広報ニュース

第170号インダストリオール・ウェブサイトニュース

フィリピンの労働者が賃上げを要求

2024-03-12

2024年3月12日:インダストリオールのフィリピン加盟組合の大半が加盟する全フィリピン労働組合(APTU)は、議会に対し2023年賃金回復法の可決を要求している。これは、国内民間部門の全労働者の日給をPHP150(2.7米ドル)引き上げるものである。


賃金回復法は、インフレの高進と実質賃金の減少に対処するため、2023年にTUCP党リスト選出の議員レイモンド・メンドーサによって提出された。

中央労働組織によると、地域賃金委員会は、生産性と国内総生産の上昇に対応した労働者の賃上げを支援する効果がないという。賃上げは労働者の購買力を強化し、飢餓を減らすだろう。

2月29日、法案が提出された際、APTU組合員20人が議会外で集会を開いた。今後、議会はさらに3回の公聴会を開き、両院協議委員会を設置して法案を取りまとめ、金額を決定した後、フィリピン大統領が法案を承認するか拒否権を発動すると見られている。

国内の労働組合は、フィリピン人労働者の賃金引き上げを引き続き主張する。合同労組(ALU)は、苦境にあるフィリピン国民にとって何が重要なのかに焦点を当てた国民的議論を行う現在の動きを歓迎する。

「労働者の手取り賃金は、少なくとも家族が最低限必要とする基本的な食糧と非食品を購入するのに十分でなければならない。フィリピンの1日の最低賃金は、依然として貧困基準を下回っている。労働者は賃金のわずかな差に慣らされている。私たちの基本的労働権の擁護活動は、議会、賃金委員会、産業、企業で継続し ている」ALU全国副会長のエヴァ・アルコスは言う。

「全面的な賃上げの実現は、経済的な問題であると同時に社会正義の問題でもある。それによって労働者は経済システムの不公平に何とか対処し、政治的・経済的権利を主張することができる」フィリピン労働一般労組(PTGWO)のダリウス・ゲレロ全国書記は言う。

フィリピンの労働者は新型コロナのパンデミック後の物価高騰や地政学的緊張の影響で大きな打撃を受けているため、インダストリオールはこの立法イニシアティブを支持している。

インダストリオール東南アジア地域事務所長ラモン・セルテザは言う:

「最低賃金だけでなく生活賃金の達成に向けた国内行動計画を策定する加盟組合を引き続き支援する。」

 

ロシア連邦によるインダストリオール・グローバル・ユニオンの「望ましくない組織」指定発表に関する声明

2024-03-09

2024年3月9日:我々は、ロシア連邦検事総長がインダストリオール・グローバル・ユニオンを「望ましくない組織」であると宣言したという情報を、民間情報源および公共メディアから得た。この発表の理由は公表されていない。


インダストリオール・グローバル・ユニオンはこの決定に断固として反論する。これは、ILO中核的労働条約を含む基本的人権と労働組合の権利の遵守に反するものである。

インダストリオール・グローバル・ユニオンは、130カ国の鉱業・エネルギー・製造業部門で働く5,000万人の労働者を代表し、世界中の労働者を組織化し、その集団的な力を高め、企業や政府に対して労働者の権利と共通の利益を促進・擁護することを目的としている。

インダストリオール・グローバル・ユニオンは、基本的労働組合権と人権の尊重を促進するために闘う。インダストリオール・グローバル・ユニオンは、世界中の自由、平和、民主主義、社会正義のために立ち上がる。

1990 年代初頭から、インダストリオールとその創設組織であるIMF、ICEM、ITGLWFは、環境に 配慮しつつ、すべての労働者に公正な富の分配、良好な労働条件、雇用、安全保障を提供す る民主的で公平かつ持続可能な経済構造を求めて、ロシアの労働組合と緊密に協力し てきた。

インダストリオール・グローバル・ユニオンは、ロシア連邦が、この困難な国際的局面において、ロシアの労働者を国際的な 代表から置き去りにしている、理解しがたい不当な決定を撤回することを期待する。

 

バングラデシュの船舶解撤労組は労働者支援の要

2024-03-07

2024年3月7日:船舶解撤は世界で最も危険な仕事の1つとみなされている。船舶解撤場で雇われている労働者は、貧困賃金を得るために不安定な労働条件で働くことを強いられている。安全装置もなく、仕事のための適切な訓練も受けないまま船を切断する作業は、労働者の命に極めて大きな危険をもたらす。


バングラデシュの船舶解撤場の状況も、まさに同じである。昨年、船舶解撤場で30件を超える事故があり、少なくとも5人の労働者が死亡、その他数人が負傷した。インダストリオールと加盟組織は、バングラデシュの船舶解撤場を労働者にとってより安全にするために絶えず取り組んでいる。仕事が季節要因に左右され、常用労働者の概念が存在しないため、この部門の労働者の組織化は骨の折れる作業である。

さらに、使用者は組織労働者が自分たちの権利を守ることを望んでいないため、解撤場での組織化努力を妨害し、しばしば組合つぶし活動を行う。これらの課題にもかかわらず、インダストリオール加盟組織は、労働者を組織化して安全な職場で働く権利を主張し続けている。

過去3年間に、加盟組織は何件かの事故を記録・報告し、職場で死傷事故が発生した場合に使用者に労働者とその家族への補償金を支払わせることができた。バングラデシュ金属労働者連盟(BMF)は、負傷した労働者1人のために5万バングラデシュ・タカ(450米ドル)の補償を獲得することに成功し、別の労働者1人の治療費2万バングラデシュ・タカ(180米ドル)を確保した。

バングラデシュ金属・化学・衣料・縫製労連(BMCGTWF)は、SNコーポレーションのポンプ操縦員が10万バングラデシュ・タカ(900米ドル)の補償を受けられるよう支援した。同労連はモタラブ・スチールで死亡した現場主任の遺族も援助し、63万2,000バングラデシュ・タカ(5,700米ドル)の補償金を支払わせた。

組合は、労働裁判所でも労働者の権利侵害を積極的に訴えている。BMCGTWFは、クリスタル・シッパーズ社の労働者解雇に関して、2件の新たな訴訟を起こした。BMFも、ジャナタ・スチールで冤罪が着せられたとき、労働組合員を支持する命令の獲得に成功した。

BMFとBMCGTWFは2023年、労働者78人の復職確保に成功し、失業した何人かの労働者の退職給付と祝祭手当を獲得した。組合は、97人の労働者が使用者から解雇手当を受け取るのも支援した。

昨年、バングラデシュ政府の香港条約批准を求めるインダストリオールのキャンペーン努力が実を結び、バングラデシュが条約を批准した。香港条約は来年発効することになっている。この条約は解撤場で労働者の安全を確保する重要な手段である。

ウォルトン・パントランド・インダストリオール造船・船舶解撤担当部長は言う。

「船舶解撤は、組合が組織化を行ううえで困難かつ危険な環境にある。バングラデシュの加盟組織は、不公正との闘い、復職の獲得、報酬の要求によって労働者のニーズに応えている。次の措置は、共同で組織化し、解撤場所有者、使用者団体および政府から承認を勝ち取ることだ」

 

#NoExcuse(弁解の余地なし)

2024-03-07

2024年3月7日:2023年11月、インダストリオール・グローバル・ユニオンの執行委員会は、ジェンダーに基づく暴力とハラスメント(GBVH)、女性差別、性差別に関する新たな方針を承認した。このイニシアティブは、2021年のインダストリオール大会で表明された、GBVHや、組織運営および関連活動内での人権・女性の権利侵害に対するゼロ・トレランスの姿勢を堅持するというコミットメントを反映したものである。


この方針は、GBVH、女性蔑視、性差別を根絶することの重要性を強調し、インダストリオールとその加盟組合内で尊厳と尊重の文化を培うことを目的としている。この方針は、国際労働機関(ILO)条約第 190 号の規定に沿って、これらの問題についての教育・啓発に重点を置いている。また、インダストリオールの活動に関連して発生したセクシュアル・ハラスメント、女性差別、性差別に関する苦情に対処するための明確な手続きも定めている。

「3月8日の国際女性デー(IWD)に、インダストリオールはGBVH、女性蔑視、性差別は容認できないという姿勢を強化する。私たちの “NO EXCUSE (弁解の余地なし)”と題するキャンペーンは、加盟組合の間でこの方針を促進し、意識向上と予防への私たちの取り組みを強調することを目的としている。」

とアトレ・ホイエ・インダストリ・オール書記長は述べた。

インダストリオールは、啓発を優先し、GBVH方針・手続きを採択する必要のある加盟組合を支援するため、ガイドラインとテンプレートを策定している。この方針に基づき、加盟組合がGBVH、女性差別、性差別を防止できるようにするための一連の勧告を作成した。

ILO C190 で述べられているように、包摂的、統合的、ジェンダー対応的なアプローチによってのみ、 ジェンダーの固定観念、多様で交錯する形態の差別、ジェンダーに基づく不平等な力関係など、根本的な 原因とリスク要因に取り組むことができ、仕事の世界における GBVH を終わらせることができる。

ILOによると、男女間の賃金格差は依然として存在し、職種によってはさらに拡大している。進展があるとはいえ、さまざまな部門、特に高い技能レベルを必要とする職業やSTEM 分野における根強い差別や男女間賃金格差などの課題が残っている。インダストリオールでは、賃金平等に関する資料「賃金平等ツールキット」を英語、フランス語、スペイン語、トルコ語で発行し、これらの問題に取り組んでおり、サプライチェーンにおけるGBVHを防止するために人権デュー・ディリジェンス(HRDD)を活用するためのツールキットを発表する予定である。

インダストリオールはまた、男女平等に対する人工知能(AI)の潜在的な影響や、女性がデジタルやAIのスキルを習得する必要性など、女性にとっての将来の仕事の状況にも焦点を当てている。

OECDによると、デジタル・AIスキルの開発において、女性は依然として男性に遅れをとっている。OECD加盟国では、AI開発に不可欠なスキルであるプログラミングができる16~24歳の若い男性は女性の2倍以上である。

武力紛争や過激派の台頭によって女性が不当に影響を受けている現在の地政学的情勢を踏まえ、インダストリオールは、特に3月8日にジェンダー平等のために動員することの重要性を強調する。インダストリオールは加盟組合に対し、平等、多様性、包摂を積極的に推進し、これらの価値が将来にとって極めて重要であることを認識するよう求める。

この平等のための闘いは、私たちの組織にとって日々の闘いであり続けなければならない。私たちは平等、多様性、包摂に向けた変革の主体でなければならない。私たちの組織の将来はそれにかかっている。

3月8日にあなたの組合がどういった活動をしているか知らせてほしい。インダストリオール・ウーマンのフェイスブック・グループに参加し、行動を報告したり、写真を press@industriall-union.org に送ることもできる。ハッシュタグ「#NoExcuse」と「#ALLWomen」を使用していただきたい。

 

タイの組合、ILO条約批准に向けたキャンペーンを推進

2024-03-07

2024年3月7日:タイの労働組合と労働者団体で構成されるILO8798条約推進ネットワークは、ILO87号条約と98号条約の批准は、タイの4,000万人の労働力にとってディーセント・ワークの実現に不可欠であると述べている。


バンコクの労働省事務所で、ILO第87号条約と第98号条約の批准を要求する書簡をタイのフィファット・ラチャキットプラカーン労働大臣に提出する一方、同ネットワークのコーディネーターでタイ産業労働総同盟(CILT)のプラシット・プラソプスク会長は、同条約を批准することで、公正な労使関係システムを構築し、タイの労働者により良い生活の質を提供できると述べた:

「国際労働基準の採択と労働権の保護によって、タイの国際的なイメージは向上する。これは間違いなくタイの市場競争力を高め、より多くの投資を誘致し、経済成長を促進する」と述べた。

同日、CILTとタイ石油公社労働組合(PTTLU)の組合員20人も国会で労働委員会のサリットポン・クルアン委員長に書簡を提出し、政府にこれらのILO条約の批准を早めるよう求めた。

2023年10月、タイ政府は三者委員会と2つの作業部会を設置し、第87号条約と第98号条約の批准の実現可能性とタイの労働法との整合性を調査した。実現可能性調査は1年以内に終了する予定である。

しかし、タイ工業連盟は、結社の自由がストライキの増加につながるとして、2つの条約の批准に強く反対した。内務省は、移民労働者が労働組合を結成することを許可されれば、経済を悪化させる安全保障上の脅威になりかねないと懸念している。

タイ国営企業労働者連盟(SEWFOT)およびPTTLUの会長・アプソン・クリサナスミット氏は次のように述べた。

「三者構成委員会のメンバーとして、私は条約の批准及び政府と議会の条約批准の障害となっている労働法の改正について引き続き 利害関係者に働きかけていく。私は、批准後に国が受ける利益について理解を深めるよう働きかけることを約束する。」

インダストリオールのラモン・セルテザ東南アジア地域事務所長は次のように述べた:「インダストリオールは、タイの加盟組合が、タイの労働者が望んでいるこれら2つの条約の批准に向けた社会対話に有意義に関与できるよう、支援を拡大する。」

今後、ILO8798条約推進ネットワークは、2つの条約に対する労働者や社会の理解を深めるため、より多くのコミュニケーションやメディアコンテンツを作成する予定である。

26の労働組合と労働者団体で構成されるこのネットワークは、8月のワークショップで結成された。

 

健全な労使関係には法的強制力が必要

2024-03-02

2024 年 3 月 2 日:2 月 21~22 日にパリで開催された衣料・履物セクターにおけるデュー・ディリジェンスに関する OECD フォーラムでは、政府、企業、労働組合、市民社会、学識経験者が一堂に会し、グローバルな衣料・履物のサプライチェーンにおけるデュー・ディリジェンスの責任ある実施に関する課題とリスク、そして学習と解決策について議論した。


インダストリオールとその TGSL 加盟組合の多くが出席し、グローバル・サプライチェーンにおける企業の自主規制を超えるためのツールとして、拘束力の ある協定の重要性を強く訴えた。 自主的な社会監査は、労働者の権利保護と多国籍バイヤー・ブランドとその投資家のリスク削減の両面で失敗であることが示されている。

「拘束力のある労使協定とデュー・ディリジェンスにおける役割」と題されたフォーラムのオープニング・セッションで、インダストリオールのアトレ・ホイエ書記長は、拘束力のある協定が労使関係において不可欠な役割を果たしていると強調した:

「法的強制力がなければ労使関係は成立しない。これらの協定がなければ、労働者と使用者は異なる惑星にいることになる。使用者はあらゆる経済的な力を握っており、チェックを受けなければそれを行使するだろう。法的規制と拘束力のある協定がなければ、労働者は依然として奴隷のままだ。」

パネルディスカッションでは、拘束力のある協定がいかにデュー・ディリジェンスの重要なツールとなりうるか、また、親労働者規範と結社の自由をいかに促進するか、そして、協力的な政府と責任あるブランドの存在が不可欠であることを取り上げた。

「インダストリオールでは、ブランドをテーブルに着かせ、法的拘束力のある協定を締結してきた。バングラデシュ・アコードは、現在では繊維・衣料部門の安全衛生に関する国際協定と呼ばれ、労働者の運命を変えた。この協定によって、バングラデシュの衣料・繊維産業は、ラナ・プラザ崩壊以前に比べて改善された。」とアトレ書記長は語った。

より多くのブランドがこれらの協定に署名することが不可欠だ。より多くの国が協定に参加することで、より多くの国の労働組合が問題を解決することができる。これらの協約は、労働者が最良の待遇を受けられるようにする ために常に必要である。

グローバル枠組み協定は、サプライチェーンに沿った労働者の 条件を改善するツールとして強調された。現在までに、インダストリオールはグローバル・ブランドや 小売業者と拘束力のある協定を 6 本締結しており、今後これらの協約の再交渉が 行われる際には、拘束力のある仲裁を含む紛争解決メカニズムを盛り込むよう 多国籍企業に圧力をかけるだろう。

OECD労使関係円卓会議では、衣料・履物のサプライチェーン全体にわたって、企業(ブランド、製造業者)と労働者を代表する労働組合が一堂に会し、労働組合との積極的な関与の重要性を探った。円卓会議では、労働組合、ブランド、製造業者間の体制の構築、定期的な会議の開催(場合によっては生産国での開催)、ガイダンス文書の多言語版発行などが主な議題として議論された。今後、OCEDはこれらの項目を調査し、参加者に報告する予定である。

中東・北アフリカ(MENA)およびトルコにおける責任あるサプライチェーンに関するサイドセッションでは、OECDの衣料・履物セクターにおける能力構築の立ち上げに焦点が当てられた。この 3 カ年プログラムは 2023年12月に開始され、各国政府がいかにして責任ある企業行動(RBC) を可能にする政策環境を構築し、RBC のためのナショナル・コンタクト・ポイント(NCP) を強化し、デュー・ディリジェンスを実施するための企業の理解と能力を高めることができるかに 焦点を当てたものである。

インダストリオールのMENA地域 事務所長のアーメド・カメルは、このパネルに参加した:

「私たちは MENA 加盟組合とともに、企業レベル、サプライチェーンレベル、業界レベル で、社会的対話を実施するための国際的ツールを使用するために、ブランドやサプ ライヤーとともに NCP を開始した。私たちは、GFAやアコード、ACT協定のような新しいツールを各地域に導入し、各地域がこれらを利用して実施できるようにしようとしている。前進するためには、関係者のコミットメントが鍵となる。」

このフォーラムから得られた主な成果としては、法的・非法的側面を持つデュー・ディリジェンスへのより包括的なアプローチ、気候変動の影響を受けるグループや社会経済的に低い労働者を含む弱者グループへのより直接的な支援、ファッション業界内の既存の格差を認識することによる業界の不均衡への対応などが挙げられ、参加者は、全体的な公平性と平等性を確保するために、公平な競争条件を確保する必要性を強調した。

 

デュー・ディリジェンスに関するEU法:製造業労働者は不履行を認めない

2024-02-29

2024年2月29日:インダストリオール・ヨーロッパとインダストリオール・グローバル・ユニオンは、140カ国・5,000万人の労働者を代表し、いくつかのEU加盟国が2023年12月に自ら達成した政治的合意を守らず、昨日デュー・ディリジェンスに関する欧州法の採択を断念したことによる受け入れがたい政治的後退を糾弾する。


欧州議会が、環境基準、人権、労働者、労働組合の権利の尊重をグローバル・サプライチェーンのすべてに義務付ける、史上初のデュー・ディリジェンスに関する国境を越えた法律の起草プロセスを開始して以来、激しい議論と政治的妥協が繰り返され、3年が経過した。グローバル・サウスの製造業労働者から、ヨーロッパの企業とNGOの広範な連合に至るまで、何百万もの人々が「もうたくさんだ」と声を上げた。企業のDNAに社会的責任経営を根付かせることに失敗した、行動規範や憲章、「遵守か説明か」のメカニズムによる数十年にわたるソフト・ロー規制はもうたくさんだ。

2023年12月14日早朝、EUの3機関すべてが、EU議会と理事会での最終的な正式投票を含むわずかな手続きを経て日の目を見ることになるとされるEU法について、政治的合意に達したとき、こうした何百万もの声が届いたと感じた。インダストリオール・ヨーロッパとインダストリオール・グローバル・ユニオンはこの ニュースを歓迎し、社会的対話と労働組合の全面的な関与を通じて、企業にデュー・ディリジェ ンスを義務付けることを改めて約束した。

昨日の理事会採決でいくつかの加盟国が立場を翻し、最終的にEUデュー・ディリジェンス法の正式採用を阻止したというニュースは衝撃的だった。EU選挙が間近に迫る中、ドイツ、イタリア、フランス、スウェーデン、フィンランド、その他疑念を抱いている加盟国のEU政治指導者たちが協議を再開し公約の遵守に合意するためには、あと2週間しか残されていない。

インダストリ・グローバル・ユニオンのアトレ・ホイエ書記長は、次のように述べた:

「欧州指令がこれほどまでに貿易の世界を変える可能性を持ったことはめったにない。インダストリオール・グローバル・ユニオンは、EUが長年の懸案であった妥協案を守ることができなかったことを誠に遺憾に思う。私たちは各機関に対し、HRDD指令が軌道に乗るよう懸命に努力し、最終的に企業が労働組合の基本的権利に対処する行き当たりばったりの方法を克服する真剣な試みを行えるようにすることを求める」

インダストリオール・ヨーロッパのジュディス・カートン・ダーリング書記長は次のように述べた:

「企業が環境の搾取や、自社および/または世界中のサプライヤーの労働者の基本的権利を背景に利益を上げることができる時代は終わらせなければならない!」

「インダストリオール・ヨーロッパは、民主的で透明性のある包摂的な意思決定プロセスを通じて、質の高い雇用と社会的進歩を実現する社会的欧州連合を常に強く支持してきた。我々は、EUの政治協定が、密室で行われている反対交渉や日和見主義的な駆け引きによって、いとも簡単に危険にさらされることを受け入れない。」

「私たちは、EUの政治指導者たちが自らの合意を守り、デュー・ディリジェンス指令を今すぐ採択するよう強く求める。」

 

香港条約―何が必要か?

2024-02-28

2024年2月28日:香港条約は、労働者の人権と環境管理へのとてつもなく重要な一歩である。しかし、船舶解撤産業に改革をもたらすには十分ではなく、そのためには組合による持続的な注意と行動が必要になる。


安全政策

船舶リサイクル施設計画は、全労働者を対象とする包括的な安全衛生訓練プログラムと、安全管理者の設置、医学的監視を要求している。しかし、他の部門で長年にわたって苦い経験をしてきたことから、労働組合は、いかに善意から出たものであろうと、使用者が管理する安全プログラムでは不十分であることを学んだ。解撤場は商業的圧力を受けているため、使用者任せにすると利害の衝突が生じる。合同安全衛生委員会は最善の解決策である。

問うべき質問:

  1. 誰が安全に関する決定を下しているか?
  2. 安全に関して誰が信頼されているか?
  3. 誰が権限を持っているか?

労働者は矛盾する指示を受け、安全管理者が課す安全手順と、仕事を早くやり遂げるための現場主任による命令が相反することがあるかもしれない。これは混乱をもたらし、事故を招く恐れがある。労働者が、使用者ではなく組合代表による安全指導を信頼し、それに従う傾向も強くなっているようである。

職場で保障されなければならない基本的な安全権が3つある。

  • 安全衛生問題について知る権利
  • 安全衛生に影響を及ぼす決定に参加する権利
  • 危険な作業を拒否する権利(ILO第155号条約に規定)

法律の不備

インド、パキスタン、バングラデシュは、船舶リサイクルを対象とする新しい法律を完全に実施できない恐れがある。この地域では懸念の理由がいくつかある。

仕事の世界を対象とする10本の基本的なILO条約がある。船舶解撤にとって3本が特に重要である。

  • 87号条約――結社の自由および団結権保護条約
  • 98号条約――団結権および団体交渉権条約
  • 155号条約――職業上の安全および健康条約

インドは上記3本の条約を1つも批准していない。パキスタンとバングラデシュは第87号条約と第98号条約を批准しているが、第155号条約は批准していない。しかし、これらの国々は、たとえ条約を批准して国内労働法に導入していても、法執行能力の欠如や、有力な使用者に異議を唱える意欲の不足により、条約を支持していないことが多い。

ILOには、ILO総会で条約不支持の事例を検討する基準適用委員会(CAS)というプロセスがある。インダストリオールとUNI、ITUCは、2017年に結社の自由の侵害でバングラデシュをCASに提訴した。その中には、労働組合指導者・活動家の独断的な逮捕や拘留、拘留中の死の脅迫や身体的虐待、虚偽の刑事告発、監視、組合活動に対する威嚇や干渉、平和的な抗議後の衣料工場による労働者の大量解雇が含まれる。

この提訴は衣料産業に焦点を当てていたが、バングラデシュ政府の組合に対する態度について憂慮すべき洞察を与えている。さらに2019年、いくつかの労働者組織が第81号、第87および第98号条約の不遵守を理由に、第26条に基づいて苦情を申し立てた。

この苦情の結果、2021年7月にILOが行動ロードマップを発表し、状況を改善するためにバングラデシュ政府が講じる必要のある措置を詳述した。船舶解撤労働者にとって特に重要になる措置は次の3つである。

  1. 労働組合登録の簡素化。これまで、バングラデシュでの労働組合登録は非常に複雑であり、船舶解撤労働者は部門別組合を登録することができず、多数の解撤場別組合を結成しなければならなかった。
  2. 労働監督と法執行の改善。現在、使用者が法律に違反した場合に労働者が救済を得る機会はほとんどない。
  3. 組合に対する差別と労働者に対する暴力への対処。これは使用者や警察官、警備員への訓練提供によって行われる。

パキスタンも、各州に決定権が委譲されている連邦制国家であることと、労働監督が不十分であることが原因で、執行の面で懸念がある国である。2024年1月にガダニ造船所で2人の労働者が死亡したあと、加盟組織のNTUFは、解撤場所有者と政府、警察が共謀して事故を隠蔽したと主張した。

アスベスト問題

香港条約は適切なアスベスト処分計画を義務づけており、一部の解撤場はこの危険物質を処理するために質の高い施設の建設に着手している。しかし、インド、バングラデシュおよびパキスタンはアスベストを禁止しておらず、ロッテルダム条約の禁止物質リストにクリソタイル・アスベストを含めることを妨害する役目を果たした。これらの国々では、アスベストはまだ商業的価値があり、建築資材に使われている。

機械化と雇用喪失

労働者にとっての懸念は、香港条約の要件を満たすために解撤場が機能を高める中で、解撤場所有者が機械化を導入し、必要な労働者数が少なくなることである。企業と各国政府が下流エネルギー開発、例えばグリーンスチール製造工場やリサイクルセンターに投資すれば、船舶解撤場で失われる雇用を他の場所で創出される雇用で埋め合わせることができるだろう。

川下の労働者

もう1つの懸念は、香港条約が川下の労働者(解撤場の外でくず鉄を取り扱う労働者や、船舶廃棄物を処理する女性など)に関する条項を設けていないことである。

 

香港条約批准―次は何か?

2024-02-28

2024年2月28日:インダストリオールと加盟組織による長期キャンペーンの結果、船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約が批准され、2025年6月26日に発効する。これは船舶解撤労働者にとって何を意味するのだろうか。


船舶解撤は世界で最も危険な仕事と言われており、インダストリオールは長い間、この産業を浄化する最も実際的な第一歩として香港条約の批准を求めて運動してきた。加盟組織の支援を受けて協力しながら、条約を促進するために各国政府、船主、投資家、その他の業界関係者に圧力をかけ続けた。

船舶解撤場の死亡率が極端に高いため、最大の関心事は事故と職業病の両面での労働者の安全改善であり、これに不安定雇用、低賃金、劣悪な労働・生活条件が続いている。この条約は産業改革を保証してはいないが、批准を出発点としてこれらの側面を改善できると私たちは信じている。

2023年は船舶解撤業界で素晴らしいニュースが続いた1年だった。昨年の夏にバングラデシュとリベリアが条約を批准し、発効の条件がすべて満たされた。パキスタンとマーシャル諸島も批准したことで潜在的な抜け穴が塞がれ、すべての主要な船舶解撤国と旗国が条約を批准した。船舶解撤産業を浄化して公平な競争の場を作り上げる必要があることについて、業界全体が広く合意している。

 

インドのアラン船解撤場

ガイドラインが正しく実施されれば香港条約は労働条件を改善するか?

  1. 解撤場の所有者は、契約労働者を含む労働者全員の詳細を記録し、利用できるようにしなければならない

解撤場が船舶解体の許可を得るには、要件を満たした船舶リサイクル施設計画を所轄官庁(担当政府機関)に提出する必要がある。この計画には、解撤場で雇われている全労働者(契約労働者を含む)の記録や、安全衛生訓練プログラムを盛り込まなければならない。労働者は訓練を修了しなければ解撤場で働くことを許されない。

これは臨時雇用に依存する産業の重要な変化である。解撤場所有者は通常、未登録の移民労働者に頼っている。大きな問題は、解撤場で働いたあと病気になって故郷の村に戻り、治療も補償も受けていない労働者がいることである。この変化によって組合組織化もやりやすくなる。船舶解撤労働者を組織化しようとすると、使用者は組合員を解雇する。労働者は臨時労働者なので、組合つぶしを立証するために従業員としての地位を証明することが難しい。登録要件があるため、これはさらに難しくなる。訓練実施の要件は、職場の技能向上のための投資拡大も促すだろう。

  1. 全員に適切なレベルの安全訓練を受けさせなければならない

安全衛生訓練では、特に船舶解撤に関係のある材料を取り上げ、アスベスト、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、オゾン層破壊物質(ODS)、防汚化合物・システム、カドミウム、六価クロム、鉛、水銀、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、ポリ塩素化ナフタレン(PCN)、放射性物質、短鎖塩素化パラフィンといった危険物質を取り扱うための指示や計画を盛り込まなければならない。これらは労働者がかかる職業病の原因となる危険物質なので、この訓練は大きな差を生じる。

訓練プログラムでは、PPEの支給とその利用に関する訓練、火災予防、緊急対応・避難、安全衛生訓練、環境意識、応急手当も取り上げなければならない。

  1. 使用者は管理・責任体制を示し、記録を保管しなければならない

これには、危険評価、予防戦略、立ち入りの安全基準、火気使用の安全手順にもっぱら責任を負う安全管理者の設置が含まれる。

解撤場所有者は以下も提供しなければならない。 

  1. 健康と公衆衛生(洗面・トイレ設備、清浄水の提供、食事・娯楽エリア、労働者が有毒廃棄物を持ち帰らないようにするための更衣・洗濯設備など)
  2. 職業病の医学的監視
  3. 緊急対応計画
  4. 危険物質リストと治療法

香港条約の発効は実施のための国内法にかかっている。つまり、船舶リサイクル国は、船舶リサイクルや廃棄物管理などを対象とする国内法を策定する必要がある。国際海事機構は現在、バングラデシュ政府と協力しながら、SENSRECというプロジェクトを通して適切な法律と強制メカニズムを開発しており、インドもこのプロセスをすでに完了、パキスタンでも同様の作業が計画されている。

インドのアラン造船所

公正な移行に向けて

香港条約の批准は、労働者の安全を改善するための必要最小限の重要な第一歩である。この条約が実際問題としてどの程度効果を上げるか、また、特に危険物の処理に関するバーゼル条約に対応するために、条約の要素を改善する必要があるかどうか評価することが重要になる。しかし、ギャップとリスクに取り組むために一段と踏み込み、南アジアの船舶解撤産業の公正な移行を目指して努力する必要がある。

そのためには、組合を承認し、組合と使用者と政府の3者による社会的対話を生み出し、香港条約の実施と船舶解撤産業の改革をめぐって交渉する必要があるだろう。担当政府機関、シップリサイクル業者および現場で労働者を代表している組合の協力の焦点は、合同安全衛生委員会、教育・訓練の実施、社会保障へのアクセス確保、解撤場の監視・検査、労働者の権利尊重になるだろう。労働者と組合を、この産業の完全なパートナーとして承認する必要がある。

汚く危険な産業を改革し、安全な船舶リサイクルと信頼できるグリーンスチール供給によって世界に利益をもたらす産業に変えるチャンスが数多くある。

そのためには、現地の鉄鋼業を転換し、再圧延工場でのダウンサイクルではなく電気アーク炉を使って鉄鋼をリサイクルし、リサイクル産業を発展させる必要があるかもしれない。その他の業界関係者、特に船舶所有国・旗国、船主、投資家、現金購入者を議論に参加させ、財政面、技術面、政治面で支援を得るべきである。

しかし、公正な移行と影響を受ける労働者・地域社会の積極的な参加がなければ、この可能性を実現することはできない。