LGBTIの権利を擁護し前進させるためのグローバルな取り組みが必要だ
2024-07-01
2024年7月1日:6月26日、グローバル・ユニオン評議会LGBTI調整委員会が主催したウェビナーに175人が参加し、国連、労働組合、市民権団体から講演者が集った。「反動に屈せず前進する:LGBTIの権利と結社の自由」と題されたこのイベントでは、結社や表現の自由に対する世界的な規制が強まる中、LGBTIの権利を擁護することの複雑さや、現在の反LGBTIの反動について掘り下げた。
性的指向と性自認(SOGI)に関する国連の第三者専門家であるグレーム・リード教授は、世界各地で国家が施行する法律が、LGBTIの表現を抑圧するだけでなく、暴力や差別を扇動しているという憂慮すべき傾向を示す新しい報告書を発表した。
「あらゆる地域において国家は、規制的な法律を施行する動きを強めており、LGBTIの人々の間に恐怖と自己検閲という冷ややかな風潮をもたらしている。」
リード教授は、これらの法律が人権を侵害し、敵対的な環境を助長することによって、しばしば暴力につながるという二重の弊害を引き起こしていることを強調した。
平和的集会と結社の自由に関する国連特別報告者であるクレメント・ニャレツォシ・ヴーレ氏は、これらの自由が民主主義の基盤であることを強調し、疎外がもたらす有害な影響と、少数派の権利を制限する口実としてLGBTI問題を利用する憂慮すべき傾向を強調した。
「マイノリティを含むすべての構成員がこれらの権利の恩恵を受けることが許されないのであれば、平和な社会を築くことはできない。」
とヴーレ氏は締めくくった。
LGBTIの労働組合員や市民社会のリーダーたちによる力強い証言によって、各地域の見識が示され、また個人的な経験が共有され、この問題の世界的な緊急性が強調された。
バミューダからは、国際公務労連(PSI)のリンダ・ボグ ル=ミエンザーが、LGBTIコミュニティが直面する恐怖と法的課題を訴えた。
「この社会は、基本的人権を後退させようとしている。」
と述べ、労働組合の統一的な対応を求めた。
インダストリオール・グローバル・ユニオンの加盟組織であるフィリピンのALU-TUCP(連合労働組合)の教育・情報担当役員であるラヤ・B・フェレール氏は、職場差別について次のように述べた。
「LGBTI労働者は、しばしば言葉や身体による嫌がらせに直面し、精神衛生や職務遂行に影響を及ぼしている。」
同氏は、LGBTI労働者を保護する包括的な国内法の欠如を強調し、そのような保護を求める労働組合の重要な役割を強調した。
教育インターナショナル(EI)の加盟組織であるドイツ教育労組(GEW)の女性・平等・ジェンダー担当シニア・ポリシー・アドバイザーのジャニナ・ヘンケス氏は、ドイツにおける法整備の進展とその反動について論じた。
「今年11月に施行される性自認に関する自己決定法は、包摂性に向けた重要な一歩を踏み出したが、極右運動からの激しい反対に直面している。」
国際運輸労連(ITF)に加盟する米国客室乗務員協会(AFA-CWA)のケトゥラ・ジョンソン国際副会長は、部門特有の課題と差別と闘う組合の取り組みを紹介した。
「私たちの組合は長年、性自認や性表現に基づく差別と闘ってきたし、すべての組合員の尊重と安全な職場環境を求め続けている。」
ジョンソンはこう述べ、尊重、包摂性、安全な労働環境の重要性を指摘した。
ブラジルのラファエル・メスキータ氏(セアラ・ジャーナリスト組合(Sindjorce)会長、国際ジャーナリスト連盟(IFJ)加盟の全国ジャーナリスト連盟(FENAJ)代表)は、LGBTIの権利推進におけるジャーナリズムとメディアの役割について議論した。
「ブラジルでは、立法化は停滞しているものの、労働協約にLGBTIの保護を盛り込むことで前進している。」
国際食品労連(IUF) 加盟組合であるジンバブエ飲食・ホテル労働組合(CHWU)のマーベラス・タウォムヘラ全国青年労働者議長は、アフリカにおける法的進展と社会的抵抗のコントラストを強調した。
「南アフリカのように平等を受け入れている国がある一方で、LGBTIコミュニティに厳しい刑罰を課し続けている国もある。」
国際ゲイ・レズビアン協会(ILGA)のギレルモ・リカルデは、LGBTIの権利擁護において労働組合が果たす重要な役割について議論し、LGBTI労働者の可視化と保護の強化に対する労働組合の歴史的・継続的な貢献を指摘した。
「労働組合との協力は、組合活動を妨げる法的規制や使用者の慣行といった大きな障壁に直面しながらも、LGBTIの権利の促進に役立ってきた。」
とリカルデは強調した。同氏は、LGBTI組織が効果的に活動し、組合員を代表するためには、法的承認と登録が重要であると強調した。
IUF書記長でこのイベントの司会を務めたスー・ロンリー氏は、労働運動の中だけでなく、社会全体で差別と闘うという集団的な課題と責任を強調した。
「今日の議論は、すべてのコミュニティのために結社の自由を守るという我々のコミットメントを強化するものである。」
このウェビナーは、権威主義的で保守的な潮流が台頭するなか、LGBTIコミュニティの権利を擁護し、前進させるための世界的な協調的努力の姿を描くと同時に、さまざまな形態の権利が相互に関連していることを強調した。議論では、LGBTIの権利のための闘いが、権威主義との闘い、結社と表現の自由の保護、ジェンダーの平等のための闘いなど、より広範な人権の課題と結びついていることが明らかになった。
【原文記事URL】
https://www.industriall-union.org/global-effort-to-uphold-and-advance-lgbti-rights-needed
労働基準に関し組合のインプットが必要
2024-06-26
2024年6月26日:GRI(Global Reporting Initiative)は現在、労働問題が包括的かつ倫理的に扱われるよう、新しい労働基準の草案を作成している。新しい草案はILO、ITUC、IOEを含む 専門委員会によって作成されているが、労働者の権利を守るためには、労働組合からのより多くの意見が必要である。
労働者の権利と人権に関しては、企業や組織の責任に関する理解が深まっており、労働者の権利の保護は、社会正義と持続可能な開発に貢献する上で重要な役割を果たしている。
GRIの基準案では、雇用慣行、労働時間、報酬、職場の大きな変化の管理に関するデータを求めている。労働関連基準の策定により、組織は労働者に対する最も重大な影響と、それらの影響をどのように管理しているかを公に開示することが可能となる。
10月4日までパブリックコメント期間が設けられており、世界中の利害関係者が基準案について意見を述べることができる。インダストリオールのアトレ・ ホイエ書記長は、労働者の権利を真に保護し、公正な労 働慣行を促進するための基準が作成されるよう、加盟組 合に意見を出すよう奨励している。
「様々な企業が改定に抵抗することが予想されることから、これらの基準の策定には組合からの多大なインプットが必要である。私たちはすべての加盟組合に対し、私たちの権利が確実に守られるよう、10月の期限までに関心を持ち、自分たちの見解を共有するよう求めている」
とインダストリオールのアトレ・ホイエ書記長は言う。
GRIは独立した国際組織で、そのガイドラインを通じて、企業やその他の組織が気候変動や人権、汚職などの問題に対する影響を報告することを支援している。元インダストリオール書記長のユルキ・ライナ氏が役員を務めている。
【原文記事URL】
https://www.industriall-union.org/union-input-needed-on-labour-standards
東南アジアで強固な安全衛生運動を推進する
2024-06-21
2024年6月21日:カンボジア、インドネシア、日本、マレーシア、モンゴル、タイ、フィリピンの労働組合代表60人が参加して6月19日に開催された労働安全衛生(OSH)オンライン・ワークショップでは、国際労働機関(ILO)のOSHの枠組みを活用して、東南アジアにおける職場の安全衛生条件を改善し、組合の力を強化することを目的とした戦略的で調整された行動計画の策定が重要な議題となった。
安全衛生に関するILO第155号条約の主な特徴である、労働者がOSHに関する情報を受け取る権利、研修を受ける権利、OSHについて協議を受ける権利、報告する権利、危険が差し迫っている場合には職場復帰しない権利などについて、ILOの川上剛シニアスペシャリストが説明した。
また、インダストリオール・グローバル・ユニオンの鉱業担当部長であるグレン・ムプファネ氏は、画期的な生物学的危険に関する条約と勧告を作成する可能性のある、生物学的危険に関する基準設定委員会の最新動向を紹介した。ムプファネは、この地域でより強力な安全衛生運動と組合の力を構築する努力が不可欠だと述べた。
参加者は、工場の高温や換気の悪さ、腰痛、水銀中毒、OSH関連疾患を診断する医師の不足などの懸念を提起した。講師は労働組合員に対し、労働条件が病気や事故につながる可能性があることを証明するために努力すること、OSH委員会で問題を報告すること、OSH当局、人権デュー・ディリジェンスを扱う機関、ILOに苦情を申し立てることを助言した。
行動計画には以下が含まれる:
ILO条約155号、187号、176号の批准を求めるキャンペーンを展開する。
職業性疾病に関する情報を特定し、広める。
OSH基準および個人用保護具(PPE)の改善に向けた関係者の関与
国のOSH政策を強化し、労働組合を職場のOSH委員会に参加させる。
OSH訓練を実施し、安全文化を育成する。
OSH調査の実施と団体協約の改善
OSHに関する組合小委員会の設置
企業のOSH法遵守を確保し、ジェンダーに配慮した報告システムを確立する。
「毎年300万人近くの労働者が業務上の疾病や事故で死亡しており、そのうちの120万人がアジア太平洋地域で死亡している。インドネシア・モロワリ工業団地の炉爆発事故など、急成長するニッケル加工産業でも事故が起きている。私たちはより多くの労働者を組織化して声を上げ、強力な労働協約を締結しなければならない。組合はすべての労働者にとってすべての職場をより安全にすることができる。」とインダストリオールの松崎寛書記次長は述べた。
参加した組合は、あらゆる場所で労働者の権利を守り、前進させ、向上させるというインダストリオールの使命を再確認し、支持した。その目標は、安全で健康的な職場を含む基本的な労働者の権利の普遍的な承認と効果的な実施である。
「労働安全衛生を重要な組織化ツールとして活用し、労働者が安全で健康的な職場という基本的権利のもとで団結し、集団的な発言力と行動を強化し、労働者の力を構築できるようにしなければならない。」と、インダストリオール東南アジア地域事務所長のラモン・セルテザは述べた。
次のステップとして、新たに設立された地域OSH委員会は、情報共有・調整・安全衛生懸念監視のための特別作業部会とプラットフォームを持ち、特にILO 第155号および第187号条約の批准キャンペーン、国内OSH政策・プログラムの開発・実施に関する三者構成社会対話への関与、団結権・団体交渉権行使のツールとしてのOSHの活用など、OSHに関連する主要優先事項について明確な方向性を導くためのロードマップを策定する予定である。
【原文記事URL】
https://www.industriall-union.org/forging-a-robust-safety-and-health-movement-in-southeast-asia
190号条約批准のための闘いは続けなくてはならない
2024-06-20
2024年6月20日:6月は、職場における暴力とハラスメントをなくすための国際労働機関条約(ILO 第190号条約)の採択から5年目にあたる。この画期的な条約は、組合がジェンダーに基づく暴力との闘いを前進させる重要な機会であり、インダストリオールと加盟組合は批准に向けて精力的にキャンペーンを展開している。
この条約が採択されると、インダストリオールは、職場の世界に暴力やハラスメントが蔓延しているため、批准を求めるキャンペ ーンを緊急に展開する必要があることを認識した。ILO 第190号条約 は、こうした問題の根絶を目指す初の国際基準であり、ジェンダーに基 づく暴力やハラスメント(GBVH)を含む暴力やハラスメントのない職場環境に対するすべての人の権利を謳っている。この条約は、既存の国内法の不備にも対応している。
グローバル・ユニオンは、ILO 第190号条約の実施を支援するツールキットを立ち上げた。この「訓練者訓練」ツールキットは、労働の世界における暴力とハラスメン トを撤廃する重要な戦略として団体交渉を促進するために不可欠なツールを、世界中の何千もの組合に提供するものである。
この共同ツールキットを補完するために、インダストリオール はすぐに使える訓練モジュールを開発し、アジア、中東・北アフリカ、ラテンアメリカ、サハラ以南アフリカで、ILO 第190号条約の実施を通じて、職場や組合で GBVHを防止・対処する方法について、約300人の労働組合指導者、職員、役員を訓練した。
インダストリオールのILO 第190号条約ャンペーンの一部には、ジェンダーに基づく暴力やハラスメントに取り組むために企業と協力することが含まれている。2022 年、インダストリオールは H&M グループおよびスウェーデンの組合 IFメタルと協力して、サプライチェーンにおける GBVHの防止・発見・対処のための確固とした方法を開発した。取り組みには、労働者と管理職の意識向上と必要なツールの装備、H&Mグループの現地生産事務所と労働組合との合同訓練セッションを通じた問題への対処・解決のためのプラットフォーム構築などが含まれる。このイニシアティブは、1,500を超えるH&Mグループのサプライヤー工場で働く約150万人の縫製労働者に影響を与えている。最近、関係者はトルコの6つのサプライヤー工場でGBVHガイドラインを試験的に実施した経験を共有し、コミットメントを強化した。
2023年11月、インダストリオール執行委員会はGBVH、女性差別、性差別に関する新しい方針を承認した。この方針は、GBVH、女性差別、性差別の根絶を強調し、インダストリオールと加盟組合内で尊厳と尊重の文化を育むことを目指している。これには、これらの問題について組合員を教育し、ILO 第190号条約の規定に準拠させることも含まれる。関連する苦情に対処するための明確な手順も確立され、今後数カ月以内に指導部やスタッフが方針実施に関する研修を受けることになっている。
インダストリオール加盟組合は過去5年間、ILO 第190号条約批准のために懸命に闘ってきた。
ナイジェリアでは、労働組合、市民社会組織、労働者支援団体を巻き込んだ持続的なキャンペーンと社会的対話によって、2022年に批准に至った。偏見や法執行力の弱さに起因する過少申告が蔓延しているにもかかわらず、労働組合は、GBVHを恒常化 させる慣行をなくすために、特に男性が支配的な職場で第190号条約啓発キャンペーンを継続している。
フィリピンでは、4年間のキャンペーンを経て上院が第190号条約を批准し、批准37カ国目となった。キャンペーンでは、書簡の送付や政府高官との面会など、広範なロビー活動が行われた。第190号条約に関する教材やポジション・ペーパーを作成し、重要な労働行事の中でキャン ペーンを取り上げた。
アルゼンチンも組合の努力によって批准を達成した。労働総同盟(CGT)の女性労働組合家 連合グループのスポークスパーソンであるバネサ・シリー副代議員は、職場暴力の撤廃を提唱するうえで、100を超える組合からなる組合間ネットワークが果たした役割の大きさを強調した。
インドネシアの女性委員会は、インダストリオールから第190号条約に関する訓練を受けた後、ゼロ・トレランス方針を策定した。インドネシアの組合は使用者と社会対話会議を開き、80 社以上がこのゼロ・トレラ ンスに署名した。これらの方針はすべての労働者を対象としており、苦情処理チー ムの結成、被害者が苦情を申し立てる権利の確保、安全・プライバシー・精神的サポ ートの提供などが含まれている。
こうした取り組みの結果、労働組合はILO 第190号条約原則を交渉協約に盛り込んでいる。例えば、インドネシアの女性エンパワーメント・児童保護省は2024 年3月、西ジャワのPTエボルツィオーネ・タイヤ(ピレリ・グループ)に セーフハウスを開設した。同社とインダストリオール加盟の化学・エネル ギー・鉱山労組(CEMWU)は、2021年に暴力とハラスメン トに関する ゼロトレランス・ポリシー に署名したが、これは第190号条約の未批准にもかかわらず、実施に向けた重要な一歩となった。
「第190号条約の採択以来、44カ国が第190号条約を批准しており、職場における暴力とハラスメントの撤廃に向けた世界的なコミットメントが高まっていることを示している。加盟組合は、批准を達成するために実によく健闘した。また、ILOの批准がなくても、職場でILO 第190号条約を実施するための行動を起こしている。世界中で安全で尊重される労働環境を確保するために、キャンペーンを継続しなければならない」
とアルメル・セビー・インダストリオール・ジェンダー部長は言う。
【原文記事URL】
https://www.industriall-union.org/the-fight-for-ratification-of-c190-must-continue