広報ニュース

第179号インダストリオール・ウェブサイトニュース

インダストリオール、パキスタンで労働者保護を要求

2024-07-30

2024 年 7 月 30 日:インダストリオール・グローバルユニオンは、パキスタン政府およびパンジャブ州とシンド州政府に対し、三者構成原則を守り、労働法改正案が労働者の権利を侵害しないようにするよう求める。


シンド州政府とパンジャブ州政府は現在、既存の労働法を統合し、統一労働法にしようとしている。パキスタンのインダストリオール加盟組織によると、これらの改正案は労働者が苦労して獲得した権利を損なうものである。新法は不安定な雇用条件を増大させ、労働者の組合結成・団体交渉権を制限すると予想される。こうした反労働者的な改正は、同国の現在の経済的・社会的課題の中で、すでに深刻な生活費危機と闘っている勤労者の状況をさらに危うくするだろう。

加盟組合はまた、パンジャブ州政府とシンド州政府が労働組合を含む主要な利害関係者と 建設的な社会的対話を実施していないことも報告している。その結果、法改正プロセスにおいて労働者の懸念はまったく無視されている。三者構成が弱体化すれば、労働者の搾取が助長され、生活の質が著しく低下する恐れがある。

インダストリオールのアトレ・ホイエ書記長は、政府宛ての書簡の中で次のように述べている:

「私たちはパキスタン政府およびパンジャブ州政府およびシンド州政府に対し、インダストリオール加盟組合を含む労働組合と社会的対話を行い、提案されている法改正に関する労働者の懸念に応え、新法が労働者の権利に悪影響を与えないようにするよう求める。」

 パキスタンの加盟組織はパキスタン政府に対し、三者協議に関するILO第144号条約を含む国際労働基準を尊重し、労働行政・査察制度の枠組みを強化するよう訴えている。パキスタンはILO第144号条約を批准しており、ILO中核10条約のうち8条約も批准している。

インダストリオールは、パキスタン政府が労働者の権利を尊重し、労働組合と有意義な対話を行い、労働法のいかなる変更も労働者の権利と福祉を保護・強化することを確保することが緊急に必要であることを強調する。

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/industriall-demands-worker-protections-in-pakistan

 

トルコ金属労組のストが103日目

2024-07-30

2024年7月30日:トルコのメルセン工場の労働者は100日以上前からストを行い、団結権と団体交渉権を求めて闘っている。これらの労働者はインダストリオール加盟組織のビルレシク・メタル・イスによって代表され、3年近くにわたって自らの権利のために苦闘している。


トルコの労働省は2022年7月、フランス系ハイテク電気製品メーカー、メルセンのゲブゼ工場で組合の権限を認証した。 しかし、メルセン経営陣はこれに反対、組合を阻止するために訴訟を起こし、労働者に権利を行使させまいとした。組合を支持する多数の判決が下されたにもかかわらず、同社は交渉を拒否した。

調停実施中、会社側は労働者に対する圧力を強め、今年2月に組合員4人を解雇した。これがきっかけで4月にストが始まった。メルセンの違法行為は続き、経営側はストを抑えようと、ストに参加していない労働者に職務外の仕事をさせたり、組合員に嫌がらせをしたりした。

「もう100日以上、このテントで雨や泥に耐え、休日もここで過ごしている。権利を勝ち取るまで抵抗する」とメルセン労働者のハリル・ヤップは語った。

別の労働者、Mehtap Bakırが付け加えた。

「100日であろうと1000日であろうと頑張る。私たちの抵抗は貴重であり、成功の見込みがある」

ビルレシク・メタル・イスのウズカン・アタル会長はこう強調した。

「私たちはあくまでやり通す。メルセンに対し、倫理ガイドラインの尊重、傘下組合の承認、労働協約交渉の開始を強く促す」

「この間に、私たちはメルセンのスト参加者を全面的に支援し、連帯している。勝利は抵抗する人たちのものだ! 奮闘は続く」とケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は述べた。

ビルレシク・メタル・イスは、5月28日にフランス領事館前で記者会見を開き、当局者にこれら一連の違反を提示した。

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/day-103-turkish-metal-workers-strike

 

変革期の東南アジアで労働者の権利を守る

2024-07-30

2024年7月30日:7月26日、東南アジアの労働組合はインダストリー4.0と人工知能(AI)の影響について議論するために会合を開き、労働の世界が不確実な時代に突入する中、労働者の権利を守ることを誓った。


OECD 雇用アウトルック2023年版 によると、AI によって1,400 万人の雇用が減少する可能性があり、雇用の4分の1が 変化すると予想されている。製造業や金融業で働く労働者は、特に雇用確保について懸念を抱いている。

企業は生産性向上のためにAIを導入しているが、労働組合の約69%は労働協約にAIの規定を設けていない。労働者のデータを収集するためのAIの利用は、差別を助長し、プライバシーを脅かし、結社の自由を妨害する可能性もある。

インダストリオール・グローバル・ユニオンの松﨑寛書記次長は、労働組合が新技術をうまく管理し、労働者のリスクを最小限に抑え、変革から利益を得られるようにする必要性を強調した。同氏は、新技術の導入に関して企業が透明性を確保することの重要性を強く訴えた。

「社会的対話を通じて、労働者は新技術に関する適切な教育を受けるべきである。使用者が単に新技術を導入し、それに追いつけない労働者を解雇することがないように、私たちは事前に交渉しなければならないと述べた。シンガポールの企業研修委員会は、産業変革を管理する良い例である」

と松﨑氏は付け加えた。

・インダストリオールは、2024年11月までにデジタル化、AI、インダストリー  4.0に関する政策文書を作成するため、インダストリー4.0専門家グループを設立した。主な原則は以下の通りである:

・インダストリー4.0の議論のあらゆるレベルにおいて労働者の全面的参加を要求する、人権と労働者の権利を保護する。

・労働者とその家族のための公正な移行を確保する。

インダストリー4.0に関するインダストリオール・バーチャル地域会議では、オーストラリア、カンボジア、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイの労働組合員40人が、地域の産業変革について意見を交換した。

労働組合として、インダストリー4.0とAIに関連する法律を制定するよう国会議員に働きかけることが提案された。各国政府は、域内の中国製電気自動車工場におけるロボットの広範な使用を規制しなければならない。労働運動家たちは、ロボットによる労働者の置き換えを防止するため、労働協約に包括的な公正な移行(Just Transition)条項を盛り込むよう求めた。

「タイの日系自動車会社では 労働者の割合が80%、ロボットの割合が20%だが、中国の電気自動車工場では労働者の割合が20%しかない。このやり方は労働者の利益にならず、川下の自動車部品サプライヤーに深刻な結果をもたらす。産業政策と労働協約を通じて雇用の安定を守らなければならない」

と、タイ電子・電機機器・自動車・金属労連(TEAM)のウィナイ・ティンタノッド副会長は述べた。

「労働組合は、労働者の権利を守り、適正な労働条件を確保し、持続可能な経済成長を促進するために、こうした技術革新に適応しなければならない。私たちの集団的な未来は、このデジタル化された経済において、すべての労働者の尊厳と生活を守ることにかかっている」

と、インダストリオール東南アジア地域所長のラモン・セルテザは述べた。

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/protecting-workers-rights-in-southeast-asia-amid-transformation

 

リバティー・スチールの危機が悪化

2024-07-30

2024年7月30日:ここ数日、大量解雇と破産、財政難のニュースが、オストラバ(チェコ)、チェンストホバ(ポーランド)、ドゥナウーイバーロシュ(ハンガリー)のリバティー・スチール労働者数千人に打撃を与えている。労働組合は公的機関に対し、ヨーロッパの戦略的な鉄鋼資産を破綻から救うために緊急措置を講じるよう要請している。


欧州大陸のリバティー・スチール鉄鋼工場の状況は2023年秋以降、着実に悪化している。先週、非情なリストラの発表で事態は急激な展開を見せ、欧州鉄鋼労働者の間に衝撃が走った。

リバティー・スチール経営陣は7月23日、チェコのオストラバ工場でコークス炉の閉鎖と鉄鋼製造施設の停止によって、大量のレイオフを推し進める意向を発表した。現在、最大2600人の労働者が余剰人員解雇のリスクに直面している。同社の破産により、解雇される労働者への事前通知と解雇手当の支払いが不透明になっている。チェコ共和国の労働局は7月29日、失業の脅威に直面するリバティー・オストラバ労働者を支援するために、キャリアガイダンスや再訓練、賃金補助金を含む支援計画を発表した。

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合とインダストリオール・グローバルユニオンは、OS KOVOへの書簡で、この製鉄所で雇用を守るべく闘っているリバティー・オストラバ労働者との連帯を表明した。両組織は、リバティー・スチールの債権者であるチェコ政府と欧州委員会に責任を取るよう求めるOS KOVOの要求を全面的に支持している。

他のリバティー・スチール事業も、極めて憂慮すべき事態にさらされている。7月25日、チェンストホバの地方裁判所がポーランドのリバティー製鉄所の破産を宣告し、工場経営を引き継がせるために管財人を任命した。同社は裁判所の決定を不服として上訴した。ハンガリーでは、6月にリバティー・ドゥナウーイバーロシュで現地組合と合意した7月の一時金が支払われなかった。さらに、6月の労働協約で賃上げが予定されていたにもかかわらず、交代勤務スケジュールの強制的な変更が原因で、1,000人を超える労働者の賃金が30%カットされた。

インダストリオール・ヨーロッパ労働組合とインダストリオール・グローバルユニオンは、これらの決定を非難している。これはヨーロッパの戦略的な鉄鋼生産能力に不可逆的に損害を与え、何千人もの労働者とその家族の生活を脅かす恐れがある。労働組合は、労働者を誤った経営と公的機関による効果的な支援の欠如の矢面に立たせることは認めない、との立場を鮮明にしている。

ヨーロッパの戦略的な鉄鋼資産を破綻から守るために、公の行動が緊急に必要とされている。政策当局は真の鉄鋼アクション・プランに取り組まなければならない。

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/liberty-steel-crisis-worsens

 

南アフリカNUMSA、フォード・モーター社でスト後に勝利

2024-07-24

2024年7月24日:労働裁判所が南アフリカのフォード・モーター社に有利な判決を下し、プレトリアのシルバートン組立工場で3000人の自動車労働者によるストを禁止した際には、解雇の恐れがあった。


この敗訴にもかかわらず、組合員がストを主導した南アフリカ全国金属労組(NUMSA)は、職場復帰を求める交渉をうまくまとめて失業を回避した。

同労組は、労働者1人当たり2万ランド(1,089ドル)の一時金支給と、ストに参加した労働者に対する懲戒処分の禁止について、フォード経営陣と合意に達した。労働者は、その後7月12日に仕事を再開した。

インダストリオール加盟組織のNUMSAは、シルバートン工場の労働者5,500人のうち3,000人を組織化している。フォードによると、同社の事業はバリューチェーンで6万人を超える間接雇用を支え、現地で組み立てたピックアップトラックのフォード・レンジャーを50万台以上輸出している。

産業レポートによると、フォード本社が昨会計年度に250億ドル以上の利益を計上したあと、労働者はボーナスに加えて利益分配制を要求するためにストを決行した。NUMSAは、株主と経営陣だけがこの利益の恩恵を受けており、労働者には恩恵がないと主張した。同労組は、フォードには利益分配制を導入する余裕があると強調した。

しかし、6月11日に斡旋・調停・仲裁委員会(CCMA)に提訴したあともなお、組合は利益分配制についてフォード経営陣と合意に至らなかった。その後、7月4日に始まったストが労働裁判所によって禁止され、裁判所は、この集団的な職場闘争は法律の保護対象にならないとの裁定を下した。

NUMSAは経営側との合意を歓迎した。

「これは労働者にとって勝利だ。私たちは組合として、労働者が富を生み出しているのだから、労働者階級は創出された利益の恩恵にあずからなければならないと信じている。組合員が団結して要求していなかったら、この成果は達成できなかっただろう」とイルヴィン・ジムNUMSA書記長は述べた。

「利益分配制は、南アフリカの自動車労働者を生活費の上昇から保護するのに役立つ。NUMSAが労働者の利益のために闘い続け、労働者が家族を養い続けられるようにしていることを称賛する」とポール・フランス・ヌデソミン・インダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所所長は述べた。

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/numsa-wins-after-strike-at-ford-motor-company-in-south-africa

 

 

サムスン電子労働者、無期限ストを発表

2024-07-12

2024年7月12日:韓国の全国サムスン電子労組(NSEU)は6000人の組合員を動員し、サムスン電子のファソン半導体工場で同社の55年の歴史上初のストに参加した。このストは、団体交渉の決裂と組合つぶしをめぐって指示された。


NSEUとサムスン電子の団体交渉は、会社側が組合の要求の大部分に同意することを拒否したため、今月に入って暗礁に乗り上げた。要求には、基本給の3.5%増額、組合設立記念日の有給休暇、スト中の賃金損失の補償が含まれている。

サムスン電子は組合のスト要求をすべて無視し、一部労働者の基本給3.0%増額を一方的に設定した。工場長はスト中の労働者を脅迫し、不利な扱いを受けることになるだろうと述べた。

韓国金属労組連盟(FKMTU)加盟組織のNSEUは、サムスン電子で全労働者のおよそ24%に相当する3万人の組合員を擁し、代表交渉組合として承認されている。NSEUは、会社側の妥協しない態度と組合つぶしに対応して無期限ストを発表、すべての組合員に対し、勝利するまで闘いを続けるよう促した。

キム・ジュンヨンFKMTU委員長は言う。

「サムスンで大きな変化が起こっている。同社の無労組経営方針が破綻してから5年、組合員が存在感を示し始めている。この闘いはまだ初期の段階にあるが、サムスンの無労組経営の実質的な崩壊を示している。この段階で連帯と支援が必要不可欠だ。私たちは、この闘いが終わるまで共闘していく」

アレクサンダー・イワーノウ・インダストリオールICT電機・電子担当部長は言う。

「インダストリオールは、サムスン電子で適正な労働条件を求める闘争においてNSEU組合員を支持する。同社の営業利益は2023年に6兆5700億韓国ウォン(47億9000万米ドル)に達した。同社には、会社のために収益と価値を生み出している労働者と利益を共有する道義的責任がある。サムスン電子に対し、交渉の場に戻ってNSEUならびにFKMTUと真の社会的対話を行うよう求める」

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/samsung-electronics-workers-announce-indefinite-strike

 

タンザニアの組合、ビジネスと人権に関する国家行動計画に関与

2024-07-12

2024年7月12日:タンザニアのビジネスと人権に関する国家行動計画(NAP)の策定が進み、年内に仕上がると予想される中で、労働組合、市民社会組織およびインフォーマル経済労働者の代表30人が7月9-10日にダルエスサラームで会合を開き、自分たちが盛り込みたいと考えている要求について戦略を練った。


参加団体は、インダストリオールのサハラ以南アフリカ地域事務所がフリードリヒ・エーベルト財団(FES)タンザニア事務所と協力して開催した青年/ビジネスと人権ワークショップで、要求をめぐって議論した。

インダストリオールに加盟しているタンザニア鉱山・エネルギー・建設・関連労組(TAMICO)とタンザニア産業・商業労組(TUICO)、法律・人権センター、インフォーマル部門組合の統括組織Vibindo、いくつかの労働組合連盟、タンザニア労働組合会議(TUCTA)およびザンジバル労働組合会議が、NAPプロセスを促進している人権と良い統治のための委員会(CHRAGG)に関与。NAPへの提出物の作成方法について議論した。

製造業、鉱業、商業および建設業の労働者を組織化している各組合は、労働者の権利を保護するためにNAPに労働条項を盛り込みたいと考えている。促進すべきその他の問題は、調停、女性・青年・障害者の受容、国際労働機関の条約(仕事の世界における暴力とハラスメントの根絶を目指す第190号条約など)に言及する条項である。さらにNAPは、ジェンダー平等、中国企業を含む多国籍企業の説明責任、タックス・ジャスティス、生活賃金を促進すべきである。

国はインフォーマル経済労働者に社会的保護と基本的な健康保険、利用しやすいインフラ、より良い取引地域を提供してほしい、とVibindoは述べた。

国連人権高等弁務官事務所のマリア・ガルシア・トレンテ準人権専門官によるオンライン・プレゼンテーションは、市民社会組織と労働組合が特別手続きを利用できる方法を強調した。

パテルヌス・ルウェチュングラTAMICO書記長は次のように述べた。

「NAPプロセスは、労働組合が政府に、企業に労働法を遵守させることによって労働者を保護するという自らの義務を思い出させる機会だ」

経済政策もビジネスと人権に影響を与えた。例えば投資銀行や、国際通貨基金(IMF)、アフリカ開発銀行、欧州開発銀行などの国際機関は、タンザニアのビジネスと人権に関する対話に加わるべきである。というのも、これらの機関は社会的支出を妨げる融資条件によって、国家による人権無視を助長することがあるからである。

エリザベス・ボルリッチFESタンザニア事務所長は組合に対し、労働者の声を広げて説明責任を改善するために「ビジネスと人権に関する会話に加わる」よう促した。

「ビジネスと人権に関するNAPsは新たな戦略であり、これを利用して労働における基本的権利と適正な労働条件を要求することができる。これは人権デュー・ディリジェンス法の遵守に向けた極めて重要なステップだ。したがって、組合と市民社会組織がNAP政策プロセスに関与することが非常に重要である」とインダストリオール・サハラ以南アフリカ地域事務所所長のポール・フランス・ヌデソミンは述べた。

国家行動計画を策定済みのサハラ以南諸国は、ケニア、ナイジェリア、ウガンダである。国家行動計画はビジネスと人権に関する国連指導原則に基づいており、アフリカ連合はビジネスと人権に関する大陸政策を立案している。

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/tanzanian-unions-engage-on-the-national-action-plan-on-business-and-human-rights

 

 

スウェーデンでテスラとの闘い続く

2024-07-08

2024年7月8日:ヨーロッパの市民と労働組合は、アメリカ企業テスラが用いる方法と闘い続けている。ドイツ・ベルリン近郊のグリューンハイデにある同社の生産拠点の拡大計画に、今も現地の環境活動家が抗議している中で、スウェーデンのテスラで働く機械工たちは過去8カ月にわたってストを実施している。彼らは産業の垣根を越えた大規模なボイコットによって支援されている。


スウェーデン南部のマルメでは、テスラのディーラーの入口に産業別労組IFメタルの大きな横断幕が掛かっている。そのメッセージは明確であり、「紛争中」という文字のあとに「スウェーデンでは労働協約に従って活動」)という副題が続いている。

今年5月、通りの向こう側に、IFメタル・カラーの安全胴衣を着た2人の機械工が、テスラに対してピケを張っていた。 ジャニス・クズマと彼の同僚[匿名希望]は、労働条件や上司との関係が原因で、IFメタルが開始した運動に参加しようという気になった。

「異なる意見を持っていれば、解雇される危険がある」

 ジャニス・クズマは昨年10月、真っ先にストを始めた。現在、ストに入って8カ月になる。

「2023年夏にフル操業していたときは、小さな作業場で15人が働き、お互いのつま先を踏みつけるような状況だった」と彼は説明する。

ジャニスと彼の同僚によると、狭い職場はストレスと不十分な計画のせいで悪化した。「心身ともに疲れ果て、同僚の多くがたびたび病気で休んだ」と彼らは言う。それぞれの機械工が毎日5台を担当している。

機械工の1人が不満を述べると、

「人事部長は、テスラは誰もが満足する会社というわけではない、辞めるのは自由だと言った」

IFメタルの仲裁人を務めるマーティン・ベルグルンドは、テスラの間違った家族的特徴に言及する。

「テスラの内部コミュニケーションは、従業員全員が家族だという考えに基づいている」と彼は説明する。「だが実際は、テスラは会社の中に会社を作っており、日常的に規則を回避している」

ジャニスが衝撃を受けているのは、上司との対話がまったくないことである。

「すべてに同意しなければ、異なる意見を持っていれば、解雇される恐れがある」と彼は付け加える。

IFメタルは最近、雇用契約を不法に打ち切ったとしてテスラを非難した。ウーメオの作業場で、1人の労働者が契約の規定よりも早く、6カ月ではなく5カ月で解雇された。IFメタル提供の情報によると、会社側は解雇の正当な理由を示さなかった。交渉もむなしく、同労組はその機械工のために望ましい結果を達成することができなかった。

同労組は、彼の解雇はスト参加に関係があったと確信し、労働裁判所への提訴を決定した。今までのところ、テスラに対するスト参加者の中で契約を打ち切られたのは彼だけである。

スウェーデンの制度に従おうとしないテスラ

 マルメでは紛争開始以降、7人の機械工が職場を放棄した。全国では30人以上の従業員が、この電気自動車メーカーに抵抗している。要求は一貫しており、一文に要約することができる――労働協約を結びたい。これは組合を通した労使間の協約となり、労働・生産条件を定める。しかし差し当たり、テスラは譲歩する兆候をまったく見せていない。

労働協約は、労働法が簡潔なスウェーデンの制度の最も重要な部分である。政府は企業と産業レベル組合に、雇用条件(賃金、契約など)、労働条件(労働時間、安全など)、社会的給付(年金、休日など)について交渉する多くの自由を認めている。

労働協約は義務ではないが、官民両部門で使用者と従業員の勢力均衡を構築し、経済部門の中である程度の安定性と公平性を保証する。

スウェーデンでは、全部門にわたって労働者のほぼ90%が労働協約の対象となっている。

テスラと同社従業員の対立は、会社側が協約締結を全面的に拒否していることにある。2022年秋から2023年夏にかけて、IFメタルは労働協約を作成するためにテスラと交渉しようとした。しかし、同社経営陣は「主義として」協約締結を拒否し、労働権は「当社の概念」の一部ではないと付け加えた。テスラCEOのイーロン・マスクは昨年11月、組合という考え方に同意しないと公言した。「組合は必然的に社内で否定的な傾向を生み出し、一種の領主・農民状況をもたらそうとすると思う」

IFメタルはスト通告の中で、これは単純に「紛争を避けながら秩序ある状況を生み出す」問題だと主張している。協約は労使双方に保証を提供する。「この協約は、誰も協約の規定以上の条件を獲得するためにストを行うことはできない、ということを保証する」

国境を越えた幅広い連帯運動

マルメ作業場の外で、2人のスト参加者に他の4人の労働者が加わり、ピケラインで交替した。彼らはテスラの従業員ではなく、販売、会計、病院部門で働いている。機械工たちを解放して誰かが常駐するようにするために、半休を取った。

ピケラインは、その国を反映している。作業場の機械工と連帯して、港湾労働者や大型トラック運転手、自動車充電ステーションのメンテナンスを担当する電気技術者が、テスラをボイコットし始めた。音楽家労組から郵便労組まで、いくつかの産業がIFメタルの闘いに加わった。

「港湾労働者は、船で運ばれてくる車の荷降ろしを今も拒否している」とJohan Järvklo IFメタル国際書記は説明する。

「テスラは現在、トラックで車両を輸入している。ベートランダでは、組織化されたハイドロ従業員がテスラ向けの部品生産を拒否している」

スト参加者への共感は、スウェーデンの国境さえ越えて広がっている。昨年12月、デンマークの運輸労組3Fトランスポートが、港でテスラ車の封鎖を発表した。これに続いて、ノルウェーの合同産業労組とフィンランドのAKTも同様の行動を起こした。

このような行動は増え続けている。5月初めには、管理者と事務労働者の組合組織ユニオネンが、テスラの作業場でのストを支持した。その結果、DEKRAインターナショナル従業員は今後、同社製品の検査を行わない。

「米国とドイツの組合も労働協約を求めて闘っている」とJohan Järvkloは説明する。

「これはまさにグローバルな闘いであり、現在スウェーデンは最前線に立っている」

独グリューンハイデにあるテスラ唯一の欧州工場で、ドイツでIFメタルに相当する組合IGメタルが、2024年初めの最新の内部選挙で初めて従業員代表委員会に加わった。しかし同労組は、議席の絶対多数を達成できなかったため、特に賃金に関して締結したいと考えている労働協約を合法的に取り決めることができない。IGメタルは、この状況を変えるために新規組合員の勧誘に積極的に取り組んでいる。

団体交渉権の侵害が、ますます広がっている。国際労働組合総連合の最新の年次世界労働権利指数レポートによると、そのような侵害は2023年に欧州諸国の過半数、全世界の国々の73%で見られた。

だからこそ、IFメタルはこのストを最後までやり遂げなければならない。

「これは労働者の権利と交渉力についての話であり、不可欠な闘いだ」とJärvkloは付け加える。

「他社には、同じ道をたどって労働協約を拒絶するようなことはしてほしくない」

同労組は、8カ月にわたって闘った末に諦めるつもりはない。比較として、1995年にスウェーデンのトイザらス従業員が3カ月に及ぶ闘いを経て協約を確保した。

スト破りを呼び込んで運動を妨害

アンダーシュ・シェルベリはルンド大学の社会学者で、労働組合の専門家である。彼の意見では、このストは最近の社会運動とは1つの重要な点で異なっている――テスラは真の交渉を完全に拒否し、スト破りを呼び込んでいる。

「スト参加者の代わりに、23人の外国人労働者が雇われた」とシェルベリは説明し、この戦略は前例がないと言う。

「トイザらスは1995年、工場内でスト破りを利用してストを回避した。今回、テスラはヨーロッパの作業場から労働者を呼び入れている」

シェルベリの見解では、これは労働運動にとって問題であり、運動の効率が低下していると彼は考えている。

ジャニスと彼の同僚は、マルメ作業場の新規採用者たちがスト破りであるということだけでなく、他の点でも彼らに疑念を抱いている。

「今この作業場で雇われるためには、テスラに大きな関心を示すだけでよい」と彼らは主張する。

「資格は絶対必要というわけではない」

ある営業部長が検査のために車をガレージから出すと、車輪から不審な音、こすれるような音がした。ジャニスは車に近づき――彼は同僚たちと良好な関係を保っている――すぐに前輪と後輪が逆になっていることに気づいた。

「この種の自体を招いているのは未熟さとストレスだ」と彼は言う。

スト参加者によると、作業場は現在、新入社員たちがゆっくり稼働させている。ガレージの中には、黄色のベストを着たハリネズミと「Tack, det är bra(スウェーデン語で「ありがとう、それで結構」)」というスローガンをあしらった横断幕がかかっている。 テスラはこの言葉によって、従業員も協約も抜きでうまくやっている、と伝えているわけである。

組合には力がある

この横断幕は、紛争に敏感に対応しないテスラの態度を象徴している。しかしIFメタルは、今すぐに諦めて、この多国籍企業を勝たせるつもりはない。このスウェーデンの組合は、闘いを続けるためのグローバル戦略をめぐって、カウンターパートである独IGメタルならびに全米自動車労組(UAW)と協議している。

6月13日、テスラの年次株主総会で、投資家グループが取締役会に対し、社内で結社の自由と団体交渉を尊重する方針の採用を求めた。

「この案は、いくつかの労働組合との国際協力によって作成された」とJohan Järvkloは言う。しかし、この案は株主によって拒絶された。

ジャニスにとって選択の余地はない。

「この労働協約を獲得するために、私は数カ月、いや数年でもストを続ける。次世代の人たちが良好な労働条件を得られるようにするために、自分のためというよりも、将来世代のために闘っている」

ピケラインのシフト交代の時間が来た。ジャニスは何か食べるものを買いに行く前に、儀式を行う――自動車ディーラーの前を車でのろのろと通り過ぎながら、窓を開けてスピーカーのボリュームを目いっぱい上げ、1986年に英国の歌手ビリー・ブラッグが作ったパンクロックの賛歌『組合には力がある』を流すのである。

写真:現在スト中のジャニス・クズマは、使用者のテスラと労働協約を締結するまで闘う決意を固めている。2024年5月10日、 マルメにて。

 

【原文記事URL】

https://www.industriall-union.org/in-sweden-the-fight-against-tesla-continues