インダストリオール、インダストリー4.0戦略を設定
2017-10-31
10月26~27日にスイス・ジュネーブで「インダストリー4.0:労働組合と持続可能な産業政策に与える影響」に関するインダストリオール・グローバルユニオン世界会議が開かれ、40カ国の加盟全国組合60団体以上から100人を超える参加者が集まった。
この会議では、インダストリー4.0とデジタル化がさまざまな国や部門の加盟組織にどのような影響を与えているかについて幅広いインダストリオール加盟組織から話を聞き、今後の課題に取り組むためのアクション・プランを設定した。
「産業変化は新しい現象ではないが、インダストリー4.0に伴う変化の速さは前例がない」とヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は開会の辞で述べた。「関連部門が変化していく。私たちも適応しなければならない」
会議の重要な議題は、生産と仕事の未来、そしてインダストリー4.0が社会全体に及ぼす影響である。
「最富裕層がインダストリー4.0の恩恵を享受するままにしておくことはできない」とインダストリオールのブライアン・コーラー安全衛生・持続可能性担当部長は述べた。「インダストリー4.0の原動力はコスト削減であり、それは雇用が危機にさらされることを意味する。テーブルに自分の席を確保しなければメニューに載せられてしまう」とコーラーは語り、持続可能な産業政策を設定するための意思決定に労働組合がかかわることの必要性を強調した。
「最も搾取された労働者でさえロボットとは競争できない」とコーラーは警告し、女性が大多数を占める多くの雇用が不安定かつ低賃金であるため、女性は特に攻撃されやすいと付け加えた。
世界経済フォーラムのフランシスコ・ベッティが、全世界8億5,000万人の生産部門の雇用を守る必要があると述べ、労働者が初期段階でかかわっていないため、ほとんどの企業はデジタル化をうまく実施できていないと付け加えた。
国際労働組合総連合のシャラン・バロウ書記長が、インダストリー4.0に立ち向かうために産業部門の垣根を越えて連帯する必要があると強調した。同書記長は労働者にとって公正な移行も要求、企業は労働者に責任を負い、自社が社会全体に及ぼす影響に責任を負う必要があると述べた。「企業は社会的営業免許を必要とする――企業に税金を払わせ、安定した雇用を提供させ、社会的保護制度に貢献させなければならない」
会議では、国際労働機関(ILO)のデボラ・グリーンフィールド副事務局長が基調演説を行った。「私たちに仕事の未来に関する方針を策定する能力があるということについては楽観視してよい」と彼女は主張し、ここ数十年の前向きな動きについて概説した。例えば、極貧率の低下、働く女性の増加、ILO条約の批准改善などである。しかし同時に彼女は、生産性の上昇が利益と短期投資(すなわち投機)に振り向けられ、労働者に利益を与えておらず、賃金上昇にもつながっていないと強調した。
インダストリー4.0は教育と生涯学習を受ける権利に基づくレイバー4.0を必要としている、とドイツの加盟組織IGメタルのウォルフガング・レムが述べた。有資格労働者でなければ変化する市場に対応できないとレムは指摘し、組合員数の増加が将来の課題に立ち向かうカギだと付け加えた。
2日間の有益な議論を経て、参加者はインダストリオールのアクション・プランを承認した。この計画が求めている「仕事の未来は、インダストリー4.0が社会のすべての層にもたらすであろうプラスの効果を受け入れつつ、政府がこの移行を社会的責任のあるものにしようとしていない中で、労働者が企業の社会的債務を払わされないようにすることである」。
計画の骨子は以下のとおり。
- 加盟組織がインダストリオールの持続可能な産業政策目標を促進するための意識向上と能力強化
- 若年労働者、女性および不安定労働者の組織化
- グローバル枠組み協定によるインダストリー4.0の機会と課題への取り組みの確保
- 政府・企業との協議で取り上げるべき公正な移行プログラムの立案・実施
- 情報・協議、訓練および職場と家庭における一定水準のプライバシーに対する労働者の権利
- インダストリー4.0方針の策定に関するジェンダーの視点
- インダストリー4.0をめぐる世界・地域・国家・企業レベルの議論における労働者の意見の主張
アクション・プラン全文(英文)を読むにはここをクリック。
バングラデシュの労働権侵害に関するEU行動の大幅な遅れを示す新たな証拠
2017-10-18
新しい証拠を受けて、労働組合と労働組織は今日、欧州委員会に対し、バングラデシュの貿易調査を開始するという約束を守るよう改めて要求した。同国政府は、既製服産業の労働組合権に関する法律・慣行の緊急に必要とされる改革を怠り続けている。
クリーン・クローズ・キャンペーン、国際労働組合総連合、欧州労働組合連合、インダストリオール・グローバルユニオンおよびUNIグローバルユニオンは今日、新しい白書を発表して欧州委員会に送付し、バングラデシュ政府が4年前に欧州連合と「持続可能性コンパクト」を締結していながら、同コンパクトに違反し続けており、衣料産業による中核的国際労働基準の遵守を確保するために必要とされる極めて重要な改革を実施していないという明らかな証拠を提示した。
この白書は、バングラデシュのラナ・プラザ・ビル崩落後、EU、ILO、組合・労働権団体、国際社会のその他の利害関係者にとって依然懸念の焦点となっている、4つの主要分野に焦点を合わせている。すなわち、労働法改革、輸出加工区(EPZ)における結社の自由、組合登録の改善、組合差別の抑制である。
バングラデシュの持続可能性コンパクトには、この4つの問題分野で期限を定めた具体的行動がいくつか盛り込まれており、バングラデシュ政府は2013年のコンパクト締結時にその実施を約束している。しかし、バングラデシュは必要な行動を先送りし続けており、EUはバングラデシュで中核的労働権・人権基準の遵守状況を確認するための貿易調査をまだ開始していない。
ジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長は言う。
「約束に反して、バングラデシュで労働者が基本的労働権を行使することは今なお極めて困難な状況にある。バングラデシュ政府が労働者の権利を保護するために必要な行動を相変わらず取ろうとしない事実は、EUが大いに必要な貿易調査を開始する十分な理由だ」
欧州委員会は2017年5月、行動の期限を2017年8月まで延期し、バングラデシュ政府はEUの特恵貿易制度の適用資格を維持するために、それまでにEUに「具体的な進展」を示すよう求められた。この期限はそれ以前にも何度か延期されており、現在に至るまで何の措置も講じられていない。これは欧州委員会が、貿易調査によってバングラデシュ政府に適切に責任を負わせるために、自らの権限を行使したがっていないことを示している。
ベン・バンペペールストレーテは、クリーン・クローズ・キャンペーン(CCC)を代表して次のように述べている。
「労働法改革に向けた進展が不十分であり、EPZで労働者の結社の自由を改善するためにどのような措置が講じられるかが分からず、組合登録の慣行が急激に悪化しており、組合に対する激しい暴力が多発している。バングラデシュ政府は、これまで4年間、多大な技術的・財政的支援と改革への取り組みを示す数多くの機会を与えられてきた」
EUはバングラデシュの最大の貿易相手国として、バングラデシュにおける労働基準の遵守を確保するために助力する権限を持っているだけでなく、その責任を負っている。バングラデシュに関するCCCの新しい白書には、組合活動家が深刻な組合差別と暴力にさらされ続けている実態を浮き彫りにする事例研究がいくつか掲載されている。これらの事例は、賃金をめぐる平和的な抗議行動に対して今年すでに実施された弾圧と並んで、バングラデシュで有意義な変化を確保するための方法として、対話がまったく効果を上げていないことを証明している。
国際労働組合総連合(ITUC)のシャラン・バロウ書記長は言う。
「バングラデシュ政府は一貫して国際法に基づく義務を果たしておらず、労働者の権利を保護しようとしない。その結果、衣料産業の労働者は絶えず搾取と貧困賃金に苦しんでいる。EU調査は、バングラデシュの工場所有者による議会・政府に対する締め付けの打破に役立ち、労働者とその家族に極めて重要な支援を提供するだろう」
UNIグローバルユニオンのクリスティー・ホフマン書記次長が付け加える。
「バングラデシュ政府は非常に長い間、本格的な改革を避けようと行動を先送りしてきた。団結権・交渉権はバングラデシュの労働者にとって今も空約束のままで、現場では何の変化もない。EUは影響力を行使して調査すべきだ」
欧州労働組合連合(ETUC)代表のリイナ・カー連合書記長が言う。
「私たちは欧州委員会に対し、世界中で労働権の尊重を促進するために『万人のための貿易』方針に従うよう求める。EUとバングラデシュとの貿易は、労働基準を引き上げるチャンスにしなければならない。バングラデシュの衣料産業における労働者の搾取は、底辺への競争において最終的にヨーロッパの労働者にも影響を与えるものであり、この悪循環を断ち切る必要がある」
ITUC、インダストリオール、UNI、ETUCおよびCCCは欧州委員会に対し、期限の延長をやめるとともに、引き続きEU市場への特恵制度を受ける資格があるかどうかの貿易調査の開始によってバングラデシュ政府に対するEUの警告を実行し、バングラデシュに圧力をかけて有意義な労働改革に着手させるよう促している。貿易調査は、バングラデシュ政府が正しい行動を取る十分な機会を提供するが、変化のために明らかに必要な圧力も加えるだろう。
ミャンマーのロヒンギャに対する重大な人権侵害の終結を要求
2017-10-17
インダストリオール・バングラデシュ協議会は国際社会に対し、ミャンマー政府に圧力を加えて、ロヒンギャの大量虐殺をやめさせるとともに、十分な尊厳をもってロヒンギャ全員を安全に帰国させるために緊急の措置を取らせるよう要求している。
2017年8月下旬、ラカイン州でミャンマー軍がロヒンギャに対して想像を絶する暴力を振るった結果、50万人以上が国境を越え、難民としてバングラデシュに逃れた。難民の大多数が女性や子ども、高齢者、新生児で、援助を必要としている。
労働組合指導者は、ロヒンギャ難民に避難所を提供するというバングラデシュ政府の勇気ある決断を称賛し、衣料労働者と工場所有者、一般の人々に、民族浄化に抗議して行動を起こし、ロヒンギャ難民に援助の手を差し伸べるよう促した。
インダストリオール・バングラデシュ協議会は共同声明を発表し、以下のとおり要求した。
- ミャンマー政府は、軍によるロヒンギャの重大な人権侵害を終わらせ、十分な尊厳をもってロヒンギャ全員を帰国させるために直ちに措置を講じ、彼らの安全と権利を確保し、ロヒンギャを支援しようとする人々と接触できるようにすべきである。
- 国際機関と各国政府は、家を失ったロヒンギャ難民に人道的支援を提供するにあたって、バングラデシュ政府とバングラデシュ国民を支援しなければならない。
- ミャンマー政府と政府機関は、コフィ・アナンが主導するラカイン州諮問委員会の勧告を受け入れて実施すべきである。
- 十分な尊厳をもって難民を帰国させるために国際努力を払わなければならない。
- 労働組合と消費者の国際連帯支援により、殺傷やレイプが発生しているミャンマーに投資している企業に圧力をかけなければならない。
NGWFのアミルル・ハク・アミンは言う。
「組合がロヒンギャの人道危機に取り組むことが何よりも重要だ。すでにチッタゴンで救援活動に取り組んでいる組合のボランティアもいる。私たちは多数の衣料労働者と一般大衆にも接触し、支援を求めている。組合が立ち上げた緊急連帯基金を利用して、ロヒンギャ難民に医療や食料、衣服、その他の必要な支援を提供する。私たちは、大量虐殺を終わらせ、難民の尊厳ある平和的な帰国を確保すべくミャンマー政府に圧力をかけるために、国際社会の支援を求めている」
バングラデシュの衣料労働者は、難民を支援するために緊急連帯基金を立ち上げ、国際社会に対し、貿易特権や調達の停止と製品のボイコットによってミャンマーに圧力を加え、直ちに大量虐殺をやめさせるよう要求している。
国連難民機関UNHCRの推計によれば、バングラデシュのロヒンギャ難民は10月12日の53万6,000人から10月17日には58万2,000人に増加しており、これはミャンマーで暴力が収まっていないことを示している。国外脱出が始まった2017年8月25日以降、毎日平均1万4,300人の難民がバングラデシュに逃れている。UNHCRは、この事態を最も急速に悪化している人道危機と呼んでいる。
インダストリオール、フリーポートに関する投資家向けレポートを発行
2017-10-11
インダストリオール・グローバルユニオンは投資家向けレポートを発行し、グラスベルグ鉱山の人権侵害が財務面に影響を及ぼす可能性があると警告した。
フリーポートは、グラスベルグ鉱山の管理をめぐってインドネシア政府と長期に及ぶ交渉を続けている。政府は鉱山の利権の51%を求めており、フリーポートに株式を売却させるために同社の輸出許可を停止した。
これに対してフリーポートは労働者をレイオフし、これがストの引き金となった。労働者は5月1日からストを実施しており、これまでに4,200人が解雇された。
労働者はつい最近、10月7日のディーセント・ワーク世界行動デーに行動を起こし、グラスベルグで進行中の不安定雇用問題を強調するとともに、解雇された労働者の復職を要求した。
この投資家向けレポートは現状に注意を引きつけ、衝突が発生していること、解雇された労働者が収入を断たれ、4カ月にわたって融資や住宅、教育、医療を利用できない状況にあることを強調している。その結果、数人が亡くなったと見られている。
このレポートは、現在の状況が投資家にもたらすリスクを強調し、株主に次のことを要求している。
- フリーポート・マクモランと対話を始め、グラスベルグ鉱山の人権侵害疑惑に取り組ませる。
- PTFIで労働者の権利が尊重され、同社の社会的営業免許が損なわれないようにするために、どのような措置を講じているかフリーポートに質問する。
- 子会社のPTFIがスト権の行使を理由に解雇した労働者を復職させようとしない理由を同社に尋ねる。
- 大量解雇とそれに伴う数千世帯の収入・基本的サービス喪失が人道的危機を発生させないようにするために、どのような措置を講じているか同社に尋ねる。
伝えられるところによれば、インドネシア政府は株式の売却についてフリーポートと合意に近づいているという。どちらの当事者が鉱山の業務管理を担うか、この合意が労働者にどんな影響を及ぼすかは定かではない。
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように述べた。
「フリーポートの投資家は、グラスベルグで一触即発の状況が発生している事実を認識し、同社に局面の打開を要求する必要がある」
「フリーポートによる労働者の権利の重大な無視は、グラスベルグで人権危機を引き起こしている。インダストリオールは、解雇された労働者全員が復職するまで闘い続ける」
投資家向けレポート
フリーポートがインドネシアで重大な人権侵害
2017年10月
インドネシア西パプア州のグラスベルグ金・銅山で、今年に入ってから、スト決行を理由に4,200人を超える労働者が解雇された。グラスベルグはアメリカの多国籍鉱山会社フリーポート・マクモラン(フリーポート)が株式の過半数を所有しており、同社のインドネシア子会社PTフリーポート・インドネシア(PTFI)が運営している。この鉱山ではごく最近衝突が発生し、ストに参加した鉱山労働者数百人が8月下旬に鉱山を封鎖、会社側を交渉に引き込もうとした。インダストリオール・グローバルユニオンは8月、インドネシアに連帯ミッションを派遣し、労働者がスト権の行使を理由に解雇されたあと絶望的な状況に置かれていることを確認した。労働者と家族は収入がなく、4カ月にわたって融資や住宅、教育、医療を利用できない状況にあり、その結果、数人が亡くなったと見られる。グラスベルグの労使紛争は人権問題だが、このレポートで示すように、事業、財務および保安面でも同社に潜在的なリスクをもたらす。このような理由で、フリーポートがこの問題にどう取り組むかは投資家にとって重大な関心事である。
フリーポート・マクモランとインダストリオールとの最近のやりとりを見れば分かるように、インダストリオールは同社の言動に異議を唱えている。
- インダストリオールは、労働者数千人の解雇はインドネシアの法律と労働協約(CLA)に従っているという同社の主張を退ける。
- インダストリオール加盟組織CEMWU SPSIは、ストに至った労働争議を解決するために仲裁を求めた。
- フリーポートは、この仲裁申立と同労組の交渉要請を拒否し、訴訟を起こすことにすると述べた。
- インドネシア人権委員会(KOMNAS HAM)は、フリーポートの行動は重大な労働者の権利侵害に該当すると述べた。
インダストリオールは同社に対し、解雇された労働者の復職をはじめ、CEMWU SPSIとの紛争の公正な解決に向けて交渉するよう要求している。今までのところ同社は、この妥当な要求を受け入れようとしておらず、交渉する義務はないと主張している。紛争の悪化が懸念されており、さらなる暴力行為発生の恐れがある。
最近の動きの詳細と投資家への行動提案を以下に示す。
ストの背景
このストはグラスベルグ鉱山の支配権をめぐるフリーポートとインドネシア政府の長期に及ぶ紛争の結果である。この鉱山は、全世界におけるフリーポートの金生産のほぼ98%、銅生産の25%を占めている。インドネシア政府は鉱山の利権の51%を求めており、フリーポートがこの要求を拒否すると同社の輸出許可を取り消した。これを受けてフリーポートは、生産ペースを落として労働者をレイオフし始め、これがストの引き金となった。具体的に言えば、PTFIはコスト削減のために労働者の約10%に一時帰休(長期休暇)を取らせた。CEMWU(化学・エネルギー・鉱山労組)は、労働協約違反である一時帰休方針の押しつけに反対するとともに、報酬や雇用保障といった基本的な労働問題をめぐる交渉を会社側が繰り返し拒否したことに抗議して、ストを開始した。フリーポートはストの合法性を認めようとせず、スト中の労働者を職務離脱とみなすと述べた。欠勤日が5日を超えた労働者は「希望退職」を受け入れたものとみなされる。PTFIは6月下旬の時点で、スト参加によって「自発的に辞職」したとみなした労働者4,220人を解雇していた。加えて、PTFIが25%を所有しているグレシックのPTスメルティングで1月、約300人の労働者がスト実施後に解雇された。
8月にインドネシアに派遣されたインダストリオール連帯ミッションのメンバーは、PTFIがグラスベルグの労働者を解雇したあと、社宅から強制的に退去させ、会社の病院と学校の利用を拒否し、地元の銀行と共謀して労働者が融資を受けられないようにしていることを確認した。連帯ミッションは、何人かの労働者と家族が治療を受けられなかった結果亡くなったという話も聞いた。家を失った労働者の多くは現在、テントや組合事務所で暮らしている。この鉱山で働く多くの労働者が周辺地域に住んでおり、これが同社との緊張を高めている。8月に鉱山と労働者の間で勃発した緊張が継続または拡大すれば、これは同社に新たな保安上のリスクをもたらすかもしれない。
スト実施を理由とする労働者の解雇は、インドネシアが批准済みのILO中核的労働条約に違反する。インダストリオールはフリーポートに書簡を送り、直ちにPTFIに介入し、不当解雇された労働者を復職させるよう要求した。インダストリオールはILOにも介入を求めた。パプア州知事はフリーポートにスト参加者の復職を公式に要求した。同州政府は調停会合の招集によって局面を打開しようとしている。フリーポートは、これらの要請された会合に2回欠席した。「フリーポートの行動は重大な労働者の権利侵害に該当する」と述べたインドネシア人権委員会(KOMNAS HAM)は、9月前半時点で、すでにフリーポートに実情調査団を派遣しており、数週間後に勧告を出す予定だった。
8月下旬には、いくつかのニュースソースが、フリーポートが政府と新規契約を結んだと報告した。この契約により、同社は株式の一部の売却に同意し、政府はPTFI株の51%の株式を所有することになる。本稿執筆時点で、フリーポートの株式売却のスケジュールは明らかになっていないが、ある報道によると、この株式売却後もなお、同社はPTFIの「事業と統治に対する支配権を維持する」という。フリーポートは製錬所の建設など、政府が要求していたその他いくつかの譲歩にも同意した。それに応じて政府は、この鉱山で同社の契約を2021年から2041年まで延長することに同意している。
注目すべきは、西パプアの地位をめぐる紛争があり、独立運動がインドネシアによる資源の略奪を非難していることである。フリーポートはインドネシア軍に金を払ってグラスベルグ鉱山を警備させており、過去に暴力事件が発生したこともある。
投資家にとっての重要性と行動提案
フリーポートのインドネシア事業における展開は、同社に重大な影響を及ぼす可能性がある。フリーポートは最新の10K報告書で、これらの事業の労働不安に伴う潜在的リスクを取り上げている。グラスベルグの生産性は最近の労使紛争の影響を受けており、労働生産性の問題は「2017年2月に始まった労働力削減によって悪化する恐れがある」と同社は指摘している。フリーポートによる労働者の取り扱いは同社の人材管理アプローチにも疑問を投げかけており、今度は会社の業績に影響を与える可能性がある。フリーポートがPTFIおよびグラスベルグ鉱山に対する業務管理権を維持することを踏まえて、インダストリオールは、投資家各位がフリーポート・マクモランの責任ある株主として次の点を考慮するよう求めている。
- フリーポート・マクモランと対話を始め、グラスベルグ鉱山の人権侵害疑惑に取り組ませる。
- PTFIで労働者の権利が尊重され、同社の社会的営業免許が損なわれないようにするために、どのような措置を講じているかフリーポートに質問する。
- 子会社のPTFIがスト権の行使を理由に解雇した労働者を復職させようとしない理由を同社に尋ねる。
- 大量解雇とそれに伴う数千世帯の収入・基本的サービス喪失が人道的危機を発生させないようにするために、どのような措置を講じているか同社に尋ねる。
*下記リンクから英文全文をダウンロードできます。
http://www.industriall-union.org/sites/default/files/uploads/documents/2017/INDONESIA/investor_briefing_oct17_v4.pdf
インドのタタ・スチール子会社で警察が労働者を攻撃
2017-10-11
9月22日の夜、タタ・スチール子会社のタヨ・ロールズで労働者とその家族(子どもを含む)が、同社の閉鎖に平和的に抗議し、代わりの雇用か適切な補償を要求していた際、警察に激しい暴行を受けた。
労働者と家族はジャムシェドプールのタタ鉄鋼工場のゲート前で抗議していたとき、警察官の一団に襲われ、警察は放水銃も使用した。この攻撃で約40人のデモ参加者が負傷した。
警察は捏造された容疑で多くの労働者を告訴するという挙にも出た。
抗議している労働者の要求は以下のとおり。
- 未払賃金の支払い
- 他のタタ関連会社で働くことのできる代替雇用
- 代わりの雇用を提供できない場合は、労働者に基本給100カ月分の補償と生計費調整手当(実質賃金目減り補償手当)を支給してもよい。これは数年前、同じ企業グループ傘下のティンプレート・カンパニー・オブ・インディア・リミテッド(TCIL)の一部門が閉鎖されたときに支給されたのと同じ金額である。
インダストリオール・グローバルユニオンのアプールヴァ・カイワール地域事務所所長は言う。
「警察が労働者を攻撃するなどまったく容認できない。インダストリオールは経営側に、問題解決に向けて交渉に入るよう求める。経営側は、抗議中の労働者に対する警察への告発を取り下げるためにも緊急の措置を取り、労働者とその家族の利益を保護すべきだ」
2016年9月、タタ・スチール子会社のタヨ・ロールズ(TAYO)が閉鎖申請を提出し、政府に施設閉鎖の許可を求めた。同社は当時、399人前後の常用労働者と約700人の契約労働者を雇用していた。
同時に会社側は、雇用終了への自発的同意の報酬として、労働者に自発的離職制度(VSS)を提示した。多くの労働者がVSSを受け入れたが、約284人の正規労働者は拒否し、VSSを通して当初提示された基本給18カ月分の補償と実質賃金目減り補償手当は不十分だと主張した。
労働者は閉鎖に抗議し、労働・雇用・訓練省に陳情書を提出、政府に閉鎖申請の却下を求めた。労働側は、①役員の腐敗した慣行のせいで会社が損失を出した、②同社を復活させて労働者全員に雇用を提供すべきだと主張した。同社はタタ・スチールの子会社なので、他の工場で労働者に代わりの雇用を提供する能力がある。
ジャールカンド州労働省長官は2016年10月27日、閉鎖申請を却下する命令を出した。
同社は2016年10月に賃金の支払いを停止した。政府が閉鎖申請を拒絶したので、労働者は会社側に対し、賃金支払法に従って賃金を払い続けるよう要求している。
労働者は過去11カ月間、賃金を支給されていない。2017年6月、労働側は労働裁判所に提訴し、会社に賃金の支払いを指示するよう求めた。この事案は審理中である。
一方、会社側は閉鎖をめぐって高等裁判所に上訴し、こちらも現在係争中である。
タヨ従業員組合のラケシュワール・パンデイは言う。
「平和的なデモ参加者に対する警察の攻撃を非難する。この問題はさまざまなレベルで係争中だ。しかし、あのような乱暴な行為はタタ経営陣や政府にあるまじきものだ。タタ経営陣は民主的な手段で問題を解決するために、前向きに取り組まなければならない」
テルニウムCEOにスティーリー賞は時期尚早
2017-10-10
インダストリオール・グローバルユニオンは、ラテンアメリカ有数の鉄鋼メーカーであるテルニウムのCEOが、世界鉄鋼協会(ワールドスチール)の名誉ある賞にノミネートされたことを疑問視している。
テルニウムCEOのダニエル・ノベヒルは、10月16日(月)にブリュッセルで授与される第8回スティーリー賞で「インダストリー・コミュニケーター・オブザイヤー」にノミネートされた4人の候補の1人である。
しかしノベヒルの会社は、グアテマラの工場でテルニウム労働者を代表している組合SITRATERNIUMを再三にわたって無視し、コミュニケーションを取ろうとしていない。
2017年9月14日、インダストリオールとSITRATERNIUM、全米鉄鋼労組は、グアテマラにおける労働者の権利に関するOECD多国籍企業行動指針の違反で、テルニウムをOECDに提訴した。
テナリス・テルニウム労働者世界協議会のカルロス・デ・サンクティスは、ワールドスチールのエドウィン・バッソン事務局長への書簡で次のように述べた。
「当協議会は何度も懸念を表明し、同社と対話しようと努めましたが、ノベヒル氏はじめテルニウム当局者の誰からもまったく反応がありません。裁判所は何度も、同社が労働者による基本的権利の行使を防ぐために違法行為を犯したとの裁定を下しましたが、CEOはこの件についていっさい公式声明を出しておらず、同社はそれらの違法な権利侵害を続けています」
「現在の状況下でノベヒル氏は、この賞の表彰対象と言われる『世界全体に対して鉄鋼業を代表する最も優れた人物』とは思えません」とデ・サンクティスは付け加えている。
テルニウム・インターナショナル・グアテマラは過去4年間に労働組合幹部を何人か解雇し、裁判所命令を受けてやっと再雇用した。グアテマラの法律に定めがあるにもかかわらず組合休暇手当を支給せず、グアテマラの副労働大臣が仲裁役を申し出たときでさえ、労働協約を取り決めようとする組合側のあらゆる努力を拒否した。
「インダストリー・コミュニケーター・オブザイヤー」賞の候補者はワールドスチールが選出し、メディア関係者が投票する。ダニエル・ノベヒルはワールドスチールの役員で、テルニウムのパウロ・ロッカ会長は執行委員を務めている。
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長はこう語った。
「ノベヒル氏に対し、インダストリー・コミュニケーター・オブザイヤー候補者にふさわしい行動をし、可能な限り早くグアテマラの従業員と対話を始めるよう求める。テルニウムのCEOとして、同氏には労働者とコミュニケーションを取り、労働者の意見を聞く責任がある。もう一度、SITRATERNIUMを承認して同労組と交渉するようテルニウムに要求する」
ルクセンブルクに本社を構えるテルニウムはラテンアメリカ有数の製鉄会社で、グアテマラ、メキシコ、アルゼンチン、ブラジル、コロンビアおよびアメリカの生産施設に1万9,000人以上の労働者がいる。
SITRATERNIUMはグアテマラの労働組合連合FESTRASを通してインダストリオールに加盟している。
タイの自動車部品メーカーY-TEC、組合結成を理由に労働者を解雇
2017-10-10
日系自動車部品メーカーが組合結成後、労働者を情け容赦なく弾圧している。
Y-TECはCCTVカメラで組合員を監視し、無作為の薬物検査を受けさせ、解雇したり強制的に退職させたりし、ソーシャルメディアの掲示をめぐって組合会長を名誉毀損で訴えた。
タイのプラチンブリ県にあるこの自動車部品メーカーは山下ゴムが所有しており、約2,000人の労働者を雇用、ダイハツ、いすゞ、スズキ、サンヨーその他数社向けにホース・チューブ、エンジンマウス、サスペンション・ブッシング、ダイナミック・ダンパーを生産している。同社はプラチンブリ県に1997年と2013年に開設された2工場を所有している。
プラチンブリ県の工場は工業団地にあり、いくつかの関連会社が同じサプライチェーンで活動している。組合は承認されていないが、労働者はときどき労働条件に対して抗議行動や山猫ストを実施している。
インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織のタイ電機・自動車・金属労連(TEAM)は、労働者による組合の結成・登録を支援してきた。
2016年12月初め、約束のボーナスが支給されず、労働者は不満を募らせた。人事管理者による物理的な挑発によって状況が徐々に悪化し、事態を打開するために警察と軍、警備員が招集された。
7人の労働者が交渉代表に任命され、12月26日にプラチンブリ自動車部品労組を正式に登録、組合員を勧誘してY-TECに承認を求めた。
同社が直ちに取った対応は、組合員を夜勤に就かせて他の労働者から切り離すというものだった。抗議行動に参加した約90人の労働者が会合に呼ばれ、「労使関係を破壊」したとして退職を求められた。
労働者たちが拒否すると、会社側は「リストラ」を理由に32人の組合員を強制的に退職させた。労働者は退職金を提示され、受け入れなければ解雇すると言われた。
22人の労働者が会社側の提示を受け入れたが、組合は政府の雇用調停機関である労使関係委員会(LRC)に苦情を申し立てた。同社は組合に対する圧力を強め、会長に賄賂を贈って組合を解散させようとし、組合員の行動を記録するためにビデオカメラを設置し、組合員の薬物検査を実施した。
同社は何人かの組合員にも賄賂を使い、他の組合員に退職を勧めさせようとした。これに失敗すると、会社側は支払額を1人当たり6,000米ドルに増額。4人の労働者がこの提示を受け入れた。
この時点でLRCは労働者を支持する決定を下し、復職を命令した。会社側は命令に従わず、上訴した。
組合会長のルアンサク・クライマラは、監督者のポストから賃金の低い新設の単純労働に異動させられた。会長がLRCに苦情を申し立てると、会社側は会長がソーシャルメディアに書いた内容を理由に名誉毀損で訴え、さらに刑事責任があるとして解雇した。
Y-TECは、同社の慣行を批判する記事を書いた学者も名誉毀損で訴えている。
インダストリオールは親会社の山下に書簡を送り、介入を求めた。
ヴァルター・サンチェス書記長は次のように書いた。
「インダストリオール・グローバルユニオンは山下ゴムに対し、Y-TECで介入して必要な労使対話・協力機構を設け、調停手続きでタイ労使関係委員会に全面的に協力し、労働者の基本的権利の完全な尊重を確保するよう緊急に要求します」
インダストリオールは2015年、労働基準の不遵守を理由にタイをILOに提訴した。
ボーイングとボンバルディアの貿易紛争に関するインダストリオール声明
2017-10-04
国際貿易関連の規制や紛争にあたっては、すべての国々における雇用の維持、保護および創出を常に最優先すべきである。
ボーイングが米商務省にボンバルディアを提訴した事件では、カナダと北アイルランドで数千人の適正な熟練雇用が脅かされている。
このような状況は許容できるものではない。
インダストリオールは、企業がある国の労働者と別の国の労働者を競い合わせようとすることを認めない。
私たちはアメリカ、カナダおよびイギリス各国政府に対し、ボーイングとボンバルディアの行動の社会的影響を考慮して大至急両社と会談し、雇用を保護して労働者とその家族、地域社会に害を及ぼさない方法で、この紛争を解決するよう要求する。
背 景
ボーイングは9月、ダンピングでボンバルディアを告発し、米商務省に提訴した。これによってボンバルディア製の飛行機に懲罰関税が課せられ、数千人の雇用が脅かされる恐れがある。
この紛争は、カナダ、イギリス、アメリカのインダストリオール加盟組織であるユニフォー、ユナイト・ザ・ユニオン、GMB、全米機械工・航空宇宙労組に加入している労働者を脅かす。
インダストリオール加盟組織傘下の労働者には、アメリカでボンバルディアCシリーズ旅客機の部品を生産する直接・間接従業員2万2,000人、北アイルランドの最大1万4,000人の間接従業員、カナダの直接・間接従業員4万5,000人が含まれる。ベルファストのボンバルディア工場は、カナダで組み立てられているCシリーズ用の翼を作っている。
北米の労働者、自分たちのニーズを考慮したNAFTA協定を求めて結集
2017-10-03
カナダの組合ユニフォーは、メキシコに労働基準を改善させ、カナダおよびアメリカとともに、平等な労働条件を確保する北米自由貿易協定(NAFTA)を何とか取り決めさせるべく努力を続けている。
ユニフォーとさまざまな労働組合・社会組織が集会を開いてメキシコの労働者との連帯を表明し、NAFTAに基づく労働者の権利を擁護するとともに、先ごろの地震の被害者に同情の意を表した。
組合側は、すべての関係国について尊厳ある労働条件を保証し、労働者の権利ならびに持続可能な開発に対する権利を尊重するNAFTAを求めている。メキシコの労働組合代表の出席が期待されていたが、9月19日にマグニチュード7.1の壊滅的な地震がメキシコを襲ったため、これは不可能になった。
「NAFTA締結時には、賃金が上がってメキシコの労働者が貧困から解放されると言われたが、そうはならなかった。この困難な時期に支援を表明し、より繁栄する未来を構築するために手助けしたい」とユニフォーのジェリー・ディアス全国会長は、地震の犠牲者を追悼する1分間の沈黙のあとに述べた。
メキシコのUNTとヌエバ・セントラル、その他の関連組合は公式声明を発表し、寄せられた連帯に感謝した。
「関連3カ国の労働者・労働組合は団結して闘っており、仕事と生活をより不安定にしようとする試みを阻止し、3カ国間の不均衡を抑え、賃金の購買力を回復させるとともに、ディーセント・ワークの保障、地域全体における労働者の権利の尊重、各国の持続可能な開発に対する権利の承認を抜きにしてNAFTAが進展しないよう確保すべく取り組んでいる」
ユニフォーとアメリカの加盟組織である全米自動車労組(UAW)は共同声明を発表、この協定の再交渉は調印3カ国の労働者に利益を与えなければならないと述べ、メキシコとアメリカ南部における労働法の柔軟化と低賃金の押しつけは労働者を犠牲にして企業利潤を増やすとして拒絶した。
自動車産業は北米で200万人の雇用に直接責任を負っており、この協定はアメリカとカナダで数十万人の失業と数千工場の閉鎖を招いた、と関連組合は説明した。したがって、NAFTA再交渉が3カ国で成功を収めるには、特にメキシコで労働者の賃金上昇をもたらさなければならない。メキシコの学者アレックス・コバルビアスによる最近の研究によれば、自動車産業労働者の平均時給は2.3米ドルである。さらに組合側は、この協定が対メキシコ貿易赤字の縮小に役立ち、アメリカとカナダの労働組合がある工場で新しい製造業雇用を創出することを期待している。
9月27日にカナダのオタワで第3回NAFTA交渉が終了した。第4回交渉は10月にワシントンで行われる。この貿易圏の国々は年内、メキシコ大統領選までに合意に達しようと努力する。しかし交渉は遅々として進まず、目に見える進展はない。
インダストリオール・グローバルユニオンのフェルナンド・ロペス担当部長は次のように語った。
「メキシコ、カナダおよびアメリカの労働者は、労働条件と結社の自由、団体交渉権を考慮しない協定に反対であり、悪い協定を結ぶくらいなら協定などないほうがいいと考えている。インダストリオール・グローバルユニオンを頼りにしてほしい!」
インダストリオール、OECDで鉄鋼労働者の懸念を提起
2017-10-02
9月28~29日にフランスのパリで開催されたOECD鉄鋼委員会に十数人の組合活動家・指導者が出席し、過剰設備やリストラなど、世界中の労働者とその家族に影響を与え続けている鉄鋼市場の厄介な現状の憂慮すべき影響について、労働者の意見を主張した。
この会合で、インド鉄鋼・金属・機械労連所属のインダストリオール執行委員でインダストリオール・グローバルユニオン素材金属部会の共同部会長を務めるサンジョット・バダブカールが、OECD代表団の労働組合諮問委員会のメンバーとして発言した。
バダブカールは発言の中で、鉄鋼業における労働市場の状況や、鉄鋼労働者と鉄鋼労組の発言権を強め、その意見を十分に理解させることの必要性について語った。
OECD鉄鋼委員会が鉄鋼生産や鉄鋼価格がこのところやや改善していると報告し、昨年よりも工場閉鎖や雇用削減が減っているなど、労働者にとって一定の改善が見られるものの、バダブカールは労働市場における厄介な事態の展開をいくつか指摘した。
バダブカールは、先ごろタタ・スチールとティッセンクルップが、両社の欧州鉄鋼事業を併合し、折半出資の合弁企業を設立するという了解覚書を発表したことに触れた。この結果、4,000人の雇用が減少するだろう。
彼女は次のようにも語った。
「関連労組の多くでは、ダンピングなどの不公正貿易慣行を原因とするリストラで組合員が解雇され、職を失う状況が続いている。私たちはOECD鉄鋼委員会のマンデートに、各国政府が鉄鋼業の生産能力縮小に起因する社会的コストの削減に取り組むという約束が含まれていることに留意する。残念ながら、各国政府はこの約束をまったく守っていない。加盟組織の報告によると、スウェーデンを唯一の例外として、鉄鋼業のリストラで失業した労働者は、妥当な期間内に同様の仕事や収入を得られる望みがほとんどない。所得補助と再訓練給付は全般として不十分だ」
バダブカールは以下の点も繰り返した。
「関連組合は、中国が外圧に対応して汚染を抑えるために、生産能力の縮小に着手しているという報告を聞いている。私たちは中国に対し、この生産能力縮小が中国の労働者に及ぼす影響の軽減に必要なすべての措置を講じるよう要求する。OECD鉄鋼委員会に対しても、同委員会の専門知識を活かして、労働者へのこれらの影響を効果的に抑える方法について中国を指導するよう促す」
同時にバダブカールは中国の鉄鋼労働者との連帯を表明した。
「中国が結社の自由と団体交渉権を尊重し、独立した民主的労働組合が活動できるようにすることを要求する。私たちはすべての国々にこれを要求している。OECD鉄鋼委員会もそうすべきだ」
さらにバダブカールは、ラテンアメリカの労働組合からの報告について懸念を表明した。ラテンアメリカでは、地域全体でネオリベラル政権が労働市場の柔軟性の拡大を要求するという不穏な傾向が見られ、それによって雇用保護と労働者の権利の保護が弱体化している。
インダストリオールによる介入のあと、OECD鉄鋼委員会の委員長による声明で、委員会メンバーが構造調整で職を失った鉄鋼労働者をより強力に支援することの重要性が繰り返し強調された。
*下記リンクからスピーチ全文をダウンロードできます。
http://admin.industriall-union.org/sites/default/files/uploads/documents/2017/FRANCE/sanjyot.statement.oecd.docx