広報ニュース

第143号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2022年3月18日)

「重大な人道的悲劇」

2022-03-10

【JCM記事要約】

  • 3月10日、インダストリオールはウクライナ労働組合代表と会談を行った。組合代表はロシアの侵略によって深刻な危機に瀕している国内の状況を説明した他、原子力発電所への攻撃の危険性も指摘。
  • インダストリオール・ホフマン会長は、侵略により影響を受けたウクライナ国民を引き続き支援する、と連帯の意を表明した。インダストリオールでは、ウクライナの加盟組織を支援するため寄付を募っている。

 

2022年3月10日:インダストリオールは火曜日にウクライナの労働組合代表と会談し、現場の状況について話を聞いた。インダストリオール加盟組合とその組合員は命がけで闘っており、連帯と財政援助を緊急に必要としている。
                                                      

「とても寒い冬だ。食料がなくなりかけている。これは重大な人道的悲劇だ」と、ある労働組合指導者は言う。

厳しい状況が原因で、加盟組織の半分しか会合に出席できなかった。参加できた人たちは、ロシアの侵略によって深刻な危機に瀕しており、避難したり脱出したりしている人々への援助を訴えた。包囲された都市の人々は電気も水道もなく、生活できなくなっている。

労働者代表は、さまざまな部門や地域の状況を極めて詳細に説明した。現在も事業活動を継続している国内企業は半分にすぎず、多くの企業が供給問題と苦闘している。現在、多くの労働組合員が兵士になっている。

原子力労働者は、ロシアによるザポリージャ原子力発電所への攻撃とチェルノブイリ原発の占領に起因する極めて大きな危険性を指摘した。

イェルク・ホフマン・インダストリオール会長は、インダストリオールの連帯の誓約を繰り返した。

「即時停戦とロシア軍の撤退を要求する。寄付と救援物資の形での具体的な連帯によって、影響を受けた人々と難民を支援し続ける。私たちはウクライナを支持する」

ウクライナの人道状況が悪化しているため、全国各地で連帯と財政援助が必要である。支援したい方は、取引コストを下げるためにユーロで、インダストリオール・グローバルユニオンの預金口座に寄付してほしい。

 

ジェンダー平等格差の解消

2022-03-08

【JCM記事要約】

  • ジェンダー賃金格差は、社会や経済におけるジェンダー不平等の結果である。無給介護労働の70%以上は女性へ配分されており、この不平等な配分が賃金格差を助長している。また、インフォーマル経済やサプライチェーンの底辺で女性が多く働いていることも、賃金格差の背景となっている。
  • インダストリオール・オリビエ書記次長は、組合として賃金を取り決めたとしても、女性が行う可能性の高い仕事の過小評価といった賃金格差を生む要因が排除されているわけではないため、仕事の価値を交渉の中心に据える必要がある、と主張。
  • ジェンダー賃金格差を解消するためには、社会的対話や団体交渉チームでジェンダーバランスを確保することが重要である。女性が交渉に直接参加して初めて、労働協約で多くの平等問題が取り上げられる。

 

2022年3月8日:COVID-19パンデミックにより、世界中で賃金不平等が悪化し、ジェンダー賃金格差の解消に要する時間が延びた。
                                                      

包括的な団体交渉の必要性 

ジェンダー賃金格差は、社会、経済および労働市場におけるジェンダー不平等の結果である。スペインのように、最近の法律はより幅広いアプローチを採用し、企業に対し、採用や昇進、賃金、安全衛生などで起こり得る差別を分析して、それに対応する平等計画の策定を義務づけている。

労働組合は団体交渉によって中心的役割を果たしている。団体交渉は、職場で平等を促進し、女性労働者の役割についての根強い誤解の多くに取り組む手段として利用できる。団体交渉は男女間の賃金不平等の削減に積極的に貢献することが分かっている

意思決定や社会的対話、団体交渉チームでジェンダーバランスを確保することが重要である。女性が組合指導部でポストに就き、団体交渉チームに参加すれば、団体交渉の結果をジェンダーに配慮したものにするうえで大きな効果がある。女性が交渉に直接参加して初めて、労働協約で多くの平等問題が取り上げられる。

無給労働と育児の不平等な配分

無給労働の規模は非常に大きい。ジェンダー賃金格差の解消に向けて大きく前進するには、男女間のみならず家族と質の高い公共介護サービスの間でも、無給労働を効果的に承認・評価・配分しなければならない。
無給介護労働の70%以上を今なお女性が担っており、この量は家庭に幼児がいると大幅に増加する。平均して、育児に占める女性の割合は男性の3倍である。

無給労働と育児の不平等な分配は、男性を主な稼ぎ手、母親を主な介護者とみなす古い固定概念へと逆戻りさせてしまう。定着したジェンダー規範やジェンダーの固定概念に対する取り組みは、介護・家事責任の再分配への第一歩である。

ILOが例示しているように、不平等な配分はジェンダー賃金格差に直接的な影響を与え、母親の賃金格差を助長している。

進行中の労働組合キャンペーンは、女性がより広い経済に効果的に参加できるようにするうえで、介護(医療、教育、子どもや高齢者の介護、その他の社会的介護サービス)への投資がいかに重要であるかを示している。

ヨーロッパの多くの組合は、より平等な育児を促進してジェンダー賃金格差を縮小するために、仕事と家庭生活の調和に関する政策(育児施設の提供など)を優先している。日本では、育児介護休業法に基づき、春の交渉において、労働組合は父親の育児休暇を促進する手段について協議する。現在女性が主に担って育児を共に行うことにより、男女が共に参画できる社会を作ることが目的である。

女性の仕事の過小評価

「私たちは組合として、賃金表を取り決めているのだから、ジェンダー賃金格差はない、同じ仕事をしている男女は同じ賃金を受け取ると思っていることが多い。しかし、だからと言ってジェンダー賃金格差を助長している要因(職業分離、女性が行う可能性の高い仕事の過小評価、ボーナスや手当への不平等なアクセスなど)が自動的に取り除かれるわけではなく、それだけでは不十分である。実施された仕事の価値を交渉の中心に据える必要がある」とクリスティン・オリビエ・インダストリオール書記次長は言う。

社会規範やジェンダー・ステレオタイプが、科学・技術・工学・数学(STEM)のような賃金の高い産業や部門から女性を遠ざけている。これらの部門の女性は差別に直面しており、そのために専門的能力の開発が難しくなっている。平均して、給料は男性の同僚よりも低い。エネルギー部門やICT部門では、全世界の賃金格差がそれぞれ31%、25%に達している。

スペインの労働者委員会からの最近の報告によると、月給の男女格差のほぼ40%が手当とボーナスである。これらの追加報酬は一般的に、身体的努力や困難作業、夜勤のような男性的側面に対するものであり、注意力や正確さ、忍耐力のような仕事の部分には報酬が与えられない。

同一賃金監査・調査のような賃金の透明性を確保するための取り組みは、女性が遂行する仕事の賃金の低さを強調するのに役立つ。ETUCと欧州の組合は、すべての使用者に賃金情報(監査)と賃金平等に関する年次行動計画を作成させ、組合が賃金格差に取り組むために使用者と交渉するうえで支援する欧州指令を要求している。

ますます重要になっているのは、ジェンダーニュートラルな職務評価や職務分類である。というのも、これは女性の仕事の評価におけるジェンダー差別に対処し、女性の技能や仕事の歴史的な過小評価に対抗するからである。職務評価計画は、同一労働同一賃金に配慮するように立案しなければ、既存の不平等を永続させる。

アイスランドの同一賃金基準は、どうすれば同一労働同一賃金を達成できるかの最優良事例として広く認められている。使用者は4つの主な基準、すなわち専門知識、責任、努力および作業環境に基づき、職務分類・職務評価等級システムによって職務を比較するために、一貫した無差別な制度が確立されているという証拠を示さなければならない。そして、各々の企業や機関にとって妥当な方法で、下位基準を策定し、比較考量しなければならない。

賃金決定にジェンダーを反映した性質がある点を考慮に入れることが重要である。さもなければ、労働協約は今後も女性の仕事の過小評価を制度化し、合法化し続けるだろう。

カナダのUSWやイギリスのユナイトのような労働組合は、賃金平等や同一賃金調査、ジェンダー・ニュートラルな職務評価に関する現行の法規定を改善するために、何について交渉すべきかに関するガイドラインを策定している。

弱い立場にある労働者区分

多くの国々で、インフォーマル経済の女性が女性労働者の大多数を占めている。万人のための普遍的な社会的保護を目指すキャンペーンや交渉は、ジェンダー賃金格差をなくすうえで重要である。インフォーマル経済の公式化は団体交渉を行いやすい環境づくりに役立つため、他のソーシャル・パートナーとの協力が重要である。

ジェンダー賃金格差解消の鍵は、女性のディーセント・ワークを確保し、不安定かつ低熟練・低賃金・低価値の仕事に就く女性が不釣合いに多い現状に取り組むことである。女性の低賃金雇用や低賃金部門への資源再配分に関する政治的コミットメントが必要である。

規制が最も弱く、競争圧力が最も強い傾向があるグローバル・サプライチェーンの底辺に女性が集中している現状も,ジェンダー賃金格差を助長している。多国籍企業とのグローバル枠組み協定は、労働条件の改善や、全国レベルの生活賃金や部門別最低賃金を設定するための交渉において、重要な役割を果たし得る。ACTプロセスも、サプライチェーンにおける女性の給料の引き上げに重要な役割を果たすだろう。

 

ウクライナの組合に支援を

2022-03-03

2022年3月3日:ウクライナの状況は刻々と悪化している。短期的にも長期的にも、国内全域で連帯と財政援助が必要である。
                                                      

ウクライナのインダストリオール加盟組合12団体とその組合員は、命がけで闘っており、連帯と財政援助を緊急に必要としている。

ウクライナの加盟組織からの報告によると、労働組合の指導者、役員および組合員は生き残るために闘っており、攻撃を逃れて地下シェルターに隠れながら、それでもなお必死に組合員を支援しようとしている。さらに、ほとんどの工場が生産を停止し、一部はすでに占領下にあるとの報告がある。労働者は働くことができず、生活面で大きな懸念がある。労働組合は存在自体を脅かされており、任務を果たすことができない。

即時の支援ならびに組合機構の最終的な再建に向けた長期的援助が必要である。直接的な人道支援のために、私たちはウクライナで活動している国際人道組織への寄付を提案する。しかし、加盟組織を直接支援したければ、取引コストを下げるためにユーロで、インダストリオール・グローバルユニオンの預金口座に寄付してほしい。

この最も困難な時期にウクライナの同志への支援をお願いする。

銀行名:Cler Bank

銀行所在地:6-8 Place Longemalle, CH 1204 Geneva Switzerland

口座名義人名:IndustriALL Global Union

口座名義人の住所:54bis, route des Acacias, CH 1227 Carouge

SWIFTコード:BCLRCHBB

IBANコード:CH70 0844 0145 2523 1139 0

通貨:ユーロ

 

バングラデシュ政府は労働者の権利ロードマップを実施せよ

2022-03-01

【JCM記事要約】

  • 2019年に、バングラデシュの労働者組織数団体が政府のILO条約の違反に関する苦情を申し立てた。ILO理事会は同国政府へ対し、条約違反に対応する行動のロードマップを策定するよう要求。同国政府は経過報告書を提出するも、ロードマップで期限の定められた約束をいまだ果たしていない。
  • インダストリオール・ケマル書記次長は政府へ対し、労働組合と十分に協議したうえでロードマップの実施に向け誠実に努力するよう求めた。さらに、加盟組織の労働法修正案を検討し、労働法規改正小委員会にインダストリオール加盟組織を参加させるべきだ、と主張した。

 

2022年3月1日:インダストリオールはバングラデシュ政府に対し、3月のILO理事会までに、同国で労働者の権利を改善するためにILOが要請したロードマップを実施すべく誠意を尽くすよう求めている。
                                                      

2019年、バングラデシュの労働者組織数団体が、国際労働機関(ILO)憲章第26条に基づいて苦情を申し立てた。この苦情は、結社の自由と団体交渉権に関する条約など、いくつかのILO条約の違反に関するものだった。

その結果、ILO理事会は、バングラデシュ政府が条約違反に対応する行動のロードマップを策定するよう要求した。

バングラデシュ政府は経過報告書を提出し、ロードマップの4つの優先分野(労働法改革、労働組合登録、労働基準の監督・実施、組合差別・不当労働行為や労働者に対する暴力行為への取り組み)に関する最新情報を提供した。

しかし、期限を定めたロードマップでなされた約束は、まだ果たされていない。そして、12月と1月のインダストリオール加盟組織の協議会合で、加盟組織は、ロードマップに関して開かれた会合のいずれでも意見を求められず、参加もしていないことを明らかにした。

「政府の報告から、労働組合との有意義な協議は行われていないようだ。バングラデシュの最重要部門は既製服(RMG)部門なので、インダストリオール加盟組織と有意義な協議を行う必要があるが、それは実現していない」とアプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長は言う。

インダストリオール・バングラデシュ協議会の要求リストは、ロードマップと足並みをそろえ、以下を盛り込んでいる。

  • 賃金・残業手当の適切な支払い
  • 労働組合登録プロセスの促進
  • バングラデシュ労働法とバングラデシュ労働規則の(ILO条約に沿った)修正
  • 労働裁判所の増設
  • 業務上の負傷、失業給付、住宅・食料支援などの社会的保護
  • 工業地帯における病院の設立
  • 工場レベルの安全衛生・反ハラスメント委員会の設置
  • 不当に労働者を狙い撃ちにする産業警察の解散

「インダストリオールはバングラデシュ政府に対し、真の社会的対話を通して労働組合、特にインダストリオール加盟組織と十分に協議したうえでロードマップを実施するために、誠実な努力を払うよう求める。政府は加盟組織の労働法修正案を検討しなければならない。RMG労働者の関心事を反映させなければならない。労働法規改正小委員会に、この部門のインダストリオール加盟組織を参加させるべきだ」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。

 

ベラルーシの独立組合に対する弾圧続く

2022-02-28

【JCM記事要約】

  • ベラルーシでは、独立組合に対する攻撃が続いている。2月24日には自由金属労組(SPM)へ身元不明の人物たちが押し入り、何の文書も提示せずに書類等を押収。SPM副会長が捜索の理由を尋ねたところ副会長は乱暴に拘束された。この他にも、この2~3日間に数人の独立組合幹部が拘束された。
  • インダストリオール・ケマル書記次長は、拘束されている組合幹部の釈放及び同国の独立組合指導者と活動家の起訴を終結させるよう要求している。

 

2022年2月28日:インダストリオール・グローバルユニオンは、ベラルーシにおけるさらなる組合権攻撃をこれまでにない強い口調で非難する。同国では、この2〜3日間に数人の独立組合幹部が拘束された。
                                                      

2月24日、身元不明の男たちがミンスクの自由金属労組(SPM)事務所に入ってきた。何の文書も提示せずに事務所を捜索し、書類や事務機器、コンピューターのハードドライブ、それに組合幹部・職員の私物のラップトップと携帯電話を押収した。

オレクサンドル・エフドキムチクSPM副会長は、組合事務所が私服の人物たちによる捜索の対象になった理由を思い切って尋ねたところ、乱暴に拘束され、どこかに連れ去られた。彼は2月28日に法廷審問を受けなければならない。

2月24日朝、イハル・コムリクSPM顧問弁護士と連絡がつかなくなった。翌日、彼は留置15日を言い渡された。

2月27日には、ベラルーシ独立労働組合(BITU)ナフタン支部長のボルハ・ブリツィカバが、ベラルーシ憲法改正に関する国民投票が行われていた投票所で拘束された。彼女は現在、裁判を待っている。

ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は言う。

「労組指導者のオレクサンドル・エフドキムチク、イゴール・コムリクおよびボルハ・ブリツィカバの即時釈放と、ベラルーシにおける独立組合の指導者と活動家の打ち続く起訴の終結を要求する」