2020年度特定最低賃金の取り組み方針を確認
加盟5産別から最低賃金担当者ら約280名が出席
金属労協(JCM)は、2020年1月22日、東京・大田区の「大田区産業プラザ」で、加盟5産別の中央・地方の最低賃金担当者ら約280名出席の下、金属労協2020年最低賃金連絡会議を開催し、2020年度特定最低賃金の取り組み方針などを確認した。
野中孝泰労働政策委員長挨拶(要旨)
*昨日は、金属労協「2020年闘争推進集会」を開催した。2020年闘争の取り組みの中で、各産別が賃上げとともに重要な取り組みとして挙げたのは、「企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ」である。皆さんもご承知の通り、「企業内最低賃金協定」は、特定最低賃金の金額改正・新設の根拠となるとともに、金額審議の重要な参考資料となっている。
*地域別最低賃金は、政府が2016年に、年率3%、平均1,000円の方針を掲げて以降、4年続けて、平均で3%程度引き上げられている。最も高い東京都では、2019年度に1,013円となった。今後も毎年3%引き上げられた場合、3年後の2022年度には、1,100円程度になる。金属労協の所定労働時間の平均である161時間で月額に換算すると177,000円程度に達することになる。
*金属労協では、2020年闘争方針において、月額177,000円(時間額1,100円)を企業内最低賃金協定の中期的目標として掲げた。各産別はこの目標の達成に向けて、計画的に進めていただくことをお願いする。
*経団連は、昨日、「経労委報告」を発表し、相変わらず、特定最低賃金の廃止論を強く発信している。しかしながら、社会の公器である企業には使命がある。むしろ、企業内最低賃金協定を特定最低賃金に波及させ、同じ産業で働く未組織労働者の賃金を労使でしっかり上げるという風にならなければならない。また、「生産性運動三原則」に則れば、バリューチェーン全体の賃金の底上げによって成果を公正に分配して、産業の魅力を高めるということと、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げを連動させていくことが重要である。
*本日の最低賃金連絡会議をスタートとして、2020年度の特定最低賃金の取り組みが本格化する。まずは、春季生活闘争で、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準引き上げにしっかり取り組み、その成果を、特定最低賃金を通じて、未組織労働者・非正規労働者に波及すべく、産別本部・地方組織、連合、金属労協の連携を強化しながら、取り組んでいきたい。
「2020年度特定最低賃金の取り組み方針」の確認
浅沼弘一事務局長から「2020年度特定最低賃金の取り組み方針」を報告した。
→ 2020年度特定最低賃金の取り組み方針(PDF)
「特定最低賃金の審議会対策の実践」
JAMの中井寛哉書記長より、大阪地方最低賃金審議会委員の経験を踏まえて、審議会対策のポイントと連合大阪における特定最低賃金のあり方に関する研究会報告について、講演を行った。
全体討議
特定最低賃金の取り組みについて、参加者から意見・要望等を述べていただき、中賃委員と講師、金属労協より今後の特定最低賃金の取り組みについてコメントした。
主な意見
*東海地域では、愛知県の審議結果が大きく影響している。地域相場に締め付けられ、労使のイニシアティブが発揮できていない。単独県内の対応では限界があり、経済圏内の意見交換の場を作っていただきたい。
*地域別最低賃金の急激な引き上げで、使用者側の反発が強い。膠着状態において、いくつかツールを持っていれば、掘り下げた議論ができる。新たなツールを見出し、交渉する必要がある。
*地域別最低賃金が上昇する中で、新たなロジックの確立や指標が必要な時期にある。特定最低賃金の取り組みは、各地域での対応となるが、金属産業全体で優位性を保つための取り組みが必要であり、今後のあり方について、引き続き助言をいただきたい。審議を進めていくうえで、都道府県別最低賃金決定状況など、全国のタイムリーな審議状況を情報提供していただきたい。
*必要性審議は、地方では限界がある。何をもって必要性ありを出すのかが難しくなっている。基幹的労働者をどのように定義するかが求められているのではないか。産業の入り口賃金、一人前ミニマムなどいろいろな考え方があるが、すぐに合意できる問題ではない。中央の労使で合意することが一番大事。
*大阪では、必要性審議を専門部会方式でやっている。産業に関係ない経済団体の代表が、なぜ責任を持って必要性ないと言えるんだ、と繰り返し議論してきた。それぞれの地方でこれまでのやり方、歴史があると思うが、飲み込まれそうなところから、拡大するのでよいので、やってみてはどうか。
*何らかの武器、確固たる裏付けを持って、審議に臨みたい。そのためには、基幹的労働者の定義をポジティブに位置付け、だからこの金額だというのを持ちたい。JCMとして拠り所となる基幹的労働者、金額の方向付けをしてほしい。
中賃委員、金属労協コメント
参加者からの発言に対して、中央最低賃金審議会の小原委員(電機連合)からは「特定最低賃金制度の経緯を考えれば、適用労働者の見直しを検討して良いと考えるが、地域や産業の事情を考慮し、産別本部と地域で連携した判断が必要」、平野委員(JAM)からは「特定最低賃金は、格差是正、公正競争に資する取り組みをするために、横断的にある基準をもった賃金水準を設定して、社会に波及させていく運動の一環。最低賃金は法で守られ、横軸を入れることで強い効果があるので、しっかりやっていかなければならない」、伊藤委員(基幹労連)からは「地方ブロックごとの会議を開催し、地方ごとのしっかりした議論を行うことで、活路を見出したい」等とコメントした。
また、JAM中井書記長からは「できるところから高い相場をつくることで、底上げできる。連合台で打順の調整をお願いしたい」「地域で企業内最低賃金協定の締結率を高めて、労働協約ケースへの移行することが大事。高い協約を結び、締結率を高めれば、労働組合が労働市場を主導できる」「基幹的労働者については連合台でも検討してほしい」と述べた。
浅沼事務局長からは、地域の支援を強化するため、「金属労協の地方ブロック会議でも最低賃金について議論できる場を提供してきた。今後もこの取り組みを継続していく」「さまざまなツールを提供させていただいているが、さらに充実させていく」と述べた。
最後に、野中副議長・労働政策委員長は、「現場の交渉のツール、武器が必要だという意見を多くいただいた。ツールには、書物やデータもあるが、産別、地域を超えて同じ苦労をしている仲間がいて、自分たちの課題を提起し、事例を共有するという、労働者側の団結、ネットワークこそ、強い武器になる」「地域の活性化、地域を守るとなれば、そこで働いている人を守る、企業を誘致するということにどう貢献できるのかについて、労使がイニシアティブをとって取り組んでいかなければならない」と述べ、今後とも連携を強化して取り組んでいくことを確認した。
以 上