広報ニュース

第68号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年6月30日)

独ダイムラー労働者、将来の雇用を求めて闘争

2017-06-29

ウンターテュルクハイムのメルセデス・ベンツ工場

 ウンターテュルクハイムにあるメルセデス・ベンツの主要供給工場の従業員代表委員会は、2017年7月1日から超過労働をいっさい認めない。

 この決定は、電動モビリティーとウンターテュルクハイム工場の今後をめぐる経営陣との難しい交渉を経て下され、シンデルフィンゲンで生産されるメルセデス・ベンツSクラス車とEクラス車の将来の供給に混乱を引き起こした。

 今までのところ工場経営陣は、計画されているバッテリー工場はウンターテュルクハイム工場の下位施設とすべきではなく、ドイチェ・アキュモーティブ社に設立すべきだと主張している。アキュモーティブ社はカーメンツ(ザクセン州)に拠点を置くダイムラー子会社である。これは現在メルセデス・ベンツ車向けにエンジンやトランスミッション、車軸を生産しているウンターテュルクハイム工場の労働者約1万9,000人にとって、深刻な脅威となる。

 同社はすでにバッテリーの製造規模を拡大しており、労働者は、ダイムラーがエンジン部品と組立ラインの労働者が少なくてすむ電気自動車への支出を増やす中で、今後工場の注文が減るかもしれないと懸念している。

 すべてのメルセデス・ベンツ工場にとって、重要部品の生産場所の問題は将来のeモビリティーにとって非常に重要である。将来の電気自動車を既存の工場に組み入れるという基本的な誓約は、シンデルフィンゲン、ブレーメンおよびラシュタット工場の建設工事の必須条件だ、と従業員代表委員会代表は主張する。ウンターテュルクハイム工場についてはそのような約束がなされていないが、今度の変更で労働者は甚大な影響を受けるだろう。

 同時に、工場経営陣は特に、全従業員について労働時間口座の日数を年間3日減らしたがっている。この3日間は、個人所得に換算すれば従業員1人当たり年間650ユーロに相当し、従業員代表委員会は強く非難している。

 これまでのところ経営側は抵抗を示しており、この現場でバッテリー製造を維持するために必要な投資は多額すぎると主張している。これはウンターテュルクハイム工場の現在の場所など、いくつかの要因が原因である。バーデン・ビュルテンベルク州では、同社がカーメンツ地区にすでにバッテリー工場を構えているザクセン州より金属関税が高い。

 これに先立って、今年初めの電動モビリティー導入をめぐる交渉の際、工場経営陣は後部eATS(電気駆動システム)の生産も発表している。しかしその後、同社代表は、この案はもはや提示に含まれてないと発表した。

 メルセデス・ベンツ・ウンターテュルクハイム従業員代表委員会のウォルフガング・ニーケ委員長は次のように述べている。
 「ここネッカー谷における私たちの未来は、伝導機構の未来と密接に関係している。だから、明日の針路を今日定めることが重要であり、労働者と従業員代表委員会は、会社ができるだけ多くの寸法の電気駆動部品を生産することを期待している」

 

キャタピラー労働組合ネットワーク、課題を克服して前進

2017-06-26

ドイツ・フランクフルトに集うキャタピラー労働組合ネットワークの代表者

 北米、ブラジル、ヨーロッパ、日本、インドの多国籍機械エンジニアリング大手キャタピラーの組合から30人以上の労働組合代議員が集まり、6月22~23日にドイツ・フランクフルトで会合を開いた。

 キャタピラーは過去数年間に大きく変わった。同社は明確な戦略に従っていないようで、金融市場に振り回されてその場しのぎの決定を下している。この状況は新任CEOジム・アンプルビーの就任後も続いている。

 ここ数年、適切な情報・協議なしで、従業員や労働組合と真の協議を行うこともなく、多くの工場閉鎖(北アイルランドのモンクスタウン、ベルギーのゴスリースなど)が実施された。この事態は、グローバル労働組合ネットワークが情報を共有し、影響を受ける組合・労働者間でコミュニケーションを改善する必要性がますます高まっていることを示している。

 ある代議員はネットワークの立場と意味を次のように説明した。
 「キャタピラー経営陣は何をしようと、どこへ行こうと、組合が目を光らせていることを認識しなければならない。同社が私たちを承認するかどうかはどちらでもいい――私たちは同僚や同志が競い合わされることの無いようにしたいだけだ」

 キャタピラーはこの部門で最も反組合的な多国籍企業の1つと言っていいが、インダストリオール労働組合ネットワークが存在し、その内部コミュニケーションが改善している状況は、キャタピラーでさえ長期にわたって組合を避けることはできないことを示している。

 会合参加者は、キャタピラーの悪しき慣行や工場閉鎖について議論するだけでなく、共通の解決策を見つけて内部コミュニケーションと情報交換を改善するための戦略も策定した。これらの活動は今後12カ月間に実施され、2018年の次期グローバル・ネットワーク会議で修正される。

 マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール担当部長は、この会合について次のように述べた。
 「キャタピラーは組合を避けるためなら手段を選ばない会社であると同時に、労働者を粗末に扱っている。私たちは労働者に発言権を与えるために最善を尽くす。労働者を貸借対照表上の数字としか見ない態度は決して受け入れない」

 

インダストリオール、国際労働総会で労働者・労働組合の権利を主張

2017-06-22

国際労働総会で発言するケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長

 国際労働総会は、2週間に及ぶ連日の集中的な活動や会合を終え、6月17日にジュネーブで閉会した。

 インダストリオール・グローバルユニオンと加盟組織は、いくつかのサイド・ミーティングに積極的に参加。例えば、食料への権利に関する元国連特別報告官で国連経済的、社会的および文化的権利に関する委員会メンバーであるオリビエ・デシューター教授と、新しい「多国籍企業に関する国連条約」をめぐり討議した。国連人権理事会が政府間作業部会を設置し、多国籍企業その他の企業の活動を規制する法的拘束力のある国際文書を作成しようとしているので、ITUCは労働組合に対し、このプロセスに関与して企業に国際的責務を守らせるようにすることを求めた。

 国際労働組合権センターの会合では、イランのインダストリオール加盟組織が、組合として機能することが困難な状況にあると訴えた。インダストリオールのフェルナンド・ロペス担当部長が、国際労働機関の文書にアクセスし、イランで活動する多国籍企業と締結されたグローバル枠組み協定を利用できるよう、インダストリオールとして支援すると述べた。韓国民主労総のリュ・ミュクンが、韓国の労働者と国民が実施した闘争が勝利を収めたことついて、参加者に最新情報を提供した。労働組合運動は、新たに選出された大統領との実りの多い対話に期待を寄せている。

 移住と労働に関する総会委員会では議論が白熱し、使用者グループは現行条約を弱体化させ、内容を薄めた勧告を要求しようと躍起になった。最終的に重要な闘いに勝利を収め、ILOが2本の条約(移民労働者に関する第97号条約と第143号条約)の批准を促進しなければならないことが承認された。労働者代表団は数カ国政府の支援によって、非常に強力な追加勧告に合意した。

 インダストリオールと加盟組織は、加盟国によるILO基準の適用状況を監視する三者構成ILO機関、基準適用委員会に積極的に参加した。鉱山における安全および健康に関するILO第176号条約の総合調査について発言したのを皮切りに、本会議では組合員の結社の自由の重大な侵害を強調した。労働者グループは、使用者グループと取り決めた24の事例リストに、ILO第87号条約および第98号条約の違反の蔓延がよく知られているブラジルとコロンビアが含まれていないことに強く抗議した。

 インダストリオールは7カ国の深刻な事例を報告、これらの事例は、カザフスタンにおける組合の強制的解散、独断的な逮捕、抗議行動の非合法化という最近の事件から、バングラデシュにおける暴力や労働者の弾圧、組合登録の拒否、ジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長が非難した、カンボジアおける労働組合の法的保護の欠如や独立労働組合員の復職の遅れまで、多岐にわたっていた。

 トルコの事例では、ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長が以下のとおり要求した。
 「結社の自由、スト権、団体交渉権など、トルコにおける労働組合権の尊重と完全な実施に特に注意を傾けなければならない」

 ウズカン書記次長はさらに、すべてのグローバル・ユニオンが団結して拘留中の労働者・公務員全員の釈放を求め、トルコ政府当局に以下を要求すべきだと述べた。
 「証拠に基づいておらず、法の支配に従っていない集団解雇・停職、威嚇および逮捕をやめ、非常事態措置に関する調査委員会を設置し、この委員会の決定を妥当な時間内に司法審査ならびに独立した透明かつ効果的な上訴手続きに付し、欧州レベルでの最後の手段にもなるよう確保する」

 インダストリオールとアルジェリアの加盟組織SNATEGSは、大きな汚職事件を明るみに出したことを理由に、同労組の書記長が反組合的な迫害を受けている状況を強く非難した。これは国有エネルギー会社ソネルガスが10年にわたって不法に電気代を値上げし、800万を超える顧客に影響を及ぼしたという事件である。インダストリオールは以下のとおり要求している。
 「ラウーフ・メラルらSNATEGS組合員に対する告発をすべて取り下げ、93人の組合員を復職させ、政府が直ちにSNATEGSの登録抹消決定を取り消すこと」

 インダストリオールのフェルナンド・ロペス担当部長は、グアテマラ政府が攻撃や嫌がらせを繰り返し、5年前に組合登録したテナリスの加盟組織(SINTRATERNUIM)の団体交渉権の承認義務を果たすよう企業に要求しなかったことを糾弾した。

 ウクライナのケースでは、インダストリオールは他のグローバル・ユニオンとともに、ILO第81号条約(労働監督)がまったく遵守されていない結果、ウクライナの鉱山では2016年だけで485件の事故が発生し、鉱山労働者12人が死亡したこと、安全衛生保護対策への政府資金の供給が不足していることを非難した。

 すべてのプレゼンテーションとCASで討議した事例の結論は下記サイト参照:
 http://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/ed_norm/relconf/documents/meetingdocument/wcms_558659.pdf

 そして最後に、ILO総会の目的は会合だけではなく、インダストリオールはブラジルのナショナルセンターが呼びかけたデモ(ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長が演説)、アルジェリアの弾圧を非難する動員、すでに伝統となった国際公務労連主催の自転車によるキャンペーン「Route of Shame」など、多くの動員に参加した。

 

グラスベルグでストが3カ月に及び、労働者4,220人が解雇

2017-06-22

ストライキを継続するフリーポートの労働者

 インダストリオールは、この悪化の一途を辿る争議に介入するためにインドネシアへのハイレベル・ミッションを計画している。

 PTフリーポート・インドネシアとの間で進行中の争議の結果、スト実施を理由にこれまでに労働者4,220人が解雇されている。労働者たちは、会社からスト参加によって「自発的に辞職」したとみなされて解雇された。

 この鉱山のインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織、化学・エネルギー・鉱山労組(CEMWU SPSI PTFI)は、7月30日まで2回目のスト延長を発表した。会社側が労働者の分断を試みているにもかかわらず、労働側はストを続けている。

 組合はストに対する支援を確立しようと懸命に努力しており、7月10日にインドネシアのすべての労働組合総連合とともに記者会見を開き、スト参加者へのインドネシア労働運動の支援を確認することにしている。

 組合はパプア州下院で同州政府の支持を得た。パプア州知事はフリーポートにスト参加者の復職を公式に要求し、地方政府は調停会合の招集によって局面を打開しようとしている。フリーポートは2回の会合要請に応じず、6月20日(火)に開かれた会合に出席しなかった。3回目の招待状が送付される予定である。

 インダストリオールは8月初めにインドネシアへのハイレベル・ミッションを計画しており、鉱業・素材金属部門の加盟組織から成る連帯代表団が同行する。代表団はインドネシア政府代表、地域政府、フリーポート、組合および地域グループと会談し、この破壊的な紛争の解決策を見いだそうと努める。

 このミッションは、PTスメルティングで発生している関連する争議にも焦点を合わせる。同社はフリーポートが一部所有する川下事業で、これまでに300人を超える労働者が解雇された。

 インダストリオールはレイバースタートとキャンペーンを実施しているところで、インドネシア政府に対し、合法的なストの実施を理由に労働者を解雇しているフリーポートに対して強い態度を取るよう要求している。インドネシアは中核的ILO条約を批准しており、フリーポートの行動はインドネシアの労働基準に違反している。

 インダストリオールは6月にジュネーブで開かれたILO総会で、インドネシア政府の代表と会談した。ケマル・ウズカン書記次長はILO総会で次のように発言した。
 「私たちはインドネシア政府に対し、グラスベルグ鉱山で介入し、4,000人を超える労働者の不当解雇に起因する地域社会の社会的災害を防止するよう訴えている」
 「インドネシア政府が介入し、労働者の基本的権利を守るとともに、PTフリーポート・インドネシアの非人間的・非妥協的な姿勢の結果として勃発する恐れのある暴力事件を防止しなければならない」

 インダストリオールの見方では、同社はこの争議を、同社事業の利権の51%を要求している政府との交渉戦術として利用している。同社は組合つぶしと臨時労働者の雇用も画策している。生産量が増えれば、フリーポートは解雇された労働者の代わりに契約労働者を雇うと予想される。

 

航空宇宙労組、反組合キャンペーンに対抗

2017-06-21

航空宇宙ネットワーク会議に出席したヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長(左)と
ボブ・マルティネス共同部会長(中央)、マリア・ペレス共同部会長(右)

 世界で最も有力な航空宇宙労組が2017年6月19~20日にフランスのパリに集まり、インダストリオール・グローバルユニオン・ネットワーク会議を開いた。

 北米、ヨーロッパ、南米、アフリカ、アジアの航空宇宙労組が、サウスカロライナから上海、モロッコ、アラバマ州モービルまで、世界中で未組織労働者を組織化するための新しい革新的な戦略について議論した。

 約65人の参加者が、全世界数百万人の航空宇宙労働者の賃金・給付を改善し、雇用と退職後の生活を保障する労働協約の取り決めをめぐり協議した。

 ボブ・マルティネス共同部会長・IAM国際会長が次のように述べた。
「組合の力を通して世界の航空宇宙労働者全員に公正と尊厳をもたらすための取り組みを、引き続き強化していく機会がある。これはグローバルな航空宇宙会社に匹敵するグローバルな航空宇宙労働者運動を確立するチャンスだ」

 この会議で参加者は、反組合的・反労働者的な過激主義が高まっており、政府や企業に支配されない真の組合に参加する基本的人権をつぶそうとしている現状について討議した。参加者たちは、生産国の内外で組織労働者の仕事が、多くの場合、組合結成権や団体交渉権といった基本的人権が承認あるいは実施されていない中国のような国々の未組織労働者に、外部委託される状況が続いている問題も取り上げた。また、国際貿易ルールを守らず、公正貿易と平等な競争条件ではなく、航空機販売の見返りに技術や生産の移転を要求する中国のような国々との不公正競争をめぐっても議論した。

 参加者は、世界の2大商業航空宇宙会社、ボーイングとエアバスの経営陣による反組合キャンペーンに焦点を合わせた。ボーイング経営陣は、世界で最も悪名高い組合つぶし企業の先例に倣って、サウスカロライナ州で労働者によるIAM加入を阻止するために数百万ドルを費やした。エアバス経営陣は出し抜かれまいと、インダストリオールとのグローバル枠組み協定に直接違反して、アラバマ州で反組合キャンペーンを展開している。

 参加者はアラバマ州の現状を考慮して、インダストリオールにエアバスとの協定の見直しを要求。インダストリオールに対し、エアバスとボーイングで組織化キャンペーンを調整することも求めた。

参加者は全加盟組織に、次のことに改めて取り組むよう求めた。

  • すべてのグローバル航空宇宙会社で効果的なネットワークを構築するとともに、同盟する加盟組織が各国の組織化・団体交渉の展開について電子的に情報を提供し合える通信システムを開発する。
  • 多国籍企業とのグローバル従業員代表委員会を設置し、機会を生み出す。
  • 貿易交渉担当者に対し、販売の見返りに技術・生産移転を要求する慣行を厳しく禁止する措置の導入を促す(特に中国のように、そのような慣行を乱用する国々について)。
  • 引き続き航空宇宙労組の地球規模の同盟を発展させ、協力の拡大、グローバル・キャンペーン実施能力の強化、集団的な力の構築に効果を上げる革新的な形態の国際連帯を生み出す。
  • 2年前にスペインのエアバスでスト権の行使を理由に組合員が攻撃された事件など、反組合的・反労働者的な取り組みと闘う。
  • 国連やILO、OECDといった政府間・国際機関を必要に応じて十分に活用し、航空宇宙部門の使用者に国際基準を守らせ、国際的期待に応えさせる。

 代議員は退任するブライアン・コーラー航空宇宙担当部長に、この部門のために働いてくれたことを感謝し、後任者と緊密に協力することを約束した。

 

インダストリオール結成5周年

2017-06-20

2012年にコペンハーゲンで開催されたインダストリオール・グローバルユニオン結成大会

 コペンハーゲンの結成大会から5年、インダストリオール・グローバルユニオンは、世界中で労働者の権利と社会的公正を求めて闘う力強いキャンペーン組織になるという約束を果たしている。

 2012年6月20日、3団体が統合してインダストリオール・グローバルユニオンを結成し、140カ国の労働者5,000万人をまとめ上げた。インダストリオールは、鉱業、金属、エネルギー、化学、繊維および製造業をはじめとする産業で600団体を超える加盟組織を擁する。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。
「過去5年間にインダストリオールは、団結すれば強くなることを繰り返し示した。私たちは多国籍企業に責任を負わせ、各国政府に聞く耳を持たせ、労働者の権利のために闘って勝利を収めた。インダストリオールは、国際連帯に効果があることを示す証拠だ!」

 2013年にバングラデシュで発生した悲惨なラナ・プラザ工場崩落事故によって1,000人以上の衣料労働者が死亡したあと、インダストリオールは運動の先頭に立ち、200社を超える多国籍ファッション・ブランドに法的拘束力のある火災予防および建設物の安全に関わるバングラデシュ協定(アコード)への署名を求めた。それ以来、アコードは1,600以上の工場を検査し、労働者200万人の安全を向上させた。インダストリオールはパートナーやUNIグローバルユニオンとともに、犠牲者への補償金3,000万米ドルの確保にも成功した。

 この5年間、インダストリオールの活動は5つの戦略目標を指針に進められてきた。すなわち、強力な組合の構築、グローバル資本への対抗、不安定雇用の根絶、持続可能な産業政策、労働者の権利の擁護である。

労働者の権利の擁護
世界中で労働者の権利をめぐる消耗戦が繰り広げられている。威嚇されている仲間の労働組合員へのインダストリオール加盟組織による支援は、国際連帯が有効であることを証明した。インダストリオールのキャンペーンは、カンボジアとバングラデシュで投獄された労働組合員の釈放を促し、イエメンとスペインで労働者の権利を支持し、韓国では権威主義的な大統領の失脚に貢献した。

強力な組合の構築
組合員数の増加はインダストリオールの使命の核になっている。インダストリオール組合構築プロジェクトの結果、インド、インドネシア、ザンビアをはじめ各国で数千人の新規組合員が加入した。女性・若年組合員数の増加は、組合の力の構築に不可欠である。2016年10月にリオデジャネイロで開かれた第2回インダストリオール大会以降、インダストリオールは指導部ポストと活動で女性代表性40%を目標に掲げている。インダストリオールで女性参加を促進するための取り組みは、さらに国内レベルの組合機構にも影響を及ぼしており、例えばインドネシアのインダストリオール金属関連加盟組織FSPMIは、組織機構で女性代表性40%の割り当てを設定している。

グローバル資本への対抗
リオ・ティントとラファージュホルシムをターゲットにした運動など、インダストリオールの企業別キャンペーンは、労働者に大きな利益をもたらしている。インダストリオールは、必要があればグローバル資本に対抗するが、目的を達するには社会的対話が重要であることも認識している。多国籍企業ほぼ50社とのグローバル枠組み協定(GFA)は、基本的な労働者・労働組合の権利が促進・保護されるようにするうえで役立っている。フランスの大手自動車会社PSAおよび衣料ブランドH&MとのGFAは、サプライヤーの直接・間接労働者も含めたグローバル・サプライチェーン全体で労働者の権利を確保している。同様に、多国籍企業のインダストリオール労働組合ネットワークは、情報を共有して一緒に行動することによって組合・労働者に権限を与えるのに役立つ。

ストップ不安定雇用
インダストリオールは重点的プロジェクトを通して絶えず不安定雇用反対キャンペーンを展開しており、組合が何万人もの不安定労働者を組織化できるよう手助けしている。ディーセント・ワーク行動デーの10月7日に不安定雇用への抗議行動に参加するインダストリオール加盟組織が、年々増えている。

持続可能な産業政策
第4次産業革命と呼ばれることもある産業のデジタル・トランスフォーメーションが進む中で、インダストリオールは、自動化とデジタル化の影響を受ける全労働者に開かれた確かな雇用、持続可能な雇用を求めるキャンペーンを段階的に強化している。気候変動に取り組んで地球規模排出目標を達成するという課題に基づき、インダストリオールは、よりクリーンなエネルギーへの移行にあたって労働者が取り残されないように公正な移行を要求している。

 インダストリオールはキャンペーン組織であり、生活賃金キャンペーンには、産業別団体交渉を通して賃金を改善するための主要衣料ブランドとの画期的なACT協定が含まれている。

 「インダストリオールは前進の足場となる強固な基盤を築いた。私たちが直面している課題は大きいが、それに対応する用意ができている。加盟組織に過去5年間の多大な支持を感謝しており、今後も加盟組織を頼りにしている」とサンチェス書記長は述べた。

 

スウェーデンの投資銀行、ルノーをブラックリストに掲載

2017-06-13

トルコ・ブルサのルノー・オヤック工場の労働者

 トルコ・ブルサのルノー・オヤック工場における労働権侵害を受けて、スウェーデンの主要銀行SEBは、昨年2月に現地経営陣が警察を使ってデモ参加者を無理やり解散させた事件を理由に、このフランス系自動車メーカーをブラックリストに載せた。

 トルコ・ブルサのルノー・オヤック工場経営陣は2016年2月、予定されていた労働者代表選挙を前日になって中止した。トルコ労働社会保障省がこの選挙を違法とし、圧力をかけてきたというのがその理由である。加えてルノーは、スポークスパーソン2人を含む10人の労働者を直ちに解雇した。

 続いて、オヤック工場経営陣はさらに労働者を解雇。76人が職を失い、約600人が数日以内に解雇手当を受け取って退職するよう求められた。現地の工場経営陣は警察を使って平和的なデモ参加者に干渉し、労働者の自宅まで行ったり、出退勤時に圧力をかけたりして威嚇した。

 インダストリオールは、工場経営陣の行動とルノーがトルコで事態を改善するために何の措置も講じていない状況を強く非難した。このような行為は、ILO労働基準(結社の自由と中立性など)に対する同社の約束を盛り込んだ、インダストリオール・グローバルユニオンとのグローバル枠組み協定の約束に直接違反している。

 「ルノーは世界中の全事業所とサプライチェーン全体に責任を負っている。ルノーが主要投資銀行によってブラックリストに載せられた事実は、労働者の権利を侵害すれば隠れる場所がないことを示している」とヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は言う。
 「インダストリオール・グローバルユニオンは、ルノーがGFAに定める約束を果たすよう要求し続けている」

 

インダストリオール、グラスベルグ危機の悪化でキャンペーン開始

2017-06-08

パプア州ティミカで抗議するグラスベルグ労働者

 インドネシア・パプア州にあるPTフリーポートのグラスベルグ鉱山で、これまでにスト中の労働者3,000人以上が解雇された。

 PTフリーポートはインドネシアの労働法と自社の労働協約に違反し、労働者に一方的に一時帰休を取らせ、スト参加労働者を解雇している。グラスベルグ鉱山では、これまでに3,000人を超える労働者が解雇された。グラスベルグで採取された銅を加工しているフリーポートと三菱の合弁事業、PTスメルティングでは数百人以上が解雇されている。

 インダストリオールはレイバースタートとともにキャンペーンを開始し、インドネシア政府にフリーポートに法律を遵守させることを求めている。このメッセージは政府に対し、グラスベルグとPTスメルティングで介入して労働者の不当解雇を取り消すよう訴えている。

 政府は、フリーポートと三菱に労働者の権利を尊重させるとともに、フリーポートがグラスベルグのCEMWUとの交渉の場に戻り、フリーポートおよび三菱がPTスメルティングのFSPMIとの協議を再開するようにしなければならない。労働者の基本的権利は侵害することができず、政府はこれらの争議が秩序不安や暴力沙汰に発展する前に介入しなければならない。

[レイバースタートのキャンペーンに参加する方はこちらへ]

 インダストリオールは明日、ジュネーブでインドネシア政府の代表と会談し、この危機の緊急性を強調して決議を要求する。

 スト中の労働者、一時帰休中の労働者、解雇された労働者数千人が昨日、反抗の姿勢と決意を表明して、パプア州のティミカ行政センターにあるミミカ県庁前で平和デモを実施した。

 

ブラジルの造船業危機で5万人が失業

2017-06-07

ローカルコンテント政策の柔軟化に反対して行進し、国内造船業の保護を要求するブラジルの労働者

 ブラジルの政治経済危機は造船業に大きな影響を与えている。多くの造船所で受注が減ったため、5万人の労働者が失業した。

 ブラジル造船業の最盛期は遠い昔の記憶になってしまったようである。国営石油会社ペトロブラスがプレサル油田を発見したあと受注が満杯になり、造船業は8万2,000人の労働者を雇用していたが、そんな時代は去った。

 現在の状況はまったく異なり、5万人の労働者が職を失った。国内40カ所の造船所のうち12カ所が行き詰まり、他の造船所も生産能力以下で活動している。これはブラジルとペトロブラスを混乱に陥れた汚職事件の直接の結果である。

 造船業は新しい事業に多角化し、産業・物流センターを生み出そうとしている。ブラジル海軍の潜水艦開発プログラム(PROSUB)への申し込みを検討している労働者もいる。この訓練プログラムは、当初は海軍技師・技術者32人の小グループが参加していたが、すでに300人以上の労働者を対象とするまでに拡大し、この人数は大幅に増加すると予想される。

 一方、労働者は自分たちの産業と権利を守るために行動を起こしている。石油労連(FUP-CUT)と上部団体の総連合CNQ-CUT(インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織)は、ペトロブラスの民営化に反対して大規模なデモと「Petrobras is Ours」キャンペーンを組織。このキャンペーンは6月8日に大集会と抗議行動を実施した。

 CNM/CUT(インダストリオール傘下)は4月以降、造船業を守るための議会戦線の設置を要求している。これによって造船部門の要求を支援し、造船業の復活に向けて措置を講じるよう政府に働きかけ、雇用と投資、ローカルコンテント政策の維持・保護を求めて闘う。

 CNTM/FS(インダストリオール傘下)も、造船業の失業に関して懸念を表明している。CNTM/FSは、国外への石油掘削用プラットフォームの発注に反対するとともに、国内エンジニアリングへの投資とローカルコンテント政策を支持し、造船業の成長とさらなる雇用の創出を保証する措置の採用を求めている。

 CNM/CUTとCNTM/FSの組合員は2016年11月の金属労働者の全国闘争デーを実施し、全員が同じ側に立っていること、より多くの雇用を求めて闘い、国内産業を守り、労働者の権利を保護するために一致協力していくことを示した。

 2016年と2017年に、ブラジルの主要ナショナルセンターに加盟する全部門の労働者が、自分たちの権利を守り、より多くの雇用を求め、ミシェル・テメル政権の改革に反対するためにデモ行進した。ナショナルセンターは6月5日にサンパウロで会合を開き、今から次のゼネストまでの行動スケジュールに合意した。

 ペトロブラスはブラジルの石油生産の90%を担っており、造船業とブラジル経済の大きな柱の1つである。造船所は意欲的な拡張計画に対応して発展したが、この計画は同社が汚職事件の中心となった2014年に破綻した。

 

インダストリオール、ICT電機・電子部門の優先課題を設定

2017-06-06

インドネシアのボゴールに集まったICT・電機・電子部門の労働組合

 5月22~23日にインドネシアのボゴールでインダストリオール・グローバルユニオンICT・電機・電子運営委員会が開かれ、12カ国から約44人が参加した。

 オーストラリア、ブラジル、デンマーク、フランス、インド、インドネシア、日本、マレーシア、シンガポール、タイ、イギリス、ベトナムから14組合が出席し、女性が参加者の41%を占めた

 プリハナニ・ボエナディ共同部会長が、開会の辞で次のように述べた。
 「私たちは急速に変化する産業で新たな課題に直面している。ITUCの企業欲根絶キャンペーンで明るみに出されたサムスンをはじめ、正しく活動していない企業に対する効果的な戦略を策定する必要がある」

 ジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長が、2016年10月にリオ大会で採択されたインダストリオールの新しい規約とアクション・プラン2016-2020について報告した。この部門はサプライチェーン戦略に焦点を合わせる必要があり、多国籍企業への対処にあたって組合の勢力を結集する方法に関して繊維・衣料産業から学ぶことができる、とも書記次長は述べた。

グローバルな傾向と部門別活動
 ICT電機・電子部門では(年間収入で)世界トップ20の多国籍企業の70%が、結社の自由(ILO第87号条約)と団体交渉権(ILO第98号条約)が尊重されていない3カ国、すなわちアメリカ、韓国、中国の企業である。これらの企業は世界中で事業を拡大し続けているが、民主的労働組合は存在しない。

 一方、この部門の労働集約的生産は、賃金が低いASEAN諸国やインドに移転し続けている。これらの国々のサプライチェーン全体で、職場における不安定労働者の比率が上昇の一途をたどっている。インダストリー4.0のような製造業の変化は、すでに雇用や労使関係に大きな影響を与えており、その結果、労働協約(CBA)によって保護されない未組織ホワイトカラー労働者が増加している。多国籍企業における労働組合ネットワークの創出・開発は、これらの問題に取り組み、国内・地域・世界レベルで多国籍企業に対する組合の力を強化する手段として、重要性が高まっている。

 インダストリオール・ヨーロッパのアン=マリー・ショピネICT部会長がヨーロッパの状況の概観を提供し、政治的混乱と貧困の悪化を強調した。同部会長は、産業のデジタル変換や労働者にとっての潜在的リスクとチャンスに関するインダストリオール・ヨーロッパの政治的要求についても報告した。

 ジュディ・ウィナルノSPEE FSPMI会長が、インドネシアのICT電機・電子産業における同労組の現在の活動と課題、特に不安定労働者と社会保障制度について語った。インドネシアの組合は明確な組織化ターゲットを設定しており、CBAの数を増やしたいと考えている。

組織化と組合の力の強化
 
欧州委員会が支援する5カ年組織化プロジェクトが4年目に入っている。インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、ベトナムでは、過去3年間に1,671人の労働組合活動家と労働者(うち30%が女性)が、このプロジェクトのもとで訓練セッションに参加した。このプロジェクトは、未組織労働者や不安定労働者、移民労働者、女性・若年労働者に接触し、労働協約の保護対象に含めるうえで成果を上げている。1万2,000人以上の新規組合員がインダストリオール加盟組合に加入し、CBAの数が増えた。

 EIEUノーザンリージョンも、欧州委員会プロジェクトに基づく組織化活動と訓練計画の成功について報告した。ベトナムVUITとブラジルCNTMが自国の産業における労働者の状況について発言し、日本の電機連合が短期契約労働者のために長期雇用を促進する取り組みについて報告した。

不安定雇用とサプライチェーン戦略
 
ICT電機・電子産業は競争が激しく、革新的で、目まぐるしく変化しており、短い生産サイクルで活動している。同時に、この産業は不安定雇用の増加を助長している。常用労働者が不安定な立場に追い込まれている。組合は、急速に増加する派遣・契約・外注労働者や移民に接触しようと苦闘している。これらの労働者は、雇用条件をめぐって団体交渉を行う機会がまったくと言っていいほどない。

 インドネシアのロメニックとタイTEAMが、サプライチェーンの職場に焦点を合わせた不安定雇用との闘いについて報告。オーストラリアETUは、電機労組として建設・請負の観点から、不安定雇用の問題や現在の建築基準法に関して報告した。(セクション3のオーストラリアETUのプレゼンテーションを参照)

 グッドエレクトロニクスがインダストリオールとの関係を説明し、不安定な労働条件や労働者の権利の問題に共同で取り組むうえでの自らの経験と機会を共有した。

 特にサプライチェーン全体で多国籍企業が企業責任を果たしていないため、この部門では労働安全衛生や責任ある鉱業、電気電子機器廃棄物も大きな課題である。

未来の製造業と持続可能な産業政策の促進
 
労働組合は持続可能な産業政策に関する活動と、そのような政策を奨励するうえで組合が直面している問題や課題を共有した。スマート技術やスマートシステムは、労働者の行動や業績の幅広い管理・監視につながる恐れもあるので、インダストリー4.0の将来の影響が議論の大きな焦点となった。労働組合は、雇用や労働条件、労働者の権利に対する大きな影響に備え、公正な移行に向けた活動に集中しなければならない。

 イギリスのユナイト・ザ・ユニオンとデンマークのCOインダストリが、最近の技術変化の速さと複雑さについて話し、製造業の未来に関する問題や課題を取り上げた。シンガポールUWEEIが、未来の経済戦略を策定するための組織機構を紹介した。例えば、組合や商工会議所、公的機関、企業、教育者が加わる未来経済委員会などである。

多国籍企業における労働組合ネットワークの創出と開発
 
インダストリオールのアクション・プランに定めるとおり、この部門の組合は、多国籍企業と活発に対話して強力な労使関係を構築し、企業の全レベルで組合の懸念を提起できるようにするとともに、世界中の事業所で労働者の国境を越えた交流・調整を促進する必要がある。この部門は、あらゆるレベルで強力な労働組合ネットワークの創出プロセスを開発・促進することに焦点を絞り、加盟組織間の連帯を強化する必要がある。

 インドのシーメンス労組が、インド国内で同社の労働組合ネットワークを拡大し、シーメンスとのグローバル枠組み協定やネットワークの利用によって不安定労働者の問題に取り組むための活動を報告した。

部門アクション・プランのフォローアップと将来の活動
 
運営委員会は、2017~2018年の戦略計画と、世界会議2015で採択されたアクション・プランを満たすために強化する必要のある分野に合意した。例えば、不安定雇用との闘い、サプライチェーン、労働組合ネットワーク、労働安全衛生、NGOとの協力、持続可能な産業政策などである。

野中孝泰共同部会長が、結びの言葉で以下のとおり主張した。
「ICT電機・電子産業は、人々の生活改善に貢献するために重要な役割と使命を担っている。したがって、この産業をリードするグローバル企業は世界中の市民からの尊敬を勝ち取らなければならない。企業は不安定雇用と劣悪な労働条件の撤廃によって、『国際競争に勝つ』ことから『人を最優先する』ことへと発想を転換する必要がある」

 会合終了後、プリハナニ・ボエナディ共同部会長の勤務先であるPTホノリス・インダストリーの工場を見学した。同社はLED照明器具プリント基板やプラスチック射出製品など各種製品を製造している。代表団は地元の組合幹部ならびに経営陣と会談し、過去の経緯や建設的な労使関係について学んだ。

 

フリーポート・インドネシアの精練工場で侵害続く

2017-06-01

インドネシアのPTスメルティング前で平和的な座り込みデモを実施するスト参加者

 PTフリーポート・インドネシアの論議を呼んでいるグラスベルグ鉱山の銅精鉱に大きく依存している東ジャワの精練工場で、労働争議が発生した。

 フリーポート・マクモラン傘下のPTフリーポート・インドネシアと三菱マテリアルが共同で所有・運営するPTスメルティングで、300人を超える労働者が2017年1月19日にストを実施したあとレイオフされた。

 PTフリーポート・インドネシアは、2016年にPTスメルティングの精鉱需要のほぼ90%を供給した。

 PTスメルティングは、西パプアの大規模なグラスベルグ金・銅山で2,000人の労働者を解雇したときと同様に、この309人の労働者はスト参加によって自発的に辞職したと主張している。ストに参加した労働者全員が、それ以来賃金を支払われていない。同社は、その後死亡したスト参加者の1人の遺族に給付・権利を与えることも拒否している。

 PTスメルティングが組合と協議せずに賃金に関する労働協約に違反したため、争議が発生した。インダストリオール加盟組織のインドネシア金属労連(FSPMI)は、この工場で労働者を代表している独立組合の1つである。

 PTスメルティングは、現地労働当局の調停要件を満たすことができず、レイオフに関する争議をグレシックの労使関係裁判所に付託した。組合幹部と組合員を含む309人の労働者が法廷に召還されており、5月31日に裁判が始まる。

 PTスメルティングはインドネシア国家人権委員会による調停の申し出も拒否した。

 組合は近藤比呂志PTスメルティング取締役社長に対し、紛争解決に向けて対話を始めるよう求めている。組合側の要求は、不法に解雇された309人の労働者を復職させ、労働協約と共同労働協約に従うことである。組合は、PTスメルティングが亡くなった労働者アグス・セティアワンの妻子に支払うべき給付を支給することも要求している。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。
「私たちはPTスメルティングに対し、300人以上の労働者に対する訴訟を直ちに取り下げ、復職させるよう要請する。インドネシア政府も介入し、争議がこれ以上悪化しないようにするとともに、無神経な労働契約の打ち切りを阻止しなければならない。この行為は、スト権を含む国際労働基準を完全に侵害している」

事実:
PTスメルティングの所有者には、PTフリーポート・インドネシア(25%)、三菱マテリアル(60.5%)、三菱商事ユニメタルズ株式会社(9.5%)が含まれている。

PTフリーポート・インドネシアは、2016年にPTスメルティングの精鉱需要の88%を供給した。

PTスメルティングは、PTフリーポート・インドネシアの生産高の約40~50%を占めている。

 

オーストラリアの労働者、フレッチャー・インシュレーションで勝利

2017-06-01

ストライキ中のフレッチャー・インシュレーションの労働者

 フレッチャー・インシュレーションの労働者は96日間のストを経て、余剰人員解雇、臨時労働者の利用および労働時間に関する条件の改善を勝ち取った。

 インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織オーストラリア労組(AWU)の組合員であるグラスウール労働者90人が、2017年6月1日に職場に復帰する。使用者は給付の剥奪、余剰人員解雇の強要、契約労働者の導入を行うと威嚇していたが、労働者たちは労働条件の重要な改善を何とか勝ち取ることができた。

 ダンデノン工場経営陣はストライキの間中、労働者が以前に締結した労働協約を解除し、賃金を半分にしてほとんどすべての受給権を廃止する協約を再び全従業員に強制すると言って脅した。

 2月17日にストが始まってから、インダストリオールはフレッチャー・インシュレーション労働者との連帯を表明している。インダストリオール執行委員会は4月にスイス・ジュネーブで会合を開き、オーストラリアのフレッチャー・インシュレーションでスト中のAWU組合員を支持する特別決議を採択した。

 フレッチャー・インシュレーション労働者を代表しているオーストラリア労組のダニエル・ウォルトン全国書記は、ストの結果について次のように述べた。
「96日間も持ち堪えるのは信じられないほど大変なことであり、真の連帯と真の勇気が必要だ」
「オーストラリアならびに全世界から寄せられた支援は、労働者たちがこの困難な時期に闘い続けるために必要なエネルギーと希望を与えてくれた」
「これらの労働者は頑張り通すことによって経営陣に、提案されていた一連の極端な立場を変えさせることができた。組合員全員が、ただただ彼らの勇気を尊敬し称賛している」

 フレッチャー労働者の勝利を記念して、AWUはストの結果をまとめた短いビデオを制作した。
https://www.youtube.com/watch?v=hyJaFzN3v08

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長はこう述べた。
 「この勝利に関して、すべてのフレッチャー・インシュレーション労働者を心から祝福する。彼らの団結と断固たる努力、勇気のおかげで、この紛争は従業員と家族に有利な形で解決した。インダストリオールと世界中の加盟組織が実施したグローバルな連帯行動が、この勝利に貢献したことを大変うれしく思う」

 

韓国の金属労働者、改革と権利の尊重を要求

2017-05-30

ソウルの国会前で集会を開催する労働者

 韓国金属労組の組合員3,000人が5月24日にソウルの国会前で集会を開催し、財閥改革法案の制定、製造基盤の開発に関する特別法、組合つぶし禁止法案を要求、これら3つの改革を支持する全国各地での一連の集会を締めくくった。

 地方組合幹部と組合員がソウルに結集し、韓国開発銀行、韓国輸出入銀行、ソウル・ヤンジェドンの現代・起亜自動車本社、ソウルのKBオートテック(カブウール)本社の前でプレ集会デモを実施したのち、国会前に集まって文在寅政権に3つの改革法案の制定を要求した。

 デモ参加者は、民主党、自由韓国党および国民の党の本部も訪れ、各党に3つの改革法案の制定を要求する書簡を手渡した。

キム・サンギュKMWU委員長

 キム・サンギュKMWU委員長はデモの開会の辞で次のように述べた。
「文在寅大統領の当選後、変革への期待が一気に高まった。しかし、労働者の生活はまったく変わっていない。造船業で働く不安定労働者の空中座り込み抗議が続いており、YPR(ユソン・ピストンリングス)とKBオートテック(カブウール)の労働者は今なお組合つぶしと闘っている。……政権が変わっても、私たちの闘いは続いている」

 組合幹部は、財閥と呼ばれる大規模同族コングロマリットがサプライチェーン労働者を搾取しており、YPR(ユソン)やKBオートテック(カブウール)のようなサプライヤーで楽に利益を得るために組合つぶしが利用されていることに触れた。キム・サンギュは、既存の問題すべての根本原因を調べ、搾取的な財閥構造をなくすよう要求した。

 同委員長は、文大統領は新たに選出された韓国の指導者として無数の改革分野に直面しているが、財閥改革を最優先課題としなければならないと指摘した。

 KMWUは4月に蔚山、大邸、釜山、清州、仁川、昌原、天安で長い地域デモを実施し、改革の必要性を訴えた。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は、書簡で文在寅韓国大統領の当選を祝福した。
 「韓国のインダストリオール加盟組合は新政権に対し、旧体制が積み重ねてきた侵害を取り消すよう共同で要求しています。私たちは、財閥の改革と財閥コングロマリットが前政権と共謀して実施した組合つぶし活動が、この改革の中核を成すという点で、韓国の加盟組織に全面的に同意します。インダストリオールと世界中の加盟組合は、これらの問題をめぐって長年にわたり韓国の組合と連帯してきました」

 シャラン・バロウ国際労働組合総連合書記長は韓国への連帯ミッションの際、政略的な告発で3年前から投獄されているハン・サンギュン韓国民主労総委員長を訪問した。

 バロウ書記長はハン・サンギュン委員長からの希望のメッセージを伝え、次のように述べた。
 「キャンドルライト革命が終わった今、ハン委員長と腐敗した大統領がともに投獄されている。だが、大統領がつらい思いをしているのに対し、委員長は権利と公正な賃金、企業改革、国民のディーセント・ワークの新しい時代が到来するという希望にあふれている」

 

南アフリカNUMSA、GM労働者にとって公正な取引を要求

2017-05-29

 ゼネラル・モーターズが2017年末までに南アフリカから投資を引き上げると発表したことを受けて、インダストリオール加盟組織の南アフリカ全国金属労組(NUMSA))は、総勢1,500人の労働者にとって公正な取引を要求している。

 労働者1,500人中589人の削減計画は悲惨な影響を及ぼす。

 ポート・エリザベスのGMストランデール工場で25年以上前から働いているある従業員は、失業したら学校に通っている子どもたち4人を養うのが難しくなると言う。
「この使用者は残忍だ。私たちは打ちのめされ、士気が下がっている。もうすぐ失業すると分かっていながら職場に行くのは難しい」

 NUMSAは、この米国系自動車会社が労働者を「不正かつ陰険」に扱っていることに「うんざり」している。同労組は、ポート・エリザベスの製造工場を購入する日本の自動車メーカー、いすゞとの取引の「完全開示」を求めている。

 この大量解雇で数千人の雇用が危機にさらされている、とNUMSAは言う。この失業は、タイヤ製造業と自動車部品を含むサプライチェーンにも影響を及ぼすだろう。

 そのほか、GM販売代理店132社の雇用も失われるおそれがあり、いすゞが引き継ぐのはそのうち90社だけである。

 同労組の指摘によると、GMは「誠実」に行動しておらず、削減決定について法律の定めに従ってNUMSAおよび政府と協議しなかった。

 労働者にとってよりよい取引を確保するために、NUMSAは削減についてGMと協議している。斡旋・調停・仲裁委員会が交渉を取り持つ予定である。

 NUMSAはGMの行動をグローバル資本による労働者攻撃とみなしており、削減の代替案に関して同社に書簡を送った。この案の中には技能訓練や他の仕事の斡旋が含まれている。

 NUMSAは次のように述べた。
 「これはグローバル・ユニオンのインダストリオールだけでなく、新しい連合団体である南アフリカ労働組合連盟も全面的に支持している計画だ」

 インダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所のファビアン・ヌコモ所長は、この計画案は影響を受ける労働者に公正な補償を提供するものでなければならないと語った。