広報ニュース

第148号インダストリオール・ウェブサイトニュース(2022年7月12日)

アルセロール・ミッタル南アフリカと賃金協約を締結

2022-05-31

【JCM記事要約】

  • 南アフリカ全国金属労組(NUMSA)は、2週間にわたる街頭デモ行進と交渉を経て、アルセロール・ミッタル南アフリカ社と賃上げ協定を締結した。今回の増額率はインフレ率を上回る5%となっており、これにより住宅手当や強制残業手当等の手当ても同率で引き上げられる。
  • インダストリオール・サハラ以南地域事務所のポール所長は、生活賃金と労働基準改善を求めて、決意を固めて好戦的に闘い続けていることは称賛に値する、と賃金妥結を勝ち取ったNUMSAを祝福した。

 

2022年5月31日:2週間のストで労働者が街頭を行進し、同時に交渉を行った結果、南アフリカ全国金属労組(NUMSA)は、アルセロール・ミッタル南アフリカとインフレ率を上回る6.5%の賃上げ協約を結んだ。
                                                      

5月25日に締結された増額により、住宅手当、残留手当、強制残業手当、年金、交代勤務手当、待機手当、その他の手当も同率で引き上げられる。NUMSAによると、この増額は6月に遡って適用され、労働者はそれぞれ5000ランド(320米ドル)の1回だけの任意現金給付も受け取る。

このストは、7%の増額要求を掲げて5月11日に始まった。インダストリオール・グローバルユニオン傘下のNUMSAはストライキ中、この製鉄会社が2021年に多額の利益を計上したことを強調した。

アルセロール・ミッタルは、バンダービールパーク、フェリーニヒング、サルダーニャ、ニューカッスルに工場があり、裁判所を通してストを阻止しようとしたが、敗訴した。組合側は労働裁判所で、労働者には憲法で保障されたスト権があり、この権利は労働法によって保護されていると主張した。裁判所は、ストを中止させることはできないというNUMSAの主張に同意した。というのもアルセロール・ミッタルは、自社の鉄鋼生産部門の一部を必要不可欠なサービス(労働者はスト実施を禁止される)と宣言するよう申請中だからである。裁判所の判決後にストが継続し、同時に交渉が続けられた。

イルヴィン・ジムNUMSA書記長は言う。

「4月から発効し、2023年3月31日に失効する1年協約に署名した。使用者側は当初0%を提示してきた。私たちは大きく前進し、この結果を達成した。この協約は、賃金・労働条件改善を求めて闘うために究極の犠牲を払った、すべてのNUMSA組合員の勝利だ。彼らは自分たちのためだけではなく、将来世代の労働者のためにも尽力した。COVID-19パンデミック下でインフレ率を超える増額を達成することは大きな実績であり、彼ら抜きでは実現できなかっただろう。従業員を代表してこの協約を確保するために極めて熱心に働いてくれたNUMSA役員にも感謝したい」

「南アフリカで生活費が上昇している時期に、この賃金妥結を勝ち取ったNUMSAを祝福する。同労組が生活賃金と労働基準改善を求めて、決意を固めて好戦的に闘い続けていることは称賛に値する」とインダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所所長のポール・フランス・ヌデソミンは言う。

 

 

フィリピンの組合、生活賃金を求めて闘争

2022-05-30

【JCM記事要約】

  • フィリピンでは燃料価格が上昇し実質賃金が低下しており、合同労組(ALU-TUCP)が最低賃金の増額を要求すべく、地域三者賃金生産性委員会(RTWPBs)に嘆願書を提出した。RTWPBsは5月中旬に各地域の最低賃金を発表したが、これは生活賃金には程遠い額であった。
  • インダストリオール東南アジア地域事務所・岩井所長は、最低賃金の決定には労働組合の関与が必要であり、最低賃金のみならず労働者の生活に関連するすべての問題に関しての社会的対話を確立することが重要である、と述べた。

 

2022年5月30日:燃料価格が上昇し、実質賃金が低下する中で、フィリピンの組合は生活賃金を求めて闘っており、地域三者賃金生産性委員会(RTWPBs)に嘆願書を提出した。
                                                      

合同労組(ALU-TUCP)は17のRTWPBのうち12の委員会に嘆願書を提出し、現在日額724フィリピン・ペソ(13.9米ドル)〜1007フィリピン・ペソ(19.3米ドル)の最低賃金の増額を要求した。

エバ・アルコスALU全国副会長は、嘆願書を提出するために全国を回った。

「新しい最低賃金が貧困水準に満たないのは悔しい。その原因は、反組合的な環境、狭い労働協約の対象範囲、COVID-19、物価上昇だ」

「新しい最低賃金率は労働者の必需品予算を増やすが、絶対に十分な額ではない。最低賃金率をベンチマークとして利用し、企業に給料の調整と賃金の歪みの回避を強く要求する必要がある」

フィリピン金属労働者同盟(MWAP)は、日額最低賃金率を全国基準として750フィリピン・ペソ(14.3米ドル)に引き上げるよう要求するために、賃金フォーラムと抗議行動を組織している。

メアリー・アン・カスティーリョMWAP会長が述べた。

「政府は2018年以降、まったく賃上げを承認していない。私たちのわずかな賃金では、物価上昇に対処することができない。新しい最低賃金は、インフレと賃金低下が私たちの生活に与える壊滅的な影響を一時的に和らげるにすぎない」

RTWPBsは5月中旬以降、各地域の新しい最低賃金を発表している。グレーターマニラエリアでは、非農業労働者の日額賃金が537フィリピン・ペソ(10.3米ドル)から570フィリピン・ペソ(10.9米ドル)へと6.1%増えた。その他の地域では、非農業労働者の日額賃金が350フィリピン・ペソ(6.7米ドル)から450フィリピン・ペソ(8.6米ドル)に増額された。

しかし、これらの金額はまだ生活賃金にはほど遠い。フィリピン国家経済開発庁(NEDA)のスポークスパーソンは2018年、5人家族が暮らしていくには4万2000フィリピン・ペソ(月804米ドル、1日26.8米ドル)の世帯収入が必要だと述べた。

岩井伸哉インダストリオール東南アジア地域事務所所長は次のように述べた。

 「最低賃金の決定に労働組合を関与させなければならない。最低賃金の決定だけでなく、労働者の生活に関連するすべての問題で社会的対話を確立すべきだ」

写真:E. Tuyay/ILO

 

インダストリオールがウクライナを連帯訪問

2022-05-26

【JCM記事要約】

  • インダストリオールは、戦時下のウクライナを連帯訪問した。ブチャの地方当局との会談では、同市の再建計画と努力について議論した他、キーウではインダストリオール加盟組織やウクライナ労働組合連盟(FPU)、独立労働組合連盟(KVPU)の指導部との会談を行った。
  • インダストリオール・ケマル書記次長は、常にウクライナ加盟組織と共にあることと、労働者の権利の弱体化に反対して加盟組織を支援し続けていることを改めて強調した。

 

2022年5月26日:インダストリオール・グローバルユニオンはウクライナの加盟組合と会談し、爆撃で破壊された地域社会を訪問、ウクライナの労働者・組合にとって今回の侵攻が意味することについて、じかに話を聞いた。
                                                      

ウクライナのインダストリオール加盟組織は、国際労働組合運動による最初の連帯訪問を歓迎した。これらの加盟組織には、鉱業、エネルギー産業および製造業で、国際連帯とインダストリオール活動に参加してきた強力な歴史がある。

組合代表団はブチャの地方当局と会談し、同市再建の計画と努力について議論した。イルピンでは地方当局代表が、ロシア軍に攻撃されたとき、どのように市を守ったかを説明した。一定の戦争被害を記念碑として修復しないまま残しておくことが決定された。

続いてキーウを連帯訪問し、インダストリオール加盟組織や、ウクライナ労働組合連盟(FPU)と独立労働組合連盟(KVPU)の指導部と会談した。戦時下で労働組合活動を維持するために組合員が極めて複雑な難題に直面している現状について、すべての指導者が詳細に説明した。

「ロシアによる侵攻の初期から、FPU加盟組合はウクライナ国民を支援してきた。国際労働組合運動による支援・連帯に感謝する」とGrigori Osovyi FPU会長は言う。

一連の会合で、この戦争によって金融機関と欧州連合からの財政援助が緊急に必要とされていることが明らかになった。

「ウクライナの組合は、人々を助けて国を守るために結集している。だが、戦争犠牲者を助けて雇用を守るための活動や、インフラ再建、経済、公正な労働・社会法への支援が必要だ。インダストリオールと加盟組織は、皆さんが連帯を示してくれたことに感謝する」と国会議員のミハイロ・ボリネッツKVPU会長は述べた。

インダストリオールは、ウクライナで活動している多国籍企業が社会的責任を取り、ウクライナの従業員を見捨てないよう要求している。見捨てる代わりに、多国籍企業は支援を行い、給料を払い続け、その他の物資援助を提供すべきである。インダストリオールは、ウクライナへの連帯資金の支払いを確保するために加盟組織と協力している。

ケマル・ウズカンがこう述べた。

「世界中の人々が、自分たちの価値観と主権を勇敢に守っているウクライナ人を称賛している。ウクライナは立ち直って回復できるし、そうしなければならない。インダストリオールは常に加盟組織とともにいる」

「団結が必要とされている今、ウクライナ議会が労働法の規制撤廃と弾力化を再び議題に載せている中で、私たちは労働者の権利の弱体化に反対して加盟組織を支援し続けている」

インダストリオール執行委員のバレリー・マトフAtomprofspilka会長が述べた。

「インダストリオールは戦時下に初めてウクライナを訪問した国際労働組合だ。ここの加盟組織は財政援助だけでなく、何よりも精神的な支援・連帯に心から感謝している」

                                                       

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メキシコで民主的労働組合が実現可能

2022-05-25

【JCM記事要約】

  • メキシコ全国独立自動車労組(SINTTIA)は、50日に及ぶ交渉を経て、ゼネラル・モーターズと労働協約を締結した。協約には5%の賃上げの他、最初の協約及び2年ごとの団体交渉の両方で労働者との協議が必要と定められており、これは同国の旧労働法で問題となっていた「使用者保護協約」の根絶に役立つ。
  • インダストリオール・アトレ書記長は、2023年5月までに合法化する必要のある現行労働協約がまだ8万本以上もあり、他の組合がSINTTIAの闘いから学び活動を進めることを期待する、と述べた。

 

2022年5月26日:メキシコの2019年労働法改革は、真の労使関係、新しい民主的組合を設立する機会への道を開き、したがって結社の自由の基礎を改善する。メキシコ全国独立自動車労組(SINTTIA)と米自動車大手ゼネラル・モーターズが5月10日に締結した新しい労働協約は、その証拠である――しかし、先は長い。
                                                      

50日に及ぶ交渉を経て、インダストリオール加盟組織SINTTIAは5月10日にGMと労働協約を締結した。

新協約はGMシラオ工場の全労働者を対象とし、より良い労働条件と賃金・経済的利益の大幅な改善を定めている。

主な業績は以下のとおり。

  • 8.5%の直接賃上げ
  • 年4回の生産性ボーナス増額
  • 労働条件のさまざまな側面(昇進、処罰、安全衛生など)への組合の関与
  • 労働時間、交替制、班、生産性を見直すための場
  • 暴力とセクシャル・ハラスメントに対処する手順を実施するための場

マリア・アレハンドラ・モラレス・レイノソSINTTIA書記長は言う。

「私たちは団結して労働条件の変更を達成した。この協定を支持して断固とした態度を取り続けなければならない。生活の質を改善するには結社の自由と民主主義が必要だ」

メキシコの新しい労働法は、労働者は無記名の直接投票によって、どの組合に加入するか、どの指導者が自分たちを代表するかを自由に決定する、と定めている。法改革前、労働者は事実上、自由な選択を認められていなかった。というのも、労働者側ではなく会社側に立つ従業員組合の前で、挙手により投票が行われていたからである。

さらに、労働協約については、最初の協約と2年ごとに開催される団体交渉の両方で、労働者と協議しなければならないことが確認された。それも自由な個別の無記名投票によって行われ、いわゆる「使用者保護協約」の根絶に役立つ。

シラオのGM工場労働者は2021年4月、メキシコ労働組合連盟(CTM)傘下の組合が締結した団体保護協約を合法化する投票の不正行為を立証し、労働社会保障省に訴えた。苦情処理制度が有効に機能した結果、2021年8月に労働者は新たな投票を実施し、CTM傘下組合が締結した旧労働協約を拒否した。協約の拒否は、新組合を選ぶために選挙を行わなければならないことを意味した。

今年2月、SINTTIAは無記名投票で圧勝し、それ以来このGM工場で組合代表資格を得ている。

当時、アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は、これはとてつもなく重要な勝利であり、2019年にメキシコ政府が実施した労働改革は、労働者に自由で公正な選挙で投票する本当の機会を提供しているため、実際に労働者にプラスの効果をもたらし得ることを証明している、と述べた。

そして今月の組合の勝利について、アトレ・ホイエは次のように言う。

「他の組合にもSINTTIAの闘いの成功から学んでほしい。インダストリオールと地域の加盟組織は、同様のイニシアティブを支援する準備ができている。2023年5月までに合法化する必要のある現行労働協約が、まだ8万本以上ある」

 

アルセロール・ミッタル南アフリカで労働裁判所の判決を受けてスト継続

2022-05-25

【JCM記事要約】

  • 事業の継続が必要なサービスだとしてスト禁止命令を発令したアルセロール・ミッタル南アフリカについて、労働裁判所がスト禁止令を却下し、アフリカ全国金属労組(NUMSA)は賃上げと現金給付を求めてストを再開した。法律上、必要不可欠なサービスの一部とみなされる場合はストの中止を認めているが、組合側は同社の行動を労働者分断策ではないかと主張する。
  • インダストリオール・サハラ以南地域事務所のポール所長は、利益を上げている多国籍企業は、労働者への還元が必要であるとし、賃上げを求めるNUMSAとの連帯を改めて強調した。

 

2022年5月25日:労働裁判所がアルセロール・ミッタル南アフリカでスト禁止命令を却下したあと、南アフリカ全国金属労組(NUMSA)は7%の賃上げと現金給付を求めてストを再開した。
                                                      

それ以前にアルセロール・ミッタル南アフリカは、コークスバッテリー、溶鉱炉など、いくつかの鉄鋼生産部門を運転している労働者に、それらが必要不可欠なサービスの一部であると主張して、スト参加を禁止しようとする緊急臨時命令を勝ち取った。

労働者側の主張は、必要不可欠なサービスかどうかの決定を求めてエッセンシャル・サービス委員会で審理されている。ストライキをすることは憲法上の権利だが、労使関係法は、一部のストについて、必要不可欠なサービスの一部とみなされる場合は中止を認めている。

NUMSAセディベング地域担当書記のカベロ・ラモクハタリは言う。

「私たちは法廷で、この問題に関する調査が終わっていないこと、裁判所はエッセンシャル・サービス委員会の未完了の調査に基づいてストを禁止しないことが確立されていることを主張した。アルセロール・ミッタルは日和見主義であり、目標はただスト権を弱めることだった。私たちは、これを労働者分断策と見ている。スト権は神聖な憲法上の権利であり、この権利に干渉してはならない」

3月24日、労働者はバンダービールパークのアルセロール・ミッタル工場に向かって行進し、経営陣に要求書を提出した。この要求書でNUMSAは、同社が国内で68億6000万ランド(4億3600万米ドル)の利益を上げ、全世界で好調な業績を上げていることに言及している。これは、同社が労働者一人一人に一律7%の賃上げと5000ランド(318米ドル)の現金を支払う余裕があることを意味する。同労組によると、労働者の賃金は2020年に5%、2021年にはわずか2%しか上がっていない。

同社の利益について、インダストリオール・グローバルユニオンに加盟しているNUMSAは、要求書で次のように述べている。

「この素晴らしい業績を達成できたのは、アルセロール・ミッタルの労働者が、同社が多額の利益を上げるように特別に努力したからにほかならない。労働者は生産を増やした。この会社がCOVID-19パンデミック下で生き残るだけでなく、成功を収めることもできたのは、彼らの血と汗のおかげだ!」

「私たちは、アルセロール・ミッタルでの賃上げ要求にあたってNUMSAと連帯している。多国籍企業が利益を上げているなら、労働者も利益を得なければならない。労働者がストで要求している賃上げは、高インフレに対抗し、最近輸送費と食品価格の引き上げに見られる生活費上昇の影響を和らげるのに役立つ」とインダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所所長のポール・フランス・ヌデソミンは言う。

          

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インドの鉄鋼工場で組合つぶし

2022-05-20

【JCM記事要約】

  • インドのビラジ・スチール経営がは、同社労働者を組織化しているムンバイ労働組合(MLU)をつぶそうとしている。4月に組合が要求憲章を提出したがそれを経営側は拒否し、組合員である警備員を配置転換させた。また5月には常用労働者が働いていた工場で契約労働者を雇用しようとしており、経営側はそれを阻止しようとした常用労働者を訴えた。
  • インダストリオール南アジア地域事務所・アプールヴァ所長は、同社経営陣による労働組合への攻撃を強く非難し、経営側は問題を解決できるよう組合と関与しなければならない、と主張した。

 

2022年5月20日:ムンバイ労働組合(MLU)は、2年前からビラジ・スチールの労働者を組織化している。同労組は、労働者の権利、労働条件および賃金に関連する問題を日ごろから提起している。それを受けて経営側は、MLU結成以来、機会あるごとに同労組をつぶそうと試みている。
                                                      

SMEFI傘下のMLUは、ビラジ・スチールの7工場で働く従業員合計5000人のうち、3487人を組織化している。

MLUは4月14日に要求憲章を提出したが、経営側は交渉を拒否した。第1工場の警備員52人(MLU組合員)が別の工場に配置転換された。

MLUは今月初め、5月16日のストを発表し、その理由として組合員のハラスメント、給料の削減、基本施設(飲料水、椅子、作業用テーブル、食堂、トイレなど)の不備、経営側に雇われた暴漢による組合員に対する身体的暴行を挙げた。

5月7日、ビラジ・スチール経営陣は、それまで常用労働者が雇用されていた第1工場で契約労働者を雇用しようとした。常用労働者たちは請負業者と契約労働者が職場に立ち入るのを阻止しようとし、警察と組合員に石やレンガを投げ始めた。

使用者は組合代表を警察に訴えた。MLU書記長と70人の代表が逮捕され、まだ警察に拘留されている。

インダストリオール執行委員のサンジャイ・バダブカールSMEFI書記長は言う。

「ビラジ・スチール経営陣は容赦なく同労組をつぶそうとしている。警察と現地経営陣に、組合指導者を攻撃して組織労働者の士気をくじくよう指示している。しかし、組合員は団結し、経営側が突きつける課題に対抗する態勢を整えている」

アプールヴァ・カイワール・インダストリオール南アジア地域事務所所長は言う。

「インダストリオールは、組合代表と労働者への攻撃を強く非難する。組合指導者を即時釈放すべきであり、経営側は組合に関与して問題を解決しなければならない」

写真:インド・ゴアの鉄鋼工場

 

モビリティーの未来――公共の場における選択肢

2022-05-19

【JCM記事要約】

  • 5月17日に開催されたモビリティーの未来に関するウェビナーに40か国100名以上が参加し、UNIグローバルユニオンやドイツFESと共に発表した未来のモビリティーとその労働者への影響ついての研究結果をめぐり議論が行われた。
  • インダストリオールのゲオルグ自動車担当部長は、公正な移行の要求を正確に打ち出す必要があると主張。そのためには労働者との協力が不可欠だとし、労働者には労働組合に加入し団体交渉を行うことで未来が明るくなることを示さなければならない、とした。

 

2022年5月19日:都市環境における未来のモビリティーコンセプトは、現在とは異なったものになる。サービスの共有が増え、個人モビリティーが減少し、人と車とインフラのデジタル接続が進み、無人の車両が増えていく。
                                                      

インダストリオールは5月17日のウェビナーで、国際運輸労連(ITF)、UNIグローバルユニオンならびにドイツFESとともに、未来のモビリティー市場の中心的存在は誰か、どんな変化を予想することができるか、労働者・労働組合にどのような影響が及ぶかに関する研究を発表した。その結果をめぐり、40カ国以上から集まった100人を超える参加者が議論した。

研究者たちは、デジタル化が変化の原動力となり、新世代の消費者が主要なモビリティー機器としての車から離れていくと思われる近未来を提示した。車を中心とする既存の輸送システムは、その未来に適合しない。

そうではなく、モビリティーの未来は公共の場におけるさまざまな交通手段のデジタル・ネットワーク構築にあり、そこでは所有より利用のほうが重要である。

ジェンダー平等は、未来に備えるにあたって重要な側面である。

「現在、都市交通計画は男性によって男性のために設計されている」とITFのクレア・クラークは言う。

モビリティーは女性が日々の生活で子どもを学校まで送ったり、出勤したり、公共サービスを利用したりする際に特に重要な役割を果たしており、それが理由でジェンダー中立性の要求が鍵になる、と彼女は説明した。

公共交通機関の雇用も大いに性別を反映している。世界の公共交通労働者に占める女性の割合は15%未満で、女性は低賃金の不安定な仕事に過度に多く見られる。男性は運転手であることが多く、女性はチケット販売員である。母性権と安全衛生が欠如しており、女性は同僚や乗客からの暴力やハラスメントに悩まされることがしばしばある。

研究の結果、多くの新規雇用が創出され、失われる雇用量を補うことが分かっている。しかし今後は、これまでとは異なる新しい技能が必要とされる。これは重要な問題につながる――自動券売機に職を奪われた女性に新しい技能を習得させたり、技能を向上させたりするにはどうすればよいか。

「未来のモビリティーコンセプトは労働者にとって非常に大きな変化を意味することが分かっており、公正な移行の要求を明確に打ち出す必要がある。今日の労働者が明日の労働者になるようにするために、包括的な訓練計画が必要だ」とゲオルク・ロイテルト・インダストリオール自動車担当部長は言う。

「組合として、移行に際して労働者と協調するようにする必要があり、同時に、この部門の新しい労働者の要求に合わせた提示を行い、組合に入って団体交渉すれば自分たちの未来がはるかに明るくなることをすぐに理解してもらう必要がある」

 

13カ月のキャンペーンで組合が勝利

2022-05-19

【JCM記事要約】

  • ランジェリーブランドへ供給を行うタイの工場が事前通告なしで労働者を解雇した問題に関し、労働組合による13か月間にもおよぶキャンペーンの結果、会社側は労働者へ退職手当や賃金、超過労働手当などを支払うことに同意した。
  • インダストリオールのクローゼン繊維・衣料産業担当部長は、インダストリオールは強力なソーシャル・セーフティーネットによって未払い賃金の問題を解決するよう要求しているとし、今こそ労働組合と世界的ブランドやサプライヤーがグローバルな協定を締結すべき機会だ、と強調した。

 

2022年5月19日:13カ月の持続的キャンペーンの結果、トライアンフ・インターナショナル・タイ労働組合(TITLU)が勝利を収めた。これにより、ブリリアント・アライアンス・タイ・グローバル(BAT)は、不当解雇された労働者1388人にしかるべき金額を支払う。
                                                      

ランジェリーブランドのビクトリアズ・シークレット、トリッド、レーン・ブライアントに供給している工場が、パンデミックと注文不足を理由に突然閉鎖されたため、1388人の労働者は2021年3月に事前通知なしで解雇された。

工場主が支給すべき賃金や超過労働手当、休日手当、退職手当の支払いを拒否したため、女性が大部分を占める労働者は、COVID-19パンデミックの最中に悲惨な状況で放置された。

タイの労働監督官は同社に対し、労働法違反で2億4200万タイ・バーツ(740万米ドル)の支払いを命じた。同社は10年間の分割払いで労働者に支払うと申し出た。これが組合に拒絶されると、会社側は清算手続きに入り、法的義務は果たすと約束した。

それ以上の動きがなかったため、TITLUはタイ繊維労連(TWFT)およびタイ産業労働組合総連合(CILT)とともに何度かデモを行い、同社と政府が労働法に基づく労働者の権利を満たすよう要求した。

インダストリオールは2月14日のバレンタインデーに地域行動デーを組織、オーストラリア、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイの労働組合員が、店舗での行動やソーシャルメディア・キャンペーン、ブランドへの抗議文送付に参加し、労働者への支払いを直ちに行うよう要求した。

交渉の結果、同社は4月末までにランジェリー労働者に合計800万米ドルを支払うことに同意した。この金額には、BATが労働者に支払うべき賃金、超過労働手当、休日手当および退職手当と年利8%が含まれる。

「この大きな勝利は、労働者1388人の退職手当受給権を守るために協力した国際労働運動の成果だ。この成功をもたらしてくれた皆様の尽力に感謝する」とプラシット・プラソップスックCILT会長は言う。

クリスティーナ・ハジャゴス=クローゼン・インダストリオール繊維・衣料産業担当部長は言う。

「労働者とトライアンフ労組指導部、無数の国際連帯行動の不屈の努力により、13カ月に及ぶ闘いの結果、BAT労働者に法定の退職手当を支払うことで合意した」

「こういうわけでインダストリオールは、強力なソーシャル・セーフティーネットによって、繊維・衣料サプライチェーンを悩ませ続けている未払い賃金の問題を解決するよう要求している。今こそ、労働組合と世界的ブランド、サプライヤーが社会的保護に関して強制力のあるグローバルな協定を締結するチャンスだ」

 

ウクライナとの組合連帯

2022-05-17

    

【JCM記事要約】

  • ウクライナでの戦争が続く中、世界中の労働組合がウクライナ労働者や組合との連帯を表明し、支援を行っている。スイスのナショナルセンターは寄付金を送金した他、ドイツの鉄鋼労働者は必要物資を送付し、モルドバの組合は労働組合の保養地に難民センターを設置した。
  • その他にも、ポーランドやハンガリーなどのインダストリオール加盟組織が連帯行動をしている。インダストリオールも、ウクライナの加盟組織に最初の財政援助パッケージを送り届けることができた。

 

2022年5月17日:ウクライナで戦争が続く中、他の国々の労働組合は労働者・組合との連帯を表明している。
                                                      

スイス労働組合総連合(SGB)は先月、「ウクライナの住民、労働者および組合」との連帯メッセージを採択し、即時停戦を要求した。スイスのナショナルセンターSolifondsは、クルィヴィーイ・リーフの組合に2万スイス・フラン(2万米ドル)の寄付を送金し、さらに資金を集めている。

ドイツの鉄鋼労働者は、ウクライナのクルィヴィーイ・リーフでアルセロール・ミッタルの製鋼所を運転する同僚を支援している。独ブレーメンのアルセロール・ミッタル従業員代表委員会は、非常用発電機、モバイルバッテリー、調味料のための資金を集めている。すでに2回、ポーランドとウクライナの国境に届けた。さらに、ベルギー・ヘントの工場組合も緊急必要物資を送った。

現在、男性労働者の大部分が国を防衛しており、女性が工場を動かし続けている。人々は仕事と賃金を必要としているため、アルセロール・ミッタル・クルィヴィーイ・リーフ企業内組合のナタリア・マリニュク会長は、同僚のエレナ・パンチュクおよびタチアナ・プリツカウとともに、鉄鋼工場の溶鉱炉を可能な限り早く再稼働させるべく闘っている。経営陣の一部が出国しただけでなく、クルィヴィーイ・リーフには交戦地帯から逃れてきた難民も大勢いるため、これは困難な仕事である。

ナタリア・マリニュクは言う。

「徴兵されている人々を助けなければならない。すでに労働者の一部が戦死した。皆様の援助と支援は、大変な時期に勇気と希望を与えてくれる。私たちはあきらめない」

モルドバにはウクライナから難民が流入している。モルドバ全国労働組合総連合協議会は、3つの労働組合保養地に難民センターを開設した。

「このサナトリウムは主に母親と子どもを受け入れ、宿泊設備、1日3度の食事、温水を提供している。警備は24時間体制で、必要に応じて助ける準備ができている。驚くほど多くの人たちが結集し、私たちと連携して支援してくれている」と難民センターの1つの所長は言う。

インダストリオール加盟組織のモルドバ共和国化学・エネルギー労連(FSCRE)は、食料や衣服だけでなく暖房のためにも各センターに財政援助を提供している。

ウクライナからの難民イリーナは言う。

「オデッサから来た。そこにたどり着くのに苦労した。国境には長い行列ができていた。ソーシャルネットワークでボランティアのグループを見つけ、このサナトリウムに連れてきてもらった。手とり足とり助けてくれる。みんな寛大で親切だ。この私たちにとって厳しい日々に暖かく支援してくれるモルドバの人たちに、絶えず心から『ありがとう』と言いたい」

ポーランドやハンガリーなどのインダストリオール加盟組織から、連帯行動に関する報告が数多く寄せられている。フランスの8組合は力を合わせて、医療機器、業務用洗濯機、台所用品、毛布2600枚といった必需品を送っている。

インダストリオールと多くの国々の人道支援組織の両方を通して、多数の加盟組織も多額の財政援助を行っている。インダストリオールは、何とかウクライナの加盟組織に最初の財政援助パッケージを送り届けることができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グローバル・ユニオン、投獄されたベラルーシの組合活動家の即時釈放を要求

2022-05-14

2022年5月14日:2022年4月19日、ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)の指導者と活動家20人以上が国家保安委員会によって拘束された。何人かはその後釈放されたが、アリアクサンドル・ヤラシュクBKDP会長・ITUC副会長・ILO理事とシャルヘイ・アンツセビッチBKDP副会長など、少なくとも10人が今なお拘留中である。彼らは政治犯である。
                                                      

彼らはベラルーシ共和国刑法第342条第1部に基づいて嫌疑をかけられており、調査の間、公判前拘置所に移送された。第342条に基づく嫌疑には、社会秩序を著しく乱す行動の準備が含まれており、科せられる可能性がある処罰は逮捕、2〜5年間の自由の制限、最高4年の禁固である。私たちは彼らの即時釈放と、権力を保持するために2020年の選挙で不正を行った正当性のないアレクサンドル・ルカシェンコ政権によるすべての告発の取り下げを要求している。

彼らの逮捕と処遇は、幅広い憤慨と抗議を引き起こしている――労働組合活動に直接関連した政略的事件や、民主主義とその重要な構成要素である独立労働組合主義に対する攻撃が発生した。

合法的な結社の自由の権利の行使を理由とする労働組合指導者の逮捕は、たとえ短期間であっても基本的人権の重大な侵害であり、それはガイ・ライダーILO事務局長が特別公式声明を出し、直接ベラルーシ政府に語りかけたことに表れている。私たちは、来るILO総会とそれに続くILO理事会を利用して、正当性がないベラルーシ政権に対する圧力を強める。

獄中にある仲間の労働組合員とは、弁護士や手紙を通してしか連絡を取ることができない。私たちは彼らを直接訪問する権利を要求しており、その趣旨でベラルーシに連帯代表団を送ろうと努めている。

私たちはグローバルな労働組合として、ベラルーシの労働組合に対する、ひいては世界の労働者・労働組合に対する、この不当で受け入れがたい攻撃について黙っているつもりはない――1人に対する不当な扱いは全員に対する不当な扱いである。

グローバル・ユニオン評議会(CGU)による声明(2022年5月13日)

 

ジェンダーに基づく暴力とハラスメントとの闘いに男性を関与

2022-05-13

【JCM記事要約】

  • インダストリオールは、鉱業・衣料・電子部門の性に基づく暴力とハラスメント(GBVH)に関する詳細な報告書を間もなく発表する。GBVHの根本原因である権限の不平等、差別、被害者たたき、免責の文化は3部門すべてに存在し、組合がこの課題と闘うためには男性組合員や指導者の関与が不可欠であるとしている。
  • インダストリオールのアルメリ・ジェンダー担当部長は、女性労働組合員の証言を記載した本研究は説得力があるものであり、組合の積極的な関与により女性労働者の日常に影響を与えることができると示している、と述べた。

 

2022年5月13日:インダストリオールは、鉱業・衣料・電子部門のジェンダーに基づく暴力とハラスメント(GBVH)に関する詳細な報告書を発表する。この報告書はインダストリオールと加盟組織への勧告を示しており、この闘いで組合が成功を収めるには男性組合員・指導者の関与が不可欠であることを強調している。
                                                      

研究のためにインタビューした100人ほどの女性労働組合員とインダストリオール指導者は、GBVHをなくすためのインダストリオール加盟組織の行動や交渉に対する洞察を提供している。権限の不平等、差別、被害者たたき、免責の文化は3部門すべてに存在し、ジェンダーに基づく暴力とハラスメントの根本原因となっている。

組合が差別や不平等に異議を申し立てて犠牲者を支援すれば、具体的な進展を達成することができる。苦情メカニズムへの組合の関与は、免責との闘いの鍵である。女性労働者との信頼を構築し、組合の議題にGBVHを盛り込むには、組合における女性指導者の役割が決定的に重要である。

女性は男性組合員の関与を求めている。組合運動において男性の行動を変えることに焦点を当てた訓練と意識向上が必要である。

カナダのUSW(鉄鋼労組)は、行動する傍観者訓練を開発した。USWは2021年、男性組合員向けのスポークスパーソン訓練プログラムを通してGBVHに関する「沈黙を破る」ために、カナディアンフットボール選手協会(CFLPA)と提携した。これにより、GBVH根絶に向けて男性が同盟者として活動する方法について、組合員に90分間のプレゼンを行うことができた。

「私たちはいつも男性に、女性のために立ち上がってほしいのではなく、女性と一緒にちょっと立ち上がってほしいと話している。もっと積極的に! 虐待的な男性はごく少数だ。私たちは大多数のまともな男性に、率直に意見を述べ、文化の変革を手伝ってもらおうとしている」とプログラムに参加している組合職場委員は語った。

「この研究は説得力があり、衣料・鉱業・電子部門におけるインダストリオールの活動にとって極めて重要なものになる。インダストリオール加盟組織のこれらすべての女性労働組合員の証言を読めば、彼女たちの激しい闘いについて学べる。この研究は、組合の積極的な関与がどのように女性労働者の日常生活に違いを生じるかを示している。考え方と行動を変える必要があり、組合はこの変化をもたらす主体になるべきだ。女性差別を永続させている固定観念や社会規範と闘わなければならない。使用者と企業がGBVHの防止・対処を怠った場合は責任を負わせるべきだ」とアルメル・セビー・インダストリオール・ジェンダー担当部長は述べた。

 

良質な雇用と水素への公正な移行

2022-05-12

【JCM記事要約】

  • 国際労働組合総連合(ITUC)とLOノルウェー、インダストリオールは、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として最初の水素技術ワークショップを開催した。会合ではブラジルや日本の労働組合の専門家が、労働者を優先する水素エネルギーシステムの移行経路と開発展望は厳しいが不可能ではない、と報告をした。
  • イニシアティブの一環として、二酸化炭素回収・貯留、洋上風力、バッテリー、太陽光・光電池をテーマとしたワークショップを今年度にあと3回開催される予定である。

 

2022年5月12日:国際労働組合総連合(ITUC)とLOノルウェー、インダストリオールは5月5日、公正な移行とエネルギー部門イニシアティブの一環として最初の水素技術ワークショップを開催した。このイニシアティブは、世界中の組合が、エネルギー転換技術とそれに関連する雇用、技能、市場、投資、排出について情報を交換するための基盤となる。
                                                      

「雇用に関して、収入に関して、石油・ガス産業に代わることができる産業は1つもない。雇用がどこに移行していくか考えるにあたっては、多様な技術を考慮しなければならない」とノルウェー労働組合総連合(LOノルウェー)ビジネス・産業政策責任者のケニス・サンドモは述べた。

大局的に見れば、ノルウェーの石油・ガス産業は直接・間接に20万人以上の労働者を雇用している、とサンドモは説明した。水素部門はノルウェーでおよそ3万5000人の雇用を創出すると予測されているため、水素技術は労働組合だけの重点分野であってはならない。

水素技術は、重量物輸送といったエネルギー集約型産業・部門の長期的な脱炭素の鍵である。雇用が今どこにあり、どこで生まれる可能性があるかをもっとよく見るために、このワークショップでは石油・ガスと水素のバリューチェーンを調べた。両バリューチェーンを生産、処理、流通、最終利用(上流、中流、下流)に分解することによって、雇用がどこにあるか、水素バリューチェーンが移行していく中で労働者の未来はどこにあるかがより明確になった。

ブラジル、米国、ドイツ、スペイン、日本の労働組合の専門家が、労働者を優先する水素エネルギーシステムの移行経路と開発展望は厳しいが、不可能ではないことを明らかにした。不確実性、視点の違い、時には対立する多国籍企業・政府・労働者の利害を踏まえて、組合は、労働者が最初から移行の一部となるようにしなければならない。

ドイツ政府は、世界中で強力なエネルギーパートナーシップを確立するために、2020年に水素戦略を考案した。

「しかし、労働者の視点を取り入れなければ、討議が技術的詳細に支配されてしまう」とDGBのパトリシア・クラフトは述べた。

DGBは労働組合員、従業員代表委員会メンバー、バリューチェーン専門家を関与させ、この主題に関する独自の文献を作成している。20人の専門家にインタビューし、ポジションペーパー「労働組合は水素経済を要求――H2に対応する労働力に向けて」を執筆した。

「ドイツでは水素用に大規模なインフラを新設しなければならない。ガス供給基盤を転用する必要がある。輸送問題を解決する必要があり、世界中で水素を輸送するのは簡単ではない」とクラフトは述べた。他の組合専門家も同意し、大規模な水素輸送の技術的課題の商業的解決策はまだないと指摘した。

スペインのUGTとCCOOの傘下組合は、精製所の水素施設への転換について話した。レプソル・グループは、特に海上輸送、航空輸送、重量品輸送のために、5つの精製所を小規模消費者向けの水素供給・流通・産出の拠点に転用するプロジェクトを主導している。

「我が国の石油産業には約3万人の労働者がおり、流通労働者も含めれば7万人以上になる。水素流通がどれくらいの雇用を提供するかは分からない。石油化学部門で拠点が構築されている場所には、質の高い実質的な雇用がある。これらの複合施設の外部での水素生産は賃金が低く、権利が不十分で、交渉力も弱い。これは組合の懸念事項だ」とUGTのオーギュスタン・ペレスは言う。

日本では、2050年までにカーボンニュートラルを達成するために、政府がグリーン成長戦略を策定している。この戦略では14の成長部門のうち11部門が水素関連である。

パンデミックとウクライナでの戦争で日本の水素戦略は減速しているが、主な目標の1つは依然、水素を入手しやすくして日本で水素ネットワークを拡大することである。水素技術の成長を促進するために、エネルギー企業による多額の投資も予想される。

米国では、インフラ投資・雇用法により、最大4つの水素ハブに連邦資金が供給される。ロサンゼルス/オレンジ郡建築・建設労働組合協議会のクリス・ハナンが、カリフォルニアの組合は国家の気候目標達成に専念していると説明した。組合は、現在のエネルギー部門の熟練工の未来は水素にあると考えており、南カリフォルニアでグリーン水素ハブ向けの連邦資金を確保するための連合を先導している。

「水素は代わりの仕事であり、引き続き高度熟練建設労働者を利用して施設を建設・維持する産業プロセスだ」とハナンは述べた。

全米鉄鋼労組のアンナ・フェンドレイが、自身も大きな国家的機会があると考えており、これはアメリカの精製所労働者に新規雇用を提供する可能性があると説明した。

ブラジルCUTのダニエル・ガイオは次のように説明する。

「ブラジルは国家水素計画を立てており、2002年から2005年にかけて水素技術の先駆者だった。我が国は気候変動対策の重要なプレーヤーだったが、大きく後退してしまった」

よりクリーンな技術への投資に関心が集まっているため、ブラジルの組合はトレンドが変わると楽観視しているが、実際に変わるかどうかは次の選挙に大きく左右される。

参加者は、組合は変化に備える必要があり、速やかに適応しなければならないと明言した。エネルギー集約型産業の労働者にとって公正な移行を確保し、労働権と安全衛生、質の高い実質的な雇用を保証することが、組合の優先課題である。

組合はグローバルな状況に目を向け、多国籍企業がどこに投資しているか調べなければならない。例えばドイツ企業シーメンスは、国内で水素を生産するためにイラク政府と協定を結んだ。インダストリオールはシーメンスとグローバル枠組み協定を締結しており、この協定によって、組合に移行プロセスへの労働者参加を要求する影響力を与えることができる。

エネルギー部門の公正な移行イニシアティブの一環として、年内にあと3回、エネルギー転換技術に関するワークショップが開かれる。

  • 二酸化炭素回収・貯留
  • 洋上風力
  • バッテリー、太陽光、光電池

 

スリランカの組合、平和と民主主義を求めて闘争

2022-05-11

【JCM記事要約】

  • スリランカは政治経済危機に見舞われており、インフレが悪化し、対外債務のデフォルト寸前まで陥っている。このような状況にも関わらず、政府は何の解決策も提示しておらず、労働組合は生活に必要な燃料や必需品を2020年1月時点の価格で供給できる計画を策定し、外国為替危機の解決策を見つけるよう政府に要求している
  • インダストリオール・アトレ書記長は、現在の危機が拡大することを防ぐためには平和と民主主義の回復が必要だとし、同国政府に対し労働組合の要求を考慮し早急に対処するよう求める、とした。

 

2022年5月11日:インダストリオール・グローバルユニオンはスリランカ政府に対し、現在の危機を解決し得る方策として、労働組合の提案を実施するよう求めている。この国が大きな政治経済危機に見舞われている中で、インダストリオールは、平和と民主主義を回復するための闘いにおいて加盟組織と連帯している。
                                                      

スリランカ人は燃料や調理用ガス、食品、薬品(大多数が輸入品)を買うために、何カ月も並んで待っている。硬貨不足も製造業の原料輸入を妨げており、インフレが悪化して3月に18.7%に達した。スリランカは対外債務のデフォルト寸前で、支払いが停止している。

政府は、これまでのところ、1カ月以上議会前で抗議している人々に何の解決策も提示していない。人々は政権の辞職を要求しており、これは非常に大きな政治危機をもたらして事態を悪化させている。今週、M・ラージャパクサ首相が辞任した。

月曜日に緊迫した状況が新たな展開を見せ、政府支持者(その多くが鉄棒で武装)が反政府デモに突撃し、デモ参加者を攻撃してテントに火をつけた。警察は放水砲と催涙ガスを使用し、それに怒った暴徒が何軒かの議員住宅に放火した。

全国で夜間外出禁止令が敷かれた。政府は特別官報通知を出し、エッセンシャル・サービス命令を宣言、労働組合の活動を禁止するために一部の産業をエッセンシャル・サービスに指定した。

インダストリオールに加盟している自由貿易地区・一般サービス従業員組合のアントン・マーカス書記長は言う。

「政情安定を達成するために人々を守るための組織間で幅広い同盟を結成する必要がある。政治的に安定していなければ経済危機に取り組むことはできない」

インダストリオール加盟組織を含む労働組合は、議会に代表を送っているすべての政党で構成される議会特別委員会を設置し、必要な燃料、LPガス、灯油その他の必需品を2020年1月時点の価格で国民に供給する計画を練り上げるとともに、外国為替危機の解決策を見つけるよう要求している。利用可能な資金を再評価し、国民のニーズを満たすために議会に新しい福祉予算を提出すべきである。

有機肥料の導入にあたっては明確に規定されたプログラムを策定すべきであり、補助金付き化学肥料を農家に供給する新しいプログラムを実施すべきである。総選挙の日程を決め、議会選挙とともに地方議会選挙を行うべきである。その間、暫定政権を設立するという案は、弁護士会にも支持されている。

アトレ・ホイエ・インダストリオール書記長は言う。

「インダストリオールは政府に対し、労働組合の正当な要求を考慮して緊急に実施するよう強く促している。危機がこれ以上拡大するのを防ぐために、スリランカで平和と民主主義を回復することが絶対に必要だ」