インダストリオール、ICT電機・電子部門の優先課題を設定
2017-06-06
5月22~23日にインドネシアのボゴールでインダストリオール・グローバルユニオンICT・電機・電子運営委員会が開かれ、12カ国から約44人が参加した。
オーストラリア、ブラジル、デンマーク、フランス、インド、インドネシア、日本、マレーシア、シンガポール、タイ、イギリス、ベトナムから14組合が出席し、女性が参加者の41%を占めた
プリハナニ・ボエナディ共同部会長が、開会の辞で次のように述べた。
「私たちは急速に変化する産業で新たな課題に直面している。ITUCの企業欲根絶キャンペーンで明るみに出されたサムスンをはじめ、正しく活動していない企業に対する効果的な戦略を策定する必要がある」
ジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長が、2016年10月にリオ大会で採択されたインダストリオールの新しい規約とアクション・プラン2016-2020について報告した。この部門はサプライチェーン戦略に焦点を合わせる必要があり、多国籍企業への対処にあたって組合の勢力を結集する方法に関して繊維・衣料産業から学ぶことができる、とも書記次長は述べた。
グローバルな傾向と部門別活動
ICT電機・電子部門では(年間収入で)世界トップ20の多国籍企業の70%が、結社の自由(ILO第87号条約)と団体交渉権(ILO第98号条約)が尊重されていない3カ国、すなわちアメリカ、韓国、中国の企業である。これらの企業は世界中で事業を拡大し続けているが、民主的労働組合は存在しない。
一方、この部門の労働集約的生産は、賃金が低いASEAN諸国やインドに移転し続けている。これらの国々のサプライチェーン全体で、職場における不安定労働者の比率が上昇の一途をたどっている。インダストリー4.0のような製造業の変化は、すでに雇用や労使関係に大きな影響を与えており、その結果、労働協約(CBA)によって保護されない未組織ホワイトカラー労働者が増加している。多国籍企業における労働組合ネットワークの創出・開発は、これらの問題に取り組み、国内・地域・世界レベルで多国籍企業に対する組合の力を強化する手段として、重要性が高まっている。
インダストリオール・ヨーロッパのアン=マリー・ショピネICT部会長がヨーロッパの状況の概観を提供し、政治的混乱と貧困の悪化を強調した。同部会長は、産業のデジタル変換や労働者にとっての潜在的リスクとチャンスに関するインダストリオール・ヨーロッパの政治的要求についても報告した。
ジュディ・ウィナルノSPEE FSPMI会長が、インドネシアのICT電機・電子産業における同労組の現在の活動と課題、特に不安定労働者と社会保障制度について語った。インドネシアの組合は明確な組織化ターゲットを設定しており、CBAの数を増やしたいと考えている。
組織化と組合の力の強化
欧州委員会が支援する5カ年組織化プロジェクトが4年目に入っている。インドネシア、マレーシア、フィリピン、台湾、タイ、ベトナムでは、過去3年間に1,671人の労働組合活動家と労働者(うち30%が女性)が、このプロジェクトのもとで訓練セッションに参加した。このプロジェクトは、未組織労働者や不安定労働者、移民労働者、女性・若年労働者に接触し、労働協約の保護対象に含めるうえで成果を上げている。1万2,000人以上の新規組合員がインダストリオール加盟組合に加入し、CBAの数が増えた。
EIEUノーザンリージョンも、欧州委員会プロジェクトに基づく組織化活動と訓練計画の成功について報告した。ベトナムVUITとブラジルCNTMが自国の産業における労働者の状況について発言し、日本の電機連合が短期契約労働者のために長期雇用を促進する取り組みについて報告した。
不安定雇用とサプライチェーン戦略
ICT電機・電子産業は競争が激しく、革新的で、目まぐるしく変化しており、短い生産サイクルで活動している。同時に、この産業は不安定雇用の増加を助長している。常用労働者が不安定な立場に追い込まれている。組合は、急速に増加する派遣・契約・外注労働者や移民に接触しようと苦闘している。これらの労働者は、雇用条件をめぐって団体交渉を行う機会がまったくと言っていいほどない。
インドネシアのロメニックとタイTEAMが、サプライチェーンの職場に焦点を合わせた不安定雇用との闘いについて報告。オーストラリアETUは、電機労組として建設・請負の観点から、不安定雇用の問題や現在の建築基準法に関して報告した。(セクション3のオーストラリアETUのプレゼンテーションを参照)
グッドエレクトロニクスがインダストリオールとの関係を説明し、不安定な労働条件や労働者の権利の問題に共同で取り組むうえでの自らの経験と機会を共有した。
特にサプライチェーン全体で多国籍企業が企業責任を果たしていないため、この部門では労働安全衛生や責任ある鉱業、電気電子機器廃棄物も大きな課題である。
未来の製造業と持続可能な産業政策の促進
労働組合は持続可能な産業政策に関する活動と、そのような政策を奨励するうえで組合が直面している問題や課題を共有した。スマート技術やスマートシステムは、労働者の行動や業績の幅広い管理・監視につながる恐れもあるので、インダストリー4.0の将来の影響が議論の大きな焦点となった。労働組合は、雇用や労働条件、労働者の権利に対する大きな影響に備え、公正な移行に向けた活動に集中しなければならない。
イギリスのユナイト・ザ・ユニオンとデンマークのCOインダストリが、最近の技術変化の速さと複雑さについて話し、製造業の未来に関する問題や課題を取り上げた。シンガポールUWEEIが、未来の経済戦略を策定するための組織機構を紹介した。例えば、組合や商工会議所、公的機関、企業、教育者が加わる未来経済委員会などである。
多国籍企業における労働組合ネットワークの創出と開発
インダストリオールのアクション・プランに定めるとおり、この部門の組合は、多国籍企業と活発に対話して強力な労使関係を構築し、企業の全レベルで組合の懸念を提起できるようにするとともに、世界中の事業所で労働者の国境を越えた交流・調整を促進する必要がある。この部門は、あらゆるレベルで強力な労働組合ネットワークの創出プロセスを開発・促進することに焦点を絞り、加盟組織間の連帯を強化する必要がある。
インドのシーメンス労組が、インド国内で同社の労働組合ネットワークを拡大し、シーメンスとのグローバル枠組み協定やネットワークの利用によって不安定労働者の問題に取り組むための活動を報告した。
部門アクション・プランのフォローアップと将来の活動
運営委員会は、2017~2018年の戦略計画と、世界会議2015で採択されたアクション・プランを満たすために強化する必要のある分野に合意した。例えば、不安定雇用との闘い、サプライチェーン、労働組合ネットワーク、労働安全衛生、NGOとの協力、持続可能な産業政策などである。
野中孝泰共同部会長が、結びの言葉で以下のとおり主張した。
「ICT電機・電子産業は、人々の生活改善に貢献するために重要な役割と使命を担っている。したがって、この産業をリードするグローバル企業は世界中の市民からの尊敬を勝ち取らなければならない。企業は不安定雇用と劣悪な労働条件の撤廃によって、『国際競争に勝つ』ことから『人を最優先する』ことへと発想を転換する必要がある」
会合終了後、プリハナニ・ボエナディ共同部会長の勤務先であるPTホノリス・インダストリーの工場を見学した。同社はLED照明器具プリント基板やプラスチック射出製品など各種製品を製造している。代表団は地元の組合幹部ならびに経営陣と会談し、過去の経緯や建設的な労使関係について学んだ。