米クーデター未遂事件に関するインダストリオール・グローバルユニオン声明
2021-01-07
労働運動は、アメリカならびに世界中で民主主義を擁護する。
1月6日、ドナルド・トランプ支持者が連邦議会議事堂に乱入して上院会議場を占拠し、議会によるジョー・バイデン次期大統領の承認を阻止しようとした。トランプ支持者は、恥ずべき暴力・脅迫により、自分たちにとって望ましくない民主的選挙の結果を覆そうとした。これはトランプ政権下で広まった暴力的な発言がもたらした予測可能な行動であると同時に、民主主義に対する衝撃的な攻撃である。
インダストリオール・グローバルユニオンは、アメリカで、特に米国労働運動とともに民主主義を守るべく闘っているすべての人々と連帯する。
私たちは、右翼の抗議者が、事件の前日に内戦を公然と要求したにもかかわらず、2020年6月のブラック・ライブズ・マターの抗議者とまったく対照的に、警察からほとんど反対を受けなかったことに留意する。これは多くのアメリカの労働組合による警察刷新要求にさらなる弾みを与える。
トランプが大統領の地位にある状況は、民主主義に対してだけでなく、真実ならびに基本的な人権および労働者の権利に対する継続的な攻撃でもある。トランプ支持者は虚言をプロパガンダの武器にしており、これは選挙結果をめぐる陰謀説の拡散によって浮き彫りになった。
しかし、連邦議会議事堂に対するトランプ支持者の攻撃は失敗に終わり、議会はジョー・バイデンの勝利を確認、今日、正式に結果を承認した。
暴力によって民主的選挙を覆そうとすることは、ファシズムである。労働運動は一貫して、ファシズムにあくまでも反対し、民主主義を擁護してきたところである。インダストリオール・グローバルユニオンは、全世界で5000万人以上の製造・エネルギー・鉱山労働者を代表する世界有数の民主的組織として、加盟組織および協力団体とともに、常に民主主義を擁護していく。
世界の労働者は、血を流して民主主義を勝ち取った。トランプが広めた反民主主義的なポスト真実の害毒は、世界中で民主主義を堕落させた。インダストリオールを重要な活動主体の1つとするグローバルな労働運動は、苦労して手に入れた権利に対するこの攻撃に団結して抵抗するために、至る所で民主主義者と力を合わせる。
世界は真の民主主義を必要としている。労働者と組合にとって、民主主義は、生き抜く力を与えてくれる環境である。民主主義とその制度を立て直さなければならない。私たちは、抑圧的な国で民主化運動を支援することによって、経済的領域にも民主主義を広めようと努めている。
世界的製鉄会社POSCOは企業殺人で有罪、と労働組合
2021-01-07
<JCM記事要約>
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この世界的な製鉄会社で死亡事故の流れを断ち切るには、労働者が自由に団結し、安全システムに参加する権利を得なければならない、と韓国金属労組(KMWU)は言う。
11月と12月に韓国のPOSCO光陽製鉄所で事故が発生し、5人の労働者が死亡した。11月24日、溶鉱炉の近くで爆発が起こり、労働者3人が死亡。12月9日と23日にも事故があり、さらに2人のPOSCO労働者が亡くなっている。
最新の事故は同社の浦項工場と光陽工場で発生し、過去3年間で18件目である。POSCO労働者は窒息、爆発、火災、圧挫損傷、落下、過労で死亡している。工場が韓国労働部の検査を受けているにもかかわらず、事故が続いている。
韓国のインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織KMWUは、組合代表が安全構造に完全に参加できるようにならない限り、POSCOの職場の安全性は高まらないと考えている。ところがPOSCOは最近、組合つぶしを暴露したことを理由に3人の組合活動家を解雇し、国家労働委員会が不当解雇の裁定を下したあとも復職させなかった。
KMWUの主張によれば、POSCOで大規模な産業災害が起こっているのは、老朽施設・設備を改良せず、下請労働者を削減し、リスクを除去するのではなく社外に出すことを経営陣が決定したためである。
POSCOはKMWUによる事故現場への立ち入りを妨害し、組合の安全専門家が事故調査に参加することを許可しようとしない。同社は調査終了後も本当の事故原因を公表せず、労働者は同僚の命を奪ったのと同じリスクにさらされ続けている。
韓国はOECD諸国で最も労災死亡率が高く、毎年2400人の労働者が職場で亡くなっている。2018年、同社が標準操作手順に違反したために20代の若い労働者が発電所で死体となって発見されたあと、労働組合と市民社会は企業殺人法案を求めるキャンペーンを開始した。
市民10万人の署名が集まり、この法案は韓国国会に提出された。法案の狙いは、労働者の死亡を引き起こした使用者に重罰を科し、包括的な予防策を採用させることである。
この法案が成立すれば、チェ・ジョンウPOSCO CEOは真っ先に責任を負わされるだろう、とKMWUは考えている。
KMWUは、組合参加が保証された労働監督、労使合同対応システム、根本的原因に取り組む基本的な安全対策、老朽機器を改善するための処置、リスク外部化の根絶を要求している。
チョン・ヘウォンKMWU国際役員はこう述べた。
「民主的な組合が自由に機能できるようにすることは、製鉄所で信頼できる安全システムを確立するための前提条件だ。しかし会社側は、POSCOの職場の安全性を高めるために組合と協力するどころか、組合つぶしの計画を暴露したことを理由に3人の組合活動家を解雇した」
マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール素材金属担当部長が述べた。
「KMWUとともに、POSCOに予防可能な産業災害の頻発の説明責任を要求し、責任者の告発を要求している。回避可能な死亡事故で同僚が亡くなるのを傍観していることはできない。事故をなくさなければならない――今すぐに!」
香港で投獄された活動家に関するインダストリオール・グローバルユニオン声明
2021-01-07
香港では、新しい法律が反対意見を抑え込もうとしており、活動家が投獄された。
インダストリオール・グローバルユニオンは、1月6日に国家安全法に基づいて逮捕された活動家53人の即時釈放を要求している。逮捕の理由は、延期された香港立法会選挙に向けて民主派候補者を絞り込むために予備選挙を実施し、国家転覆を狙ったことだという。
キャロル・ウン香港職工会連盟会長も拘留されている。彼女は、航空労働者支援活動で世界的に尊敬を集める献身的な労働組合活動家である。
キャロル・ウンを含む活動家53人の逮捕は、香港の基本的な人権および労働者の権利に対する衝撃的な攻撃である。この逮捕は、香港で民主主義を求めて平和的に闘ったときに、人々がどのように処罰されるかを如実に示している。
香港では、この継続的な抑圧が悪化しており、世界の労働組合運動は手をこまぬいているつもりはない。インダストリオールは、新しい国家安全法を利用して労働組合指導者をはじめとする活動家を沈黙させ、威嚇しようとする動きを非難している。
国際人権法で保護されている集会と表現の自由に対する権利を禁じる法律は、すべて廃止しなければならない。インダストリオールは香港政府に対し、6月から課せられる国家安全法の廃止を要求している。
変化する仕事の世界におけるホワイトカラー労働者
2020-12-23
<JCM記事要約>
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COVID-19発生で働き方が変わっており、ホワイトカラー労働者は特に影響を受けている。ホワイトカラー労働者にとって、仕事の未来はすでに到来しており、組合は変化に対応しなければならない。
「産業の自動化が進むにつれて、ホワイトカラー労働者が増えていく。技術の変化に伴ってブルーカラー労働者とホワイトカラー労働者の違いが曖昧になっている。インダストリー4.0とテレワークやオンライン作業の増加を受けて、仕事と自由時間との区別が不明瞭になり、技能が急激に変化し、再調整を求める圧力が常にかかるようになるため、ホワイトカラーの仕事はますますストレスが多くなる恐れがある。
「組合は労働者全員のニーズを整理して満たし、新しい働き方を規制しなければならない」とアトレ・ホイエ・インダストリオール・グローバルユニオン書記次長は言う。
パンデミックのせいで、ホワイトカラー労働者の失業も増えている。インドでは、ホワイトカラーの雇用喪失が過去最大に達し、スウェーデンで、ユニオネンの報告によると小企業のコンサルタントや労働者の失業が増えている。CGC-CFEは、組合員の解雇の増加を報告している。これらの中小企業が景気後退に耐えるのは困難であるため、下請労働者はより大きな影響を受けている。来年は状況がさらに悪化するかもしれず、これらの労働者の雇用がどうなるかは分からない。
WEFによれば、2020年の初めにはリモートワークをする人の割合は5%に満たなかった。現在、高度熟練労働者の過半数がリモートで働いており、広範囲にわたるテレワークが常態化するかもしれない。この報告によると、使用者の84%が、リモートワークの大幅な拡大など、作業プロセスを急速にデジタル化することになっており、労働者の44%がリモートワークに移行する可能性がある。
パンデミック発生以降テレワークで働いている労働者を対象に使用者や労働組合が実施した調査によると、労働者は週に数日テレワークを続けることに乗り気であり、自主性と柔軟性を大きな理由に挙げている。
今年3月に大規模かつ急激にテレワークを確立した際、適切なIT資料の不足や労働者にとって劣悪な人間工学的環境といった問題が持ち上がったことは、適切な計画と規制の必要性を強調している。
ITUCのテレワーク法律ガイドは、取り組むべき新たな関心事をまとめている。例えば、人間工学的疲労、同僚からの孤立に伴う社会心理的安全衛生リスクの発生、使用者の電子監視能力の向上による労働者のプライバシーに関する問題、労働者(特に女性)の昇進の制限、家庭内暴力を招くリスク、仕事と家庭生活の区別の不明瞭化とそれに伴う(主に女性労働者の)ストレス増加、労働監督官の役割限定による労働法執行の難化などである。
組合はテレワークを規制するために緊急に新しい協定を交渉する必要がある。テレワークに関する新しい法律や協定が取り決められている。ILOは、パンデミック期間中およびそれ以降の在宅勤務に関する実務ガイドを発行した。英国ユナイトのような労働組合は、ガイドラインやモデル協定を策定している。
労働組合は、これらの新しい労働条件にも適応しなければならない。労働者がリモートで働いているとき、組合はどのように活動を実施するか。リモートワークを口実に、労働者の権利が尊重されていない国に雇用が移転されることのないようにするには、どうすればよいか。
現在の危機は新技術と相まって、企業に働き方を再考させており、ホワイトカラー労働者のクラウドワークを増加させる一因になるかもしれない。クラウドワークは2000年代初期に登場した。これはデジタル・プラットフォームの仲介によって、依頼人が潜在的労働者に求人広告を出すための技術インフラを提供し、地理的に分散している大量のオンライン労働者に仕事をアウトソーシングするものである。
このプラットフォームは、クライアントと労働者を引き合わせるだけでなく、契約や時間管理、監視、請求書作成、紛争解決も取り扱い、関係全体をリモートで実行できるようにする。職務は、複雑なコンピュータープログラミング、データ分析、グラフィックデザインから、比較的単純な事務的マイクロタスクまで多岐にわたる。
クラウドワークの規模に関するデータを入手することは難しいが、ILOによると、オンライン労働市場は2016年7月から2017年6月までに25.5%成長している。
大多数の使用者が高所得国にいるのに対し、労働者の大半は低・中所得国に住んでいる。オンライン労働需要の最大割合(41%)を占めているのは、アメリカに拠点を置く使用者である。
パンデミックで、デジタル労働者の可能性が明らかになった。企業は今や、従来の派遣会社を通して雇われる現場の契約労働者よりも、ウェブベースのプラットフォーム経由で雇われるリモートオンライン契約労働者を好むようになっているかもしれない。例えば、ITセットアップやデジタルツールのメンテナンスの場合、大企業には既存のITサービス・アウトソーシング・プロバイダーがいても、中小企業は、これらのニーズを満たすためにオンライン労働プラットフォームに頼ることがある。
労働者は、柔軟性・自主性の向上や副業からの追加収入を求めて、あるいは単に従来型の仕事を見つけることができなかったために、クラウドワークを利用する。クラウドワークに利点はあるものの、この種の雇用に伴う危険性・不安定性や、まったくと言っていいほど存在しない社会的保護を隠してはならない。さらに、この働き方はジェンダー不平等を悪化させることになりかねない。
ほとんどのクラウドワークは就業規則の対象にならないので、労働者は仕事をする時期や労働条件をほとんど管理できない。不当な扱いを受けた場合に頼れる選択肢も限られている。
インダストリオール加盟組織は、クラウドワーカーやプラットフォームワーカーの権利を擁護し、いくつかの国々で労働条件改善策を講じている。組合は2015年にFairCrowdWork.orgを開始し、労働者や組合からクラウドワーク、アプリベースの仕事、その他のプラットフォームベースの仕事に関する情報を集めている。このサイトは、労働者を対象とする調査に基づいて、さまざまなオンライン労働プラットフォームの労働条件を評価する。オーストリア労働会議所、オーストリア労働組合総連合、ユニオネンの共同プロジェクトである。
2017年、IGメタルといくつかの署名プラットフォーム、ドイツ・クラウドソーシング協会は、行動規範を実施して労働者と署名プラットフォームとの紛争を解決するために、オンブズオフィスを設立した。このオンブズオフィスはIGメタルが監督しており、どんな紛争でも解決する。
「より多くのホワイトカラーを組織化し、仕事の未来を調整・形成していくには、組合が革新的な行動を起こし、ホワイトカラー労働者のニーズや懸念に取り組む必要がある」とアトレ・ホイエは言う。
COVID-19下の南アジアで驚くべき労働法攻撃
2020-12-19
<JCM記事要約>
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南アジア諸国全体で労働法に対する攻撃が強まっており、結社の自由と団体交渉権をはじめとする労働者の権利を弱体化させている。南アジアのインダストリオール加盟組織は、労働者の権利を保護するために国家レベル・国際レベルの連帯構築を呼びかけている。
COVID-19パンデミックと封じ込め対策は、南アジアの労働者に深刻な影響を与えている。地域全体で、各国政府がまちまちの危機対策を講じた結果、労働者は賃金を奪われ、無給状態に置かれ、労働法が実施されず、生計を失い、多くの場合、誠実さを疑う不安定労働者の削減で、将来への希望がない状況にある。
12月4日にインダストリオール南アジア事務所が開いた地域ウェビナーは、地域の労働組合が労働者の権利を擁護するために必死に闘っていることを強調した。この会合には、インド鉄鋼・金属・機械労連のサンジャイ・バダブカール、スリランカ自由貿易地帯・一般サービス従業員組合のアントン・マークス両インダストリオール執行委員が参加した。
インド、パキスタン、スリランカ、バングラデシュならびにネパールでは、労働者の権利に悪影響を及ぼす労働法改正の動きがあった。
サンジャイ・バダブカールはこう説明した。
「インド政府による労働法の変更は、適正な議会の基準や手続き抜きで可決された。抜本的な労働法変更は、不安定雇用を奨励し、常用労働者の採用を制限し、団体交渉に影響を与え、スト権をほとんど奪い、インドの労働者がパンデミックに起因する社会的・経済的ショックにさらされやすくする。これらの労働法の変更は、インドが国際的な討議の場で労働者の権利の基本的原則について表明した約束を守っていない」
アントン・マークスが付け加える。
「スリランカの使用者は、労働時間の延長、労働条件の変更、政府の承認を得ない一方的な従業員解雇など、労働者や女性労働者の利益に反する労働法の変更を数多く提案し、労働法の停止まで要求した」
インドとスリランカの労働組合運動は、反労働者的な政策提案に猛反対した。インドでは、組合が全国的なストライキや抗議行動を実施した。スリランカの加盟組織は、ロックダウン期間中に労働者への賃金支給を確保すべく闘った。しかし政府・使用者は、労働法の変更を要求し続けている。両指導者は南アジアの加盟組織に対し、連帯支援を広げて労働者の権利を擁護するよう呼びかけた。
パキスタンの組合代議員は、労働監督の中止案と労働法が実施されていない状況に対する懸念を表明、州の境界を超えて労働法を段階的に統合していくとともに、全国レベルの社会的対話を制度化する必要があると強調した。
バングラデシュの組合代表は、既製服部門などで労働者の権利が削減されていることを強調した。労働法を扱う政府三者構成委員会では、労働者代表がしばしば脇に追いやられており、これは同国の社会的対話に損害を与えている。
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように述べた。
「民主主義と民主主義的な制度が大々的に攻撃されている。COVID-19は天災だが、政府の対応は政治の産物だ。政府は使用者と共謀して、労働者の権利と法的保護の成果をすべて解体しようとしている。賃金、社会保障、労働安全衛生、労使関係に関連する法律が、労働者の基本的権利を奪う形で修正されている。インダストリオール・グローバルユニオンは、他のグローバル・ユニオン・フェデレーションと戦略的に協力しながら、国家・地域・国際レベルで一緒に団結と連帯を構築し、労働者の権利に対する攻撃に抵抗しようとする加盟組織の取り組みを支援するために専心している」
南アジアの加盟組織は、地域間コミュニケーションの強化、共同戦略の考案、労働者の権利を擁護するためのさらなる行動の実施を決定した。