広報ニュース

第112号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2020年9月30日)

インドネシアの金属労働者、PTジュイ・シンの不当解雇を非難

2020-09-25

<JCM記事要約>

  • セラミックタイル会社のPTジュイ・シン・インドネシア(PTJSI)は、労使交渉を拒否、これによるストへの報復としてFSPMI地方委員を含む労働者197名を5月に一方的に解雇した。
  • 地方・州レベルの組合は、地区労働省に苦情を申し立てたが、9月にはこれに応じない当局に対して、解雇された労働者30人が会社近くの工業地帯で「スリープイン」行動をするなど、空文化した労働法への抗議行動を何度も実施。
  • これまでの間、2月以降、多くのFSPMI組合員が解雇や賃金未払いの被害を受けており、インダストリオールはPTJSI社に対し、解雇された労働者の復職、未払い賃金の支給を要求する書簡を送付した。

 

インドネシア金属労連(FSPMI)は、PTジュイ・シン・インドネシア労働者197人の不当解雇を非難。労働法を尊重して労働者全員を復職させ、未払賃金を全額支給するよう要求している。

北スマトラ州にあるセラミックタイル会社のPTジュイ・シン・インドネシア(PTJSI)は2020年5月、COVID-19パンデミック下での減益を理由に労働者に解雇を通告した。この一方的な解雇は、解雇に先立って労働組合との労使交渉を行わなければならないと明記する労働法2003年第13号に違反する。

会社側による交渉拒否に抗議するために、労働者は5月11日にストに入った。同社は数日後に報復として、FSPMIの地方委員全員を含む197人の労働者を解雇した。

地方・州レベル組合は、北スマトラ州の地区労働省に苦情を申し立て、労働者の要求に応じなかった労働省を批判した。

労働者と組合は何度か抗議行動を組織。例えば9月12日に、PTJSIによって解雇された労働者30人が会社近くの工業地帯で「スリープイン」抗議を実施した。この行動は労働法が空文化しているというメッセージを送った。

サイド・イクバルFSPMI会長は言う。

「労働大臣に、労働者を訪問して紛争を解決するよう要求する。政府は労働法を執行し、PTJSIに対して厳しい措置を取らなければならない。COVID-19に勢いを得て使用者が法律を破り、組合をつぶそうとしていることは事実だ

「2月以降、3,121人ものFSPMI組合員が解雇されており、約1万人が賃金の全部または一部を支給されずに一時解雇されたり、契約を打ち切られたりしている。これは深刻な雇用危機だ。そういうわけで政府に対し、オムニバス法案よりも大量解雇の問題に集中するよう求める」

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長は同社に書簡を送り、次のように述べた。

「御社がFSPMI支部組合と法律に定める事前労使交渉を行うことを拒否し、2020年5月に197人の労働者を一方的に解雇したと聞き、憤りを感じています。これは労働法2003年第13号の甚だしい違反であり、インドネシアにおける法の支配の深刻な侵害でもあります」

PTジュイ・シン・インドネシアに対し、2020年5月に解雇された労働者197人の即時復職と、すべての未払賃金、給付および勤続年数の保障を強く要請します」                                 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                        

 

インダストリオール・グローバルユニオンとTUAC、OECD鉄鋼委員会で懸念を提起

2020-09-25

<JCM記事要約>

  • インダストリオールとOECD労働組合諮問委員会(TUAC)は、第88回OECD鉄鋼委員会の討議に参加し、全世界の鉄鋼労働者が直面しているリスクの認識を高めた。
  • OECDによると、2019年の世界鉄鋼生産量は減少しているが、中国においては生産能力が拡大している。これは不当なグローバル競争の深刻化を示しており、多くの国々で雇用の維持が難しくなっている。
  • こうした状況に対して、インダストリオールとTUACは、政府・使用者との協議を通じて鉄鋼部門が現在直面しているグローバルな課題の共通の解決策を見出すこと、および鉄鋼委員会へも社会的対話メカニズムを最大限に活用することを奨励した。

 

インダストリオール・グローバルユニオンとOECD労働組合諮問委員会(TUAC)は、第88回OECD鉄鋼委員会の初日に討議に加わり、鉄鋼部門の悲惨な状況を深く憂慮している全世界の鉄鋼労働者が直面するリスクに対する認識を高めた。

最近のOECD分析によると、2019年の世界鉄鋼生産はアジアと中東を除いて落ち込んだ。COVID-19パンデミックは、史上最悪とはいかないまでも「2008〜9年の世界金融危機以降、最も急激な鉄鋼需要の減少」を招いた。

この文脈において、中国の鉄鋼生産能力拡大は世界中の国々にとって特に懸念される。OECDは『製鋼能力の最新情勢2020』に中国の工場レベルデータを盛り込み、2019年の中国の生産量を前回推定値(2019年9月)と比較して9,600万メートルトン上方修正した。

これは2016〜2018年に中国が公表した鉄鋼生産の減少を補って余りある量である。中国における不法新規設備の増加と国内外におけるキャパシティースワップの増加は、不当なグローバル競争を悪化させており、多くの国々で既存の雇用の維持をさらに危険にさらしている。

この課題には2つの面がある。一方で、現在の景気後退が終わるまで鉄鋼業の世界雇用水準を維持することは社会的に有用であり、したがって絶対に必要である。COVID-19危機の最初の数カ月に政府が講じた措置(短期労働制度や社会的保護の強化など)は、多くのOECD諸国において雇用と所得を守るうえで重要な役割を演じた。

だが、これらの緊急措置のほとんどには、延長された場合は別として、満了が近づいているか、すでに満了したサンセット条項があり、短期的な雇用水準の展開を予測することは難しい。溶鉱炉はいったん停止されたら、二度と再稼働しない可能性が極めて高い。

TUACとインダストリオール・グローバルユニオンは政府・使用者に対し、従業員がCOVID-19パンデミック期間中に働き続けられるようにするために、最も厳しい労働安全衛生基準の適用確保を要求した。

TUACは、COVID-19危機に対応して雇用を保護し、労働安全衛生を確保するための労働組合やソーシャル・パートナーの協定のオンラインマッピングを管理している。適切な労働安全衛生措置を確保する最も効果的な方法は、工場・企業レベルの合同安全衛生委員会の設置など、社会的対話機構を十分に尊重し利用することである。

TUACとインダストリオール・グローバルユニオンはOECD鉄鋼委員会に対し、将来の活動で鉄鋼部門の雇用関連問題を徹底的に掘り下げるよう促した。

例えば、他のOECD委員会と協力し、鉄鋼部門の構造変化(過剰生産設備、需要減少、グリーントランジションの必要性)が世界中の鉄鋼労働者に与える影響を分析したり、必要に応じて雇用を保護し、公正な移行を確保するために利用できる最善の政策や慣行を確認したりすることである。

このために、TUACとインダストリオール・グローバルユニオンは政府・使用者双方に、労働者代表および労働組合と協議し、鉄鋼部門が現在直面しているグローバルな課題の共通の解決策を見つけることを、そして鉄鋼委員会に、他のOECD委員会が推進しているように社会的対話メカニズムを最大限に活用することを奨励した。

マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール素材金属担当部長は述べた。

「私たちは中国国外の鉄鋼生産の将来について、世界の鉄鋼業でさらに多くの雇用が失われることを懸念している。じっと座って待っていることはできない」

世界中の男女鉄鋼労働者の懸念やニーズに対する認識を高めるために、政府・企業代表ならびにOECD鉄鋼委員会の組合側出席者20人を前に話ができて光栄だ。製鋼は機能的な社会・経済のために必要不可欠だ。鉄鋼の未来、『よりグリーンな』鉄鋼の未来の創造を支援するには、力を合わせるしかない

鉄鋼労働者には発言する権利があり、政府と企業に意見を述べる権利がある。私たちは今日、その声を上げてOECD鉄鋼委員会で伝えようと試みた」

 

造船・船舶解撤組合が決起

2020-09-24

<JCM記事要約>

  • 9月22日に造船・船舶解撤アクショングループはオンラインにて会合を開き、新型コロナウイルスの影響を踏まえた世界的傾向、アクション・プランのフォローアップと今後の活動について議論を行った。
  • 新型コロナウイルスの影響を受け、下請労働者や女性労働者などが雇用の危機に直面している。船舶解撤部門においては操業度が過去10年間で最低の水準になっている。
  • 昨年、世界最大の船舶解撤国であるインドが新たに香港国際条約を批准し、先行きが明るくなった面もあるが、目下、新型コロナウイルスの影響を受け、関連産業では多くの労働者が特に大きな打撃を受けており、労働者の権利保護のため、団結し闘い続ける必要がある、とした。

 

インダストリオール造船・船舶解撤アクショングループは9月22日にオンライン会合を開催、各部門の世界的傾向を議論し、将来のアクション・プランについて合意した。

基幹労連/JCMの神田健一共同部会長が開会挨拶で次のように述べた。

「COVIDが猛威を振るい続け、通常の活動が困難になっている中で、皆さんの安全をお祈りするとともに、その達成への本アクショングループのコミットメントを再確認する。しかし、引き続き総力を結集して協力関係を強化していかなければならない」

アイリーン・ヨー・チョー・ジェク共同部会長が述べた。

「このパンデミックは、いくつかのセグメントの雇用に大きな打撃を与えている。技能を向上させ、雇用を擁護していく方法を見つける必要がある」

各部門の組合を対象にCOVID-19の影響と組合の対応を調査した結果、以下が明らかになった。

  • 組合/国の半数が労働安全衛生と雇用を確保している。
  • クルーズ、フェリー、海上プラットフォームおよび船舶解撤部門の組合は、今後数年間の雇用を懸念している。
  • 多くの国々で下請労働者や女性、若者、移民労働者が最も大きな打撃を受け、雇用危機に直面している。
  • 造船所や閉鎖空間で社会的距離を確保することが重要な課題である。
  • 公正な移行、グリーンテクノロジー/グリーンリカバリー、インダストリー4.0、技能訓練・開発に関する政策を立案し、実施する必要がある。

松崎寛インダストリオール造船・船舶解撤担当部長は言う。

「調査の結果、多くの造船労組が組合員の安全衛生と雇用の確保に成功していることが分かった。しかし、多くの国々で下請労働者や女性、若者、移民労働者が雇用危機に直面しており、これらの労働者を対象とする組織化活動を拡大する必要がある

COVID-19の影響は部門によって異なる。造船の商業部門、特にクルーズ、フェリー、海上プラットフォームは、今後数年間の雇用水準確保に向けた新規受注の獲得や受注量の維持に苦労している。海事産業のサプライチェーンは徐々に回復している。海軍部門では、ほとんどの造船所が2019年と同水準で操業している。

このパンデミックにより、造船業では進行中の再編・改革プロセスが加速している。CSSCとCSICの統合(従業員数31万人の世界最大の中国系造船会社)に続いて、現代重工業とHHI/DSME、フィンカンティエリとアトランティーク造船所など、巨大造船会社の統合計画が進行中である。

インダストリオール執行委員会は2019年、韓国における現代重工業による大宇造船海洋の買収に関する決議を採択した。合併交渉の透明性の不足や造船業のサプライチェーンの労働者・組合に対する重大な脅威をめぐる懸念があった。

船舶解撤の操業度は10年間で最低の水準にある。南アジアの船舶解撤産業は3月から5月までのロックダウン期間後に活動を再開しているが、稼働水準は依然として低い。インド、バングラデシュ、パキスタンの船舶解撤労組は雇用確保に取り組んでいる。

インドは世界最大の船舶解撤国で、2019年に船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約を批准した。インダストリオール加盟組織ASSRGWAは、政府が設置した香港条約実施委員会のメンバーになる予定である。

「批准国が必要な数に達したため、香港条約の先行きは非常に明るい。最大規模の旗国の1つと最大規模の船舶解撤国の1つが必要であり、それによって条約の実施に必要な要件がすべて満たされる」とビドゥヤハール・ラネー副部会長が述べた。

COVID-19に関するインダストリオールの政治声明に沿って、アクショングループは以下に同意した。

  • 必要な場合、ジェンダーの視点から安全衛生(COVID-19)に関する教育・訓練を提供し、女性と若者の参加を促進する。
  • 主要な旗国だけでなくバングラデシュにもHKCへの署名を求めるロビー活動に重点を置く。
  • 技能開発など、組合活動の全レベルでインダストリオールの持続可能な産業政策を促進し続ける。

「すべての大陸の組合による今日の会合は、この危機に際して団結する必要性とその意欲を確認する。香港条約の世界的批准が間近であることは喜ばしい。だが、関連産業では多くの労働者がパンデミックによって特に大きな打撃を受けており、社会的保護を受けていない。誰も取り残されないようにするために闘い続けなければならない。インダストリオールはCOVID-19に関する政治声明に沿って行動を起こす」とアトレ・ ホイエ・インダストリオール書記次長は述べた。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                         

 

モディ政権の反労働者的法律に抗議

2020-09-24

<JCM記事要約>

  • インド・モディ政権は、インフォーマル部門の組合・労働者と十分な協議を行うことなく、労使関係法、社会保障法、労働安全衛生・労働条件法を含む主要労働法を可決させ、インドの労働法を書き換えた。
  • これにより、新規雇用と解雇を繰り返す企業が有利になり、労働者の権利が適切に保護されなくなることから、経済成長率が急落し、失業が増加しているインドにおいては、労働者にさらなる悪影響を及ぼすとされる。
  • 反労働者的な政策に抗議し、インドの組合は結集して全国行動を実施した。インダストリオールとしても、グローバル連帯行動の強化を検討している。

 

インドの中央労働組合は9月23日に結集して全国的行動を実施、モディ政権が可決した一連の反労働者政策に抗議した。

労働者たちが街頭で過酷な労働法のコピーを引き裂く中で、モディ政権は非民主的な方法で3本の主要労働法を可決し、インドの労働法を根本的に書き換えた。この法律には、労使関係法、社会保障法、労働安全衛生・労働条件法が含まれる。

野党が農業労働者・農民に影響を及ぼす法律をめぐる議会審議をボイコットしているため、この法律は討議なしで可決された。この変更の影響を主に受けるインフォーマル部門の組合・労働者と十分に協議していないため、この労働法は政府自身の立法前協議ガイドラインを無視している。

この変更は労働者の脆弱性を高め、労働者の権利を適切に保護することなく新規雇用と解雇を繰り返す企業に有利な方針を促進し、十分な社会的保護のない有期契約雇用を助長する内容となっている。合法的にストを行う権利の行使は実質的に不可能である。社会保障に関する新しい法律は、多くのインフォーマル部門労働者を対象とする福祉条項を削除しているため、多くの点で差別的である

インダストリオール加盟組織INTUCの会長を務めるG・サンジーバ・レディー博士は言う。

「労働者の利益に反する労働法が非民主的な方法で可決されたことを強く非難する。経済成長率が急落し、失業が増えているため、全国の労働者が悲惨な状況に直面している。インドの中央労働組合は政治的所属にとらわれず、労働者の利益を擁護するために共同プラットフォームを構築した。インドの組合は、農業労働者・農民団体と彼らが反農家的政策に反対して9月25日に実施した抗議行動にも、連帯を表明した。独裁的なモディ政権から人々を救うために協力している」

組合の要求は以下のとおり。

  • 労働法と反農家的法律の撤回
  • 公共部門事業の民営化の中止
  • すべてのインフォーマル労働者への社会的保護
  • COVID-19ロックダウン中の雇用削減禁止と賃金全額支給
  • 全労働者を対象とする社会保障
  • すべての人の食料安全保障を確保する公共流通システムへの普遍的アクセス

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。

「民主的プロセスに対する尊重の欠如に愕然としている。インド政府は組合代表と真の対話を行い、国際的に認められた人権と基本原則および労働における権利を労働法に組み込むよう確保する必要がある。インダストリオールとグローバル・ユニオン・フェデレーションは、民主主義と組合員の権利を守る闘いにおいてインドの組合運動を支持するために、グローバル連帯行動を強化しようとしている」

この抗議行動には、中央労働組合のINTUC、AITUC、HMS、CITU、AIUTUC、TUCC、SEWA、AICCTU、LPFおよびUTUCと、いくつかの独立系連盟が参加した。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

 

フォルクスワーゲン・ブラジルの組合、雇用確保のために協約を承認

2020-09-22

<JCM記事要約>

  • ブラジルのフォルクスワーゲン経営陣は、4工場を代表する労働組合に対し、新型コロナウイルスの影響により労働者約35%(1万5,000人中5,200人に相当)を削減すると発表した。
  • この発表を受け組合は、雇用の確保と会社の競争力維持のため4週間にわたり人員削減に対する代替案を交渉し、労働協約の合意に至った。
  • 協約には、自発的退職パッケージ、医療パッケージ、賃金凍結、2021年以降に加入する労働者に適用される新しい賃金率が含まれ、労働者の雇用を5年間確保するものとなっている。

 

ブラジルのフォルクスワーゲン4工場の組合が労働協約を取り決め、5年間雇用を保護するとともに、さらなる投資と自発的退職パッケージを定めた。

COVID-19パンデミックに直面して、サンベルナルド、タウバテ、クリティバ、サンカルロスのVW工場の労働者は、今後5年間雇用を守る集団雇用契約に賛成票を投じた。

「VWの危機は数年前に始まり、パンデミックのせいで事態が悪化している。生産が能力をはるかに下回りそうであることを踏まえて、現実的に考えなければならなかった。初めから、主な目的は雇用の保護だった」と、インダストリオールに加盟する全国金属労連(CNM/CUT)の傘下に入っているサンベルナルドのABC組合のワグナー・サンタナ会長は述べた。

VW経営陣はブラジルの工場で労働者を代表している4組合に、パンデミックの経済的影響が原因で、柔軟性措置の導入によって労働者を約35%削減するつもりだと知らせてきた。これは合計1万5,000人中5,200人の雇用に相当する。

組合は4週間かけて代替案をめぐり交渉し、人員削減の阻止と会社の競争力維持を確保した。

「どの工場もそれぞれ異なるが、組合代表は何とか各工場のための具体的な条件を取り決めることができた。組合が協力し、合意に達することができたことが重要だった。これは今後、他の組合の参考とすることができる」とCNM/CUT傘下のタウバテの組合Sindmetauのクラウディオ・バチスタ会長は述べた。

この協約には下記が盛り込まれている。

  • 自発的退職パッケージ
  • 医療パッケージ
  • 賃金凍結
  • 2021年以降に加入する労働者に適用される新しい賃金率

インダストリオール加盟組織CNTM傘下のグランクリティバのSMCのセルジオ・バトカ会長が付け加えた。

「労使双方が常識を働かせ、今後5年間にわたって労働者の雇用を保護する案を見いだした。それは労働者たちが安心して働き続けられること、VWが現在ブラジルで吹き荒れている嵐を乗り切る方法を見つけられることを意味する」

CNM/CUT傘下のサンカルロス/イバテ金属労組も協約を承認した。バンデルレイ・ストラーノ会長は、この協約を労働者に心の平和をもたらす偉業と呼んだ。

ヴァルター・サンチェス・インダストリオール書記長は次のように述べた。

「ブラジルのVW労働者と4組合による協力を祝福したい。5年間の雇用確保と財政的保証は、1万5,000人のVW労働者にとってのみならず、サプライチェーンで働いている数千人の労働者にとっても重要だ

「ブラジル政府が雇用法を解体しているところで、労使関係政策を立てていないことを考えれば、この協約はなおさら重要であり、ブラジルならびに全世界の組合に刺激を与える」

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                            

 

コロナウイルス危機きっかけに組合は世界の再構築を

2020-09-21

<JCM記事要約>

  • 新型コロナウイルスによる混乱は、これまでも存在していた課題を更に浮き彫りにさせ、階級格差が明確となった。労働者階級の人々は感染の恐れがある中で働くことととなり、さらに最前線で働く労働者は女性や有色人種が多いことも事実である。
  • 労働組合は低賃金労働者が社会で必要不可欠な役割を果たしていることを強調し、キャンペーンを通じてロックダウン中の賃金交渉や公衆衛生に関する助言などを行った結果、多くの国で組合加入者が増加している。
  • 化石燃料ベースの経済からの移行が必要とされる中、大規模な公共投資の要求をはじめ、労働組合として主導権をとるべく、インダストリオールは6月の執行委員会で、より良い公平な未来のためのCOVID-19に関する政治決議を採択した。

 

COVID-19ロックダウンに起因する経済活動の停止は世界を混乱に陥れ、すでに進行中だった傾向を加速させている。しかし、組合は準備を整えている。この機会をとらえて世界を作り変えることができる。

特集

文:ウォルトン・パントランド

このウイルスは、昨年後半に中国・武漢の生鮮食品市場で出現したようである。有名なバタフライ効果さながら、感染したコウモリかセンザンコウが世界中で混乱の嵐を引き起こした。

今回のパンデミックで、グローバル化とその長く不透明なサプライチェーンが白日のもとにさらされた。あらゆるものが互いに結びついているが、資金や権力、情報の流れに影響を及ぼすにはどうすればよいか、そのために何ができるかは、必ずしも明白ではない。

労働組合は1980年代からこのような環境下で活動してきた――複雑なグローバル問題のローカルな解決策を見つけようと試み、国際協力の拡大を通して形のない勝手気ままな資本に対抗する方法を学んでいる。グローバル・ユニオンは新しい労働者の国際主義を切り開き、グローバル枠組み協定や国際連帯キャンペーン、ブランドに対する消費者圧力の行使によって、労使関係をグローバル化した。

 

今年3月、その世界が突然停止した。世界経済が動きを止め、国境が閉ざされ、各国がロックダウンに入ったのである。

現在、多くの国々が慎重に再開し始めており、新しい世界の形はまだ定まっていない。しかしコロナウイルス危機は、決定的な崩壊、終止符のように見える。

世界は今後、これまでとは違った姿になるだろう。

このウイルスは偉大な平等主義者として迎えられた――富裕層であれ貧困層であれ、誰もが生物学的に感染しやすい。いや実際は、コロナウイルスは紛れもない階級格差を浮き彫りにした。このウイルスはまず、グローバル会合に出席した国際ビジネスマン階級を通じて中国から広がった。イタリアのスキーリゾートで冬を過ごす階級を通じてヨーロッパ全域に拡大し、ヨーロッパで休暇を過ごす階級を通じてアフリカとラテンアメリカに伝播した。

その影響は不均等かつ不公平でもある。世界中を動き回ってウイルスを蔓延させているグローバル化した人々は、最もウイルスに対処しやすい立場にある人々でもある。必要な場所と機器があれば、ほとんどの人が自宅でホワイトカラーの仕事を楽に行うことができる。

スキー旅行や外国での休暇などまるで想像できない労働者階級の人々が、危機の矢面に立たされている。ロックダウンで失業し、過密状態のアパートで暮らす人々。銃を持たずに戦場に向かう兵士のように、保護具なしで仕事に行かなければならない医療労働者や病院清掃人。

スーパーマーケットや輸送、配送の仕事に就く労働者は、最近まで未熟練として軽んじられていたが、突然、社会を結束させる不可欠な接着剤と認められるようになった。そして生産に従事する労働者は、車を作れず、シャツを縫えず、石炭を採掘できず、ソファーから石油を抽出できない状況にある。

タイで清掃作業を行う労働者

 

さらなる不平等が明らかになった――危険な最前線の仕事では男性よりも女性が多く、有色人種が多いのである。この経済ですでに弱い立場にあった人々が、さらに弱い立場に追い込まれている。

組合はうまく対応し、労働者を擁護するために活動家や資源を動員している。労働者を支援する一時帰休制度や、保護具の提供を求める運動も、組合キャンペーンの結果である。組合は、経済の主要分野で低賃金労働者が必要不可欠な役割を果たしていることを強調している。南アフリカからブラジル、パキスタンまで、加盟組織の多くが全国レベル・企業レベルで救命協定を取り決めた。

速報:政府は組合の話を聞き、雇用定着制度を秋まで延長した。

政府は引き続き賃金の80%を負担し、段階的で安全な職場復帰の鍵である操業短縮を支持するために規則を変更した。

これは何百万もの勤労者世帯にとって大きな救済になる。

――労働組合会議(@The_TUC)2020年5月12日

ロックダウン中の賃金交渉によって、数百万人の労働者が安全に過ごせるようにし、ウイルスの拡大を抑えて無数の命を救うことができた。組合は、公衆衛生に関する助言の提供や、殺菌剤、マスク、手袋の配布でも先頭に立っている。危機に取り組むために職場を転換し、自動車工場で人工呼吸器を製造したり、縫製工場でマスクを作ったりすることを要求した。

その結果、多くの国々で組合加入者の増加が報告されている。

だが、少なくとも労働組合員であるならば、COVID-19後の世界の最初の形は望ましいものではない。一人一人が家族と地域社会を支えていたことを考えれば、大量失業にさらされることは壊滅的である。インダストリオールが組織化している部門は特に大きな打撃を受けている。購入企業が注文をキャンセルしたため、何万人もの衣料労働者がレイオフされた。日産はカタルーニャの工場を閉鎖し、ルノーは雇用を削減、ロールスロイスもスコットランドの飛行機エンジン製造工場で雇用を削減しており、商品価格は混乱し、石油産業や鉱業は今後どうなるか分からない。

だが、この大量失業がコロナウイルス危機の避けられない結果であるという結論に抵抗し、ここでさまざまな力が働いていることを見て取らなければならない。

第1に、使用者と右翼政権はコロナウイルスを口実に、平時なら達成することができない変更を強行している。インド各州は労働法を停止している。BHPはシフト変更を強要している。そして多くの企業が、とにかく辞めさせたい労働者をレイオフする機会として健康危機を皮肉的な態度で利用する一方で、政府から救済金を受け取っている。

第2の要因は、コロナウイルスがすでに進行中だったプロセスを劇的に加速させたことである。自動車工場はしばらく前から操業を停止しており、労働運動はモビリティーの将来が不確かであることをよく知っている。

私たちはファストファッションが持続不可能であることも知っている。化石燃料ベースの経済からグリーン・エコノミーへの移行が必要であることを知っている。石油や石炭に長期的未来がないことを知っている。気候変動によって従来とはまったく異なる経済が要求されていることが分かっている。

そして私たちは、政策活動を実施して準備している。私たちはこれに備えている。公正な移行を支持する論説を行い、この移行がさまざまな部門でどのような形を取るかに関する詳細な政策案を策定している

今のところ欠けているのは、政治的意志である。ほとんどの政府が、少数の軽微な措置で民間部門に転換への投資を十分奨励できると期待して、傍観主義的なアプローチを取って満足している。そして民間部門は、進むべき方向について政府の取り組みの明確な合図を待っている。

コロナウイルスは、各国政府が迅速かつ大胆に行動し、劇的な結果をもたらす決定を下せること示した。長年にわたって財源がないと不満を述べてきた保守政権が突然、社会の崩壊を阻止するために巨額の資金を工面している。何百万もの労働者が一時帰休させられて公的資金を支給され、企業が財政援助を受けた。

経済学者は、政府予算は家計とは違い、莫大な赤字は問題ではないかもしれないことを認識(あるいは承認)している。この資金は返済する必要がないのである。緊縮と不安定は常に政治プロジェクトであり、経済的または社会的理由で必要とされるものではない。

赤字は問題ではないというケルトンの意見に賛成。ただし、私が根拠とするのは現代貨幣理論ではなく、完全に伝統的なマクロ経済学だ。現代貨幣理論はここでどんな貢献をしているのか?

――ポール・クルーグマン(@paulkrugman)2020年6月9日

これらの大胆な政策対応は、ユニバーサル・ベーシックインカム、必要不可欠な最前線の労働者の価値、当然のことと思われていた古い日常のその他多くの面をめぐる対話を再燃させている。


新たな日常はこれまでとは異なるものでなければならない。

第2次世界大戦後、欧州は荒廃していた。ヨーロッパ大陸を再建するための資金を確保し、その再建が福祉国家の基礎を築き、サッチャーとレーガンのネオリベラル反革命によって破綻に追い込まれるまで大きな成功を収めていた。

COVID-19からの公正な回復は、このようなもう1つの機会でなければならない。政府・企業は、公正なグリーン・エコノミーを立て直すための資金を見つけなければならない。ニューディールを生み出すにはグローバルな協調的取り組みが必要である。救済措置だけでは足りない。将来への大規模な公共投資が必要である。労働組合員としての私たちの役割は、これを要求・主張し、私たちの方針を促進し、必要があれば将来のためにストを行うことである。

私たちが主導権を取らなければ、他者に取られてしまうだろう。

インダストリオールは6月の執行委員会で、より良い公平な未来のためにCOVID-19に関する政治決議を採択した。

 

不十分な最低賃金の引き上げが労働者に打撃

2020-09-14

<JCM記事要約>

  • カンボジア政府は2021年の最低賃金を2米ドル引き上げると発表した。
  • 当初、組合側は、現行最低賃金から35米ドルの引き上げを要求、この結果は、使用者の要求・政府の試算ともに最低賃金の引き下げが求められる中での引き上げとなった。
  • 結果に対しては、一定の評価の声もある一方、パンデミック下で食品のインフレ率が上昇していることを考慮すると、労働者にとっては不十分な引き上げとされる。

 

カンボジア政府は、すでにパンデミックと戦っている勤労者世帯に打撃を与え、2021年の最低賃金を192米ドルに設定すると発表した。組合側は、現行最低賃金190米ドルから12.35米ドル引き上げるよう要求していた。

カンボジア政府は2021年の最低賃金を192米ドルに設定し、組合の要求に応えなかった。組合側は、インフレ率、生産性および収益性に基づき、現行最低賃金190ドルから12.35米ドルへの引き上げを主張した。

しかし、使用者団体は最低賃金を172.62米ドルに引き下げることを求め、政府の研究によると新しい最低賃金は186米ドルにすべきとされた。

政労使代表による三者会合は、9月9〜10日にプノンペンで開かれた全国最低賃金審議会で合意に至ることができなかった。

その後、フン・セン首相は2021年1月1日発効の新賃金を発表した。

カンボジア衣料労働者民主組合連合(CCAWDU)のコン・アシット会長は、この決定に驚いて次のように言う。

組合員はわずか2米ドルの増額に不満を抱いている。現下の厳しい時期にあって、労働者にはこの決定に異議を唱えるための交渉力がほとんどない

カンボジア王国自由労働組合連盟(FTUWKC)のマン・センハック副会長が、アシット会長に同意して付け加える。

「不満は残るが、使用者の試算も政府の試算もマイナス成長率を示しているので、選択の余地はない。さらに、ベトナム政府とバングラデシュ政府も2021年に最低賃金の凍結を決定している」

アニー・アドビエント・インダストリオール東南アジア地域事務所所長は言う。

「パンデミック下で食品のインフレ率が2019年の2.1%から2020年には4.3%に急上昇している時期にあって、賃金を削減するという使用者側の提案には驚くばかりだ」

労働者とその家族は苦しんでいる。まともな生活水準に対する労働者の権利が尊重されるよう確保するために、引き続きカンボジアの加盟組織を支援していく