大統領とイ・ジェヨン・サムスン副会長はハン委員長と同じ刑務所に収監されている。

 イ・サンジン副委員長が受賞の際に発表した声明の中で、ハン委員長は次のように述べている。
「私の国で正真正銘の民主主義と労働者の暮らしを破壊している資本主義は、過去の軍事独裁よりも危険で恐ろしい独裁形式になっている」
「私たちが国家の敵とみなされている現在の政治情勢において、KCTUは労働組合弾圧が怖いというだけの理由で政府に卑屈に追従することはできない」
「KCTUの歴史は、民主的権利、労働権および人権を求める闘いと、政府・使用者からの攻撃に対する抵抗に基づいている。そして私たちは、この豊かな遺産を守り続けている。KCTUの指導者ならびに労働者階級の代表である私にとって、最前線に立つのは至極当然のことだ」
「フェーベ・エリザベス・ベラスケス労働組合賞受賞の知らせを聞いて、小さな独房の中で熟考しながら大変恐縮し、率直に言って照れくさく感じた」

 この賞は、労働組合活動が原因で殺害されたエルサルバドルの組合指導者、フェーベ・エリザベス・ベラスケス(1962-1989)にちなんで名付けられている。

 

EUはバングラデシュに労働法違反に対する責任を負わせよ

2017-05-10

衣料産業で働くバングラデシュの労働者

 グローバルな労働組合は欧州連合に対し、バングラデシュ持続可能性コンパクトを評価するために5月18日にダッカで開かれる重要な会合に先立って、バングラデシュに労働法違反に対する責任を負わせるよう要求している。

 このコンパクトは、2013年4月24日にラナ・プラザ工場崩落で1,100人以上の労働者が死亡したあと、衣料産業の労働権と工場の安全性を改善するために、欧州連合(EU)とバングラデシュ政府、米国政府、カナダ政府、ILOが締結したものである。

 しかし、それから4年後の痛烈な評価で、インダストリオール、ITUC、UNIをはじめとするグローバルな労働組合は、バングラデシュの労働権が悪化の一途をたどっていることからコンパクトの実績を厳しく非難した。

 組合側は今月発表された文書で次のように述べている。
「要するに、持続可能性コンパクトが締結され、労使関係の改善に向けた国際支援に数百万ドルが寄付され、ブランド数社が努力を払っているにもかかわらず、継続的な対話機構が破綻していることは明白であり、政府は400万人以上の衣料労働者と他の部門のそれ以上多くの労働者の状況を改善するために、ほとんど何もしないだろう」

 さらにグローバル・ユニオンは、EUがバングラデシュのGSP資格の調査を開始し、一定の労働基準を満たしていることを条件にヨーロッパとの貿易特恵を与えるよう要求している。

 バングラデシュ政府は毎年、コンパクトの約束を守っていない。この状況は、昨年12月に少なくとも35人の労働組合活動家と労働者が独断的に逮捕・拘留されたことによってさらに悪化した。1,600人を超える衣料労働者が解雇され、組合幹部が警察に脅迫・威嚇された。インダストリオールのキャンペーンは、拘留者の釈放を確保するのに役立ったが、起訴はまだ取り下げられていない。

 この評価の結果、結社の自由と団体交渉に関するコンパクトの約束が守られておらず、組合登録全体の半分が拒否されていることも分かった。さらにバングラデシュ政府は、コンパクトに定める必要な人数の工場監視員をまだ雇っていない。その一方で、船舶解撤場となめし革工場の危険な労働条件をめぐる組合の苦情を一貫して無視している。

 ジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長は次のように語った。
「欧州連合はバングラデシュの最も重要な貿易相手国だ。この国の労働者・労働組合を取り巻く状況の悪化を看過してはならないし、看過することもできない。バングラデシュの対EU特恵貿易資格に関する調査は、バングラデシュ政府に行いを改めさせる強力なメッセージを送ることになるだろう」

評価を読むには下記をクリック:
http://www.industriall-union.org/sites/default/files/uploads/documents/2017/BANGLADESH/the_failure_of_the_bangladesh_sustainability_compact_2017.pdf

 

インドの組合が国際連帯の強化を要求

2017-05-09

国際連帯の強化を要求する
インダストリオール・インド協議会の代表メンバー

 インダストリオール・インド協議会はヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長を歓迎するとともに、インドの加盟組合に対し、サプライチェーンにおける労働者の権利の擁護とグローバルな連帯の構築に向けた努力を強化するよう求めた。

インダストリオール・インド協議会の会合に
参加する サンチェスIA書記長(中央)

 ヴァルター・サンチェスは2017年5月5日にデリーで開かれたインド協議会の会合に参加し、次のように語った。
「ドナルド・トランプ米大統領誕生をはじめ、世界中で保守的な政治指導者が増えており、国際労働組合運動に厳しい課題を突きつけている」
「私たちはTPPやTTIPといった貿易協定の形でも問題に直面している。これらの協定には投資家対国家の紛争解決条項が盛り込まれている。これによって多国籍企業は各国政府を訴えることができるようになり、インドなど多くの国々の主権が著しく損なわれるだろう。インダストリオールは、労働者の権利を擁護するために引き続き貿易政策問題に介入していく」

 ヴァルター・サンチェスは先ごろのバングラデシュ訪問に触れ、次のように語った。
「バングラデシュの労働者は、最低賃金の増額を要求した際に厳しく弾圧・投獄された。インダストリオールのグローバル・キャンペーンの結果、投獄された労働組合員全員が釈放された。私たちは今後もサプライチェーンに焦点を合わせて、労働者の利益を守るために組合の力を強化すべく戦略的に活動するつもりだ」

 インダストリオール執行委員を務めるインド全国金属労連(INMF)会長のG・サンジーバ・レディー博士が、ヴァルター・サンチェスを歓迎してこう述べた。
「インドの労働組合運動は、右翼政権から絶えず攻撃されている労働者の権利を保護するために、インダストリオールによる関与の強化を必要としている。国際労働組合運動は、中央労働組合が協力している合同労働組合委員会が開始した闘いと連帯すべきだ」

 インダストリオール加盟組織は、在宅労働者の社会保障、ILO在宅形態の労働条約(第177号)の批准、鉱業で不安定雇用が増加している問題、鉱山の安全衛生に関するILO第176号条約の批准といった主要問題を提起した。

 さらにセメント部門の加盟組織も、ラファージュホルシムとのグローバル枠組み協定締結に向けたインダストリオールの努力を歓迎し、インドのセメント部門で働く不安定労働者の利益の保護にもっと注意を払うよう求めた。

 インダストリオール・インド女性委員会は、製造業部門、特に既製服部門における女性労働者の問題に取り組むために徹底的な関与を求めた。インド女性委員会は、もっと多くの女性労働者を組合に加入させ、セクシャル・ハラスメントや女性に対する暴力に対処する能力を強化する必要があることを強調した。

 インダストリオール加盟組織は、国家雇用可能性向上ミッション(NEEM)制度のもと、全国の工場が劣悪な賃金で若年労働者を採用している搾取的な慣行をなくすことの必要性も強調した。この制度では、労働者は労働法の対象とならず、使用者には訓練期間終了後に雇用を提供する義務がない。

 ヒンドスタン亜鉛社のインド全国金属労連(INMF)代表が、不安定労働者の組織化と同一労働同一賃金の獲得の成功例を共有し、すべての常用労働者組合に対し、各社で積極的に不安定労働者を加入させるよう促した。