ティッセンクルップ労組がエレベーター事業の維持を要求
2020-01-16
ティッセンクルップ・エレベーター・グループ従業員代表委員会は資金難に陥った同社の経営陣に書簡を送り、資金調達のためのエレベーター事業完全売却をしないよう促した。
ドイツ系多国籍コングロマリットのティッセンクルップは経営が行き詰まっており、業績の悪い事業分野をいくつか抱えている。同社は40億ユーロの債務超過に陥っており、資金を調達するためにいくつかの事業分野を売却する予定である。
しかし、エレベーター部門をはじめ、いくつかの事業は極めて順調で利益を上げている。同社は必要な資金を調達するためにいくつかの選択肢を検討している。第1の選択肢は、エレベーター事業の支配権は維持するが、この部門を独立企業として上場し、株式公開によって資金を調達すること。第2の選択肢は、パートナーを見つけて事業の一部を売却するが、支配権は維持することである。第3の選択肢は事業の完全売却だが、その結果、新しい所有者によって分割されるおそれがある。
ティッセンクルップを代表している組合は第1の選択肢を支持している。エレベーター・グループ従業員代表委員会は重役会と監視委員会に書簡を送り、次のように述べた。
「エレベーター事業を分離すれば、ティッセンクルップは最も利益の多い事業を失うだけでなく、全世界の従業員の約3分の1を失うことにもなります。……」
「大部分または全部の売却は1回限りの財政的効果をもたらすにすぎません。その後、一貫して好業績を上げているエレベーター事業を足がかりにティッセンクルップAGの貸借対照表の改善を目指すことができなくなります」
従業員代表委員会は会社側にエレベーター事業を分割しないよう要請し、次のように述べている。
「エレベーター事業がこれほど成功を収めて利益を上げている1つの理由は、この事業部全体が幅広い土台に立脚していることです。その多様性と世界的なネットワークが基本的な強みとなっています。ですから、エレベーター・グループの団結を今後も維持しなければなりません」
従業員代表委員会は会社側に、売却を進める場合、現行の協定に基づき、潜在的購入者はドイツのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織IGメタルと最善購入者契約を締結しなければならないことを改めて強調した。この協定は、大多数がヨーロッパ域外で働いている世界中の全従業員5万3,000人に適用される。
マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール部門担当部長は次のように述べた。
「最善購入者契約を結ばないのであれば、従業員代表委員会と労働組合はティッセンクルップのエレベーター事業の売却に同意できない。インダストリオールは全世界の従業員5万3,000人の従業員を支持し、その権利と利益を守る。従業員に過去の誤った経営判断の代償を払わせてはならない」