ディアとキャタピラーでグローバルな対話が必要
2019-07-18
ディア&カンパニーとキャタピラーの全世界の事業で労働者を代表する組合幹部が米国デトロイトで会合を開き、両多国籍機械メーカーにグローバル・レベルの社会的対話を行うよう改めて要求した。
7月10~12日に10カ国から集まった40人以上の代議員が合同・個別インダストリオール・グローバルユニオン会合を開催、経験を交換するとともに、対話を改善し、グローバルな連帯を深めた。
初日はディア組合ネットワークを取り上げ、マーク・ハウズ上級副社長・最高総務責任者がディアの社会的関係の概念と戦略を紹介した。
ディア欧州従業員代表委員会の代表らが欧州レベルの社会的対話の経験を共有し、代議員はよりよく活動を調整してディア・ネットワークを強化するための計画を採択した。
マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長が次のように述べた。
「私たちはディアに対し、できればグローバル枠組み協定によって、経営側とインダストリオール・グローバルユニオンとの公式対話を生み出すよう求める」
2日目には、ホスト組合UAWの財政担当書記で農機具部門担当部長のレイ・カリーが開会の辞で次のように述べた。
「この機械部門グローバル・ネットワークは、世界各地の両社事業所から集まった同僚と交流する素晴らしい機会を提供してくれる。労働組合の取り組みの調整は、ディアとキャタピラーのすべての労働者を目に見える形で支援する。私たちの達成可能な究極の目標は、労働者とその家族の労働・生活条件改善だ。UAWは今後とも、すべての農機具・建設・鉱山機械部門の労働者の間でグローバルな連帯を生み出すための努力を支援・推進していく」
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長が会合で発言し、こう語った。
「ディアとキャタピラーに存在するような労働組合ネットワークは、それ自体で役立つわけではない。これらのネットワークは、各社従業員の労働・生活条件改善の原動力として必要だ。会社側に対話を始める意思があるなら、私たちはいつでも受け入れる。だが、会社が労働者の基本的権利を尊重しなければ、私たちに残された選択肢はキャンペーンしかない」
参加者は両ネットワークの合同会合で、国境や会社の垣根を超えた共通の問題があるため、情報・経験の交換が重要だと強調した。この会合では、機械エンジニアリング産業におけるデジタル化の機会と課題について議論した。労働者が富の分配を受けるには、国境を越えた強力な労働組合の連携が必要である。
キャタピラーでは、ここ数年、従業員が多くの後退に見舞われている。同社事業の抜本的なリストラの結果、いくつかの工場閉鎖で1万人を超える労働者が解雇され、労働組合間の交流・協力の重要性が明らかになった。キャタピラー欧州従業員代表委員会メンバーが、適切な情報を入手して経営陣と協議するうえでの難題について説明した。参加者は、ネットワーク・ニュースレターを重要な伝達手段として評価し、コミットメントを表明した。
出席者は会合の引け際に、会合と会合の間のコミュニケーションを改善することで合意した。これについては運営委員会で決定する。
マティアス・ハートウィッチが次のように総括した。
「会合でコミュニケーションの問題が繰り返し取り上げられたことから、交流して情報を交換する労働組合ネットワークの能力の強化が大いに必要とされている」
ディアは農業・建設・林業機械を製造し、世界中で6万人以上の労働者を雇用している。
キャタピラーは世界最大の建設機器メーカーで、労働者数は10万人を超えている。どちらも米国企業である。
フリッカーで会合の写真を参照。
https://www.flickr.com/photos/industriall_gu/albums/72157709719383021
労働組合、アルセロール・ミッタル南アフリカの労働者2,000人削減計画を非難
2019-07-18
南アフリカ全国金属労組(NUMSA)は、法律で求められている組合との協議抜きで労働者2,000人を削減するというアルセロール・ミッタルの決定を非難している。
8,500人以上の労働者を雇用している鉄鋼メーカーのアルセロール・ミッタル南アフリカ(AMSA)は、7月10日にこの削減を発表した。その後AMSAはNUMSAに書簡を送り、削減を発表していながら、何人の労働者が影響を受けるかは分からないと述べた。
AMSAバンデルビルパーク工場があるセディベングのモケテ・マココNUMSA地域書記はこう述べた。
「AMSAはすでに協議プロセスを飛ばして、影響を受ける労働者数を決定している。今回もまた、AMSA経営陣は労働者と適正手続きに対する労働者の権利を無視するという言語道断の挙に出た」
インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織NUMSAは3月にAMSAでストに入り、同一労働同一賃金を要求するとともに、労働仲介、安全衛生基準の低下、その他の労働権侵害に抗議した。
NUMSAの要求の1つは、労働仲介業者を通して雇用された労働者に常用雇用を与えることだった。AMSAは労働者を直接雇用するのではなく、同社が「サービスプロバイダー」と称する請負業者を使って労働者を採用し、同じ仕事をしている常用労働者の半分以下の賃金しか支払っていない。請負業者を通して雇用される労働者の中には、長年にわたって給付なしの不安定な契約で働いている者もいる。今回、彼らは解雇通知を受け取った。
「組合員がAMSAで外部委託をなくすためにストを実施してからわずか数カ月後に、同社経営陣がこのような行動を取っていることは驚くに当たらない。経営側は明らかに、いわゆるサービスプロバイダーによって供給された契約労働者の搾取をなくすために闘ったことを理由に、労働者を処罰したいと考えている。私たちはNUMSAとして、失われる雇用数を最小限に抑えるために最善を尽くす」とモケテ・マココは語った。
インダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所のポール・フランス・ヌデソミン所長が次のように述べた。「アルセロール・ミッタル南アフリカが組合と協議し、労働者の権利を尊重したうえで削減に関する公式声明を出すことが重要だ。私たちは同社に対し、公正な労働慣行を実施するよう要求する」
南アフリカの鉄鋼業では過去10年間に約10万人の雇用が失われた。
AMSAはグローバルなアルセロール・ミッタル・グループの傘下企業で、同社には3,000人を超えるNUMSA組合員がいる。アルセロール・ミッタルは全世界60カ国で約20万人を雇用している。
フィアット・クライスラーとCNHiに組合との対話拡大を要求
2019-07-16
自動車産業が大規模な変化に見舞われている中で、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とCNHiは労働組合との協議を拡大しなければならない、とインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織はカナダでの会合で要求した。加盟組合はFCAに対し、メキシコのテクシッド工場で100人以上の労働者を復職させることも要求した。
7月8~9日にトロントで年次FCA/CNHiグローバル組合ネットワーク会議が開催され、9カ国の労働組合員38人が集まった。FCAとCNHiの24ブランドには、アルファ・ロメオ、ケース、クライスラー、ドッジ、フィアット、ジープ、ランチア、マセラッティ、ニューホランド、それに鋳鉄サプライヤーのテクシッドが含まれている。
現在進行中の自動車産業の転換は、自動車会社と労働者の未来に影響を与える非常に大きな課題である。ネットワークは、FCAには前向きな投資によって雇用と工場を守る責任があるという見解で一致した。しかし、同社は対話を強化するどころか、労働組合・労働者の専門知識を無視する傾向がある。参加者はFCAに対し、特に別のOEM(例えばルノー)との合併案といった基本的な問題に関して、労働組合との緊密な協力に基づく政府支援の包括的戦略を策定するよう要求した。
ネットワークは、メキシコでテクシッド・イエロの同僚を支援するために即時行動を起こすことも約束した。インダストリオール加盟組織のロス・ミネロス(SNTMMSSRM)は5年間のキャンペーンを経て、2018年にテクシッド工場の労働組合選挙に過半数で勝った。それにもかかわらず、会社側は選挙結果の承認を拒否し、敗北したCTM傘下組合との労働協約を維持している。
テクシッド・イエロは2019年4月、同社の行動に抗議した123人の労働者(ロス・ミネロスの工場指導部全員を含む)を解雇した。ネットワークは、会社側が解雇された労働者を復職させ、ロス・ミネロスを民主的に選出された交渉パートナーと認めるまで、連帯支援を継続すると誓約している。
ネットワークは、特にサプライチェーンとの関連で、グローバル化経済において基本的な社会権・労働組合権を支持するうえで中核的なILO労働条約が重要であることについて、FCAとCNHiに働きかけることを決議した。この文脈でネットワークは、FCA、CNHi両社とグローバル枠組み協定の交渉に入ることを提案する。
参加者は、特にデータベースへの貢献とその積極的利用によって、ネットワークでの情報交換を拡大することに合意した。また、女性と若い世代のネットワーク参画に関する明確なルールについても合意した。
会合2日目に参加者は、ブランプトン組立工場を訪問してFCAカナダの人事担当取締役と会談、北米経営陣との良好な関係がグループ全体とどのように連動し得るかの実例を示した。
ゲオルク・ロイテルト・インダストリオール自動車部門担当部長は次のように述べた。
「フィアットはヨーロッパの自動車会社の中で唯一、労使間で定期的に情報を交換して協議するためのグローバル・フォーラムがない。同社に対し、この持続不可能な状況に終止符を打ち、対話を始めるよう要請する」
グループは、会合のホストを務めたカナダの加盟組織ユニフォーに特に感謝した。
ブリヂストン・グローバル・ネットワーク、長年にわたる安全衛生の取り組みをさらに強化
2019-07-10
世界最大のタイヤ企業ブリヂストンの主要労働組合は、長年にわたって共同行動を調整し、安全衛生に特に焦点を当てている。
インダストリオール・ブリヂストン・グローバル・ネットワーク運営委員会は、2019年6月11~12日に南アフリカのヨハネスブルグで18回目の年次活動を実施した。
グループの慣習に従って、運営委員会の議長は、インダストリオール・グローバルユニオンの重要な加盟組織である日本ゴム産業労働組合連合(ゴム連合)が務めている。日本のブリヂストン労働組合が一連の会合を組織・調整しており、日本および同社のその他の重要拠点で毎年交互に開催されている。
南アフリカの両ブリヂストン工場はインダストリオール加盟組織の南アフリカ全国金属労組(NUMSA)が組織化しており、NUMSAは今年の活動のホストとして、近くのブリッツ工場を訪れて経営陣と交流する活動を計画した。同工場は766人の労働者を雇用しており、現地のNUMSA職場委員はこのタイヤ工場の変化を監視し、労働者の技能を高めて近代的な機械や生産技術に順応しようとしている。
石塚宏幸ゴム連合中央執行委員長・ネットワーク議長が開会の辞を述べ、ブリヂストンのような世界的タイヤメーカーにおける成熟した労使関係の重要性について概説した。新技術によって、新興企業が成長してビッグ3(ブリヂストン、ミシュラン、グッドイヤー)からマーケットシェアを奪う可能性が出てきている現在の状況を受けて、石塚委員長はこう述べた。
「気を緩めないようにしなければならない。労使が共通のルールと理解、コミュニケーションを確立しなければならない。そして、労働安全衛生は非常に大きな優先事項だ。このネットワークの力を強化するにあたり、私たちはインダストリオールの変わらぬ支援を頼りにしている」
中国をはじめとするアジア諸国から低価格のタイヤが流入している問題は、南アフリカ、日本、ヨーロッパのタイヤメーカーにとって大きな問題である。低価格タイヤは市場に氾濫しており、世界中のインダストリオール組合員の雇用を脅かしている。
現在、鉱業だけでなく自動車産業も世界的に低迷しており、タイヤ産業に直接影響を与えている。NUMSAは日本の組合の同僚と協力し、南アフリカ共和国ポート・エリザベスにある従業員数250人のブリヂストン第2工場の未来の保証を求めることにしている。
ブリヂストン欧州従業員代表委員会のマルコ・アルギリ委員長は、この世界規模の委員会で重要な役割を果たしている。マルコは、22カ月間ヨーロッパで重傷事故が起こっていないという快挙に基づき、安全衛生分野におけるブリヂストンの進展についてグループに発表した。しかしマルコは、南アフリカの工場で労働者がカーボンブラックに接触している問題を提起した。
ブリヂストンはヨーロッパで今後4年間に4,100万米ドルを投資し、フランス、ハンガリー、イタリア、ポーランド、スペインの8工場で製造プロセスをデジタル化する。この投資にはブリヂストン従業員の能力向上と訓練が含まれ、資源効率と職務満足の向上を支援するためのデジタル技術の運用を目指す。この改善は省エネ、効率向上、ゴミ減量化、プロセス簡素化にも取り組む。
ブリヂストン欧州従業員代表委員会のコーディネーターを務めるハインツ・エバーツが、がんに焦点を当てて会合に重要な貢献をした。健康は安全とまったく同様に重要であり、ブリヂストンは職業がんにもっと注意を払うべきだ、とハインツは主張する。会合出席者は、タイヤ生産に使われる素材の本当の発がんリスクをさらに調査する必要があることについて合意した。
ブリヂストン労働組合の中島崇裕が、活動的な組合は安全な職場に至る唯一の道だと報告した。
「日本のブリヂストンでは、組合の関与と設備改良のおかげで安全性が向上している。組合員が職場から安全性の問題を提起すれば、私たちはそれを経営側にぶつけ、耳を傾けさせるようにしている」
トム・グリンター・インダストリオール・ゴム部門担当部長が次のように述べた。
「インダストリオールは、安全衛生に関する中核的権利を求めるキャンペーンの重要性を信じている。組合員には知る権利、参加する権利、行動する権利がある。つまり、ブリヂストンは職場のリスクと危険に関する情報を全従業員に提供しなければならず、労働者は危険を感じたら職務を拒否する権利を常に持っていなければならず、組合員は職場において共同で安全衛生プログラムを計画・実施する権利を有しなければならないということだ」
NUMSAのジェームズ・セララ職場委員とクリスティン・オリビエ国際役員が、安全衛生に関する3つの中核的権利に基づき、ブリヂストン経営陣が積極的な行動を起こしたことを報告した。しかし、職業がんに関する理解を深めるために取り組む必要があることが強調された。一般に労働者は退職後3年以内に亡くなっているため、ブリヂストン工場で長く働いたあと退職した労働者の健康状態について情報収集を行う。
2020年には東京でオリンピックが開催されるため、来年の年次活動は日本以外で行われる。
インダストリオール、ルノーと勤労生活の質に関する協定を締結
2019-07-09
ルノー・グループと同社グループ従業員代表委員会、インダストリオール・グローバルユニオンは、労働生活の質に関する前例となるグローバル協定を締結した。
今日パリで締結されたグローバル協定は、経済的・技術的・社会的観点から仕事の世界の発展を考慮に入れ、全世界のルノー従業員を対象としている。
このグローバル協定(「ルノー・グループで協力して仕事の世界を構築」)には、ティエリー・ボロレ・ルノー最高経営責任者とヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長、フランスの労働組合連合団体およびグループ委員会に加わっているその他の労働組合連合団体・組合、エリック・ビダル・グループ委員会書記が署名した。
ルノー・グループ従業員代表委員会に加わっている労働組合連合・組合10団体が署名した本協定は、グループ・レベルと現地レベルの両方で社会的対話の枠組みを提供する。この協定は可能性をもたらし、新たな取り組みを開始したり、妥当な実践的解決策を見つけ、現地協定の交渉を通じて職場における従業員の生活を改善したりするよう奨励している。
「ルノーがこのような革新的協定を締結し、職業生活と私生活とのバランスを尊重するより安全かつ魅力的な環境下で、世界中の当社従業員が働けるようにしようとしていることを誇りに思う」
――ティエリー・ボロレ、ルノーCEO
「新しい推進システムとデジタル化に伴って労働環境が大きく変貌しており、この社会的な面での変化に備えなければならない。本協定によって、世界中の関連組合は取り決められた方法でこれらの変化に対処できる。この協定は特に、各従業員に必要な技能の開発を提供することによって、今日の労働者が明日もまだ雇用されるよう確保する」
――ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長
新協定は持続可能なアプローチにより、職場における生活の多くの側面、特に従業員が業績と幸福を両立させられるようにする側面を取り上げている。
グループの全従業員にかかわるこのアプローチは、次の5つの基本原則に基づいている。
- 仕事の世界の発展に関する対話
- 協力的な管理システム
- インクルージョンへの持続可能な取り組み
- ワーク・ライフ・バランス
- 労働環境の調整
この新協定は、2013年7月2日に締結されたグローバル枠組み協定「持続可能な成長と開発に向けた協調」を補足している。基本的社会権を尊重するグループのコミットメントを確認し、職場における暴力やハラスメントと闘うために今年ILOが採択した条約を盛り込んでいる。
「この協定はILO100周年の結論の1つを実行に移すものだ――仕事の未来は事前に分かっているわけではなく、労働関係者が特に社会的対話を通して仕事の未来にどう対処するかによって決まる。本協定の署名者が、労働転換の課題に関してこの自発的かつ積極的な見解に立っていることを歓迎する」
――ガイ・ライダー、ILO事務局長
「この新しい協定は現地の社会的対話の枠内で、世界中のルノー・グループ従業員の日常生活の改善に向けて現場で具体的行動を起こすための道を開く。したがって、この新協定によって会社の経済的成果とルノー・グループ従業員の社会的成果を調和させることができる」
――エリック・ビダル、グループ委員会
素材金属労組、団結して課題に取り組み続けることを決定
2019-07-05
2019年6月11日~13日、14カ国から約50人の組合代表がオーストラリアのシドニーに集まってインダストリオール・グローバルユニオンの素材金属運営委員会に出席、この産業の労働者が抱える課題をめぐり討議し、国際連帯へのコミットメントを再確認した。
この会合はオーストラリア労組(AWU)が主催した。現在、世界の鉄鋼生産能力は生産を4億2,600万トン上回り、さらに設備が拡充されている。OECDによると、「すでにこの部門の過剰生産能力を助長している特定の国々が新しい製鋼所を開設すれば、世界の鉄鋼業は新たな供給過剰に直面するおそれがある」。過剰生産能力は、この部門で閉鎖や倒産、雇用削減を引き起こしている。
運営委員会は、鉄鋼業に加えてアルミ産業とその生産チェーンを分析した。
ダニエル・ウォルトンAWU全国書記が歓迎の辞で次のように述べた。
「AWUは、重工業全体で労働者に公正な賃金・労働条件を提供しているグローバルな組合運動の一部だ。インダストリオールがオーストラリア・シドニーで素材金属会議を開催するにあたり、世界中から集まってくれた仲間の労働組合員を歓迎できることを光栄に思う」
運営委員会は各部門に影響を与えている主要問題に取り組んだ。参加者は貿易に関する立場の違いにもかかわらず、素材金属労組はどうすれば協力して過剰生産能力に取り組むことができるか討議した。デジタル化とインダストリー4.0は素材金属労働者にどのような影響を及ぼしているか、組合はどう対応すべきかについて討論が行われた。
参加者は、圧制的な政府や不安定労働者の利用を増やしている企業に直面して、どうすれば組合はより効果的に組織化できるかに関して意見を交換した。
韓国金属労組のオルグ、キム・ソンガーが、世界第5位の鉄鋼メーカーであるポスコが抑圧的な方法を用いて組合をつぶそうとしている実情を説明した。キムのプレゼンテーションはインド、トルコ、インドネシアからの同様の報告によって確認された。委員会は、対ポスコ・キャンペーンにさらに取り組むことに合意した。
この会合では、主要な多国籍企業に対する行動やキャンペーンをめぐり討議した。例えばアルコア、アルセロール・ミッタル、ゲルダウ、グレンコア、リバティーハウス、ノルスク・ハイドロ、リオ・ティント、タタ・スチール、ティッセンクルップ、テナリス、テルニウム、バローレックなどである。ワーカーズ・ユナイティング北米のマイケル・ミルサップがアルコアとアルコニックで進行中の契約交渉の状況を出席者に概説し、ワーカーズ・ユナイティング・ヨーロッパのアントニー・ピアソンと英コミュニティーのロイ・リックスがブリティッシュ・スチールについて報告した。
運営委員会はジェンダー政策に関する活発な討議を歓迎した。マリナ・ウィリアムズAWU会長が、この部門における自らの経験と会長就任について話した。女性運動家の元AWU鉄鋼労働者ロビン・マーフィーが、1980年から1993年まで14年間にわたってキャンペーンを実施し、女性がBHPスチール(現ブルースコープ)で働けるようにした経緯を説明した。
マーフィーは自作映画の一部を見せ、次のように語った。
(VimeoにアップロードされているBEフィルムスの『ウィメン・オブ・スチール』予告編)
「製作中の新作映画『ウィメン・オブ・スチール』の予告編は、男性優位の産業で不平等や差別との闘いに成功を収めた女性のキャンペーンの複雑な現実を浮き彫りにしている。この作品が新世代の女性や労働者の刺激になれば幸いだ」
「AWUでは初期のころから女性が活発に活動してきた。現在、ブルースコープ・スチールは積極的に女性を雇用しようとしている。この仕事は誇り高きAWUの男女労働者が闘争の末に勝ち取ったものだからだ。『ウィメン・オブ・スチール』は重要な物語であり、AWUはその製作に一役買ったことを大変誇りに思う」とダニエル・ウォルトンは述べた。
運営委員会の前日にアルコアとリバティーハウスのネットワーク会議が開かれた。アルコアは15カ国で1万4,000人の労働者を雇用しており、組合組織率が高い。ここ11年間、カナダ、オーストラリア、スペイン、スリナムで組織労働者に対する攻撃を強めている。アルコア会議は紛争や交渉における労働者との連帯を表明した。
リバティーハウスは短期間で急速に拡大し、世界の鉄鋼業で重要な企業になった。ベルギー、イタリア、ルクセンブルク、チェコ共和国、マケドニア、ルーマニアにおけるアルセロール・ミッタル鉄鋼事業の買収を受けて、リバティーハウス・ネットワーク会議は、労使関係や労働組合ネットワーク構築の未来について議論した。
両ネットワークは、今後活動を強化する旨決定した。
「3日間の徹底的な交流と討議の結果、素材金属部門における国際連帯の活発かつダイナミックな基礎ができた」とケマル・ウズカン書記次長は述べた。
「この部門の加盟組織とともに、あらゆる困難を乗り越えていく」
カナダABIの長期ロックアウト終了で組合が勝利
2019-07-04
アルミネリエ・ド・ベカンクール(ABI)の労働者は79.77%の賛成多数で使用者側の契約提示を批准し、ケベック史上最長の部類に入る民間部門の労働争議が終結した。アルコアが交渉を拒否したあと18カ月にわたって、USWメタロス組合員1,030人が同社工場からロックアウトされた。
「労働者たちが雇用を守るために、そして先任権や労働条件などの基本原則を擁護するために闘ったことを誇りに思う」とクレメント・マッセ全米鉄鋼労組(USW)第9700支部長は言う。
協約では復職手順が改善され、組合員全員が8カ月以内に職場に復帰できることになった。会社側の以前の提案では、復職までの期間が数年に延長される可能性があり、その間、組合権が停止されるところだった。組合に1,900万米ドルの和解金を要求する使用者側の苦情も取り下げられた。
協約では先任権が尊重されており、使用者は工場外部の労働者に職をオファーする前に、まず組合員に提示しなければならない。
組合幹部は、できれば交渉によって解決し、労働者が職場に復帰する際の労働環境をもっと改善したかったと述べ、会社側が18カ月間のロックアウト中に有意義かつ建設的な交渉の実施に抵抗したことを非難した。
「長年にわたって自分たちの権利を要求した結果、いま妥結に至り、尊厳と誇りをもって職場に戻る機会を得た同志を誇りに思う。これはこの地域のみならず労働組合界にとっても重要な勝利であり、成果の達成に至る道のりは長く厳しい場合が多いことを示している」とマティアス・ハートウィッチ・インダストリオール・グローバルユニオン素材金属担当部長は言う。
インダストリオール執行委員会は今年5月、この闘いを公に支持した。
組合側はフランソワ・ルゴー・ケベック州首相のあからさまな偏見と交渉への干渉も糾弾した。首相の行動によって会社側は大胆になり、有意義な交渉の実施を拒否する方針を固めた。
これを受けてUSWメタロスは国際労働機関に提訴した。
ABIは巨大多国籍企業のアルコア(出資率75%)とリオ・ティント(同25%)が共同所有している。
アジア太平洋の組合、貿易協定が組合の要求に応えるよう各国政府に要請
2019-07-03
アジア太平洋の組合は地域の各国政府に対し、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)貿易協定案が組合の5大要求に応えるよう確保することを要請した。
組合は、秘密のRCEP交渉が多国籍企業の利益となるように民主的な決定と国家主権を抑えることを懸念している。組合側の要求は以下のとおり。
1. 参加国政府はILO基本条約に従わなければならない。
2. 投資家対国家の紛争解決メカニズム(企業に政府を訴える権利を与えることによって民主主義を脅かす)を撤廃しなければならない。
3. 公的調達と公共サービスはRCEPから除外すべきである。
4. 交渉草案を公開審査にかけるとともに、ステークホルダーとの協議プロセスを実施しなければならない。
5. 各国政府はRCEPの人権インパクト・アセスメントを行い、その調査結果を民主的な議会に提出しなければならない。
RCEPは東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国(ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)と、中国、日本、韓国、インド、オーストラリアおよびニュージーランドとの自由貿易協定案である。
この協定案は世界最大の経済圏における貿易を統治し、世界人口の半分を対象とする。2019年6月30日にメルボルンで行われた最新の交渉ラウンドにあたって、アジア太平洋の労働組合(インダストリオール・グローバルユニオン、BWI、IUF、UNI、国際家事労働者連盟、ASEANサービス従業員労働組合協議会および各団体の加盟組織)は参加国政府に対し、RCEPが組合の5大要求に応えるよう確保することを共同で要請した。
組合は声明で次のように述べている。
「私たちは地域の労働者数百万人を代表して、この声明により、世界の人口の50%、GDPの30%、輸出の25%を占める地域を対象とするメガ地域貿易協定をめぐり2013年から進行中の秘密交渉に関して、重大な懸念を表明する」
「多国籍企業が貿易協定の利用によって、国家の政策を覆し、労働者と人権を犠牲にして経済的利益を最大化できる有利な事業環境を生み出そうとするようになっている状況は、労働組合と市民社会組織の懸念となっている」
アニー・アドビエント・インダストリオール地域事務所所長はこう述べた。
「うまく交渉された貿易協定は、地域の人々が平和と繁栄を共有できるようにする。だが、協定が資本家だけでなく人民にも利益を与えるようにしなければならない。多国籍企業が民主主義を打倒し、密室で交渉された協定によって公共サービスを弱体化させることは許さない」