インドの安全衛生に残る深刻な懸念
2022-01-28
【JCM記事要約】
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2022年1月28日:インドの製造業では2021年、事故が多発して月平均7件が報告され、162人を超える労働者が死亡、一生残る障害や大怪我を負った者もいる。新年に入ってからの数週間にも何件か事故が発生し、この傾向が続く可能性があることを示している。
2022年1月1日、タミルナードゥ州ビルドゥナガル地区の花火工場で爆発が起こり、4人の労働者が死亡した。この爆発で建物が崩壊し、数人の労働者が重傷を負った。1月5日にも同様の事故があり、ビルドゥナガルにある別の爆竹製造施設の爆発で労働者3人が命を落とした。
1月6日、ビシュワプレム織物染色・捺染工場の労働者6人が、スラト地区のサチン川からの毒ガスを吸って死亡し、その他29人の従業員が入院を余儀なくされた。グジャラート汚染管理委員会は、水硫化ナトリウムとチオ硫酸ナトリウムが自然河川に不法投棄されたことを確認した。国家環境裁判所がこの件を取り上げているが、地方当局の措置は相変わらず手ぬるい。
1月11日には、マンガロールでも化学物質が漏出。アンモニア漏出後、水産加工施設の従業員20人がムッカの民間病院に入院した。インドのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織は、ノーザン・コールフィールズ・リミテッド(NCL)鉱区での事故も報告している。1月10日にNCLのアムロルヒ・プロジェクト地域でディーゼルタンカーが発火し、1月12日には契約労働者1人が燃料庫の清掃中に死亡した。
事故は勤労生活につきものになっている。1月23日、ラクマプール=ナーシクにあるメガファイン・ファーマ・カンパニーの現場で、化学反応炉火災により労働者1人が死亡、その他4人が重傷を負った。
過去5年間に、政府は検査と認可を緩和して自己認証制を認め、いくつかの企業を安全衛生報告の対象から除外して事業を容易にし、小企業を支援している。少ない安全衛生投資、老朽化した機械、機械運転訓練の不足で、労働者にとって危険が高まっている。3カ月間のCOVID-19ロックダウン後に工場が活動を再開すると、労働災害が激増した。
インドでは、工場の数と比較して安全衛生検査官が少ない。組合と労働者は、ずいぶん前から安全衛生基準の効果的な実施を要求してきた。
インダストリオール執行委員のサンジャイ・バダブカールは次のように述べた。
「2021年4月に労働雇用省は、事故増加の原因を調査して安全衛生・労働条件に関する現在の方針や慣行を見直すために、3つの専門家パネルを設置した。しかし、労働組合・労働者の懸念と勧告は考慮されなかった。私たちは、中央政府と州政府が事故関連情報をすべて開示し、調査報告を公表し、使用者か関連政府当局に責任を負わせるよう要求する」
インド全国鉱山労連(INMF-INTUC)会長でインダストリオール執行委員のG・サンジーバ・レディーは述べた。
「これらの事故に悲しみと憤りを感じている。これは明らかに安全対策の深刻な誤りを示している。これらの頻発する事故のハイレベル司法調査、労働者代表と協調した工場・鉱山の厳密な検査、安全衛生法の真の精神に沿った強化・実施、契約制度の全廃を要求する」
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように述べた。
「インドにおける労働災害の頻発は重大な関心事であり、明らかに安全規則の弱体化と不遵守を示している。インダストリオールはインド政府に対し、国内の現行安全法規を緊急に見直すとともに、労働組合の助けを借りて総合行動計画を策定し、職場の安全性と耐火性を高めて死の落し穴にならないようにすることを求める」
組合の勝利――ジャカルタで最低賃金引き上げ
2022-01-26
【JCM記事要約】
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2022年1月26日:ジャカルタ首都圏で2022年の最低賃金が5.1%引き上げられるという発表は、インドネシアの組合にとって大きな意味のある勝利である。
インドネシア労働組合総連合(KSPI)は、12月に全国デモを組織し、インドネシア経営者協会(APINDO)による0.8%、インドネシア中央政府による1.09%という州別最低賃金の増額案を拒否した。
組合による一連の抗議を受けて、アニス・バスウェダン・ジャカルタ知事は、2022年にジャカルタの最低賃金を5.1%(464万インドネシア・ルピー(323米ドル)相当)引き上げると発表した。
新しい賃金は合理的だ、とアニス知事は主張した。パンデミック前のジャカルタの平均最低賃金増額率は8%だったので、これなら使用者が対応できる。ジャカルタ政府は労働者のために公正を確保し、購買力を高めなければならない、と知事は述べた。
「私たちは知事の決定を称賛し、使用者団体に対し、寛大に引き上げを受け入れるよう促す。5.1%の増額は人々の購買力を高めるので、労使双方に利益を与える」とKPSI会長でインドネシア金属労連(FSPMI)全国会議議長のサイド・イクバルは言う。
KSPIによると、雇用創出法は違憲であるという憲法裁判所の判決の結果、州別最低賃金を決定する中央政府の権限は限られている。
APINDOは、ジャカルタ知事の決定に対して訴訟を起こした。しかし、インドネシアの分権的賃金決定制度では、使用者には市長が決定した新しい最低賃金を受け入れる法的義務がある。
「加盟組織FSPMIも加わっているKSPIの偉業を祝福する。インドネシアの政府と使用者は、COVID-19を口実に使って、景気回復の最中に最低賃金を抑えることをやめるべきだ。世界銀行は、2022年のインドネシアのGDP成長率を5.2%と予測している」と岩井伸哉インダストリオール東南アジア地域事務所所長は言う。
現在、他州のKSPIおよびFSPMI加盟組織も、各州知事に最低賃金の5.1%増額案を提出している。
大きな犠牲を払うミャンマーの労働組合活動家
2022-01-25
2022年1月25日:国軍による暴力、組合つぶし、労働条件悪化の下で、ミャンマーの工場労働者は四方八方から締め付けられている。
衣料労働者で労働運動家のトゥレイン・アウンにとって、ヤンゴンの職場までオートバイで1時間かけて無事に出勤できるかどうかは、前日にどんな戦闘があったかによって決まる。ミャンマーの軍事政権と草の根の抵抗勢力(ミャンマーの主要都市では国民防衛隊(PDF)の形で行動)の紛争が工業地帯に迫ると、軍の検問所が大通り沿いに並び始める。
「今日はPDFが軍を攻撃したので、検問所が増えるだろう」と彼は『Equal Times』に語っている。
これは特に、当てにならない公式・非公式の公共交通網を避けるために、個人または家族所有のオートバイで通勤する多くの労働者にとって、身の安全に大きな危険をもたらす。
「以前バイクを没収され、1万チャット(約5.60米ドル、平均日給の実に3倍)を支払わなければならなかった」と彼は言う。
検問所では、性的暴行や逮捕も報告されている。だが、産業の中心であるミャンマー最大の都市ヤンゴン周辺の工業地帯では、これは労働者が生計を立てるために直面せざるを得ないことである。
ミャンマー国軍(タッマドゥとして知られる)が何人かの議員とアウン・サン・スー・チー国家顧問を逮捕したあと、民主的に選ばれた国民民主連盟(NLD)の文民政府を2021年2月1日に転覆させてから、ほぼ1年になる。労働運動家は、クーデターに対する大規模抗議や2月22日のゼネストをいち早く組織した。これらの行動はすべて、国民統一政府(NUG、亡命政権)を支持して軍事政権を拒絶する、全国的な非暴力の市民的不服従運動(CDM)に力を与えるうえで役立った。
タッマドゥの対応は冷酷である。本稿掲載時点で、1500人近くが殺害され、1万1500人以上が逮捕された。NUGは9月7日、軍事政権に対して「人民防衛戦争」を宣言、その後、数十年間で最悪の戦闘が続いている。
このような状況の中で、労働組合員の行動は大変な犠牲を強いられている。クーデターに対応して結成された16組合から成るミャンマー労働同盟の違法性を政府が宣言しただけでなく、工場労働者(ミャンマーの労働者の約10%が製造業で雇用され、製造業は経済的に特に重要な部門)は数々の難題に直面している。すなわち、軍による暴力の脅威、活動家を狙った暗殺、軍事政権と共謀する工場主による組合つぶしの画策、COVID-19パンデミックが原因で発生し、今度はクーデターによって悪化している大量失業、ミャンマー・チャット暴落に伴う物価上昇、すでに低かった賃金の価値下落である。非良心的な工場主が必死になった労働者につけ込んでいるため、賃金は現在、最低日給の4800チャット(約2.70米ドル)と3600チャット以下(約2米ドル)の間で推移している。
過去の成果が台無し、追われる労働組合員
クーデターのほとんどすぐあとに、さまざまな部門の労働組合が組合員と非組合労働者の両方を組織化し、街頭に繰り出して軍事政権に対する抗議行動に加わった。労働者に対し、ストや作業停止、欠勤への参加によって軍政反対を表明することも促した。しかし、数週間、数カ月と長引くうちに、日給はほとんどの労働者が絶対に失うことのできない生命線になった。衣料・繊維・履物部門では、2021年前半だけで推定25万人が失業し、CDMに関与する労働者が真っ先に解雇された。
まだ働いており、これまでのところ何とか逮捕を免れているトゥレイン・アウンによると、クーデター勃発以降、かつて合計1300人の組合員を擁していた11の個別工場組合が、今ではわずか4組合に減っている。その指導者の多くが逃走中である。
「[抵抗]闘争に深く関与していたため、故郷の村に逃げ帰った者もいれば、その他の安全な場所に移った者もいる」と彼は言う。
ミャンマー労働組合総連合(CTUM、国内最大の労働連盟)の財務責任者で、ミャンマー製造労働者連盟(IWFM)の会長を務めるカイン・ザー・アウンは、多くの組合指導者がタッマドゥに「追われて」いることを確認する。
「[工場長が]労働組合の幹部や活動的な組合員の住所氏名を警察や軍に提供している」と彼女は『Equal Times』に語っている。
見つかった人は嫌がらせをされたり、逮捕されたり、もっとひどい目に遭うこともある。
ミャンマーのベテラン労働組合員にとって、これらの戦術は、数十年に及んだ残忍な軍政を思い出させる不愉快な傾向である。組合や労働者組織が50年にわたって禁止されたあと、2011〜2021年の10年間の民主的統治で、ミャンマーの労働権は限定的ながら意義深い進歩を遂げた。例えば、独裁体制後初の文民政権が実施した改革により、2011年に労働組合が合法化され、2015年に労使関係を討議するための全国フォーラムが設置された。公式化された労働権の実施を受けて、外国人投資家が未開拓市場であるミャンマーに参入し始めた。
過去10年間に児童労働、強制労働、ジェンダー差別に対する保護に取り組む試みがなされてきたが、この国はまだ、現代的で効果的な政策策定の初期段階にあった。確固たる基礎がなかったため、NLD政権によるこれらの新たな融和的保護策は、2月1日のクーデターの前からすでに足元が揺らいでいた。
暴力の脅威が高まる中での制裁要求
カイン・ザー・アウンのような組合指導者は、これらの基本的ではあるが苦労して手に入れた労働者保護が指の間から滑り落ちるのを見て、断固たる態度を取るようになった。組合結成に伴う汚名が残存し、その脅威が絶えず存在するだけでなく、組合組織率が全般に低かった(組織労働者は労働人口の1%未満だった)ため、ミャンマー労働同盟による軍事政権に対する包括的経済制裁の要求は、この国で労働者の権利を再度確立しようとする大胆な試みであった。
衣料部門はミャンマー経済にとって極めて重要である。この部門はCOVID発生前、H&M、ザラ、プリマークといった世界的ブランドに供給し、ミャンマーの総輸出の3分の1を占める70万人以上の低賃金(主に女性)労働者を雇用していた。ミャンマーでの活動を停止したブランドはほとんどないが、国内外の組合が圧力をかけ続けている。
「現在、ミャンマーには結社の自由の権利も、団体交渉権も、労働者の権利も、人権もまったくない」とカイン・ザー・アウンは言う。
「独裁政権下では、民主的労働組合が生き残ることはできない――それを理解しておかなければならない」
組合活動を理由に工場で標的にされている労働者もいれば、工場主が事業を閉鎖して逃げ出し、クーデター前のものまで含めて数カ月分の未払賃金の支払いを拒否したため、何の予告も補償もなしに突然失業した労働者もいる。2021年7月に国際労働機関(ILO)が発表した簡潔な報告書(2回目の評価は2022年1月下旬に発表予定)によると、ミャンマーでは2022年末以降120万人の労働者が失業しており、2021年第1四半期には労働時間が14%減り、男性より女性のほうが減少幅が大きい。
国際連合人道問題調整事務所の報告でも、COVID-19による制約が始まってから、人口の約4分の1が職を失い、全世帯の18%が無収入で、3分の2が減収となっている。この報告書は、2022年には国民の半数が貧困状態に陥るとも推定している。
操業を続けている工場では、労働者がこれまで確保していた数少ない権利が完全に消滅した、とカイン・ザー・アウンは言う。最低日給はそもそも生活賃金ではなかったが、9月以降だけでチャットの価値が60%下落し、労働者に大きな打撃を与えている。これに加えて超過労働手当やボーナス、給付、日々の雇用保障がなくなり(法律は変わっていないが、違反しても罰を受けないという現在の風潮の下で、一部の使用者は法律を無視するようになっている)、多くの人々がどうやって家族を養っていこうかと頭を悩ませている。労働者は雇用を維持するためにできることは何でもやらざるを得ないため、無給の強制的超過労働がますます広まっている、と彼女は言う。
CTUM組合員が今も活動できるある工場では、労働者が4カ月にわたってレイオフされたあと、わずか10万チャット(約56米ドル、最低賃金2カ月分)を支給するという契約への署名を強制された、とカイン・ザー・アウンは明かす。70人の従業員が拒絶すると、工場主は賄賂を使って軍事政権の兵士に労働者を脅迫させた。
「労働者は、ストを決行したら殺すと言われた」
さまざまな第三者機関の報告によると、3月にヤンゴンのラインタヤ工業地帯で6人の労働者が撃たれた。これに先立って、中国系のXing Jia製靴工場で労働争議が発生し、賃金をめぐる騒動のあと所有者が軍を呼んだ。兵士が抗議中の群衆に発砲して男性5人が死亡、女性労働組合幹部1人が警察に撃たれ、70人以上が逮捕された。
このような話が恐怖を広げている。ヤンゴンの衣料労働者ティン・ティン・ウェイは、自分の工場では組織労働者の半数程度しか残っていないと言う。一般的な組合つぶしの画策に加えて、労働者は病欠や高まり続ける生産目標の未達成も理由に解雇されている。
「使用者側はクーデターに乗じて組合を倒そうとしている。労働権を侵害し、賃金をカットし、労働者を強制的に働かせ、以前の労働協約すべてに違反している」と彼女は言う。
「これまで組合を解体しようとしてきた使用者にとって、クーデターは国軍と力を合わせて組合を抑え込むチャンスだ」
板挟み
労働者が絶えず苦情を述べているにもかかわらず、労働条件の悪化に取り組むための解決策は相変わらず定まらない。大多数の労働組合の要求を受けて、8月下旬にインダストリオールが経済制裁を支持したことがニュースになった。インダストリオール・グローバルユニオンは、ミャンマー労働同盟の立場を引用するとともに、ミャンマーの労働者は違法と宣言されてタッマドゥによる暴力的威嚇にさらされている間は、決して工場で交渉できないというこれまでの経験に基づく認識を示した。
結社の自由の欠如は国際レベルでも火に油を注いでおり、多くの活動家が、今なおミャンマーから調達している世界的ファッションブランドにデューデリジェンスの強化を要求している。IWFMは12月、ACTイニシアティブからの脱退を決定した。この協定の下では、エイソス、C&A、H&Mなどブランド20社がインダストリオールと力を合わせ、さまざまな調達国、さらに具体的に言うとミャンマーの衣料・繊維・履物産業全体で団体交渉と生活賃金を促進し、紛争解決戦略や結社の自由への取り組みを推進しようとしている。IWFMの脱退を受けて、ACTはその月のうちにミャンマーでの活動を終了することを決定した。
カイン・ザー・アウンは、自身が調停に努めている紛争で、労働者は何の影響力もないため、要求に満たない内容で妥結することが多いと言う。労働当局者など軍の代表が関与する対話には参加しないという組合の2021年2月2日の発表は、まさにこの事態を心に留めて行われたようである。
「ミャンマーで紛争処理メカニズムを利用することはない。役に立たないからだ」と彼女は言う。
労働当局者は独立して活動しているのではない。
「彼らは工場から賄賂を受け取っている。では、どうやって労働者を助ければいいのか?」
一方、労働者は板挟みになっている――価値が下がっている賃金のために、ますます危険な条件下で働くことを選ぶか、寄付や小規模の農業イニシアティブで生活している人が大半を占めるCDM活動家と最前線で勇敢に闘うか。
「生活条件が厳しいのは確かだが、賃金が減っており、物価は上がっている。不安定な状態にあると、誰もがいつでも、たとえ自宅にいても逮捕される可能性がある」とティン・ティン・ウェイは言う。
「この状況では安定がない」
写真:2021年3月1日にミャンマーのヤンゴンで行われた軍事クーデター抗議デモで、間に合わせのシールドの後ろに立つ抗議者たち
この記事の初出は『Equal Times』
スペシャル・レポート:香港条約発効の要件は?
2022-01-18
【JCM記事要約】
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2022年1月18日:船舶解撤は世界で最も危険な仕事と呼ばれている。バングラデシュやパキスタンのような国では、労働者が危険で不安定な労働条件に直面しており、訓練も安全装置も医療へのアクセスもほとんどない。その代価として、わずかな賃金しか受け取っていない。
スペシャル・レポート
『グローバル・ワーカー』第2号(2021年11月)より
国:パキスタン、バングラデシュ、インド
船舶解撤産業には安全・健康・清潔で持続可能な雇用を提供する責任があり、労働者にはそのような雇用を期待する権利がある。それを達成する1つの方法が、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約である。
この条約の目的は、船舶の再生利用にあたって、人の健康や安全、環境に不必要なリスクをもたらさないようにすることである。香港条約は、アスベスト、重金属、炭化水素、オゾン層破壊物質といった危険物質のような問題や、世界の船舶リサイクル施設の作業・環境条件に関する懸念に取り組んでいる。
条約自体が具体的な組織化の余地を提供しているわけではないが、特に労働安全衛生に関する教育・訓練が重要であると明記している。
「使用者だけでなく、労働者とも協力して条約を開発していかなければならない。これを利用して、組合が労働者に加入の動機を与えるうえで支援したい。香港条約を利用して組合員数を増やし、組合に政府・使用者との社会的対話を発展させる機会をもたらすことができる」と2010年から船舶解撤部門に取り組んでいる松﨑寛インダストリオール書記次長は述べた。
技術的な観点から言うと、条約発効の要件は以下のとおりである。
- 15カ国が批准
- 世界の商船船腹量の40%以上
- 批准国の年間最大船舶リサイクル量の合計は、最近 10 年間の年間最大船舶リサイクル量の 3%以上でなければならない。
現在までのところ17カ国が批准している。すなわち、ノルウェー、コンゴ、フランス、ベルギー、パナマ、デンマーク、トルコ、オランダ、セルビア、日本、エストニア、マルタ、ドイツ、ガーナ、インド、クロアチア、スペインである。
条約の発効には、あと総トン数の約10%とリサイクルトン数の0.4%が必要である。
船舶解撤の大部分がバングラデシュとパキスタンで行われているため、両国による批准が重要である。そして、正しい方向へ向かう動きがある――2018年、最近世界最大の船舶解撤国になったバングラデシュが、新しい船舶リサイクル法を制定した。この法律によると、同国は2023年までに香港条約を批准する。
「進展が見られるが、絶えず重大事故が発生しており、労働安全衛生が悲惨な状況にあるため、批准プロセスを速める必要がある。船舶解撤の安全性と持続可能性を高めることが強く求められている。船主とステークホルダーは、環境に優しい安全な方法で船舶をリサイクルしたいと考えている。結局のところ、条約を批准していない国は取引を失う」と松﨑寛は述べた。
「2023年までに香港条約の発効要件が満たされることを期待している。この条約は、持続可能な未来に向けた平等な競争条件を作るために必要最小限の第一歩となる」
組織化の成功で職場の安全性が向上
インダストリオールは2003年から、インドの船舶解撤労働者を対象に組織化プロジェクトを実施している。このプロジェクトはオランダFNVの出資により、ムンバイの現場で開始された。インダストリオール加盟組織SMEFIが、すでに近隣の造船所に組合員を擁し、労働者がプロジェクトを利用しやすいようにしたからである。この組織化活動は最初から使用者側の強い抵抗に遭い、組合つぶしが横行し、警察はマフィアが絡んできたときに援助を拒否した。
だが、オルグたちは諦めようとせず、労働者に自分たちの権利について教え、労働者の命は重要であり、組合は仕事の安全性を高めるために手助けできると伝え続けた。組合員証があれば、労働者が身分を明らかにできるだけでなく、事故発生時の重要情報である血液型も分かる。
組織化活動は2006年、当時世界最大の船舶解撤場で労働条件が苛酷だったアランに拡大された。またしても、使用者と地方政府は組合組織化に抵抗しようとした。
プロジェクト開始前、アランでは労働者の大多数が、派遣会社と契約する貧しいインフォーマル不法就労者だった。労働者が死亡すれば、遺体は海に投げ捨てられるだけだった。しかし、このプロジェクトによって、アラン・ソシヤ船舶再利用一般労組(ASSRGWA)が結成された。同労組は、賃金、社会保障措置、労働安全衛生の改善に貢献した。労働者は組合員証で社会保険を請求したり、銀行口座を開いたりできるようになり、組合には、どんな労働者がどこで働いているかに関する記録がある。ASSRGWA-FNV-インダストリオールが作成した労働安全衛生教育・訓練資料は現在、解撤場所有者と地方当局のグジャラート海事委員会(GMB)によって広く使われている。
インドは2019年に条約を批准した。条約の基準に従い始めてから、施設が改善され、安全性が向上している。
バングラデシュの船舶解撤部門で続く安全上の危機
チッタゴンの船舶解撤場では嘆かわしいほど安全性が欠如しているため、9月の1週間だけで労働者が2人死亡し、3人が負傷した。インダストリオールの事故調査によると、2021年1月以降、バングラデシュの船舶解撤場では少なくとも10人の船舶解撤労働者が死亡し、23人が負傷している。犠牲者のほとんどが不法就労の若い派遣労働者で、適切な安全装置がなかった。
バングラデシュには船舶解撤場が100カ所以上あるが、条約の要件を満たしているのは1カ所だけである。最終リサイクルシステムはなく、危険物はどこかに捨てられるか、適切な施設が建設されるまで造船所に保管されている。しかし政府は、条約批准の直前か直後にリサイクルシステムを建設すると約束している。
船の墓場
2016年11月、労働者250人が解体中の石油タンカーに火がつき、29人が死亡した。爆発の原因は、船の燃料タンク内に可燃性の有毒ガスが残っていたことである。労働者は、燃料タンクから残留燃料を除去できないうちに、解体プロセスに着手するよう強制された。
最低最悪と言われることもある部門で、インダストリオール加盟組織NTUFは労働者を組織化しており、社会的対話を通して労働条件や社会的給付の改善に努め、使用者に交渉パートナーとして認められている。
解説
船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約は、2009年に外交会議で採択された。
新条約の規制対象は、船の安全性と運用効率を損なうことなく安全かつ環境上適正な再生利用を促進するための船舶の設計・建設・運用・準備、安全かつ環境上適正な方法による船舶リサイクル施設の運用、認証・報告要件を組み込んだ適切な船舶リサイクル実施機構の確立である。
船舶リサイクル施設は「船舶リサイクル計画」を提供し、各船舶の詳細や目録に応じたリサイクル方法を明記するよう義務づけられる。締約国は、管轄下の船舶リサイクル施設による条約の遵守を確保するために、効果的な措置を講じる義務を負う。
インドのGM労働者、人員削減事件で暫定的救済を獲得
2022-01-13
【JCM記事要約】
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2022年1月13日:インドのゼネラル・モーターズ(GM)労働者は、7カ月に及ぶ法廷闘争を経て1月5日、マハラシュトラ労働審判所によって暫定的救済を与えられた。裁判所は、労働者の削減は不当労働行為だとの裁定を下した。
GMは昨年7月、プネー近郊のタレガオン工場で1,086人の労働者を不法にレイオフした。これに先立って労働者は、経営陣が一方的に決定した自発的離職制度と不十分な補償を最終的解決として受け入れることを拒否していた。
インダストリオールに加盟している統一労働者連盟(SEM)の傘下組合であるゼネラル・モーターズ従業員組合は、不当削減で労働審判所に提訴し、この制度は労働者に押しつけられたものだと異議を申し立てた。
裁判所は1月5日、組合側に有利な判決を下し、GMに対し、4月1日から苦情が解決されるまで、不当に削減された1086人の労働者全員に賃金の50%を払うよう指示した。
ディリップ・パワル統一労働者連盟会長は述べた。
「闘いはまだ終わっていない。現場と法廷でこの闘いを続けていく。インドでは、労働者の権利を踏みにじることが多国籍企業のトレンドになっている。今回の勝利は、今後も労働者が抵抗すること、団結して勝利を収めることを示している」
GM経営陣は、工場が操業していた300エーカーの土地と機械類の買い手を探している。売却されれば組合費の徴収が難しくなるため、ゼネラル・モーターズ従業員組合は資産売却の停止を要請した。しかし、関連事件が最高裁判所で係争中であるため、労働審判所はこの件への介入に同意しなかった。
「インダストリオールは、この裁判所命令を歓迎する。権利侵害と闘っている労働者を支持し続ける」とアプールヴァ・カイワール・インダストリオール地域事務所所長は述べた。
トルコの金属労働者、統一闘争に勝利
2022-01-12
【JCM記事要約】
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2022年1月12日:金属部門のインダストリオール加盟組織3団体、トルコ・メタル、ビルレシク・メタル・イスおよびウズチェリク・イスは、数カ月に及ぶ動員と行動、キャンペーンを経て、部門全体の労働協約について使用者団体MESSと合意に達した。
一連の統一行動によって決意と団結を示した結果、3組合はMESSから、2022年1月11日夜の会談への招待状を受け取った。長時間に及んだ交渉は1月12日未明に明るい雰囲気で終わり、2年協定が締結された。
MESSは最終交渉の前に譲歩の要求を撤回した。3組合の共同記者声明によると、労働者はMESS傘下企業で平均65.67%の増額を勝ち取った。
これにより、協定の最初の6カ月間に27.44%、第2半期に30%の賃上げとなった。第2半期にインフレが高進した場合、差額は使用者側が負担するため、組合員は実質増額分を受け取る。3期目と4期目の賃金は、インフレ率を反映するように調整される。
労働者は協定1年目に社会的給付も35%増え、2年目の増額はインフレ率に基づく。
トルコは現在、経済危機下にあり、天井知らずのインフレーションと通貨価値の下落に見舞われているため、インフレと連動した増額は労働者の購買力を維持するために不可欠である。
「この重要な結果を達成した加盟組織3団体の決意を祝福する」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は述べた。
「金属労働者は、トルコの現在の経済状況下で、労働者がどのように自分たちの権利のために闘うことができるか、闘うべきかについて、素晴らしい実例を示してくれた。ブラボー!」
「闘いは続く!」
トルコの金属労働者、公正な契約を求めて闘争
2022-01-07
【JCM記事要約】
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2022年1月7日:2021年10月、労働組合とトルコ金属使用者団体MESSの間で、300社以上の金属労働者14万2000人を対象とする部門全体の団体交渉が始まった。金属労働者は12月中旬から行動を起こしており、使用者側に対し、トルコの経済危機を背景に労働者の要求を受け入れるよう要請した。
インダストリオール加盟組織のトルコ・メタル、ビルレシク・メタル・イスおよびウズチェリク・イスは、MESSに要求のリストを提出した。その中には、トルコで労働者の購買力が大幅に低下していることを受けて、賃上げと労働条件の改善が盛り込まれていた。
トルコでは消費者物価が急上昇している。トルコ統計局(TUIK)発表の公式数値によると、2021年の年間インフレ率は36%で、12月だけで13.6%に達した。しかし独立系のENAGrupによると、年間インフレ率は80%を超えたという。
トルコの経済危機は通貨の変動と物価の上昇を招き、労働者は困難な状況に置かれている。労働者は食品その他の日用品の価格上昇を実感している。
トルコ・メタルは12万9000人の組合員を代表して29.57%の賃上げを要求し、ビルレシク・メタル・イスは1万1000人を超える組合員のために30.89%の増額を提案している。組合側の要求には、給付の増額と労働時間・医療・残業手当の改善も含まれている。
使用者は当初、最初の6カ月で12%を提示、その後17%に訂正し、2022年1月5日の前回の交渉で最終的に21%に引き上げた。トルコ・メタルとビルレシク・メタル・イスは、MESSの最新提示を拒絶した。
両組合は警告争議行為によって組合員の動員を開始している。トルコ・メタルとビルレシク・メタル・イスは、職場で作業を停止するとともに、企業が立地している都心で大集会を開いた。金属労働者の要求に地域から幅広い支援が寄せられている。
組合の報告によると、世界的な半導体供給不足で多くの産業が難局に陥っているが、これは使用者が労働者の賃上げを抑える口実にならない。
トルコ・メタルは2021年12月24日の執行委員会後、組合が存在するすべての職場でストを行うという決定を発表した。このストは60日以内に実施すべきである。ビルレシク・メタル・イスは、1月14日から4工場で、1月18日からさらに6工場でのストライキを発表した。
トルコ・メタルは、コジャーエリー市で大集会を開いて約10万人を動員し、ビルレシク・メタル・イスは、いくつかの職場で職場レベルの作業停止と抗議行動を強化した。
インダストリオール・グローバルユニオンのケマル・ウズカン書記次長は次のように述べた。
「数千人の金属労働者を代表している加盟組織の要求を全面的に支持する。特にトルコが壊滅的なインフレと厳しい経済情勢にある中で、労働者の賃上げへの期待は十分に正当化される」
「トルコの同志に連帯を広げるために引き続きグローバル・ユニオン・ファミリーを結集していく」
「この闘いはトルコのみならず世界中の国々で続いている」
成長するガーナの自動車部門で組織化が加速
2021-12-23
【JCM記事要約】
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2021年12月23日:ガーナで新しい自動車組立工場がいくつか稼働しており、インダストリオール・グローバルユニオン加盟組織の産業・商業労組(ICU)は、この部門で労働者の勧誘と組織化に力を入れている。
今年、トヨタとフォルクスワーゲンの工場が開設され、後者は年間最大2万台を生産すると予想される。
同労組は、部品販売会社を含む自動車会社で1,982人の労働者を組織化している。そのうち女性はわずか154人で、同労組は自動車産業に対し、採用方針にジェンダー平等を導入するよう求めている。
ICUは、この部門の労働者が生活賃金を支払われるようにすると述べており、企業に団体交渉や社会的対話への関与と、より良い安全衛生基準(COVID-19プロトコルを含む)の遵守を求めている。さらに同労組は企業に対し、ガーナ人労働者の技能を向上させる自動化への投資を求めている。同労組はケニア、ナミビア、南アフリカの組合が加わっているVWネットワークと、VW欧州従業員代表委員会にも加入している。ネットワークの目的の1つは、VW労働者のディーセント・ワーク促進である。
モーガン・アヤウィンICU書記長は次のように言及した。
「重要なことに、VWガーナには労働協約があり、所得が最低賃金を上回っている。組合員は、社会保障など労働法に定めるすべての法定給付を受給できる。さらにICUは、特に無料または補助金付きの医療など、労働者のために追加給付を取り決めることもできた」
全国三者構成委員会によると、2021年のガーナの最低賃金は1日12.53セディ、月額で301セディ(49米ドル)である。しかしアンカー研究所の推定では、大人2人、子ども2人の家族の生活賃金は約250米ドルである。
自動車部門の成長は、主要自動車メーカーの誘致が目的の産業開発プログラムをはじめとする政府の政策によって支えられている。この政策は、自動車組立・部品製造部門で高度熟練雇用を創出することも目指している。
アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の締結も、国内で組み立てた自動車の近隣諸国への低関税輸出など、ガーナの自動車産業に利益をもたらすとみなされている。サハラ以南アフリカの自動車産業とガーナを含むいくつかのアフリカ諸国政府は、AfCFTAの下で自動車製造ハブ設立の可能性を探っている。
さらにガーナ自動車開発政策(GADP)は、セミノックダウン(SKD)キットと完全ロックダウン(CKD)キットの輸入に、それぞれ5年、10年の免税期間を与えている。工場を建設するための材料や機器の輸入も、関税その他の手数料を免除されている。
「ガーナの自動車部門の成長は、この国で大いに必要とされる雇用を創出しており、ICUはこの成長部門で組織化努力を強化すべきだ。より多くの組合員を勧誘して職場で過半数を達成すれば、同労組はこの部門で適正な労働条件を要求して労働者の権利を促進しやすくなる」とインダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所所長のポール・フランス・ヌデソミンは言及した。
ICUは組合員14万人を擁し、自動車、金属、製紙、印刷、繊維・被服・製靴・皮革などの部門とインフォーマル部門で組織化している。
インドのフォックスコン工場で労働者が抗議
2021-12-23
【JCM記事要約】
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2021年12月23日:インド・タミルナードゥにあるフォックスコンのiPhone組立工場で、数千人の若い女性労働者がチェンナイとバンガロールを結ぶ幹線道路を封鎖し、労働・生活条件の改善と適正な雇用を要求した。抗議の発端は、フォックスコンの宿舎で食中毒が発生し、何百人もの労働者が入院したことである。
この工場は約1万6000人の労働者を雇用しており、その8割が18〜23歳である。大多数が第三者の請負業者や派遣会社を通して雇用される移民契約労働者で、契約書も身分証明書もなければ、フォックスコンに雇用されているという証拠もない。労働者たちは賃金が少なく、社会的保護を受けられず、組合加入や団体交渉を妨げる障害に直面している。
労働者はホステルに滞在させられているが、過密状態で基本的な設備もないという。20〜40人の労働者が定員10人の部屋に宿泊しており、適切な換気もない。良質で衛生的な食品が提供されていない。労働者は緊急事態の場合しか退出できず、休暇を取得すると給料から差し引かれる。
契約労働者たちは工場施設内で携帯電話の使用を許可されず、移動を制限されている。これらの労働者は強制労働者として雇われている、と組合は主張する。
12月第3週、2000人を超える女性労働者が滞在している会社提供の宿舎、IMAホステルで、何百人もの労働者が食中毒になった。同僚が福利について尋ねても、経営陣とホステル、請負業者は回答を拒否し続けたことから、労働者の間で抗議行動が起こった。
12月17日、労働者は工場の近くで自発的な座り込み抗議を開始し、チェンナイ−ベンガルール道を封鎖した。抗議行動はチェンナイ−ベンガルール道に沿って、他の場所にも広がった。
労働者は当局に対し、影響を受けた労働者とその健康状態について詳しく説明し、請負業者とホステル経営陣に対して行動を起こし、インフラと生活・労働条件の改善を確保するよう要求した。労働者たちはフォックスコンにも、労働者の安全と福利に対する責任を取ることを要請した。
「労働者は小さなミスを犯しただけでも仕事から外され、虐待される。私たち全員が教育を受けており、多くが大学を出ているが、臨時雇用と低賃金に甘んじている」
労働福祉大臣と国家・地区行政当局高官が確約しても、労働者は納得しなかった。スングバルチャトラムの工場の近くで抗議していた労働者は、16時間を超える抗議行動の末、警察によって追い払われた。近くの工業地域オラガダムで抗議していた労働者たちが逮捕された。その晩、約20人の組合活動家が再び司法拘束された。67人の女性労働者は翌日釈放された。
「工場の若い女性は、フォックスコン工場のまったくもって非人間的な労働条件や宿舎の生活条件の結果、抗議せざるを得なかった。労働組合がこれらの若年労働者に接触し、組織化して労働・生活条件を改善できるようにすることが絶対に必要だ」とアプールヴァ・カイワール・インダストリオール・グローバルユニオン地域事務所所長は言及した。
持続可能な変化の達成
2021-12-18
【JCM記事要約】
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2021年12月18日:インダストリオール女性委員会は9月の大会後の初会合で、今後4年間の優先課題をめぐり議論した。インダストリオール関連部門におけるジェンダー賃金格差の解消と女性の仕事の未来が、議題に盛り込まれた。
2人の新任共同議長が、向こう4年間を任期として選出された。イラク電力部門従業員一般労組(GTUESE)のハシュメヤ・ムフセン・アルサーダウィ副会長と、ボスニア・ヘルツェゴビナ化学・非金属独立労組のイルバナ・スマイロビッチ会長である。
参加者は2日間で、4年の大会期間の優先課題を検討した。ジェンダー賃金格差の解消と女性にとっての仕事の未来の姿だけでなく、ジェンダーに基づく暴力、組合への女性参画・参加も依然、持続可能な変化を達成するためのリストの上位に掲載されている。
インダストリオールの部門活動にジェンダー平等を統合する取り組みは、2018年のケープタウン会合以降、優先課題となっている。同会合による勧告は執行委員会に支持され、大会は、会合への女性の参加を増やし、組合への女性参画を拡大・強化するために、さらなる決定を下した。
そして、この活動は、グローバル枠組み協定への平等関連規定の導入や、リーダーシップ、組織化・団体交渉、人権デュー・ディリジェンスならびに仕事の世界におけるジェンダーに基づく暴力とハラスメントに関する訓練の実施などを通して続く。
女性委員会は活動の枠組みを採択した。女性委員会の目的は、インダストリオール・グローバルユニオンとその加盟組織が、執行委員会とともに、幅広いインダストリオールのアクション・プランに沿って、下記を目的に方針や行動を立案・実施するよう確保することである。
- インダストリオール関連産業と労働組合で女性の権利とジェンダー平等を促進
- 労働組合機構とインダストリオールの全レベルで女性参加・参画を拡大するための継続的努力を通して、包括的な労働組合を開発
また女性委員会は、第3回インダストリオール世界大会で採択された決議を実施するためのロードマップについても採択した。この決議は、インダストリオール、加盟組織および仕事の世界における不平等、性差別、女性蔑視およびジェンダーに基づく暴力の根絶を要求している。ロードマップは、次に執行委員会に提出され、承認を得ることになる。
クリスティン・オリビエ・インダストリオール書記次長は次のように言及した。
「女性委員会が将来の課題に取り組む態勢を十分に整えるには、仕事の未来とインダストリー4.0、傘下組合にとってのその意味に焦点を当てる必要がある。女性はもっと突っ込んで考え、女性が取り残されないようにしなければならない。」
レポート:COP26での出来事と労働者にとっての意味
2021-12-15
【JCM記事要約】
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2021年12月15日:COP26は2021年11月1-13日に開催され、グラスゴー気候合意を取り決めた。何が盛り込まれており、それは労働者にとって何を意味するのだろうか。
レポート
『グローバル・ワーカー』第2号(2021年11月)より
テーマ:COP26、公正な移行
文:ウォルトン・パントランド
COP26とは?
COP26は国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第26回締約国会議である。締約国はUNFCCCに署名している197カ国で、気候変動に立ち向かうための世界的な多国間協定に一体となって取り組んでいる。
UNFCCCの初会合であるリオデジャネイロ地球サミットは1992年にブラジル・リオデジャネイロで、第1回COP(UNFCCCの統治機関)は1995年にベルリンで開催された。京都で開かれたCOP3において、温暖化を制限しようとする初の世界的な気候条約、京都議定書がまとめられた。グラスゴー気候合意は、その条約の最新版である。
UNFCCCプロセスについては多くの批判がある。主な問題は、すべての締約国が、何か手を打たなければならないことを認識しており、他のすべての国々に行動を求めておきながら、自国には例外を見つけようとしていることである。その結果、炭素排出量の組織的過小報告、グリーンウォッシング、軍など分野全体の適用除外が見られる。
ほとんどの政府が依然、市場主導の民間部門による解決策を望んでおり、その結果、理論的技術の可能性を重視するあまり、政府による措置が不十分になっている。
なぜCOP26は重要だったか?
COP26は、地球温暖化を許容水準に抑える最後の、そして最善の機会と評された。2015年にパリで開催されたCOP21は、2℃を大きく下回る水準に温暖化を制限するという世界的な取り組み、パリ協定の締結に至った点で画期的であった。COP26が重要だったのは、パリ協定を管理するルール(「パリルールブック」)を仕上げ、排出削減のために各国が自主的に決定する約束(NDC)を定めなければならなかったからである。
COP26は失敗だったのか?
グレタ・トゥーンベリをはじめとする多くの環境活動家が、COP26を失敗と呼んでいる。グラスゴー気候合意は野心に欠けており、締約国のNDCは地球温暖化を制限するのに十分ではない。だが、それだけの話ではなく、組合は慎重に楽観的である――トランプがまだホワイトハウスにいた1年前の状況に比べれば、大きな進歩があった。壊滅的な気候変動を防止するチャンスはまだあり、勢いが強まっており、移行資金の供給が約束されている。
決定的なことに、交渉はまだ終わっていない。来年シャルム・エル・シェイクで開催されるCOP27において、そしてその後も毎年、各国にNDCの再定義を求める圧力がさらに強まっていくだろう。労働組合を含む市民社会は、今後1年間に可能な限り各国政府に圧力をかける必要がある。
COP26の取り組みの枠外でも、民間部門や地方政府などから、ネットゼロに向けた勢いが全世界で強まっている。技術が進歩してコストが安くなっており、これは移行のペースが急速に高まっていることを意味する。
COP26は組合にどのような影響をもたらす可能性があるか?
COP26の結果、政策環境がCOP25後とは大きく変わっている。以下、組合が直面すると予想される状況を列挙する。
石炭の終焉
エネルギーミックスにおいて石炭が果たす役割は、COP26で最も熱心に討議された主題の1つであった。石炭火力発電所は地球温暖化の大きな要因であり、まだ多くの国々がエネルギー需要を満たすために石炭に依存している。協定の当初の文言、石炭の「段階的廃止」は、中国とインドから圧力を受けた結果、「段階的縮小」に和らげられた。それでもなお、意図は明確である――締約国は、石炭に長期的な未来はなく、炭鉱閉鎖を求める圧力が全世界で強まっていくという点で意見が一致している。組合にとって、炭鉱と石炭火力発電所を維持するための闘いは、歴史の流れに逆らう闘いである。英国やスペインなどの組合は、再訓練と配置転換を何とか確保することができた。これを規準にするために闘う必要がある。
公正な移行への取り組み
今回のCOPで目立った労働組合スローガンは、「私たち抜きに私たちのことを決めるな」である。組合は、すべてのレベルで公正な移行の原則をうまく促進した。このCOPの重要な結果は公正な移行への取り組みの強化であり、これは今パリルールブックに盛り込まれている。富裕国が発表した公正な移行宣言は、持続可能性への移行は最も影響を受ける人々との協議を通して進めなければならないという重要な先例となる。
労働組合は、COP協定の公正な移行に関する文言を利用して、今すぐ国家レベルで社会的対話を要求することができる。グローバル・ユニオンは、移行計画について多国籍企業との社会的対話を要求することもできる。
政府の復帰
1970年代後半以降、世界の多くの国々が国家主導の開発から脱却し、規制撤廃、民営化、脱工業化、市場先導型の開発に移行した。これは組合からの強い抵抗に遭い、不平等の拡大をもたらして2008年の金融破綻のような危機を招いた。COVID-19で、市場を基盤にパンデミックを解決する方法がないことが直ちに明らかになったため、完全にイデオロギー的に緊縮財政に取り組んでいた政府でさえ、前例のない国家支出に舵を切らざるを得なかった。
各国政府が気候変動に取り組んでいるため、この前例のないレベルの国家介入と資金供給は維持されそうである。巨額の資金が投資されるにしてもなお、気候災害を防止するほうが、その結果に対処するよりも大幅に安くすむだろう。
相乗効果もありそうで、国家が投資すれば民間部門もあとに続く傾向がある。世界の歴史上初めて、投資がグローバルに調整され、規模の経済をもたらす。
グローバルサウスを脱炭素化するための資金供給
富裕国はパリで、気候変動の影響を緩和して経済の脱炭素化を支援するために、年間1000億ドルをグローバルサウスに供給することを誓約した。これまでのところ、富裕国はこの誓約を守っていない。それにもかかわらず、多額の資金――融資ではなく補助金――が貧困国に流入し始めている。
重要な先例は、南アフリカの半官半民の石炭エネルギー会社エスコムを脱炭素化するために、85億ドルが充当されたことである。資金供給国は公正な移行に取り組んでおり、このプロセスは三者構成機構Nedlacを通じた社会的対話により管理される。南アフリカの組合は、腐敗やグリーンウォッシング、民営化、その他いくつかの問題について、もっともな懸念を抱いている。しかし、この取引は予定どおりにいけば、良質でクリーンな雇用の創出、技能・技術移転、大幅な排出削減につながる可能性がある。南アフリカが成功を収めれば、他の国々、特にインドのように石炭依存度の高い国でも資金供給が増えることになる。
グローバルノースのグリーンディール
富裕国は、グリーンインフラの建設に巨額の資金を投入する。例えば欧州グリーンディールは、COVIDからのグリーンリカバリーに資金を供給するために、2030年までに1000億ユーロを提供する。これには新しい輸送インフラ、住宅・建物の改造、グリーンエネルギー生成などが含まれる。欧州委員会は、これによって数十万人の雇用が供給されると予想している。
同様に米国でも、バイデンの1兆米ドルのインフラ法案で、グリーンインフラに多額の資金が投入される。その他のOECD諸国も、同水準の投資を計画している。
組合はどう対応すべきか?
「COVIDが気に入ったなら、気候変動も大好きになるだろう!」
COVID危機は気候変動の舞台稽古だった。パンデミックを抑えて人命を救うために、前例のない行政措置と資金供給、グローバルな調整が必要になっている。気候変動に対抗するために、このような取り組みを続ける必要がある。
社会的対話の要求と公正な移行を求める闘い
私たちは組合員を迫り来る変化に備えさせる必要がある。各国政府が必要な措置を講じていないことを批判するのは簡単だが、私たち労働運動関係者も、気候危機を軽視し、なくなればよいと思うだけという罪を犯している。化石燃料部門の雇用は賃金が高く、労働組合の力の源泉であるため、私たちはそれらの雇用の保護を優先させている。今や化石燃料からの移行に全世界が取り組んでいる。いくつかの国の組合は、公正な移行を求めて闘い、それを勝ち取る経験を積んでいる。最良の例から学び続ける必要がある。
COP26代議員のダイアナ・ジュンケラ・キュリエル・インダストリオール・エネルギー担当部長は言う。
「未来を押しつけられるよりも、自分たちで未来を設計するほうがいい」
「私たちがこれらの雇用を無期限に守れると組合員に信じさせるよりも、組合員に対して正直になり、将来に備えるために手助けしなければならない。私たちの緊急の任務は、社会的対話を通して実施できる公正な移行の具体的な枠組みを開発することだ」
公正な移行はパリルールブックに盛り込まれているが、多くの政府にとって、経済政策に関する社会的対話は自然に起こるものではない。国がNDCを改善して移行を計画するにあたり、討議に参加できるよう要求するのは組合の責務である。これを効果的に実行すれば、経済の他の分野で先例を作り、三者構成機構と部門全体交渉を生み出すことができる。
シナリオの変更
労働者と組合は当然ながら、素晴らしい公正な移行は良質のクリーンな組合雇用というグリーンユートピアを創出する、という高尚な主張を疑っている。19世紀初めに織工に取って代わった繊維機械の開発から、外部委託と大規模失業を招いた1990年代のグローバル化に至るまで、歴史上、世界経済の大きな変化はすべて労働者を犠牲にしてもたらされた。
なぜ今回は違うと信じるべきなのか?
政治家任せにしていたら何も変わらない。だが、私たちが移行の推進に関与すれば、違うものになる可能性がある。私たちは世界経済の前例のない変動――化石燃料時代の終焉と、まだ定義されていない新時代の幕開け――に直面している。これまでの変化とは異なり、これは管理されたプロセスであり、組合が政策に影響を与える余地がある。
世界各国の政府が過去に例のない金額を支出する。この支出が組合員に良質な雇用を提供し、その過程で私たちがよりよい世界を構築するようにするのは、私たちの責務である。