2016年闘争推進集会ひらく
「底上げ・格差是正」に全力を!
JC共闘一枚岩で、労使に課せられた社会的責任を果たすことを誓う
金属労協(JCM)は、2016年1月26日午後、電機連合会館で、加盟産別・単組等から約180名出席のもと、2016年闘争推進集会を開催した。集会には、JCM加盟産別・単組から代表200名が出席した。井上事務局次長の司会のもと、冒頭、相原議長が挨拶した後、本部報告「2016年闘争に臨む金属労協の主張」を浅井政策企画局長から報告した。次に、講演「ROEが奪う競争力」と題して、手島直樹小樽商科大学ビジネススクール准教授から講演を受けた。続いて、金属労協加盟5産別の書記長・事務局長をパネラーに、浅沼金属労協事務局長のコーディネーターの下、パネルディスカッション「2016年闘争に向けた各産別の取り組み」を行い、2016年闘争の情勢や各産別の取り組みのポイントを中心に認識を深めた。最後に、相原議長の音頭で、金属労協・各産別書記長・事務局長と共に、参加者全員で、金属労協一枚岩で闘争勝利に向け、「ガンバロー」三唱を行い、閉会した。
★議長挨拶要旨(相原金属労協議長)
金属労協は、昨年12月に2016年闘争方針を決定した。金属労協200万人、5産別の総合力を発揮して、2016年闘争を推進していく。
2014年、2015年闘争は、大きな前進があったが、賃上げの獲得組合が6割に止まったこと、賃上げ額の規模間格差が広がったことが課題であった。2016年闘争では、その課題を放置せず、春季生活闘争の機能を最大限発揮することが大事である。
日銀の黒田総裁は、連合の新年交歓会で、2016年闘争では、全国津々浦々、多くの人が賃上げの傘のもとに入るように、波及を伴う春闘メカニズムを最大限発揮してほしいと言われた。日銀総裁に言われるまでもなく、JC共闘が気持ちを一つにして、力を発揮していかなければならない。
経団連の「経労委報告」の中で、2016年闘争の意義が経済の好循環を回していくという社会的な要請に応えることにあるとしていることについては、労使ともに異議を唱えるものではない。しかし、経営側が、賃上げは「収益が拡大した企業」において「年収ベース」と言っており、所定内賃金の引き上げに後ろ向きであることに対しては、強い疑問を提示せざるを得ない。賃金の社会性の観点、公正労働基準の観点、「人への投資」の観点、人材を確保する観点からみれば、賃金への適正な成果配分が必要性であることを強く言いたい。
デフレ脱却を進めるには、息の長い消費拡大が求められる。2016年だけでなく、2017年に向けて処遇を確実に引き上げていくことを、ともに確認し合わなければならない。総需要にインパクトを与えることになる2017年4月の消費税の2%引き上げを視野に入れるのであれば、2016年の賃上げは、2017年以降の日本経済に橋を架ける意味でも重要な意味を持つものである。
個人消費は、景気のバッファーとして国内経済の安定化を図る上で、重要なものである。非正規労働者の拡大がこのまま行われ、経済の悪化を招くことがあれば、大きな瑕疵を残すことになる。盤石な国内経済をつくる上での、賃上げの重要性、非正規労働者の正社員化の必要性をまず申し上げたい。
金属産業の職場を支える200万人の努力に対して、まず報いてほしいというのが5産別共通した気持である。リーマンショックなど様々な困難がある中、われわれが技術を高め、技術・技能を継承してきたことは間違いない。経済の発展を促す上でも、「人への投資」がその源泉である。
2016年、金属労協が最も力を入れているのは、「底上げ、格差是正」である。経労委報告では、極めて否定的な態度を表明しており、看過することはできない。われわれ金属産業は、バリューチェーンの各職場で日々積み上げているわれわれの営みが、日本の中軸産業として多くの雇用を生み出し、日本の基盤をなしていることに誇りを持っている。2016年闘争は、格差是正、非正規労働者の雇用・労働条件の改善など、金属一体となった取り組みができるかどうかにかかっている。金属労協は、これまでも中小に対してきめ細かな対処をしてきたが、付加価値の適正配分に向けた取り組みをさらに展開していく。
2016年闘争では、企業内最低賃金に関して、全単組での協定締結、および月額159,000円以上の水準、もしくは月額2,000円以上の引き上げに取り組む。企業内最低賃金協定は、組合員の賃金の下支えだけでなく、特定(産業別)最低賃金の引き上げを通じて、正社員と非正規労働者、組合員と未組織労働者の如何を問わず、金属産業で働く者全体の賃金の底上げにも役割を果たしている。労働組合の社会的責任の観点からも、強力に取り組んでいく。
非正規労働者の雇用と賃金・労働条件の改善にも、同じ職場で働く仲間として取り組んでいく。非正規労働者の賃金・労働条件の実態・課題の把握や組織化などによって、労使交渉・労使協議の基盤整備を図りつつ、正社員への登用促進や、各産別の要求基準を踏まえた賃上げの実現、労働諸条件の改善などに取り組む。ともに生み出した成果を賃金・労働条件に適正に配分されるように、労働組合として力を尽くしていく。
経労委報告では、金属産業に影響の大きい「特定(産業別)最低賃金」についても、例年のごとく「廃止論」を振りかざしている。これは、この制度が基幹的労働者を対象として、公正な賃金決定や公正競争の確保に資する制度であり、地域別最低賃金とは対象者も目的も異なる制度であることを無視した主張である。特定(産業別)最低賃金の役割は、産業内の賃金格差是正と賃金ダンピングの防止による公正競争の確保であることからも、制度の意義・役割は一層高まっている。特定(産業別)最低賃金の趣旨を踏まえ、当該産業労使の意見を反映するなどの審議の改善を行い、当該産業労使がイニシアティブを発揮しながら、産業の魅力を高め、優秀な人材を確保することが産業の競争力を高めるという好循環サイクルの構築をめざしていくべきである。明日、全国の最低賃金の担当者が約300名の参加の下、「最低賃金連絡会議」を開催し、2016年度の取り組みに向けた意思結集を図っていく。
2016年闘争は、産別ごとに状況が微妙に異なるなかでの取り組みになる。2016年は、緊張の中での幕開けとなったが、それを断ち切る必要がある。われわれの生み出した付加価値を働く場の安定につなげ、豊かな労働市場を維持・拡大するという大きな役割を担い、JC共闘が一枚岩となって労使に課せられた社会的責任を果たしていくことを皆さんと誓い合いたい。
★報告「2016年闘争に臨む金属労協の主張」(浅井政策企画局長)
浅井茂利政策企画局長より、経団連「経営労働政策委員会報告」の主張に対して、金属労協が取りまとめた「2016年闘争 交渉参考資料」に基づいて、労働側の主張のポイントを説明した。 → 2016年闘争交渉参考資料
★パネル討論「2016年闘争に向けた各産別の取り組み」(パネラー:5産別書記長・事務局長)
つづいて、浅沼金属労協事務局長によるコーディネートの下、5産別書記長・事務局長をパネラーに「2016年闘争に向けた各産別の取り組み」と題してパネルディスカッションを行った。パネラーからは、各産別の産業動向と闘争方針の概要を説明した後、2016年闘争における取り組みのポイントを紹介し、相互の理解を深めた。→2016年闘争金属労協各産別内容(原案)
各産別パネラーからの主な発言内容は以下の通り。
【自動車総連 郡司典好 事務局長】
* 賃上げは、「成果の適正配分」「一体感を重視」「全体の底上げ」「社会的役割の発揮」の観点から、3,000円以上とした。
* 底上げの取り組みについては、賃金の取り組み、非正規労働者の取り組み、企業内最低賃金の取り組みの3つを連動して取り組む。非正規労働者の賃上げについては、原則として賃金改善分を設定することとし、時給20円を目安に取り組む。20円は、賃上げ額3,000円を163時間で除した金額。企業内最低賃金については、158,000円以上とする。
* 自動車産業全体の底上げをめざして、「付加価値の最適循環運動」を立ち上げ、2016年から3年間、集中的に取り組む。自動車産業の競争力を、企業規模の大小に関わらず職場段階から高め、付加価値の最大化、付加価値の適正評価、企業間・業種間の協力強化による健全な改善を通じて、付加価値を産業のバリューチェーンに循環させる運動である。春闘と同時並行的に取り組んでいく。
【電機連合 野中孝泰 書記長】
* 2016年闘争は、「生活不安、雇用不安、将来不安」を確実に払拭することで、「経済の好循環」を実現するための取り組みと位置づけた。
* 賃上げについては、3,000円以上の賃上げを求める。個別企業の労使交渉と産別労使交渉を連動させ、マクロの視点で論議し、中期的視点に立って物事を考えるべきことを訴えていく。3年目の賃上げが必要という認識に立つことが大事だと考える。統一闘争による波及効果を引き出していく。
* 中闘の回答を超えられない問題をどう乗り越えるかという課題認識から、2015年闘争から、「主体的に処遇改善に取り組む領域」について、めざすべき水準を「政策指標」、立ち位置を確認するための「ベンチマーク指標」を設定して、格差是正に取り組んでいる。業種別、規模別、地域別で示すなど、ブラッシュアップをしていきたい。
* 2015年に非正規労働者の実態調査を行った。2009年調査と比較して、間接雇用が10.4%減少し、直接雇用が7.9%増加している。直接雇用の非正規労働者の労働条件には、約半数の組合が関与をしていないのが実態である。賃金実態も調査しているので、今後分析する。
【JAM 河野哲也 書記長】
* 中小企業では人材確保、育成が課題となっていることから、2016年も、賃金の底上げ、格差是正をめざす。格差是正、賃金改善分として、6,000円の要求に取り組む。平均賃上げの要求は10,500円、JAM一人前ミニマムの18歳は159,000円、年齢別最低賃金の18歳は159,000円とする。
* 格差是正の取り組みとして、JAMでは、17地方JAMの106地協に1人ずつオルグを配置し、企業実態を把握しながら、単組の要求組立にも入り込んで、目指すべき賃金設定して取り組んでいく。公正取引も併せて、従来の取り組みを強化していく。
* JAM結成以来、公正取引の問題や技術・技能の育成に取り組んできた。JAMとして、これまで3回にわたって実態調査を行ってきた。直近では、連合が2015年10月に調査を行い、55%で、コストダウン、値引き要請、労務費の削減などがあったという結果になっている。良い意味で付加価値の適正循環がなされなければ、グローバルで生き残ることはできない。2月に工業会、省庁要請を行うなど、通年の取り組みで政策実現をめざす。2015年7月に設立した「ものづくり国会議員懇談会」と連携し、総合的に進めていく。
【基幹労連 神田健一 事務局長】
* 継続的な賃上げによって、マクロの視点からの「日本経済の好循環」実現、ミクロの視点からの「魅力ある労働条件づくり」と「産業・企業の競争力強化」の好循環実現の2つの好循環実現をめざす。
* 基幹労連の各産業は、鉄鋼の総合4社が大幅な減益見通し、総合重工6社が増収増益見通し、非鉄6社が減収減益、建設大手ゼネコンは増収増益見通しとなっており、産業ごとに違いが大きい。
* 基幹労連では、2年サイクルで春闘に取り組んできた。これは、デフレ下において、産業政策など様々な課題がある中で、生活の安心・安定を担保するためのものであり、2年サイクルの裏の年は、格差改善に注力してきた。2015年の経過も踏まえ、産業ごとにばらつきがある中で、2年サイクルでどう取り組むべきかを検討してきた。これまでも、業種ごとの横串を重視する考え方で取り組んできたが、2016年度、2017年度の賃金改善については、2年分、8,000円を基準に、業種別のまとまりを重視して取り組んでいく。
* 働き方改革についても、従来のワーク・ライフ・バランスの延長ではなく、「あるべき姿」について労使で認識を共有しながら、制度・運用・業務・仕組み・風土・雰囲気作りなど、あらゆる観点で検討を進める。
【全電線 岩本 潮 書記長】
* 事業構造改革の影響で、人員の再配置や見直しが行われていることから、雇用の維持・確保を最優先すべき最大の課題と位置づけ、継続的な取り組みを推進していく。
* 賃上げについては、賃金の社会性・横断性や実質賃金の維持・向上などの観点から、個別賃金方式で3,000円以上の引き上げに取り組む。
* ワーク・ライフ・バランスについては、労働時間等設定改善委員会等を活用しながら、労働時間の実態を把握し、改善に結びつけていく。次世代育成支援や育児・介護への対応については、すべての単組、労働者が対象となることを基本に、産別として基本的な考え方を示す。
* 2015年末に非正規労働者の実態調査をした。2007年に24.7%を占めていた非正規労働者は、派遣労働者の大幅な減少により、20.3%に減少している。非正規労働者の賃上げについては、これまでも賃上げの付帯要求として取り組んでおり、引き続き取り組む。
* 適正取引の確立に向けては、電線工業界が建設電販分野における商習慣改善に向けて「取引適正化ガイドラインを作成するため、産別としてのアプローチを検討している。
★2016年闘争勝利に向けて、全員でガンバローを三唱
最後に、相原金属労協議長の音頭で、今次闘争における「底上げ・格差是正」の重みを認識し、金属労協5産別200万組合員が一枚岩となって要求を実現すべく、不退転の決意をもって交渉に臨んでいくことを誓い、全員でガンバロー三唱して、闘争推進集会を終了した。