雇用と生活の確たる将来展望を切り拓くために全力を尽くす
~徹底したこだわりを持ってJC共闘を推進~
金属労協・IMF-JC第54回協議委員会にご参集の皆さん、大変ご苦労様です。なお本日はご来賓としてお忙しい中、連合・古賀会長にご出席いただきました。後ほど、ご挨拶を頂きますが、全員の拍手で感謝と歓迎の意を表したいと思います。
さて本協議委員会は、2012年闘争の推進に関わる方針を決定し、取り組みに向けた金属労協全体の意思結集を図ること、加えて来週7日8日の両日にかけてインドネシア・ジャカルタで開催 されるIMF・国際金属労連中央委員会で討議される製造3GUF統合への対応方向に関する意思統一を図る重要な場となります。
金属労協をとりまく状況
金属産業が国内事業の空洞化を阻止し、雇用を守るための極めて重要な局面に
はじめに現状、世界経済の不確実性と不透明感が高まる中、総じて金属産業が国内事業の空洞化を阻止し、雇用を守るための極めて重大な局面に立たされているとの危機感を共有したいと思います。
ギリシャ発の欧州債務危機・金融危機は信用不安を拡大させ、実体経済に悪影響を及ぼし、さらなる世界経済全体への波及が懸念される状況にあります。
米国では依然、雇用や住宅市場の改善が遅れ、議会での財政赤字削減を巡る与野党対立が続くなど景気後退懸念が払拭しきれません。
またリーマンショック後の世界経済を牽引してきた新興国経済も、インフレ基調の中で先進国経済悪化の影響を受け、中国をはじめ実態経済の面でも停滞色を強めつつあります。
一方、3月の東日本大震災発生という歴史的な国難に見舞われた日本経済は、働く者の献身的な努力と使命感を背景とする金属産業をはじめ各産業・国民各層の真摯な協力により、当初想定以上のスピードの回復力を示したものの、ここにきて足踏み状態に陥っています。
11月14日に内閣府が発表した11年7~9月期のGDP速報値は、サプライチェーンの回復による輸出拡大を原動力に、4四半期ぶりに年率換算6.0%の大幅な伸びを示したものの、円高・欧米経済の減速、タイの洪水被害等により10~12月期には大きく落ち込むとの見方が大勢です。なお年明け以降は第3次補正予算の成立により復興需要が本格化することなどからプラス成長に復帰できるものとは思われますが、持続的な景気回復の姿は、世界経済の減速や、特に円高の影響等により、とても見通せる状況には無いと言わざるをえません。
日銀の10月の予測では、2011年度実質経済成長率は0.3%、12年度が2.2%と、それぞれ7月時点から下方修正されています。
空洞化を加速しかねない最大の問題は歴史的な超円高の進行
このような状況の中で金属における国内産業空洞化を加速しかねない最大の問題は、戦後最高値を更新する歴史的な超円高の進行です。直近において10月27日に日銀が国債などの資産買入れ基金を5兆円増額する追加的な金融緩和を決め、31日には政府・日銀が3か月ぶりに単独為替介入に踏み切ったものの、その効果は限定的なものにとどまりました。ドルに加えユーロおよび他の通貨に対しても円高が続いており、金属産業をはじめ輸出産業を深刻な苦境に陥れています。
現状の為替水準は国際競争上の観点から、多くの金属産業・企業の国内事業に決定的ともいえる打撃を与え、本来、国内に確保すべき生産拠点および開発拠点の意図せざる海外流出を招きつつあり、今後さらに、この動きに拍車がかかる可能性があります。
このことは、すなわち良質な雇用の喪失を意味しており、現状の為替水準を放置すれば、特に中小企業をはじめ地方経済を支える金属ものづくり産業の崩壊にもつながりかねません。
資源・エネルギー、食糧の多くを輸入に頼る日本は、加工貿易により成り立っています。大震災の影響という特別な事情があるとはいえ円高の打撃も大きく、10月の貿易赤字が2,738億円に達するなど、2011年通期でも貿易収支が31年ぶりに赤字となる可能性が高まっています。
グローバル経済の中で、日本が新たな新成長分野を創出・育成する際、金属ものづくり産業が、引き続きその中心的役割を果たしていくためにも、我々はその産業基盤を、そしてそれを支える雇用を守っていく必要があります。
円高の主要因が欧米経済の信用不安・景気減速不安からの消去法的なリスク回避にあることは理解した上で、金属労協は、政府・日銀に対し、確固たる意志をもって実効ある円高是正に向け、一体となって市場介入および量的緩和も含めた大規模な金融緩和等、あらゆる施策の継続・展開を強く求めます。
TPPを巡る論議と金属労協の考え方
なお円高に加え、金属産業の空洞化懸念の背景、そして健全な産業基盤維持の足かせとして、デフレ、FTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)の遅れ、大震災以降の電力供給不安等の複合的要因が指摘できます。
このこととの関係では直近において、TPP・環太平洋パートナーシップ協定への参加是非を巡る民主党内での激しい論争を経て、11月のAPEC・アジア太平洋経済協力会議において野田首相がTPP交渉参加に向け関係国との協議に入ると表明されました。
金属労協はTPPについて、昨年4月に策定した「2010~2011年政策・制度課題」において日本の参加を主張し、横浜で開催された昨年のAPEC直前に「TPPへの早期参加表明を求める金属労協見解」を表明するとともに、さる10月20日には早期参加に向けた緊急アピールを発信したところです。さらにこれまでの間、政府・与党に対し要請活動を行うとともに、各産別には関係の深い国会議員の皆さんに対する理解活動を進めていただきました。
私も自動車総連の立場ではありますが、連合とともに民主党・経済連携PTのヒアリングを受け、金属労協の考え方もご説明してきたところです。
なお金属労協は政策委員会で多面的な論議・検討を進め、機関誌を通して現状の日本の農業・農政に対する組織内での正しい理解を深める活動にも取り組んでまいりました。すなわち金属労協は、早い段階からTPPに関わる論議・検討を進めてきたということです。
私は大震災からの復旧・復興を図り日本の再生を果たすためには、国内「金属ものづくり産業」の事業環境整備により国内事業基盤を強化し、雇用を確保していくことが不可欠であり、そのためにも世界の成長セクターたるアジア太平洋地域経済の成長を取り込む視点でTPPへ参加し、その枠組み・ルールづくりに主体的に関わっていく必要があると確信いたします。
TPPを巡る論議を聞いて感じるのは、1点はFTAAP・アジア太平洋自由貿易圏を目指す観点からの、国としての外交・通商政策の基軸となる考え方が収斂されていないこと、2点目は情報開示が不十分な中で、ともすれば金属産業と農業との二項対立的な取り上げ方をされてきたということです。
我々は自立した強い農業、環境にやさしく安全な食を供給する産業としての農業の確立を望みます。250万戸の農家の内、兼業農家が210万戸、その兼業先の2割は製造業であることから当然、その中には多くの金属労協の組合員も含まれています。農業問題については金属労協の立場で、引き続き政策面の検討を進めるべきと考えます。
加えて労働の観点から、現行のTPP(P4)は労働に関する覚書が締結されており、ILOの中核的労働基準を確認し、加盟国にこれに即した労働法や政策を求め、貿易や投資奨励のための労働規制緩和は不適切と規定していることをあらためて明確にしておきたいと思います。
なおIMF・国際金属労連は8月に「TPP交渉に関わるIMF声明」を発表しており、この中でTPPを、従来の2国間FTAではなし得なかった雇用拡大支援、社会的保護の改善、そして労働者の基本的権利、環境基準、人権、民主主義の推進を通じた生活水準の引き上げを目的とする貿易を実現するための新たなフレームワークを築くべき好機である、と位置づけていることを付言しておきます。
その他、国内産業空洞化阻止に向けた政策制度上の課題は引き続き山積していますが、金属労協は、産業・企業の健全発展と雇用確保・質の高い労働条件確立の基本は、労使の自助努力が基本であることを踏まえた上で、政策制度上の課題改善により、職場の努力が正当に報われる環境づくりに努力したいと考えます。我々が求めるのは、何が何でも金属産業を優遇してくれということではありません。グローバルな競争環境下、競合する他国の産業・企業との正当で公正な競争環境づくりなのであります。
2012年闘争の推進に向けた金属労協の考え方と決意
次に金属労協が2012年闘争の推進に向け、いかなる考えと決意で臨むのかという観点から申し上げたいと思います。具体的な闘争方針は、後程、若松事務局長から提案いたしますので、私からは問題提起も含め数点に絞りたいと思います。
JC共闘を進めるにあたっての基本スタンス
1点は、JC共闘を進めるにあたっての基本スタンスについてです。
我々は交渉環境が昨年以上に厳しさ募る状況にあるとの現実を直視した上で、政策制度課題の取り組みと併せ、JC共闘を通じて国内産業空洞化を阻止し、国内事業基盤を維持・強化するための「人への投資」を求めてまいります。
2012年闘争において、雇用の維持・確保と賃金・労働条件改善を通した雇用の質的向上による産業・企業を支える人材力の強化を図ることこそが、直面する困難を乗り越え、産業・企業の健全発展につなげていく唯一の道であると考えます。「人への投資」は「未来への投資」であり、企業として最優先すべき投資であると考えます。
特に大震災以降の復旧・復興過程で示された働く者の献身的な努力とモラルの高さ、そしてチームワーク、さらには自律的で迅速な職場の判断力と創意工夫などへの公正な評価の証として、加えて夏期電力需給対応過程での様々な勤務対応等への家族も含めた組合員の苦労と協力へ報いる観点からも、経営は、最大限の誠意をもって、我々の要求に応えるべきと考えます。
賃金については、デフレの進行をくい止め、景気の下支えを図る観点から、全ての組合での賃金構造維持分確保による賃金水準維持を至上命題と位置づけるとともに、大震災であらためて明確になった中堅・中小企業をはじめとする日本の金属ものづくり産業基盤・サプライチェーン全体への高い評価に相応しい賃金水準の確立を目指し、特に産業間・産業内の格差是正、賃金体系上の歪みの是正、さらには賃金水準が長期的に低下している組合における賃金水準の復元・是正を重視した取り組みを進めていきたいと考えます。
なおこの方針は、昨日の連合中央委員会で確認された連合2012春季生活闘争方針を全面的に踏まえたものであり、今次闘争において、金属労協は連合春闘全体を下支えし、賃金構造維持分を取りきることが絶対的な責務と自覚し、併せ賃金改善に取り組む組合を、産別と連携し、しっかりサポートしたいと考えます。
最低賃金についての問題提起
2点目にJCミニマム運動として取り組む最低賃金について、問題提起も含め触れたいと思います。
賃金水準を下支えする観点、および非正規労働者や未組織労働者の賃金水準を底上げする観点から、金属労協は、これまでもJCミニマム運動として、協定締結組合が約4割程度にとどまっている企業内最低賃金協定の締結拡大と水準向上、併せて同じ産業で働く基幹的労働者の賃金の最低基準である特定最低賃金、すなわち法定産業別最低賃金の取り組みを積極的に進めてまいりました。今次闘争においても取り組みの前進を期してまいりたいと考えますが、現在、特定最低賃金決定に関わる構造的な課題が浮上しています。
すなわち現在、全国の特定最低賃金の8割以上を我々金属産業が占めているわけですが、地域別最低賃金が2007年以降、「成長力底上げ戦略推進円卓会議」での合意、2008年7月施行の改正最低賃金法での「生活保護に関わる施策との整合性に配慮する」旨の明記、および2010年の「雇用戦略対話」における引き上げ目標の合意を踏まえ、地域別最低賃金水準が大きく改善されてきた結果、地域によっては地域別最低賃金と特定最低賃金の水準が急速に接近し、一部の地域・産業ではその水準が逆転する中で問題が生じています。
具体的には、本年度、東京都の特定最低賃金の審議において、使用者側は地域別最低賃金によってその水準を下回った4業種に関して、「役割を終えた」との主張を繰り返し、検討委員会を設置しての審議にも関わらず、金属関係2業種が「必要性ありに至らず」との結果となりました。
こうした使用者側の姿勢は、制度の目的・意義を理解しない暴挙と受け止めざるをえず、断じて容認できません。
そもそもの構造的な問題は、当該労使が参加する金額審議の前提となる必要性審議には当該産業の代表者が参加していないため、産業の実情に即した議論を進めることが困難であり、また公労使の全会一致の結論が必要とされているということです。東京における審議では、JC本部の調整、および連合東京、当該産別の本部・地方組織の努力もあり、業界団体・当該企業とも廃止すべきとの考え方はなく、産業労使による協議が必要との認識に立っていたにも関わらず、使用者側委員の独断により金額審議の道が閉ざされました。
金属労協は、今回の事態が今後、全国に波及しかねない問題と受け止め、連合と問題意識を共有し、連携しながら特定最低賃金の本来の役割である当該産業労使のイニシアティブ発揮による公正な賃金決定・公正競争の確保のための改革を進める観点からの具体的な検討に着手いたします。
60歳以降の就労確保の取り組み
3点目は60歳以降の就労確保の取り組みです。
2013年4月からの基礎年金部分に加えての報酬比例部分の引き上げを目前にしての待った無しの取り組みであり、①働くことを希望する者は、誰でも働くことができる。②年金満額支給開始年齢と雇用期間が接続する。③60歳以降就労者の組合員化を図る。との考え方に基づき、労働政策審議会職業安定分科会での審議状況を注視しつつ、制度充実に向けた取り組みを強化していきたいと考えます。
その他、同じ職場で働く非正規労働者の労働条件改善など労組の社会的役割を果たす重要な取り組み等、その詳細は後ほどの提案に譲ります。
集中回答日は3月14日の方向
なお取り組みにあっては、連合の「金属部門共闘連絡会議」の強化・充実を強く意識するとともに、連合「中小共闘」強化も引き続き重視していきたいと思います。
また闘争日程については、連合全体の戦術配置上の調整を踏まえ、別途、正式に決定致しますが、JC集中回答日は3月14日の方向とさせていただきます。
徹底的なこだわりを持ってJC共闘の推進を
最後に、容易ならざる交渉環境下の取り組みとなることは覚悟した上で、職場の負託に応える結果を引き出すため、徹底的なこだわりを持ってJC共闘を進めたいと思います。
世界と日本が大きな岐路にある中での交渉となります。金属部門に働く者の雇用と生活の確たる将来展望を切り拓くために、全力を尽くし合うことを確認し、協議委員会冒頭にあたっての挨拶といたします。ありがとうございました。