アジアで最も影響力のある
IMF-JCへの期待はますます
高まっている
松崎 寛 IMF造船・事務技術職担当部長
東日本大震災では、多くの尊い命が失われた。心よりお見舞いを申し上げるとともに、連合の皆様方による救援・復興ボランティア活動の多大なご努力に敬意を表したい。
私はIMF本部唯一の日本人職員として、義援金の呼びかけ、被害状況やボランティア活動の報告、広報、そして何よりも原発事故に関する情報が世界の加盟組織に間違って広がらないためのチェック活動を行ってきた。
IMF本部で担当する造船・船舶解撤部門では、労働組合による安全衛生の徹底の大切さをこれまで以上に感じている。とりわけインド、バングラディシュ、パキスタンの3カ国では世界の船舶解体量の約7割を占めており、1日に最低1人以上の労働者が、こうした地域の解撤現場の事故によって尊い命を奪われている。
また、運よく事故に巻き込まれずに生き延びたとしても、労働者が50歳まで生きることは奇跡的とも言われている。彼らは1日1ドル以下という低賃金の日雇い労働者であり、解撤作業のためのマスク、ゴーグル、安全靴、安全手袋などは一切支給されていない。
ほぼ全員が労働組合の意味や存在も知らず、自ら組織して自分たちの命を守り、労働条件を改善する団体交渉の権利を手にすることもできない。IMFでは、こうした労働者の命を守り、人間らしく働けるように、2003年からインドにおいて、船舶解撤現場の組織化プロジェクトを通じて安全な水、手袋とゴーグルを支給し、救急箱・救急サービスを実施してきた。
その後、安全衛生の意識を向上させ、人間らしい労働条件を確立するために、組合の結成を支援してきた。私もIMF-JCの調査団の一員として、2006年にインド・ムンバイの解撤現場に行った。当時は組織化が始まったばかりで組合員数は700名ほどであったが、本年5月に同じ現場へ行くと、約6千名のうち2487名が労働組合に加入していた。
さらに世界最大の解撤現場であるインド・アランでは、6万人のうち7405名の組織化に成功している。今後25年間で船舶解撤量は現在の3倍になると推測される。ますます船舶解撤現場の組織化に力を入れていかなければならないと感じている。
世界の金属産業では、不安定労働がますます増加している。IMFでは、東南アジアや南アジアにより多くの活動資源を投入して組織化を加速させる予定である。そのためには、やはり企業別の労働組合ネットワークづくりや中核的労働基準を織り込んだTPPの議論への積極的な参加など、アジアで最も影響力のあるIMF-JCへの期待はますます高まっている。