新着情報(機関会議報告-定期大会)

第54回定期大会(2015年9月1日)

2015年09月06日

金属労協第54回定期大会ひらく

2016年度活動方針を審議・決定

役員の一部改選行う

金属労協(JCM)は、2015年9月1日(火)午後1時から東京・西日暮里のホテルラングウッドで、第54回定期大会を開催した。大会では、報告事項と して、一般経過報告、闘争経過報告、2015年度会計決算報告および会計監査報告を確認した後、審議事項として、第1号議案「2016年度活動方針の 件」、第2号議案「2015年度一般会計剰余金処分の件」、第3号議案「2016年度会計予算の件」、第4号議案「役員一部改選の件」と、4つの議案につ いて審議・決定した。

 

司会の藤冨事務局次長

 大会では、司会の藤冨事務局次長の開会の辞の後、資格審査委員の選出を確認した。佐島資格審委長(全電線)から、午後1時現在の出席者数について、構成5産別から代議員277名、役員25名、傍聴53名が出席していることが報告され、大会成立要件である代議員定数276名の3分の2以上である190名を超えており、大会が成立していることが宣言された。出席代議員数277名のうち、女性代議員が82名を占め、出席代議員の女性比率は、29.24%となり、出席代議員の3割以上という目標をほぼ達成したことも合わせて報告された。

 この後、議長団選出に移り、板垣恒子代議員(電機連合)と風澤 勝代議員(基幹労連)の両人が大会議長団に選出された。前半を担当する板垣大会議長が冒頭挨拶した後、議事運営委員と書記について確認した。

議長団を務める板垣代議員(右)と風澤代議員

 

 1.議長挨拶、来賓挨拶

 ■  議長挨拶:相原康伸 金属労協議長

 

相原金属労協議長

冒頭、金属労協を代表して相原康伸議長が挨拶に立ち,①直近の情勢、②春闘をはじめとする労働条件の改善について、③第3次賃金労働政策について、④適正取引の確立、⑤現場力の強化、⑥設的な労使関係の構築に関する取り組み、⑦インダストリオール活動と課題、⑧金属労協の財政状況、⑨参議院選挙、などについて所信を述べた。(→相原議長挨拶(詳細)

 

 来賓挨拶では、連合の古賀伸明会長、インダストリオール国内加盟組織であるインダストリオールJAFの島田尚信議長、そして、インダストリオール本部の松崎寛造船・船舶解轍/ICT・電機電子部門担当部長から、激励の挨拶をいただいた。

 

    来賓挨拶1:古賀伸明 連合会長(要旨)

古賀連合会長

 経済・社会・政治は速いスピードで環境変化を遂げ、国内では、超少子高齢社会、人口減少が世界に類をみないスピードで進行している。こうした環境の変化に、私たちはどう対応していくのか。私の考えとして3つのキーワードをご提起したい。

 第1は、「全員参加型社会の創造」である。無極化の時代といわれて久しいが、もはや1つの国家あるいは政府が秩序を形成する時代ではない。国家や政府、企業、NPOやNGOなど、それぞれの主体が考えを発信し、合意形成を図りながら秩序を形成していく時代を迎えている。働き方そのものも、長時間、正社員、男性というモデルを打ち崩さなければならない。

 第2は、「包摂的成長(Inclusive Growth)」である。世界において貧困、格差の拡大は広がっている。日本でも、非正規労働者が40%弱を占め、年収200万円以下の層がなかなか減少しない。一部の貧困を見過ごせば、社会全体がおかしくなる。そのことを私たちは深く考える必要がある。

 第3は、やはり「負担の分かち合い」であろう。これは「もたれ合い」ではなく、一人ひとりが、社会的・経済的に自立するということにほかならない。そして共に生きる社会をつくることが、「負担の分かち合い」という概念に一致するものと考えている。

 肝心なことは、従来の経験則や価値観だけでは課題を解決できないことを認識し、時代をしっかりと見つめて的確に変化をとらえることである。そして、良質で健全な危機感を共有化すべきである。職場あるいは地域における一人ひとりの課題と目指すべき社会を照らし合わせながら、幾度も対話を重ねる営みこそが、社会的うねりをつくっていくものと確信している。

 私は、本年10月の定期大会をもって連合会長を退任予定である。これまでの金属労協の皆様のご協力に、心から感謝申し上げたい。そして先輩方にも、くれぐれもよろしくお伝えいただきたい。

■来賓挨拶 島田尚信インダストリオール-JAF議長(インダストリオール副会長/UAゼンセン副会長)(要旨)

島田インダストリオールJAF議長

来年のインダストリオール世界大会に向けて、まず加盟費の問題に関しては、本年12月の執行委員会で具体的に議論されることになっている。女性参画比率は、全ての機関で40%にしようという話も出ているが、現状を踏まえて可能かどうかを含め、今後議論されていく見通しである。もう1つの大きな問題として、執行機関の三役体制や執行委員の総数と地域のバランスをどのようにとっていくべきかについても、議論が進められている。

 いずれにせよ、こうした課題について決定していくにあたって、インダストリオールにおける日本の発言力・影響力を維持できるかどうかが、微妙なラインになってきたように思う。日本の3組織が団結して取り組んでいく必要があるが、その意味では現在、3組織が定期的に会合を開きながら議論しており、日本協議会設立の青写真が描かれている状況と認識している。引き続き、設立に向けて議論を加速させていきたいと考えており、金属労協の皆様にもご理解を賜りたい。

■海外来賓挨拶1松崎寛インダストリオール本部造船・船舶解撤、ICT・電機電子部門担当部長(要旨)

 

松崎インダストリオール担当部長

グローバル化がますます進展する中で、世界の労働者は、かつてないほど進行している不安定労働化に直面している。先進諸国においても格差はさらに拡大し、仕事は増えていても2人に1人が非正規雇用という現状がある。

 国際労働組合総連合(ITUC)による最新のアンケート調査では、世界の58%の国で労働者に労働法が適用されず、60%の国で団体交渉権が与えられていない。70%の国では、ストライキ自体が違法となっている。各国政府による労働組合活動への弾圧もますます激化し、世界全体の労働組合組織率も著しく低下している。一方でグローバル企業は、収益追求の厳しい競争の中でますます労働者に冷酷になり、反労働組合的な態度が鮮明になってきた。

 そこで現在、インダストリオールの活動における重要な柱の1つとして取り組んでいるのが「多国籍企業労働組合ネットワークの構築」である。また「安全衛生の確保」についても、国内のみならず世界の職場でも確保できているかを監視していかなければならない。「ご安全に」という言葉1つでも、世界に貢献することができる。今後もますます金属労協の皆様のご協力・ご支援を賜りたい。

2.報告事項を確認

 次に、宮本 信議事運営委員長(JAM)からこの後の議事日程について提案があり、これを確認した。

 報告事項として最初に、「一般経過報告」を遠藤勝事務局次長(組織総務局長)から報告、続いて、「闘争経過報告」を井上昌弘事務局次長(政策企画局長)から報告、それぞれ確認した。引き続き、「2015年度会計決算報告」(井上事務局次長報告)、2015年度会計監査報告(吉沢勇次会計監査)について報告、それぞれ拍手で確認した。→闘争経過報告

 

資格審査報告をする佐島由恵資格審査委員長(全電線)

議事日程発表をする宮本信 議事運営委員長(JAM)

 

一般経過報告を行う遠藤勝 事務局次長

闘争経過報告、会計報告を行う井上昌弘事務局次長

会計監査報告を行う吉沢勇次会計監査(基幹労連)

  3.審議事項

■第1号議案「2016年度活動方針の件」

活動方針を提案する浅沼事務局長

審議事項に入り、第1号議案として、2015-16年度運動方針を補強する「2016年度活動方針」について、パワーポイントを使いながら、浅沼弘一金属労協事務局長が提案した。

この後、加盟5産別から原案賛成の立場で意見・要望が述べられた。

5産別からの意見・要望(要旨) →産別意見要望及び本部答弁(詳細)

【佐藤崇生代議員:自動車総連】

①    グローバルな環境変化に対応した国際労働運動の推進について

佐藤代議員(自動車総連)

自動車総連は、本年8月初旬に2回目のマルチ会議となる「アジア自動車労組会議」をインドネシアで開催した。金属労協としても、今回の方針に掲げられた「バリューチェーン・サプライチェーンを意識した対応」、「MNCネットワーク構築」をベースに、グローバル枠組み協定(GFA)へつなげる活動において、強いイニシアチブの発揮をお願いしたい。

②    賃金引上げの取り組み

2016年の要求検討にあたっては、いかに持続可能な産業基盤を確立し、それと整合性のある賃金引上げを図るかを考えていくことが大切である。昨年、初めて賃金要求の中で、直接雇用の非正規労働者について、原則として賃金改善分を設定することとしたが、多様な雇用形態を含む全体の底上げといった観点も踏まえ、しっかりと議論していきたいと考えている。

【松原稔代議員:電機連合】

①  インダストリオール関連

松原代議員(電機連合)

インダストリオール関連では、国内組織の強化の視点で、さらに大所高所から「今後のあるべき姿」についてのご判断と周知・機関確認をお願いしたい。女性参画40%の目標に関しては、2016年大会以降直ちに適用することは職場の実態を見ても難しいことから、現実的かつ中長期的な観点をもって人材育成を図ることが重要という考え方を執行委員会にお伝えいただきたい。会費については、これ以上の負担増加を回避するためにも、現行会費水準(1人あたり年間1.1スイスフラン)の維持に向け、国内外組織との連携をお願いしたい。

②  2016年闘争に向けて

2016闘争に向けては、継続した賃金水準改善、ワーク・ライフ・バランスの実現といった「働き方改革」の推進に、引き続き取り組んでいく考えである。JC共闘の強化と結束した取り組みを通じ、闘争のリード役として社会的な責任・役割を果たしていく必要がある。また、特定最低賃金設定、水準の引き上げ、さらに地域別最低賃金に対する優位性の確保に向けた取り組みを強化すべく、電機連合では今年度「雇用実態調査」を実施予定である。

③政策・制度実現に向けて

来年夏の参議院議員選挙では組織内候補者の全員当選を果たし、政策・制度実現に結び付けていきたい。

【五味哲哉代議員:JAM】

①金属産業にふさわしい労働条件の確立について

五味代議員(JAM)

「金属労協・2016年度活動方針」の具体的な活動展開に向けて、2点の意見と要望を述べたい。1点目は、「金属産業にふさわしい労働条件の確立」に

関してである。賃上げについては「上げ幅から水準」を重視し、「個別賃金」の取り組みをはじめ、根っこからの賃金水準の情報開示と共有を欠かせない課題として取り上げていただきたい。

②民間・ものづくり・金属としての「攻め」の政策実現

「民間・ものづくり・金属としての「攻め」の政策実現」に関してである。JAMを構成する単組の大半はサプライヤーであり、優れた技術や技能でつくられた製品が、その価値に相応しい価格で売買できる取引慣行の確立は、中小企業労働者の雇用と生活の安定・向上には欠かせない。サプライチェーンを構成する企業の賃金・労働時間など、労働諸条件の改善には公正取引に資する労使の社会的責任を意識した行動が必要となる。金属・ものづくり産業の健全で良好な発展に向けて、バリューチェーン、サプライチェーン全体の総合力を高める「政策実現」と「社会的責任を踏まえた行動」を強化していただきたい。

基幹労連の吉村健吾代議員から、①安全衛生への取り組み、②2016年闘争に関して、③産業政策に関して、の3点について意見・要望を述べた。

【吉村健吾代議員:基幹労連】

①安全衛生への取り組み

吉村代議員(基幹労連)

まず、安全衛生への取り組みとして、基幹労連では、無災害・リスクゼロを目指して懸命に活動を推進しており、今期より政策・制度要求に初めて安全を盛り込んでいる。安全と健康の確保については、その重要性を金属労協全体として再認識すべきである。

②2016年闘争に向けて

2016年闘争においては、特に中小組合や非正規労働者に対する労働条件の底上げ・底支えを行うことで、社会的な波及効果を高めていく必要がある。金属労協には、具体的成果につながる主導性発揮と更なる連携強化をお願いしたい。基幹労連は、AP16春季取り組みについて具体的方針を検討していくが、製造業をはじめ日本全体が「好循環」を実感できるようJC共闘の一員として尽力していく。

③産業政策に関して

産業政策に関しては、再生可能エネルギー固定価格買取制度の賦課金が加速度的に上昇しており、今後のものづくり産業の国際競争力の喪失が強く懸念されることから、早急な見直しが求められる。また、電力の安定かつ低廉な供給に向けて、安全が確認された原子力発電所の一日も早い再稼働が何よりも必要であることから、政策を強力に推進していただきたい。

【阿曽正之代議員:全電線】

①金属産業にふさわしい労働条件の確立」について

阿曽代議員(全電線)

2016年に向けては、日本経済の状況、金属産業の動向や勤労者の生活実態をより精査し、JC共闘が一丸となれる取り組みの展開をお願いしたい。

②「攻め」の政策実現の取り組みについて

 マクロ環境整備、ものづくり現場力の強化といったソフト面についても、引き続き、政策制度の取り組みを通じた積極的な働きかけとともに、地方・地域の政策制度の積極的な展開をお願いしたい。

③連帯活動の推進について

「グローバルな環境変化に対応した国際労働運動の推進」の連帯活動の推進についてである。インダストリオール加盟会費の現行水準の維持に向けた検討は重要と考えており、国内の労働運動が低下しない財政基盤の確立に向けた検討をお願いしたい。

  【本部答弁】浅沼金属労協事務局長

これらの産別からの意見・要望に対して、浅沼事務局長が本部答弁を大要次の通り行った。

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「各産別を代表し、基本的に賛成の立場から貴重なご意見をいただいた。それぞれのご意見に対し、簡潔にコメントさせていただく。

2016年闘争の取り組みについて

 2016年の闘争において、賃金引き上げの継続は極めて重要なキーワードである。産業あるいは経済の動向を踏まえ、具体的な要求案づくりに取り組み、JC共闘としての責任をしっかり果たしていきたいと考えている。

 非正規労働、特定最賃の取り組みについては、金属労協として対応の強化を図り、マスコミをはじめ多様なルートで世の中に訴えかけていきたい。同一価値労働同一賃金に関する考え方も取り入れていきたいと思う。賃金水準の情報開示については難しい面もあるが、課題として認識を共有し、取り組んでいきたい。

政策制度課題について

 ワーク・ライフ・バランスの実現や、政策制度の関係でも多くのご提起をいただいた。ものづくり産業のマクロ環境整備、あるいは現場力のソフト面での強化については、2年間の政策制度要求を策定するにあたって活発な議論を行い、具体的な運動につなげていきたい。加えて、金属労協として地方における政策制度課題を優先し、積極的な活動につなげていきたいと考えている。

安全衛生の取り組みについて

 安全衛生の取り組みの強化については、非常に劣悪な労働環境が世界の働く現場に残っていることから、労働災害の撲滅に向けて国内外を含めた具体的な取り組みを進めていきたい。公正取引の確立、電力の固定価格買取制度の見直しについても、皆さんと相談しながら取り組んでいく考えである。

国際活動への対応について

 国際関係では、多国籍労組ネットワーク会議の構築、あるいはグローバル枠組み協定の締結に向けて積極的に活動していきたい。インダストリオール加盟費に関しては、1.1スイスフランという数字のみにこだわらず、全体的な費用の出入りを見ながら我々にとって適切な状況になるよう取り組んでいく。女性参画比率については、実現性の観点を含め、しっかり発言していきたいと思っている。

参議院選挙への対応について

 参議院選挙関連では、全員当選を目指す気持ちは同じである。金属労協としてできるサポートをしていきたい。

満場の拍手で2016年度活動方針を決定

  この後、代議員の満場一致の拍手で「2016年度活動方針」を決定した。→2016年度活動方針

■第2号議案「2015年度一般会計剰余金処分」、第3号議案「2016年度会計予算」

つづいて、第2号議案「2015年度一般会計剰余金処分」、第3号議案「2016年度会計予算」について、井上事務局次長から提案を行い、満場一致の拍手で承認した。

 ■第3号議案「役員一部改選の件」

新任挨拶をする宮本新副議長、市川新事務局次長、河野新常任幹事(右から)

 最後に、第3号議案「役員の一部改選」について、宮本礼一役員選考委員長(金属労協常任幹事、JAM書記長)から役員選考委員会での経過説明と提案があり、JAMの定期大会(8月27-28日)における役員改選を受けて、眞中行雄・副議長(JAM会長)が退任され、その後任として書記長の宮本礼一書記長がJAM会長に選出され、金属労協副議長に就任すること。そして、宮本書記長の後任として河野哲也福副書記長がJAM書記長に選出され、金属労協常任幹事に就任すること。加えて、遠藤勝金属労協事務局次長の退任に伴い、後任として、市川佳子JAM特別執行委員が金属労協事務局次長に就任することが、満場一致の拍手で承認された。金属労協の四役の一つの事務局次長に女性次長が就任したのは初めてのことである。(→2016年度役員名簿一覧)

 

退任挨拶する眞中前副議長

退任挨拶する遠藤前事務局次長

続いて、2名の退任役員への表彰状の授与が行われた。2011年9月以来4間、副議長を務められた眞中行雄前副議長、2012年9月から3年間、事務局次長を務められた遠藤 勝前事務局次長には、相原議長から感謝状が授与された。退任する両名からそれぞれ退任挨拶が行われ、今後の活躍を祈って全員の拍手で感謝の意を表した。全ての議事を修了し、大会各種役員および書記の解任を行い、後半を担当した風澤 勝大会議長(基幹労連)から議長団降壇の挨拶を行い、司会の藤冨事務局次長が閉会の辞を述べ、大会を閉会した。