造船・船舶解撤産業における持続可能な未来に向けた闘い
2018-11-27
インダストリオール・グローバルユニオン造船・船舶解撤労組は、2019~2022年のアクション・プランを採択し、安全性と持続可能な産業政策の促進および多国籍企業における労働組合ネットワークの開発に合意した。
2018年11月1~2日にシンガポールで、持続可能な造船・船舶解撤に関するインダストリオール・グローバル会議が開催された。シンガポールの加盟組織、造船・海洋機器労組(SMEEU)、ケッペル=FELS労組(KFEU)およびケッペル労組(KEU)が主催し、21カ国の27組合から103人が参加した。組合代議員は以下について積極的に議論した。
- 造船・船舶解撤産業と部門活動の世界的傾向
- 組織化および不安定雇用との闘い
- 将来の船舶解撤産業の持続可能な雇用の確保
- 労働安全衛生と持続可能な産業政策の促進
- 労働組合ネットワークの開発と連帯の強化
- 将来の活動と2019~2022年アクション・プラン
神田健一、アイリーン・ヨー・チョー・ジェク両共同部会長、ビジャーダール・ラネー副部会長、アトレ・ホイエ・インダストリオール書記次長が開会の辞を述べた。
神田健一は挨拶の中で次のように述べた。
「格差、差別、貧困。私たち国際労働組合運動は、そのような条件を社会からなくすために努力すべきだ。労働者と人を最優先する産業政策の促進によって、私たちの生活を守り、この産業を持続可能なものにしなければならない」
参加者は開会に際して、2016年11月1日にパキスタンのガダニ船舶解撤場の事故で亡くなった28人の労働者を追悼して1分間の黙祷を捧げた。
シンガポールの国会議員で組合指導者のパトリック・テイが来賓として挨拶し、新技術の課題を取り上げた。
2008年の経済危機以降、世界の造船業は緩やかに回復している。しかし、この産業はまだ供給過剰と過剰設備に直面している。松崎寛インダストリオール造船担当部長が、世界の受注量の主な傾向、新造船の種類、市場や労働組合ネットワークにとって重要な主要大手造船会社を示した。
インダストリオール・ヨーロッパのエルスペス・ハザウェイが、EUが直面している主要な課題は雇用の減少とアウトソーシングの増加だと述べた。EUは未来の造船のために社会的対話と技能訓練を開発する必要がある。
船舶解撤産業は今後25年間成長すると予想される。世界の船舶解撤の70%以上が集中しているインド、バングラデシュおよびパキスタンの南アジア諸国では、国際規則・基準(船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約など)の実施が焦眉の急となっている。
インダストリオール南アジア事務所のファヒムディン・パシャが、組織化プロジェクトの問題と課題、組合活動、実績について説明した。南アジアの組合は過去4年間に船舶解撤産業の組合員数が倍増しており、今では3万人を超えている。
造船業では、過去10年間に不安定労働者が急増している。アブデルクリム・アヒル(FTM-CGT、フランス)とアン・ジェウォン(KMWU、韓国)、エドソン・カルロス・ロチャ・ダシルバ(CNM-CUT、ブラジル)、ジュリアン・ワン(KFEU、シンガポール)が、不安定労働者、特に下請労働者や女性・外国人・移民労働者に接触し、組織化された正規労働者と同じ労働協約の枠内で彼らの基本的権利を保護する方法について、組合の課題や活動を共有した。
インド、パキスタン、バングラデシュから参加した代表は、南アジアの船舶解撤労働者を取り巻く状況を強調し、各国で香港条約の批准に向けて引き続き努力すると断言した。ミザヌール・ラーマンがバングラデシュの産業省と国際海事機関を代表して、条約の実施は政府の法定委任事項だと述べた。
SENSRECプロジェクト(バングラデシュにおける船舶の安全かつ環境上適正な再生利用)は、批准に向けて格好の条件を作り出している。参加組合は、船舶解撤労組を引き続き支援し、未組織労働者に接触して労働安全衛生を促進することを約束した。FNVメタールのメアリー・ファン・デル・ステルが、インドの船舶解撤労働者の労働安全衛生訓練に関する優良事例を共有した。
造船における持続可能な産業政策の促進は、雇用を維持するための鍵となる。ブライアン・コーラー・インダストリオール安全衛生・持続可能性担当部長が、インダストリー4.0は造船業に大きな影響を及ぼすと予想され、労働者と組合はそれに備え、公正な移行を目指して取り組まなければならないと述べた。
造船には多様な製造技術・技能の統合が必要とされるため、この産業の国際安全衛生基準は多くの活動や職業を網羅する必要がある。ジュネーブ国際労働事務所の鎌倉泰彦が、ILOの造船および船舶修繕における安全衛生に関する実務規程改訂版についてプレゼンテーションを行った。
中田節樹(基幹労連、日本)、ムハマド・アフザル(FF、ノルウェー)、トーマス・ソビー(COインダストリ、デンマーク)が、政府・使用者に労働安全衛生活動だけでなく持続可能な産業政策も要求することによって、高付加価値造船への移行に関する各自の組合の見解と慣行を共有した。
オーストラリア造船労連(ASFU)は、この会議でイギリスの造船・機械労連およびフランスのCGT NAVALと重要な協力協定を結んだ。
この会議では、グローバル・レベルで多国籍企業における組合の交渉力を高めるために、労働組合ネットワークにも焦点を合わせた。マット・マーフィー(CEPU、オーストラリア)、グレン・トンプソン(ASFU、オーストラリア)、イアン・ワデル(欧州ワーカーズ・ユナイティング、イギリス)、マヌエル・ベラド・カンベロ(FICA-UGT、スペイン)、ウォーレン・フェアリー(IBB、アメリカ)の司会で、BAEやナバル・グループ、フィンカンティエリ、ナバンティアといった多国籍企業における効果的・建設的な労働組合ネットワークの開発をめぐり積極的に議論した。
会議に先立って、10月31日にBAEシステムズとナバル・フィンカンティエリの2つの労働組合ネットワーク会議が開かれ、新しいアクション・プランが策定された。ナバルとフィンカンティエリの労働組合ネットワークは初会合だった。
今回の会議で、この部門の共同部会長と副部会長が全会一致で再選された。基幹労連/JCMの神田健一、シンガポールSMEEUのアイリーン・ヨー・チョー・ジェクが共同部会長として、インドSMEFIのV・V・ラネーが副部会長として船舶解撤労組を代表し、引き続き主導する。2019~2022年の部門アクション・プランも採択された。
松崎寛は次のように述べた。
「私たちの優先課題は、この部門で労働者の生活を守り、持続可能な雇用を促進することだ。新しい部門アクション・プランは包括的であり、加盟組織の多大な関与と努力が必要になる。連帯行動の強化によって、目的達成に向かって前進しよう」
アトレ・ホイエがこう語った。
「この会議は、世界中の船舶解撤・造船労働者のために状況を改善しようという十分な決意を示した。多国籍企業で労働組合ネットワークが構築されており、香港条約の批准を目指してひたすら尽力している。金持ちの船主が、非人間的な慣行によってもたらされた死傷事故に対する責任を回避するために、バングラデシュやパキスタン、インドの海岸に船を送ることを許している状況を根絶しなければならない」
11月2日午後、KFEUの好意により、代議員はケッペル=FELS造船所を見学した。同社は主に沖合・海洋産業向けに活動し、シンガポール国外でも事業を展開している。代議員は造船所の活動と労使関係について学んだ。