インドの組合、ビシャカパトナム鉄鋼工場の民営化に抗議
2021-08-04
【JCM記事要約】
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2021年8月4日:インド議会開会中の8月2日、全国労働組合指導者が数百人の労働者とともに、デリーで「議会へ行こう」抗議行動に参加し、アンドラプラデシュのビシャカパトナム鉄鋼工場の民営化に反対した。
ラシュトリヤ・イスパット・ニガム社(RINL)が運営するビシャカパトナム鉄鋼工場(VSP)は、インド有数の公共部門鉄鋼工場である。インド政府の内閣経済問題委員会は2021年1月27日、政府保有のRINL株ならびにRINL保有の同社子会社・合弁事業株の完全民営化を進めることを決定した。政府は取引顧問と法律顧問、資産査定人の任命によって、民営化プロセスを開始した。株式購入協定と営業譲渡協定を通して労働者の利益を保護する、と政府は主張している。
VSP労働者・事務技術職従業員のすべての労働組合と職員組合、それにアンドラプラデシュ州の政党が、VSPの民営化に抗議する大衆運動を開始した。アンドラプラデシュ州立法議会も、民営化の中止を要求する決議を可決した。この民営化は、約3万5000人の従業員と家族に影響を及ぼす。この工場に直接・間接に生計を頼っている合計約10万人が、民営化の影響を受ける。
ビシャカパトナム鉄鋼工場は公共部門の企業として、その活動を通して各種の戦略的な公的目標を果たしている。VSPはCOVID-19との闘いの最前線に立ち、無数の命を救った。短期間に1万8000MTの医療用液体酸素を生産し、インド全国に供給したからである。VSPのタイムリーな行動により、液体酸素の市場価格が安定した。
労働組合は、VSPは2万2000エーカーの土地を明け渡した60村落の人々による大きな犠牲を経て設立された、と主張している。私有の主たる焦点は利益であり、民営化されれば、現在VSPが地元の人々や国の経済のために貢献している社会・経済開発目標が追求されなくなってしまう。VSPは指定カーストと指定部族からの採用による差別撤廃措置を通して、憲法に定める社会的公正の価値観を促進しているが、私有になればそれは中止になるだろう。
ヴァルター・サンチェス・インダストリオール・グローバルユニオン書記長はインド首相への書簡で、政府に民営化の即時中止を求めた。
インド全国金属労連のラグナート・パンデイが次のように述べた。
「私たちは、すべての労働組合および労働者とともに、民営化に対する抗議を強化している。モディ政権がこの貴重な国家資産を売却することは許さない。VSPは重要な経営上の意思決定によって黒字転換することができる。労働組合は、政府が専用の鉄鉱石鉱山を割り当て、工場がより低コストで原料を入手できるようにすることを要求している。政府は短期・長期融資を株式に転換し、VSPの返済・金利負担を減らせるようにすべきだ。工場はすでにその事業で四半期利益を上げ始めているので、この調子でいけば完全に黒字化するだろう」
アプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長はこう述べた。
「公共の目的で国の経済・社会目標を果たすにあたって公共部門の工場が果たす重要な役割を、保護しなければならない。ビシャカパトナム鉄鋼工場の発展において中心的役割を果たした労働者・労働組合に、同社の意思決定プロセスで発言権を与えるべきだ。インド政府に対し、VSPの民営化を中止し、労働組合と真の協議を行い、組合側の再建案にチャンスを与えるよう求める」