インダストリオール、トルコで金属労働者の闘いを支援
2015-05-28
トルコのいくつかの都市、特に自動車産業の首都と呼ばれるブルサの大手自動車・自動車部品工場で、広範囲に及ぶ激しい労働争議が発生、労働者は大きな利益を獲得し、使用者から約束を取り付けた。
トルコのブルサ、コジャーエリー、エスキシェヒルなどに立地する金属産業で、5月中旬に数千人の労働者がストに入り、2014年末ごろに締結されたばかりの部門レベル団体交渉協約で提供されなかった生活賃金と適切な労働条件を要求した。労働者が怒りの行動を起こすきっかけになったのは、金属部門のある大規模職場が、新しい部門別協約の締結後間もなく追加的な賃上げを獲得したことである。
争議が発生した企業には、ルノー、フィアットの合弁事業トファシュ(プジョー、シトロエン、オペル、ボクソール向けの車両も生産)、フォード、ベルトラン・トレレボリ・ビブラコースティック(TBVC)、デルファイ、SKT、オトトリム・オートモーティブ、ロールメック、コシュクノズ、マコといった主要多国籍企業が含まれる。
要求の内容は、賃上げ、雇用保障、会社との交渉時における労働者代表の承認、交渉で偽の組合を排除するための援助などである。加えて、金属部門内外のいくつかの企業の労働者も、このストを支援し、確固たる連帯を表明した。
使用者と政府当局から非常に大きな圧力が加えられたが、そのような断固たる争議行為は労働者に新たな利益をもたらし続けている。例えば、5月27日の妥結で12日間に及んだルノー・オヤックのストが終結、労働者全員に直ちに345ユーロのボーナスが支給され、2015年末まで毎月200ユーロのボーナスが支払われることになった。このボーナスがなければ給料は月165ユーロと少ない。他の工場でも同様の成果があった。
この争議には世界各地、特にインダストリオール・グローバルユニオンと加盟組織から共感・連帯が表明された。2015年5月19~20日にスウェーデンのストックホルムで開催されたインダストリオール・グローバルユニオン執行委員会は、自動車部門で組合権と適正賃金を求めて闘うトルコの金属労働者を支援する連帯決議を採択した。
「私たちは、抵抗している金属労働者と連帯しており、警察の介入、暴力または労働者の解雇に強く反対し、そのような事態が発生した企業の本社に連絡する」
インダストリオール・グローバルユニオンは、トルコで事業活動や調達活動を実施している関連多国籍企業の本社で、すでに行動を起こした。
ケマル・ウズカン・インダストリオール書記次長は次のように述べた。
「インダストリオール・グローバルユニオンは、基本的権利と生活のために闘う労働者と常に連携している。自分たちと家族のためにはるかに明るい未来を求めるトルコの金属労働者による、この前例のない一連の行動は、トルコの労働運動史において新たなページを開く。労働者たちは組合内部の民主主義を求めて団結力を示した。私たちは彼らの闘いを誇りに思っており、部門全体で適正な賃金と組合権が享受されるまで一貫して支持していく」
インダストリオール加盟組織、イタリアのワールプールで余剰人員解雇に抵抗
2015-05-28
イタリアのインダストリオール加盟組織FIM-CISL、FIOM-CGILおよびUILMは5月22日と25日、ワールプールが480人のレイオフを発表したことに対抗して一連の共同抗議行動を実施した。
抗議行動の一環として、5月22日にカゼルタ地域でゼネストが、5月25日にインデシット・グループ全体で3時間のストが実施された。
ワールプールが5月20日付のプレスリリースでレイオフを発表したことに対し、労働者は抗議行動で応じた。このプレスリリースによって同社は、ファブリアーノ(200人)、バレーゼ(200人)、ミラノ(80人)のインデシット工場で管理スタッフ480人の追加的な余剰人員解雇を発表した。
北米企業のワールプールは、2014年7月にイタリア系家電大手インデシットの株式の過半数を取得。この買収により、同社はヨーロッパ、中東、アフリカで事業規模を倍増させた。
この買収と後続の機構改革以降、ワールプールは余剰人員解雇は避けられないと明言していた。
しかし、2018年まで余剰人員解雇は行わないと同社が以前に約束していたため、組合は、この発表された余剰人員解雇は一方的に決定されたものと考えている。このレイオフは、インデシット自体がすでに予想していた940人の解雇と、4月16日にワールプールが発表した約400人の解雇に追加される。
組合によると、解雇総数はイタリア全体で2,060人に達するだろう。これは現在イタリアで同社の生産活動に従事する従業員総数6,740人の3分の1に相当する。
同社の決定は、1カ月に及ぶ実りのない交渉に参加したフェデリカ・グイディ経済開発大臣をはじめ、交渉にかかわったイタリア政府関係者に大きなショックを与えた。同大臣は同社の発表を「話にならない計画」と呼んだ。
FIM-CISL、FIOM-CGILおよびUILMは組織化されたストに続いて、2015年6月12日にバレーゼで全国規模のデモを行う計画を発表した。
英国コネで2週間のスト迫る
2015-05-26
イギリスのインダストリオール・グローバルユニオン加盟組織ユナイト・ザ・ユニオンはフィンランド系リフト会社コネの経営陣に対し、5月27日から2週間のストが予定されている中で、従業員の車両追跡装置をめぐる争議への介入を求めている。
VAMSと呼ばれるこの追跡システムは、仕事量の測定に利用されている。ユナイトによると、VAMSは信頼性が低いため、タイムカードや現場到着・出発時刻の確認に利用すべきではない。例えば、あるドライバーは給油せずに1日1,000マイル走ったとされた。
イギリスで10時間に及ぶ協議が決裂したあと、ユナイトは現在、フィンランド本社経営陣に訴えている。5月27日から6月9日まで、300人のエンジニアリング・サービス労働者がストに入る予定である。この行動は、3月27日から実施されている超過労働・夜間労働・待機労働の禁止と並行して実施される。
ユナイト全国役員のリンダ・マカロックはこう述べた。
「ユナイトは、このフィンランド系企業の経営陣に介入を要求している。組合員は、自分たちがこのような扱いを受けていること、VAMSに関する当然の懸念が無視されていることに激怒しており、イギリスの経営陣を信頼していない」
「社用や私用での運転についてVAMSが記録した走行距離は正確ではなく、多めに記録していることを示す証拠がある。これによって、従業員は私用による走行距離を間違って査定されることになり、賃金から間違って控除されたり、最終的に懲罰を受けたりするかもしれない」
ユナイトはVAMS問題を解決するために新しい枠組み文書を要求しているが、経営側は現在のところ拒否している。携帯用デバイスの枠組み協約はすでに締結されており、ユナイトはVAMSについても同様の協約を模索している。
インダストリオール・リフト/エスカレーター部門は2014年11月、ウィーン宣言と呼ばれる監視システム廃止の要求を採択した。
マティアス・ハートウィッチ・インダストリオール機械エンジニアリング担当部長は、この種の圧力を従業員に加えることは容認できないと次のように語った。
「リフト/エスカレーター・ネットワークは昨年11月、コネをはじめとする4大メーカーに対し、この種の追跡システムを利用しないよう伝えた。コネは信頼できない追跡システムを利用するのではなく、社員に適切な安全衛生手段と訓練を提供すべきだ」
フィンランド系リフト会社コネの主な現場は、サリー州チャートシー、ゲイツヘッド、グラスゴー、ヨークシャー州キースリー、ウォーリントンにある。
インダストリオール、イギリスの鉄鋼労働者を支持
2015-05-21
インダストリオール・グローバルユニオンは、年金を守るために闘っているイギリスのタタ・スチール労働者を全会一致で支持した。この支持は、5月20日(水)のストックホルム執行委員会の決議に盛り込まれた。
英国タタ・スチール経営陣がブリティッシュ・スチール年金制度の廃止計画に関する交渉を拒否したことを受けて、インダストリオール加盟組織のコミュニティー、ユナイト、GMBは現在、争議行為の実施について同社で組合員に投票を求めようとしている。
年金制度が廃止されれば、従業員は予定どおりの60歳ではなく65歳で退職しない限り、年金の平均25%を失うことになるとみられている。
組合員が争議行為を承認すれば、イギリスの鉄鋼部門で30年ぶりの全国ストになる。
コミュニティー出身のロブ・ジョンストン執行委員は、決議の提案にあたって次のように述べた。
「タタ・スチールは世界トップレベルの倫理的企業であることを誇りにしている。しかし、同社は自らの価値観を弱め、その価値観から離れ始めている。……タタは対話を拒否している」
コミュニティー組合員のロブ・ミドルマスは、イングランド北東部スキニングローブのタタ鉄鋼工場(かつてはコーラスとブリティッシュ・スチールが所有)で39年にわたって働いている。ミドルマスは執行委員会で次のように話した。
「私たちは赤字に対処するために財政的な解決策を提示したが、会社側はその解決策を受け入れないことを選んだ。そのため、私たちとしては争議行為について組合員に投票を求めるしかない状況だ。私たちが関与せず、労働条件における最も大きな成果が奪われるままにすれば、次はどうなるだろうか」
ミドルマスは、鉄鋼労働者は長く困難な12時間勤務に従事していると付け加えた。
「ご存じのように非常に労働集約的な鉄鋼産業では、これまで60歳で退職することができた」
「年金の全額を受給できるようになるまで、この産業で50年以上働かなければならなくなり、60歳で退職すれば30%減額される。私たちは政府の助言に従って、退職に備えて年金制度に保険料を支払った」
タタ・スチールは、来年4月に現行年金制度を廃止する予定である。
この決議はタタを交渉の席に戻す戦略の一部であり、インドとアメリカの鉄鋼労働者に支持された。
別の声明で、鉄鋼部門担当のユナイト全国役員ポール・ロイターは次のように述べた。
「労働組合は5カ月の集中交渉で8億5,000万ポンドの節約を会社側に提案したが、英国タタ・スチールは、極めて困難かつ肉体的に過酷な環境で懸命に働いている従業員が、退職時に当初約束された年金を受け取れるようにすることがイデオロギー的に間違っていると判断したわけだ」
インダストリオールは今月初め、パリのOECD鉄鋼委員会でイギリスの鉄鋼労働者の苦況を取り上げた。またインダストリオールは、鉄鋼労働者を支持して世界中で組合を団結させるためにネットワーク会合を利用する計画も立てている。
『グローバル・ワーカー』最新号発行
2015-05-19
インダストリオールの『グローバル・ワーカー』第5号が装い新たに発行された。最新号では、労働者の視点から多岐にわたる主題を取り上げ、新しい一連の特集やインタビュー、プロフィールを掲載している。
トルコの鉱業に関する特集は、炭鉱労働者301人が死亡した2014年5月のソマ産業殺人を受けて、民営化が悲惨な結果をもたらしている実態を明らかにしている。
掘り下げた綿密なレポートでは、インダストリオールの最大部門の1つである電子産業に焦点を当て、この活況に沸く部門で組合がどのように組織化し、不安定雇用と闘っているかを検証している。
もう1つの『グローバル・ワーカー』スペシャル・レポートは、生活賃金を求める闘いや不平等との闘いに不可欠な手段としての産業別交渉に目を向けている。
「世界の富が少数者に集中しているが、企業や右寄りの政治家、国際金融機関による団体交渉攻撃も一因で不平等が拡大している。企業別協約は、より少数の労働者により不十分な保護しか提供していない」とユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は述べている。
『グローバル・ワーカー』本号は、ハンガリー化学・エネルギー・一般労連(VDSZ)のプロフィールや、ナイジェリアでインフォーマル労働者の組織化に成功を収めているナイジェリア全国繊維・衣料・裁縫労組(NUTGTW)の指導者イッサ・アレムへのインタビューも掲載している。
インダストリオールは2015年1月、ミャンマーの2組合を新規加盟組織として迎えた。2012年から労働組合が合法化されたばかりの国にあって、レポートでは、労働者を組織化して不安定雇用と闘うために、組合がどのように努力しているかを調べている。
チリのナショナルセンターCUTのバーバラ・フィゲロア会長へのインタビューもご覧いただきたい。
『グローバル・ワーカー』の英語版、フランス語版、スペイン語版またはロシア語版を購読するには、下記に申し込みを:press@industriall-union.org
『グローバル・ワーカー』はオンラインでも読むことができる。
レポート:「電子産業、組織化、不安定雇用との闘い」
2015-05-19
電子産業はグローバル経済有数の産業部門である。社会のスマート化とデジタル接続が進んでいるため、この産業は活況を呈し続けている。
レポート「電子産業、組織化、不安定雇用との闘い」
by インダストリオール本部ICT・電機・電子部門担当部長
松崎 寛
テクノロジーが生活のあらゆる分野に行き渡る中で、電子産業に部品を供給するサプライチェーンが拡大し、複雑になっている。アップルはiPhoneやiPadなどの製品を作るために750社を超えるサプライヤーと取り引きし、自動車産業では、電子部品がすべての自動車カテゴリーで総費用の最大40%を占める場合もある。電子産業は世界中で1,800万人(*)の労働者を雇用していると推定される。
*)2010年の国際労働機関(ILO)ベター・ワーク・プログラムのために行われた研究で、電子産業の労働者数は1,800万人と推定された。
電子産業は競争が激しく、革新的で急速に変化し、生産サイクルが短いため、主に「ジャスト・イン・タイム」生産モデルに基づいて活動しており、これは不安定雇用の増加を煽っている。
インダストリオールICT電機・電子部門は2014年、この産業の不安定雇用に関する調査を実施した。その結果、常用労働者が不安定な立場に追い込まれていることが分かった。組合は、急速に増加する派遣・契約・外注労働者や移民に接触し組織化しようと苦闘している。これらの労働者は、雇用条件をめぐって団体交渉を行う機会がまったくと言っていいほどない。
有野正治インダストリオールICT電機・電子部会長は、この部門のビジネスモデルは不安定雇用を増やしているだけでなく、生活水準の格差や持続可能性の危機も招いていると次のように述べている。
「特にアジアの発展途上国においては、政府と電子部門の多国籍企業が、労働組合活動を妨害しようと非道な戦術を採用しているところがある。私たちは、この部門の労働組合として、そのような政府・企業と闘うために広範囲にわたる行動を起こさなければならない」
ASEANとインド――生産のホットスポット
かつて世界のエレクトロニクス生産拠点であった中国は現在、東南アジアとインドに取って代わられつつある。多国籍企業は、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどのASEAN諸国やインドなど、製造業労働者の賃金が中国より低い国々に生産を移転している(表1)。テレビ(LCD、LED)の62%、半導体の70%、カーナビゲーションシステムの76%、携帯電話・スマートフォンの86%、デジタルカメラの100%がアジアで製造されている。
ASEAN諸国とインドは、多国籍エレクトロニクス企業に促進税制を提供することによって、海外からの資金を呼び込みやすくしている。企業は低い製造コストと魅力的な投資条件を利用するために、インドとASEAN諸国に押し寄せている。サムスン電子は2014年にベトナム政府の優遇を受けた結果、同国に世界最大のスマートフォン工場を建設した。サムスンは2015年7月までに10万人の労働者を雇用し、ベトナム最大の外国企業になるだろう。他の国々では、フォックスコンがインドネシアの製造プロジェクトに10億米ドルを投資する計画を立てており、今後数年間に10万人以上の雇用が生まれると推定される。
国際労働基準の回避
世界トップ5の高収益エレクトロニクス企業は、結社の自由(第87号)と団体交渉権(第98号)に関するILO条約を批准していない国の会社である。これらの企業は、両ILO条約が尊重されていない国々で活動しているか、そのような国に立地するサプライヤーに労働集約的生産プロセスを外部委託してもいる(表2および3)。電子産業の労働集約的生産プロセスでは、組合組織率が極めて低いか、組合が存在しない。多くの労働者が不安定な労働環境に追い込まれ、団体交渉の機会が小さくなっている
アップルにとって最大のサプライヤーであるフォックスコンは、1988年に中国本土で活動を開始してから大きく成長した。15年で世界有数の電子メーカーになり、世界中で120万人以上の労働者を雇用するに至った。同社は労働条件(低賃金、長時間労働、非正規労働量、中国国外での派遣労働者の大規模な利用)や労働安全衛生に関して、多くの深刻な労働問題を抱えている。職場に労働組合がないため、フォックスコンでは未組織労働者グループの暴動が発生している。
売上高世界一のエレクトロニクス企業サムスンには、労働権・人権軽視の長い歴史がある。韓国をはじめとするアジア諸国で顕著に見られるように、サムスンによる労働者の権利の侵害は、組合幹部の誘拐・暴行から、効果的な「組合禁止」方針を実施するための管理者向け特別訓練まで、多岐にわたっている。
電子ビジネスモデルの勝者は?
主要エレクトロニクス企業の上層部は世界の最富裕層にランクされている。李健煕サムスン会長の純資産は126億米ドルと推定され、アップルのティム・クックCEOは昨年900万米ドルを超える報酬を手にした。ヒューレット・パッカードのメグ・ホイットマンCEOは2014年の報酬が1,960万米ドルに上り、鴻海精密(フォックスコン)のテリー・ゴウCEOは推定純資産額61億米ドルである。
これとは対照的に、アップルやHPの製品を組み立てている中国の標準的なフォックスコン労働者は、平均年収5,000米ドルだ。つまり、フォックスコンのCEOには、同社のブルーカラー労働者100万人の年収の合計を超える金銭的価値があるということである。
IBMは先ごろ、2015年に10万人以上(従業員総数の25%)をレイオフする計画を発表していながら、同社のCEOバージニア・ロメッティは昨年、360万米ドルのボーナスを含めて2,000万米ドルを超える報酬を受け取った。
電子産業の大手企業が採用している労働者に不利なビジネスモデルは、この部門の組織化された職場と持続可能な雇用に悪影響を及ぼしている。複雑なサプライチェーン制度の中で、未組織・不安定労働者の数が増えている。組合は労働者の組織化と強力な交渉技能の促進によって抵抗しなければならない。
インダストリオール加盟組織と中華全国総工会(ACFTU)は過去数年間に、フォックスコン労働者の組織化に成功した。経営陣との団体交渉の結果、中国とブラジルの組織化された職場で労働条件と労働安全衛生が改善している。
松崎寛インダストリオールICT電機・電子担当部長は、これらの成功例を発展させ、フォックスコンの全職場に広げるべきだして、 「組合が団結し、すべての主要エレクトロニクス企業で公正かつ適正な労働条件の達成に向けて行動を起こすことが不可欠だ」とコメントしている。
電子産業の組織化
インダストリオールは2013年、この部門における活動を主導し、多国籍企業に関する戦略、労働組合ネットワーク、GFA、組織化、組合権、不安定雇用、特定の産業政策について議論するために、ICT電機・電子運営委員会を設置した。
2014年にグッドエレクトロニクス・ネットワークと協力して、欧州委員会の支援による5カ年プロジェクトが開始された。このプロジェクトはASEAN地域の電子労働者の組織化に焦点を合わせており、その30%が女性で、外注労働者や臨時労働者、移民、学生も含まれている。昨年、インドネシア(FSPMIとロメニック)、マレーシア(EIWUとEIEU連合)、タイ(TEAM)、ベトナム(VUIT)、台湾(ROCMU)のインダストリオール加盟組織で、600人を超える労働組合員が組織化訓練を受けた。
すでに具体的な成果が上がっている。マレーシアでは、経営側による強い抵抗と組合つぶし戦術にもかかわらず、EIEU北部地域が多国籍エレクトロニクス企業で900人を超える労働者の組織化に成功。初めて、移民労働者も対象とする団体交渉協約を取り決めた。インダストリオールは今年、向こう3~5年間に輸出加工区で電子産業が大いに成長すると予想されるフィリピンにプロジェクトを拡大する。
グローバル・キャンペーンで組合つぶし攻撃を打破
曖昧な労働法の不備に付け込んで組合幹部をロックアウトまたは解雇する手法は、エレクトロニクス企業が団体交渉の過程で利用する典型的な組合つぶし戦術である。アップルの最重要サプライヤーの一角であるNXPセミコンダクターズは2014年5月、フィリピン・カブヤオの経済特区にある工場で、インダストリオール加盟組織MWAPの選出組合役員24人全員を解雇した。NXPは、同労組の平和的な争議行為を不法と主張した。同社のしつこい威嚇や嫌がらせが、組合の交渉力の弱体化を狙っていることは明白であった。
MWAPとインダストリオールは、直ちにグローバル・キャンペーンを展開して抵抗した。実施された行動は、交渉会場やNXP施設の外での大規模ピケ、全国的な動員、アップルに焦点を絞った法人顧客行動などである。統一行動によって勝利を達成し、公正かつ公平な解決に至った。組合員が復職しただけでなく、MWAPは大幅な賃上げと多数の不安定労働者の正規雇用化も達成した。
電子産業が有毒化学物質の使用に抗議
インダストリオールは、電子産業における発癌性化学物質の使用をやめさせるために、グッドエレクトロニクス・ネットワークとそのNGOパートナーとも連携している。
労働組合とNGOは、電子装置製造で使用されるベンゼンなど毒性の強い化学薬品にさらされたために、過去5年間にがんなどの病気にかかった労働者の事例を何百件も報告している。
インダストリオール・グローバルユニオンとカンボジア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、アメリカの加盟組織を含む200以上の市民社会組織は、業界に行いを改めるよう正式に要求した。この抗議行動は、開示の重要性、有害化学物質に代わる、より安全な代替物質の使用、労働者の保護、結社の自由、職場監視への労働者の参加、環境保護、労働者や地域社会、環境に対する損害賠償の必要性を強調している。
多国籍企業に関するGUFとの協調的活動――IBMアライアンス
他のグローバル・ユニオンとの連携や協力も、この部門の重要な活動である。インダストリオールはUNIグローバルユニオンならびにインダストリオール・ヨーロッパとともに、IBMグローバル・ユニオン・アライアンスを結成している。この同盟はIBMの労働者と組合が集まり、労働者を保護してよりよい未来の確保を支援する方法について討議する機会を与える。アライアンスは昨年、雇用削減と闘う新しいグローバル戦略に合意し、IBMが全世界で労働組合を社会的対話や労働協約のパートナーとして認めるよう要求した。IBMが大規模なレイオフ計画を発表したあと、この同盟は活動を強化し、雇用削減の緊急猶予を要求、この経営難に陥った多国籍企業との有意義な対話を求めた。
世界対話フォーラム
2014年12月、ジュネーブの国際労働事務局で開催された「企業の需要変動に対する適応性と臨時雇用その他の雇用形態の発生に関する世界対話フォーラム(GDF)」で、電子産業の不安定雇用をめぐって建設的な討議が行われた。このフォーラムの目的は、政労使参加者が、臨時雇用その他の形態の雇用が電子産業の企業と労働者に及ぼす影響を評価することである。フォーラムには、労働者代表(インダストリオール加盟組合)、政府、使用者(電子業界CSRアライアンス(EICC)など)が出席した。グッドエレクトロニクス・ネットワークはオブザーバーとして参加した。
活発な議論を経て、フォーラムは以下の合意に達した。
電子産業の使用者・労働者団体は以下の措置を講じるべきである。
1. 雇用形態にかかわらず、労働者全員の公平な待遇を促進する。
2. 労働における基本的原則および権利に関する認識を高めて能力を強化し、サプライチェーン全体でこれらの原則と権利の尊重を促進する。
3. 需要の変動に対応するために、臨時雇用その他の形態の雇用以外の選択肢を共同で模索する。
4. 可能であれば、長期にわたる雇用関係を促進する。
GDFで使用者グループのコーディネーターを務めたEICCは、上位5社を含む100社以上のエレクトロニクス企業で構成されている。EICCは自らを「グローバルなエレクトロニクス・サプライチェーンの影響を受ける世界中の労働者と地域社会の権利・福祉の支援に取り組む」組織だと述べているため、インダストリオールは今後ともEICCとの対話を続け、この部門で不安定雇用問題の公正かつ公平な解決策を見つけるために取り組んでいく。
ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長は次のように述べた。
「多くのエレクトロニクス企業が利益ばかりを追い求め、労働者を商品か生産費として扱っている。残忍な組合つぶしの画策は企業の傲慢の匂いがする。NXPフィリピンで組合つぶし攻撃を打破したときのように、グローバルな組合の力を利用することによって抵抗しなければならない」
2015年6月のICT電機・電子世界会議
インダストリオールは今年6月、マレーシアでICT電機・電子世界会議を開催する。この会議では、組織化や不安定雇用との闘いに関する主題に加えて、より安全でより健康的な労働環境を作る方法や、サムスンやフォックスコンといった多国籍企業における中国人労働者との労働組合ネットワークの強化にも焦点を当てる。
グッドエレクトロニクス
グッドエレクトロニクスは、電子産業の人権と持続可能性に取り組む国際ネットワークである。
下記のウェブサイトを参照:www.goodelectronics.org
アスベストに反対する世界的規模の組合行動
2015-05-14
インダストリオール・グローバルユニオンとはるばるオーストラリアから参加した加盟組合は今週、スイスのジュネーブでキャンペーンを実施し、世界中でアスベストを禁止するために闘っている。
***最新情報:2015年5月14日、ロシア、キルギスタン、カザフスタンの3カ国が、ロッテルダム条約附属書Ⅲに掲げる化学物質に温石綿を加えることに反対を表明した。***
イギリスのユナイトだけでなく、オーストラリアのインダストリオール加盟組織AMWUとCFMEUも、5月12日に国連ビルの外で被害者団体および国際建設林産労連とともに抗議した。
ロッテルダム条約の危険物質リストに温石綿を掲載するかどうか決定するために、160カ国以上の政府代表が国連会議に参加している中で、このデモは行われた。
「アスベスト産業の嘘にだまされてはならない――あらゆる種類のアスベストに致死性がある」とブライアン・コーラー・インダストリオール安全衛生担当部長は、会合に参加した代議員に力強く訴えた。
条約に掲載されれば、温石綿の輸入国は、この物質に致死性があることを認識するだろう。
しかし、ロシアやブラジル、中国といったアスベスト生産国は、主要輸入国のインドと同様に、リスト掲載に拒否権を発動すると予想される。
アンドリュー・デットマーAMWU全国会長は5月13日の会議で次のように述べた。
「温石綿がロッテルダム条約に掲載されていないのは重大な背徳的行為だ」
危険性を示す確かな科学的証拠があり、世界保健機関(WHO)が支持しているにもかかわらず、ロシアから資金を供給されている有力な温石綿推進キャンペーン団体は、温石綿の安全性を主張しようとしている。
WHOによると、アスベストがまだ使用されている国々で、およそ3億人がこの危険物質にさらされている。
オーストラリアの加盟組織がジュネーブに招いたインドの石綿肺症患者シャラド・サワントが、この会議で人の心をつかむ話をし、温石綿の身に迫る危険を実体験に基づいて証言した。
インドには600以上のアスベスト工場があり、治療法がないアスベスト関連疾患で数千人が苦しんでいる。
インダストリオールは、ジュネーブの交通機関で2週間の広報キャンペーンを実施中で、会議参加者と一般大衆に、アスベストがまだ生産されており、そのために年間10万人以上が死亡していることを思い出させている。
「グローバルな労働運動は、科学的側面を調べ、同志たちが亡くなっている現状を認識しており、あらゆる種類のアスベストの全面禁止を要求している」とコーラーは言う。
インダストリオール、OECD鉄鋼委員会で労働者に発言権
2015-05-13
5月11~12日にフランスのパリでOECD鉄鋼委員会が開かれ、参加者は鉄鋼市場の発展、産業の生存力、競争力、貿易政策、過剰生産能力について議論した。
OECD鉄鋼委員会のインダストリオール・グローバルユニオン代表であるフェルナンド・ロペス・インダストリオール書記次長とイギリスの組合コミュニティーのロブ・ジョンストン産業担当部長は、これらの問題に取り組むにあたって労働者への影響を考慮することの重要性を強調した。
インダストリオールは、鉄鋼業の職場の最新状況に注目し、職場で労働者と組合に発言権を与えることの重要を強調した。労働者が発言権を持って関与することが、事業にとっていかに有益であるかを示す文献が豊富にある。
ロブ・ジョンストンは言う。
「年金制度の廃止を決定した英国タタ・スチールのような悪例が、産業全体に暗い影を落としている。これは同社自体の価値観を損ない、世界一の倫理的な企業であるという同社の主張を裏切る行為だ」
平等は依然、鉄鋼業の大きな課題である。女性にとっての機会は使用者によって異なるが、鉄鋼業はより多くの女性を上級ポストに就かせるためにもっと努力できるだろう。職場で女性を十分に活用しなければならず、そうしないことは不当かつ不公平であり、鉄鋼業にとって損失である。
フェルナンド・ロペスがこう締めくくった。
「インフラの継続的改善を促進する先を見越した産業政策は、鉄鋼消費量を増やし、この産業で雇用保障を支えるために欠かせない」
鉄鋼委員会は、OECD加盟25カ国と準加盟国、その他の招待された政府関係者から成る。政府、生産者および組合に議論の場を提供し、鉄鋼業が直面している発展中の課題に取り組み、開放的で透明な鉄鋼市場を奨励する政治的解決策を確認している。
スリランカの組合、大幅賃上げを求めて結集
2015-05-07
スリランカのインダストリオール加盟組織は、集団行動によって民間部門労働者の賃上げ15~35%を達成し、この部門の全国最低賃金を約74米ドルに引き上げた。
スリランカの新政権は、民間部門労働者の賃金を約18米ドル(15~35%)引き上げることに同意した。これにより、民間部門労働者の最低賃金は月74米ドルになる。
一方、国有部門従業員は賃金が74米ドル増えた結果、手当・給付込みの最低賃金が約223米ドルになった。
インダストリオール・スリランカ協議会と加盟組織は、数年前から民間部門の最低賃金増額を求めて闘っており、この最新の成功で大きな役割を果たした。
スリランカ最大の労働組合SLNSSの会長を務めるインダストリオール・スリランカ協議会のレスリー・デベンドラは、この賃上げについて次のように述べている。
「この増額は非常に大きな官民賃金格差を縮小するうえで歓迎すべき一歩だが、まだやるべき仕事がある」
アスベスト反対グローバル・キャンペーンが国連に照準
2015-05-05
国連が温石綿を危険物質リストに追加するかどうかに関する票決の準備をしている中で、この致命的な有毒鉱物の貿易を阻止するためにグローバルな労働組合キャンペーンが進展している。
インダストリオール・グローバルユニオンと加盟組織のオーストラリア製造労組(AMWU)は、5月11~14日にスイス・ジュネーブで開催される国連会議で、温石綿をロッテルダム条約の危険物質リストに追加するかどうか票決するために準備中の各国に対し、圧力を強めている。
この条約は他の種類のアスベストをリストに含めていながら、まったく同じくらい致命的で、今も商業目的に使われている唯一の種類のアスベストである温石綿を掲載していない。
ジュネーブ都心を走る路面電車やバスでの強力な広告キャンペーンは、住民や会議参加者にアスベストの驚くべき危険を再認識させようとしている。このキャンペーンは5月6日から2週間にわたって実施される。
来週、AMWUと別のインダストリオール加盟組織CFMEUを含むオーストラリアの組合代表団と、インドのアスベスト被害者がジュネーブを訪れ、キャンペーンを支援するために一連の行動を実施する。
アスベストは石綿肺症や中皮腫など、完治する方法がないがんや肺病を引き起こす。世界保健機関の推定によると、アスベスト曝露が原因で年間10万人が死亡している。
それにもかかわらず、今も毎年200万トンの温石綿が売買されており、国際規制はない。
インドやインドネシアなど50カ国で禁止されているが、消費量が増えている。
主要なアスベスト輸出国であるロシア、ブラジル、カザフスタン、インドは、条約に基づいて温石綿の輸出を制限する案に拒否権を発動しようとしている。
「条約で温石綿をリストに掲載するにはすべての国の同意が必要なので、この4カ国には、何千人もの命を奪うことになる拒否権に対して責任を負わせなければならない」とアンドリュー・デットマーAMWU全国会長は言う。
ユルキ・ライナ・インダストリオール書記長はこう述べた。
「吐き気を催させるアスベスト貿易を終わらせなければならない。すべてのアスベストに致死性がある。これらの国々は責任を取り、アスベストの採掘と使用を中止する必要がある」
いくつかの加盟組織はインダストリオールの要請に応じて自国政府に書簡を送り、来週のジュネーブ会議で温石綿のリスト掲載を支持するよう要求している。
インダストリオールは、このキャンペーンと共同出版物『アスベストは殺人物質』で、国際建設林業労働組合連盟(BWI)グローバル・ユニオンとも協力している。
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