3つの分科会に分かれて活発な討論
金属労協は、2010年4月19日(月)午後から20日(火)午前にかけて、神奈川県「ワークピア横浜」で、2010年政策・制度中央討論集会を開催した。同討論集会には、加盟産別・単組から代表200名が出席した。
冒頭、金属労協を代表して挨拶に立った前田雅昭副議長(政策委員長)は、挨拶の中で、「金属労協は従来より、『民間・ものづくり・金属』に働く者の立場から、政策・制度の取り組みを展開してきた。昨年9月に民主党政権がスタートし、『国民生活第一』の政策を強力に推進しているところであるが、同時に、現在策定中の「新成長戦略」がきわめて注目されるところとなっている。成長と生活のバランス、成長成果の生活への配分というテーマこそ、まさに『民間・ものづくり・金属』の観点からの、金属労協の政策・制度の真骨頂である。グローバルな市場競争の荒波にもまれ、外貨を稼ぎ出している産業だからこそ、説得力をもって主張できるものがある、とわれわれは考えている。この討論集会は、2010~2011年の2年間にわたる政策・制度の取り組みの実質的なスタートとなる。本日の分科会、明日の全体討論、それぞれみなさまからの積極的なご発言をお願いしたい」と述べた。
続いて、金属労協の浅井茂利政策局次長から、「2010-11年度政策・制度課題」(原案)についての説明を行った。浅井政策局次長は、金属労協政策・制度課題の三本柱『ものづくりを中核に据えた国づくり』『世界最先端の地球環境対応』『良質雇用の追求』を中心に、具体的取り組み課題について説明し、理解を求めた。
この後、政策・制度の3本柱毎に、分科会A「ものづくりを中核に据えた国づくり」、分科会B「世界最先端の地球環境対応」、分科会C「『良質な雇用』の追求」の3つの分科会に分かれて、討議を行った。
二日目は、(株)サステナビリティ・コンサルティングの石川和幸代表取締役から「ものづくり日本の『強み・弱み』と持続可能な企業経営」と題して講演を受けた。同氏は「なぜ日本の製造業は儲からないのか」を副題に、「持続可能な企業経営とは?」について分析した。その際、問題の認識と課題の設定にミスはないのか?との問題意識のもと、「ものづくり」とは、つい、「ものづくり基盤技術」のことと考えてしまうが、実は、「ものづくり」とは、「ものづくり基盤技術」と「ものづくり管理技術」を両輪としている、と想定できると述べている。ものづくり基盤技術とは、要素技術的な分野、職人的な技術力であり、そもそも強いが、担い手の減少から振興策が打たれている。一方、「ものづくり管理技術」とは、要素技術を統合し、方向付ける技術のことであり、この考え方は、いまだきちんと認識されていない上に、「収益率が高いのが善」、「会社は株主のもの」、「成果主義」など、おかしな海外輸入コンセプトで踊らされている、と指摘している。日本の製造業が儲からない5つの課題仮説として、①儲けを生むビジネスモデルを大胆に考えられない思考上のボトルネック(支障となるもの)がある。②在庫をマネージし、コントロールするはずだったSCM(サプライチェーンマネジメント:企業活動の管理手法の一つ。取引先との間の受発注、資材の調達から在庫管理、製品の配送まで、いわば事業活動の川上から川下までをコンピュータを使って総合的に管理することで余分な在庫などを削減し、コストを引き下げる効果があるとされる)ができていない。③全体の儲けを帳消しにしかねない管理指標に振り回されている。④いまだ製品販売優先の組織体制で、アフターサービスへの視野が欠落している。⑤IT(情報技術)に関するリテラシー・ガバナンス(知識・能力統治)が低く、金食い虫になっている、を提起して、持続可能な企業経営のあり方について言及した。
この後、前日の3つの分科会報告があり、全体討議を行った後、若松事務局長から、各産別・単組からだされた意見・要望について本部見解を大要次のように発表した。分科会A「ものづくりを中核とした国づくり」については、「ものづくりの意義については、ものづくりに関わっていない人にもわかるように、データなども加え、文章を補強していく。また、日本のものづくりの強みがどこにあるのかについても記載し、それを他の産業にも波及させていくという観点を付加していきたい。さらにものづくりがマクロ経済全体にとってどれだけ重要なのか、ものづくり産業で働くことが、どれだけ社会に貢献することになるのか、強調していきたいと思う」等と述べた。分科会B「世界最先端の地球環境対応」については、「COP15以降、どの国がどのような削減目標を掲げているのか、わかりやすく比較したものをつけてほしいとの指摘があった。背景説明の中で、これまで登録された主要排出国の削減目標の表を付加する」「全体としては、縦割行政の中で、各省庁に別々の要請をするのではなく、省庁横断的な横串を意識して、効果的な要請活動を行うべきとの意見をいただいた。その通りであり、政府要請、連合への意見反映についてバランスをとりながら、政策実現の効果的な方法を模索したい」等と述べた。分科会C「『良質な雇用』の追求」については、「家庭と仕事の両立支援については、働き方の見直しが重要であるとの指摘があった。まったくご指摘の通りであり、長時間労働の見直しや、短時間勤務制度の導入など、企業内の取り組み、ワークルール面での取り組みを含め、もれなく記載していきたいと思う」「女性交流集会でもご指摘があったが、待機児童楷書を一刻も早くとの切実なご意見が多かった。JCとしても、まさに喫緊の解決すべき問題だという認識である。とにかく、安心して子供をあずけられる良質な保育所、学童保育をきちんと作ってくれ、というのが我々の気持ちである。「早急」という言葉を入れ、一段強い表現をしていきたい。また、保育士・学童保育指導員の労働条件向上を求めていることがはっきりわかる記述としたい」等と述べた。