財務省、日銀、環境省、厚労省、内閣府、経産省、文科省を訪問
国内ものづくり拠点維持と雇用・労働を取りまく課題等で意見交換
金属労協は、2013年6月18日に財務省、20日に日銀、25日に環境省と厚生労働省、7月10日に内閣府、7月22日経産省、8月28日文科省を訪問、懇談した。一連の政策懇談では、金属労協から、国内工場の閉鎖、雇用の喪失が多数に及んでいることなど、金属産業の状況を説明した上で、円高是正の定着と為替相場の安定、環境と経済成長が両立するエネルギー環境政策の実現、長期安定雇用の下での良質な雇用を維持することが重要であること、ものづくり教育の充実などについて訴えた。各府省等のコメント概要は以下の通り。
2013年6月18日(火)財務省 佐藤慎一総括審議官
◎1月22日の政府・日銀の共同声明に明記した通り、日銀は物価上昇率2%を目標とする金融緩和、政府は機動的な財政運営、成長戦略、持続可能な財政構造確立に取り組んでいく。
◎良い物価上昇になるには、経済が活性化し、賃金が上がらなければならない。企業収益が改善し、それが賃金の上昇となり、需要となってマーケットを動かすという好循環にしなければならない。
◎成長戦略で新しいマーケットを作るだけでなく、個々の企業、業界の行動様式が変わらなければならない。政労使でも生産性の向上など、話し合うべきことがある。収益が上がれば、賃金を上げるように、政労使でやっていければ良い。
◎海外の資金が入るのは、財政の健全化が前提である。
2013年6月20日(木) 日本銀行 内田眞一企画局長
◎1月に政府と共同声明を出し、消費者物価上昇率2%を目指すことになった。やることは示しているので、その通りのことをきちんとやっていく。
◎金融市場が動くことで株価が変わり、為替にも影響し、金利も反応している。経営しやすい環境を整え、企業が新しいフロンティアに行けるようにしたい。これによって、マクロ環境は賃上げしやすくなる。
◎日本経済を底上げするには、一部が儲かれば良いわけではない。調整過程では、利益を得たところ、得ていないところデコボコになるが、2%の物価上昇で調整しやすくなる。労働生産性にふさわしい賃金を実現するにも、物価が上昇している方がやりやすい。
◎日銀の国債買い入れが巨額なので、市場に迷いが生じ、海外金利の上昇もあって、一時、日本も金利が上がってしまった。その後、市場との対話を繰り返し、日銀の国債購入も工夫をしているので沈静化している。今は荒れている感じからは遠い。
◎最近の株価下落は、急激な上昇の調整局面と見ている。ヘッジファンドの決算期の売り、バーナンキFRB議長の金融緩和出口発言などが要因である。年初から比べれば、日本の株価は低くない。日本がデフレから脱却し、GDP3%弱を達成すると信じてもらえれば、戻ってくる。
2013年6月25日(火) 環境省 三好信俊大臣官房審議官(地球環境局担当)
◎2020年の温室効果ガス削減目標は、総理の指示により、ゼロベースで見直す。実現が無理だとわかっている「25%」の目標を掲げたままでは、国際的に理解が得られない。日本はまじめに 取り組んでおり、そのことをきちんと反映したい。
◎国際的に見ても、環境分野の産業を伸ばしていくことが大切。日本企業の持つ世界最高水準の技術の海外展開で、途上国のCO2を 削減して、それを日本の削減にカウントする「二国間オフセットクレジット(JCM)」を活用したい。
◎日本全体の電力が足りない中ではあるが、安いということだけではなく、温室効果ガスを管理していかなければならない。石炭火力が増えて いるが、古い設備は、高効率火力発電などの新しい設備に置き換えてもらうように取り組んでいく。
2013年6月25日(火) 厚生労働省 熊谷毅政策統括官
◎不本意な非正規労働者は、労働力調査で348万人非正規労働者全体の2割を占める。正規労働者、非正規労働者の二極化ではなく、安心のサポート、正規化のサポートに取り組む。
◎雇用調整助成金は、否定しているのではなく、経済が回復しているにもかかわらず受給し続けている企業もあるので平時に戻そうということ。
◎欧州ものづくり産業において強みを有するドイツの雇用維持策についても研究していきたい。働き方の一部だけを取り出して、見直すということはできないと認識している。
◎雇用・労働問題については、労働政策審議会で論議することになる。当面は、労働者派遣法、労働時間の議論が始まる。解雇規制は判例法理であり、緩めるということは法的にあり得ないというのが厚生労働省の立場。金銭解決の話もあるが、労政審で具体的な施策のあり方を議論したい。現場の議論の積み重ねが大事だと思う。
2013年7月10日(水) 内閣府 河越正明政策統括官(経済財政運営担当)付参事官(総括担当)/高橋淳政策統括官(経済財政運営担当)付参事官(産業・雇用担当)
金属労協は、7月10日、内閣府を訪問し、円高是正の定着と為替相場の安定や、財政再建などの課題について、懇談を行った。内閣府のコメント概要は以下の通り。
◎金融緩和の目的はデフレ脱却であり、円安をめざしている訳ではないが、日本経済の回復に向け必要な過程であり、努力する。
◎骨太方針の中で、2015年に向けて赤字半減などの目標を示したが、それだけで済むわけではなく、中期財政計画において、財政再建に向けた道筋を明らかにしていかなくてはならない。
◎何もしなくても賃上げができれば良いが、何か仕掛けがいるのであれば、政労使の会議なども全体の環境づくりになるのではないか。しかるべき果実が得られているのであれば、賃上げが中長期的に日本の成長に必要だということを認識できれば、ひとつの場として有効である。
2013年7月22日(月) 経済産業省 小川誠経済産業局審議官
金属労協は、7月22日、経済産業省を訪問し、成長戦略や、TPP、エネルギー問題などの課題について、懇談を行った。経済産業省のコメント概要は以下の通り。
◎民間のイノベーションを促進するためのサポート、邪魔があれば取り除くということが大事。産業間の雇用移動は、受け入れる産業がなければうまくいかない。
◎成長戦略は、①過小投資を是正し、設備投資を拡大できる投資減税、②過剰規制の是正、③過剰供給是正・過当競争の解消策を「産業競争力強化法」に盛り込む。
◎TPPの交渉参加後の情報は、TPPに対する批判を真摯に受け止め、不安を払拭する情報を提供している。
◎原子力発電所は、安全性を最優先に、基準に適合すれば、地元の理解に向けて努力する。原子力発電所の審査体制は、由々しき状況。政府全体で考えるべき。
◎下請代金支払遅延等防止法に基づき、16業種のガイドラインを作成し、HPで周知や業種ごとの説明会を行っている。ベストプラクティス集の作成、下請取引コンプライアンスプログラムも推進している。
◎産業事故防止は、ひとつの工場の保安というだけでなく、産業全体での保安という観点が重要であると認識。
2013年8月28日(水) 文部科学省 大槻達也総括審議官
金属労協は、8月28日、文部科学省を訪問し、工業高校におけるものづくり教育の推進、金属労協としての小学生を対象としたものづくり教室の開催状況、今後のものづくり教育の課題などについて、懇談を行った。文部科学省のコメント概要は以下の通り。
◎実習の充実に関しては、新たな学習指導要領で、長期実習に取り組むこととしている。
◎材料費の予算は、職業高校設置者の判断で行っている。学校施設環境改善交付金、私立学校施設整備費補助金の3分の1を補助して、施設整
備を促している。
◎企業が学校支援をしやすいように、との要望については、学校側の外に対する間合いの取り方が難しいこと原因ではないか。
◎給付奨学金制度は、昨日(8/27)与党の政策調査会で合意したと聞いている。平成26年には実施できるようにしたい
◎「実習助手」については、重要な仕事と認識している。職名の変更は考えていないが、各方面の意見は聞いていきたい。処遇は、産業教育手当法の中で明確にされている。公務員給与の引き上げは難しい状況にある。