不安定雇用との闘い続く
2017-07-19
このところ世界中で見られる立法面・政治面の展開は、不安定雇用が増え続けている現状をよく表している。労働組合は抵抗している。
イギリスで実施された最近の研究によると、ゼロ時間契約で雇用されている若年者は、安定した仕事に就いている若者よりも心身の健康状態が悪い傾向が強い。ゼロ時間契約が健康に及ぼす悪影響の1つは、金銭面のストレスと不安である。
2016年11月時点で、ゼロ時間契約はイギリスの雇用契約の6%を占めていた。イギリスの労働者の43%が不安定雇用に就いている。欧州連合では、フルタイムの常勤契約に基づく標準的雇用が減り続けており、その割合は過去10年間に62%から59%まで減少した。この危機は非自発的な臨時・非常勤雇用の増加を招いている。
「人間を尊重しないゼロ時間契約を撤廃すべきときだ」とユナイト・ザ・ユニオンのレン・マクラスキー書記長は2017年7月8日に語った。
組合は抵抗
イギリスの組合は、特に虐待的なゼロ時間契約の禁止を政府に促すことにより、不安定雇用に反対する行動を起こしている。
ドイツでは5月にIGメタルが使用者団体と協約を締結、これによって金属・電機産業の派遣労働者が65%の補足賃金を受け取り、常用労働者と同じ賃金を獲得できることになった。この新協約には、派遣労働者が24カ月後に常用労働者になりやすくする規定も盛り込まれている。
欧州議会は先ごろいくつかの決議を採択し、不安定雇用の利用によって雇用の質が低下していることを強調した。欧州議会議員は7月4日に法律と無関係の新しい決議を採択、その中で労働条件の改善を勧告するとともに、闇労働や偽装自営も含めた不安定雇用に取り組んだ。
勧告には、社会的保護や最低賃金、非標準的雇用の質を高めるための訓練へのアクセスに関する一連の最低基準の尊重、闇労働や偽装自営、あらゆる形態の違法な雇用慣行と闘うための新たな取り組み、ゼロ時間契約の防止が盛り込まれている。
オーストラリアでは現在、フルタイムの仕事で常用雇用に就いている人の割合が労働人口の50%に満たない。製造業労働者の23%が臨時労働者であり、ほとんどゼロだった1980年代から大きく増加している。製造業部門の臨時従業員は、20年近く前から常用雇用への転換を「要求する権利」を与えられている。
しかし、使用者には従業員に伝える義務がないので、ほとんどの臨時従業員がこの権利のことを知らない。それに労働者は、たとえ知っていても、権利を行使したら職を失うのではないかと心配していた。
組合は公正労働委員会に提訴し、6カ月間の正規雇用後に常用雇用を義務づけることによって、製造業の臨時労働者が常用雇用に就ける見込みを高めるとともに、この権利を他の産業の労働者にも広げようと試みた。
オーストラリア公正労働委員会は7月5日、臨時雇用に関する決定を発表、製造業労働者の権利にはほとんど変更がなかったが、臨時労働者が常用雇用される権利を与えられていない場合に同委員会が勧告できるようになった。しかし、そのような勧告を受けた使用者は勧告に従うことを強制されない。
この決定は組合の要求の多くを無視しているが、それでもオーストラリアの組合によるルール変更キャンペーンにさらに弾みを与えた。オーストラリアのインダストリオール加盟組織は、2019年の次期(連邦)選挙まで、またそれ以降もルール変更キャンペーンを行う予定である。
臨時労働や下請労働はアジアでも依然、深刻化する重要な問題である。フィリピンの組合は、契約労働の利用を防止する法律を求めてキャンペーンを展開している。
5月1日、3,000人以上の労働者が結集した。労働組合幹部は、ミンダナオ地域のダバオ市で大統領府が開いた討論会に招待された。労働雇用省(DOLE)は2017年3月、新しい命令(DO174-2017)を発布した。この命令は派遣会社経由の契約労働者の雇用を一部合法化している。これを受けて組合はフィリピン大統領に対し、契約労働の利用を禁止する大統領令の発布を要請した。
対話の結果、大統領は労働組合に、契約労働化を禁止する大統領令(EO)の草案を練り上げるよう要求した。その後、大統領府に草案が提出され、検討とさらなる審議に付されている。
組合はまだ草案に関する大統領のコメントを待っている段階である。組合側は、不安定雇用や短期契約・派遣労働を制限する身分保障法案の採択を求めるキャンペーンも実施しており、この法案は数年前から議会で審議されている。
「10月7日に全世界で行動を起こし、私たちがストップ不安定雇用に団結して取り組んでいることを再び示そう。組合は今後も結集し、世界中で不安定雇用の増加を食い止めなければならない。サプライチェーン・モデルやデジタル化の発展に伴い、この問題は手に負えない勢いで広がる恐れがある」とヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は述べた。
ストップ不安定雇用キャンペーン・ページ
ストップ不安定雇用に関する最新ニュースや資料(ロゴ、ポスター、出版物)がすべて掲載されているインダストリオールのキャンペーン・ページ(http://www.industriall-union.org/issues/social-justice-and-globalization/stop-precarious-work)を参照。