家庭内暴力は労働組合の問題
2020-11-19
<JCM記事要約>
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パンデミック下で家庭内暴力が増加し、ロックダウンと経済的圧力によって悪化している。新しいILO第190号条約は重要な文書であり、「政府、使用者・労働者団体および労働市場機関は、他の措置の一部として、家庭内暴力の影響を認識し、これに対応して取り組むために助力することができる」と強調している。
ILO第190号条約および第206号勧告に家庭内暴力に関する条項が盛り込まれたことは、個人的な問題と考えられていた家庭内暴力が、今では労働者、企業および社会全体に影響を与えると認識されるようになったという根本的変化を反映している。
家庭内暴力は仕事の世界に波及する可能性がある。加害者は被害者を職場まで追いかけたり、被害者の仕事用のコンピューターやメール、電話を使って嫌がらせあるいはコントロールしようとしたりするかもしれない。家庭内暴力のストレスやトラウマは、被害者の仕事に影響を与える。
だが職場は、被害者が支援や保護を求めることができる安全な場所となり、被害者の経済的自立を守ることができる。
ILOは次のように述べている。
使用者や同僚は、安全と連帯の場を提供し、コミュニティーサービスへのつながりとなるだけでなく、暴力事件を確認することによっても、命を救うことができる。
ILO第206号勧告は、以下に対する意識向上を要求している。すなわち、家庭内暴力の影響、家庭内暴力の被害者・生存者のための休暇、柔軟な労働形態、解雇に対する保護の提供、職場リスク評価や労働安全衛生政策への家庭内暴力の盛り込みである。
「労働組合には果たすべき重要な役割がある。組合員は家庭内暴力の被害者にも加害者にもなり得る。労働組合は、使用者が被害者に安全な職場を提供するとともに、ジェンダー不平等に対して強硬な態度を取ることと、家庭内暴力に対する労働組合行動の必要性に関して組合員を教育することによって、家庭内暴力に直面している組合員との連帯を表明するよう要求することができる」とジェニー・ホルドクロフト・インダストリオール書記次長は言う。
南アフリカのNUMは2018年にキャンペーンを開始し、女性に対するあらゆる形態の暴力を非難した。意識向上キャンペーンは、意識向上キャンペーンは、被害者が率直に意見を述べ、傍観者が行動を起こすよう環境を作る。
カナダでは、USWが「傍観者にとどまらず、女性に対する暴力に関して沈黙を破ろう」というプログラムを開始、男性組合員を巻き込んで、虐待や暴力を目撃した場合にはっきり異を唱えさせ、仲裁させるようにしている。
いくつかのインダストリオール加盟組織は、法律で有給休暇条項を達成した。フィリピンとニュージーランドでは、法律によって家庭内暴力の被害者・生存者に10日間の有給休暇が与えられており、オーストラリアには5日間の無給休暇がある。カナダでは、連邦政府が規制する職場の労働者は、5日間の有給家庭内暴力休暇を取得でき、すべての州に休暇(有給および無休)を付与する法律がある。
インダストリオール加盟組織は組合員に、家庭内暴力に関して利用できる支援を知らせている。ウルグアイの組合はCOVID-19危機下にあって、ソーシャルメディアでホットラインの番号を伝えている。
労働組合は、家庭内暴力の被害者・生存者を特定して効果的にサポートする方法について、ガイドラインや手順を考案している。英TUCは、COVID-19期間中に家庭内暴力の被害者・生存者に関与する方法に関して、職場委員向けのガイドをまとめた。
いくつかの労働組合は、窓口担当者を訓練して被害者・生存者を支援できるようにしている。カナダでは、ユニフォーの女性提言プログラムが職場代表を訓練し、職場での嫌がらせ、家庭内暴力、虐待に関して女性を援助させている。
インダストリオール加盟組織は、家庭内暴力に関する交渉者向けガイドや、ユナイト・ザ・ユニオンの家庭内暴力・虐待に関する交渉者ガイドを作成しており、労働協約で家庭内暴力に取り組む方法に関するUSWの交渉ガイドは協約のモデル条項を提供している。
保護措置として、家庭内暴力の被害者が勤務スケジュールを調整したり、偽名を使ったり、フレックスタイム制で働いたりできるようにし、被害者の労働時間や勤務場所に関する知識を利用する虐待者から身を守るために、必要な変更を加えられるようにすることが挙げられる。
家庭内暴力の被害者・生存者専用の休暇は、被害者・生存者が訴訟手続きに対処したり、支援やサービス、救済策を利用したりできるようにするので重要である。従業員を解雇から保護する一時的措置は、家庭内暴力が原因で欠勤したり、業績に影響を受けたりする労働者にとって欠かせない。
貴組合が家庭内暴力に対して行動を起こしている場合はお知らせください!
家庭内暴力は、最も広く見られる形態のジェンダーに基づく暴力である。この種の暴力は、加害者が被害者と同居しているかどうか、あるいは同居していたことがあるかどうかを問わず、家族もしくは家庭単位の中で、または元もしくは現配偶者もしくはパートナーの間で発生する、すべての身体的、性的、精神的または経済的暴力行為と理解することができる。
誰もが家庭内暴力の被害者または加害者になり得る。しかし、報告された事例の圧倒的多数は、男性による女性に対する暴力である。
ILOによると、家庭内暴力は男女間の不平等な力関係の現れである。COVID-19との関連で、不透明性の高まりが個人や家庭に影響を与えており、加害者が欲求不満をぶつけたり、再び支配権を主張しようとしたりしているため、女性が暴力の被害に遭う事件が増えている。
これらの認識と基準は家庭内暴力の容認や正当化を招き、女性は暴力を受けても仕方がないという被害者を非難する風潮をもたらしている。
家庭内暴力を正当化することはできない。女性の行動に罪はなく、全面的に加害者の責任である。