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第71号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2017年9月30日)

フランスの組合が新しい労働法に対応

2017-09-01

2016年4月にリヨンで行われた新法導入に対する抗議行進

 エマニュエル・マクロン仏大統領は、労働法「改革」の導入にあたって組合との厳しい闘いに直面している。

 フランス政府は昨日、雇用関係の「自由化」を目指す新しい労働法の詳細を発表した。新法は労働者を解雇しやすくしており、企業が地方レベルの取り決めを結ぶことによって全国労働協約を迂回できるようにしている。

 5月の選挙で極右の対抗馬マリーヌ・ル・ペンに決定的勝利を収めたマクロン大統領は、現行法はフランスのビジネスを妨害していると主張する。大統領は選挙運動中、制約的な労働法が原因で失業率が10%近くにまで上昇していると主張した。

 組合は意見を異にし、労働者を解雇しやすくしても雇用は生まれないと主張している。現在の失業率は、金融危機とその後の緊縮経済政策の結果である。新しい労働法は多くの労働者、特に若者を不安定雇用に追い込み、不平等が悪化するだろう。

 フランスの新しい労働法は、バングラデシュ、ブラジル、アルゼンチン、インド、ペルー、ポーランド、イギリスなど、全世界で組合権が攻撃されている状況下で制定された。

 新法の主な焦点は、部門別団体交渉に代えて現地レベルの協定を導入することである。中小企業では、現地協定が組合代表なしで締結され、全国レベルで獲得された労働基準が骨抜きにされる恐れがある。これらの現地協定には、短期・臨時契約を導入する効力がある。

 重要なことに、マクロン大統領は、この法律の効果を弱めるかもしれない民主的プロセスに付託するのではなく、議会の承認を得なければならない命令によって新労働法を導入した。

 フランスには5つの組合総連合があり、うち4団体にインダストリオール・グローバルユニオン傘下の組合員がいる。すべての組合が、マクロンの労働法は労働者の力を弱めると考えているが、この課題に立ち向かうために選んでいる方法はそれぞれ異なる。新法には肯定的な面があると考える組合もある。

 歴史的に最も有力な連合団体であるフランス労働総同盟(CGT)は、最初から新しい労働法に強く反対した。CGTは9月12日にゼネストと動員を指示している。CGTは、輸送、エネルギー、製造はじめ多くの重要部門で力を持っているので、このストは大きな影響を与えそうである。

 インダストリオール加盟組織FTM-CGTのボリス・プラッツィはこう述べた。
 「新しい労働法は、労働者の権利と私たちの社会モデルに対する前代未聞の攻撃だ。その狙いは明白で、集団的権利を破壊し、労働者と使用者の間に個別契約関係を導入すること」
 「これは組合に対する攻撃だ。マクロンは、ヨーロッパと全世界のすべての労働者と組合に影響を与えるソーシャル・ダンピング・モデルを生み出している。この法律は99%の人々を攻撃するものだ」

 フランス民主労働総同盟(CFDT)と「労働者の力」(FO)は、新しい労働法のすべての面に反対したわけではなく、協議を通して建設的な影響を与えることができるとの期待を示した。両団体は、一定の譲歩を勝ち取ったと考えている。

 FOは、何カ月もの集中協議にもかかわらず、最終文書をめぐって大きな意見の不一致があると述べた。しかし成功もあった。
 「政府や使用者が提示した規定のいくつかを拒否することに成功した」とFOは言う。

 CFDTは、経済において生産が変化しているので何らかの労働改革が必要だ、と考えている。組合は生活のために雇用を守るのではなく、再訓練やその他の公正な移行メカニズムを可能にする「柔軟な保障」を勝ち取ることができる。

 だが、この新法は機会の喪失である。CFDTは、使用者の決定権が強まっていると考えている。CFDTのローラン・バーガーはルモンドのインタビューで次のように語った。
 「私たちは失望している。組合側の案はほとんど受け入れられなかった。機能を果たすための手段がなければ、労働組合の存在はわずかしか認識されないと思う」
 「政府は目的を逸した。労働者にとって不利な規定が導入され、社会的対話を強化する機会を逃してしまった」

 CFE-CGCも同じ考えである。
 「労働法を簡素化して雇用を促進するという当初の計画は頓挫した。その代わりに、雇用を創出しないイデオロギー改革が進められている。これはまた新たなリベラル改革であり、不安定性とソーシャル・ダンピングを助長するだろう」
 「CFE-CGCは、ほとんどの措置が規制緩和に焦点を合わせていることを極めて遺憾に思う。労働者を守り、企業を活性化するための規定はどこにあるのか。この文書は労働市場への参入を促進しておらず、市場から撤退しやすくしている!」

 マクロンの新しい労働法は、やはり組合の猛烈な抵抗を受けた、前労働大臣ミリアム・エル=コムリが導入した法律を発展させたものである。CGTとFOは、第87号、第98号および第158号条約の違反に関して国際労働機関に苦情を申し立てた。

 マクロンは勝利を収めたにもかかわらず、国民にほとんど支持されておらず、支持率が低下している。新しい労働法は、彼の政策に対する国民の支持の試金石になるだろう。この命令が法制化されるのは議会に採択されてからであり、採択は6カ月以内に行われなければならない。組合は今後数週間、このプロセスを阻んだり影響を及ぼしたりするために結集する予定である。

 ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長はこう述べた。
 「各組織の組合員からの委任事項を反映して、労働法へのアプローチは加盟組織によって異なる」
 「この戦術の組み合わせ(ストと交渉)はフランス政府に対し、労働者の権利を弱体化させることは経済を築く方法ではない、という明確なメッセージを送ると思う」
 「歴史が教えるとおり、投資をもたらし、したがって雇用をもたらすのは、ダイナミックな消費市場だ。そしてダイナミックな消費市場を生み出すのは、高賃金労働者を生み出す労働協約であって、組合の力を弱める法律ではない」

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