第9回アジア金属労組連絡会を開催
今後のインダストリオール時代に相応しい
新たな枠組みを求めることを確認
国内JCMから34名、アジア太平洋地域13カ国20組織から34名、あわせて80名が参加
金属労協(JCM)が主催する第9回アジア金属労組連絡会議は、2016年9月2,3日の両日、京都市の京都国際会館で開催した。会議には、JCMから相原議長以下、各産別代表ら39名、IA日本加盟組織であるUAゼンセンからオブザーバ1名、インダストリオール本部からベルトボルト・フーバー会長、ユルキ・ライナ書記長、松崎寛ICT電機・電子部会/造船・船舶解撤部会部長、執行委員1名、地域事務所所長2名、そして海外組織からアジア太平洋地域13カ国・地域のインダストリオール加盟金属労組20組織から34名、あわせて合計80名が参加した。
オープニング
オープニングは、日本の古都にふさわしく、玲月流初代篠笛奏者森田玲氏による篠笛の演奏で、第9回アジア金属労組連絡会議に花を添えた。
主催者挨拶(相原JCM議長)
冒頭、主催者を代表して、相原JCM議長が挨拶に立ち、「この京都国際会議場は、1997年に
COP3が開催され、地球と人類の将来に関する英知が結集された『京都議定書』が締結された場である。そのような場で皆さんをお迎えし、第9回アジア金属労組連絡会議を開催できたことをうれしく思う」と歓迎の辞を述べた後、会議における各国報告について、「アジア太平洋地域の金属労組が直面する課題を、それぞれの組織から報告いただき、それをもとに、パネル・ディスカッションで理解を深めると同時に、共通の課題を掘り起し、それら課題を克服するための対策を考えていきたい。それぞれの組織の経験、好事例、成功事例などみんなで共有していただきたい」と要望した。次に、アジア太平洋地域の金属労組の活動について言及し、「このアジア金属労組連絡会議は、歴史をたどれば、1970年代にIMFがアジア地域の若手労組幹部に対する教育活動として開始された、『東南アジア・リーダーシップコース』が始まりである。その後IMF-JCがその活動を引き継ぎ、『アジア金属連帯セミナー』を1990年代に開始した。アジア金属連帯セミナーは年々規模を拡大していき、10年ほど前に、現在の『アジア金属労組連絡会議』に発展した。この連絡会議は、何かを決定する場ではなく、アジア太平洋地域でIMFの活動を補完、促進するため、各国の金属労組が抱える問題と対応についての情報交換を行い、経験共有を図るという会議である。アジア太平洋地域のIMF活動から連絡会議についての歴史的経緯については、後ほど小島正剛JCM顧問から報告をいただき、理解を深めたい」と述べた。
次に、10月開催のインダストリオール第2回世界大会の意義について触れ、「今年10月にはブラジル・リオデジャネイロにおいて、インダストリオールの第2回世界大会が開催され、インダストリオールも第2期に入ろうとしている。旧3GUFの枠組みを乗り越え、新たなGUFとしてのインダストリオール・グローバルユニオンの文化を作っていきたいと考えている。今後の活動の重点は、地域活動にあると言える。地域での活動を充実させ、インダストリオールを支えていく必要がある。特にアジア太平洋地域は世界の成長の中心であり、我々自身がその活動を充実させていくべきである。現在、第2回世界大会に向け様々な議論が進められている。インダストリオールの規約改正の議論では、地域活動に重点を置き、本部・地域事務所・地域の執行委員や加盟組織との連携をより円滑に効果的にしていくための改正が議論されている」と述べた。最後に、アジア金属労組連絡会議の今後の活動について、「このアジア金属労組連絡会議もインダストリオールの枠組みに合わせ、さらに発展させていくべきである。そのためには、みなさんの理解と協力が必要であるし、インダストリオール本部・地域事務所からの物心両面の支援が不可欠である。新たな時代に向け、われわれが一丸となって取り組んで行きたい。みなさんの議論への積極的な参加をお願い申し上げ、挨拶と代えさせていただく」と結んだ。
続いて、インダストリオール本部を代表しフーバー会長が開催の挨拶を行った。フーバー会長は、アジア地域におけるインダストリオールの運動への期待についても言及し、「インダストリオールとして、このアジア地域で何ができるか。アジアにおいても、社会的義務がなおざりにされてきた。アジアにおいても不安定労働
い。そのためにも、我々は統一して団結しなければならない。組織拡大して労働組合を強化しなければならない。我々の闘いに終わりはない。デジタル化、不安定雇用に対して、労組は建設的なアプローチをして、不安定労働に対抗して、非正規労働者の増加を抑えて行かなくてはならない」等と述べた。
各国報告「アジアの金属労組が直面する課題」
1日目の最初の討議テーマは、「アジアの金属労組が直面する課題」と題して、インダストリオール地域事務所代表から、①「地域におけるインダストリオールの活動について」(アプールヴァ・カイワール南アジア地域事務所所長)、②「地域におけるインダストリオールの活動について」(アニー・アドビエント東南アジア地域事務所所長)の2本の地域レベルの活動報告を行ったのち、各国代表から、①【オーストラリア】「鉄鋼産業の労働者が直面する課題、中国の過剰生産問題が労働者に与える影響」(スコット・マクダインAWU全国書記長)、②【日本】「日本全体の経済状況、政府の労働政策の影響」(浅沼弘一JCM事務局長)、「日本の電機電子産業の状況」(野中孝泰電機連合委員長)、「日本およびグローバルな造船産業の状況、インダストリオール部会の活動(組織化、訓練センターの開設等)、船舶解撤産業の状況、香港条約締結の取り組み」(工藤智司JCM副議長/基幹労連委員長/インダストリオール造船・船舶解撤部会長)、③【中華民国】「労働組合活動への圧力、労働運動の分裂」(施文昌ROCMU〈中華民国金属労連〉理事長)、④【バングラディシュ】「労働組合活動への圧力、労働運動の分裂」(ナズルル・イスラム・カーンBMF書記長)、⑤【スリランカ】「移民労働者問題、輸出加工区問題」(パ
リサ・アトゥコラーレNUMMS書記長)、⑥【インドネシア】「最低賃金、不安定雇用、労働組合つぶし、労働組合活動の非合法化や暴力、社会的対話構築への取り組み」(ワティ・アンワルFSPMI書記次長/インダストリオール執行委員)、⑦【フィリピン】「組織強化と組織拡大、自動車産業における産業政策立案」(ラルフィ・メドラノPMA〈フィリピン金属労働者同盟〉会長)、⑧【シンガポール】「高齢化社会への対応、新しい産業への対応、労働者への教育訓練の充実」(シリル・タン・インダストリオール・シンガポール協議会議長)と、それぞれ7カ国から国や組織、産業が直面する課題について報告を行い、情報を共有した。
パネル討論「課題の克服に向けて」
1日目午前から午後にかけて行われた南アジアと東南アジア両地域事務所と7カ国代表による各国報告「アジアの金属労組が直面する課題」を踏まえて、1日目午後と2日目午前にかけて、浅沼JCM事務局長がコーディネータを務め、ヨンユット・メンタパオTEAM会長(タイ)、ジョン・イル・ジンFKMTU首席副委員長(韓国)、サンジャイ・ヴダヴァカールSMEFI書記長(インド)、アンドリュー・デットマーAMWU全国委員長(オーストラリア)の4名がパネルとして、「課題の克服に向けて」と題してパネル・ディスカッション形式を行った。
議論のテーマは、各国からの報告で提起された課題やパネルが提起した課題で、組織拡大と組織強化、不安定労働・移民労働/外国人労働、持続可能な産業政策、自由貿易と公正な競争の問題、インダストリ4.0などの新たな産業革命についてなど広範なものであった。
歓迎夕食会
1日目、9月2日会議後開催の歓迎夕食会には、門川大作京都市長にお越しいただき、来賓としてご挨拶いただいた。門川市長は、フーバー会長、ライナ書記長、相原議長とともに、鏡開きにもご参加いただいた。
「アジア金属労組連絡会議の経緯と精神」を振り返り今後の活動を考える
2日目9月3日午後には、小島正剛JCM顧問より、「アジア金属労組連絡会議の経緯と精神」と題して講演を受けた。小島顧問は、IMF東京事務所開設にさかのぼり、アジア地域におけるIMFの活動の歴史を報告した。また1964年のIMF-JC結成とIMF加盟、およびIMF-JCの海外の日系企業における労使紛争への対応、特に1974年のTCM( 多国籍企業労働組合会議)結成、経営者団体と政府への働きかけによる多国籍企業問題連絡会議の設置の意義について報告した。TCMの活動については、目本国内において化学や繊維の産別組織との連携を行っており、当時より今のインダストリオールの活動を先取りしていた等と述べた。
おける労使紛争問題がアジア地域に頻発していることから、この地域における労働組合役員への教育訓練活動が必要であるとの結論に達し、IMF本部、IMF-JCおよびアジア各国の加盟組織の協力で、1~2週間のリーダーシップコースが開始されたこと、IMFがこのコースを終了させたあと、再開を望む東南アジア各国労組に応え、IMF-JCが連帯セミナーを開始させ、その後南アジアを含むアジア全域にその対象を広げ、それがこのアジア金属労組連絡会議につながっていることについて報告した。
インダストリオールのアジア地域金属労組の今後の協力について
浅沼JCM事務局長が下記の結語を提案した。これに対し、シリル・タン・インダストリオール・シンガポール協議会議長、アンドリュー・デットマーAMWU全国委員長(オーストラリア)、ワティ・アンワルIMF執行委員/FSPMI事務局次長(インドネシア)、ジョン・イル・ジンFKMTU副委員長(韓国)の3名から賛同する立場からの意見表明がなされた。この後、満場の拍手で結語を採択した。
第9回アジア金属労組連絡会議 結 語 アジア金属労組連絡会議は、2008年6月、マレーシア・クアラルンプールにて第1回を開催して以降、アジアの金属労組の仲間の積極的な参画の下、大きな成果を生んできた。 今回第9回となる会議も、インダストリオール本部のベルトホルト・フーバー会長、ユルキ・ライナ書記長はじめ、多くの仲間の参加を得つつ、意義のある討議を経て、成功裏に終えることができた。 アジア金属労組連絡会議は、前身のIMF東南アジアリーダーシップコースから数えれば、およそ40年に亘る長い歴史を有し、時代の変化に合わせ形態を変えながら、開催してきた。その間、多くのアジアの労働組合のリーダーを輩出すると共に、志をともにする多くの仲間を得ることができた。 インダストリオール結成以降も、4年に一度開催される地域大会とは別に、アジア金属労組連絡会議を継続してきたが、活発に情報を交換することで、地域活動を補完し、各国・地域の労働組合の力をより強化するなど、一定の役割を果たしてきた。 一方で、2015年6月、マレーシア・ペタリンジャヤにて実施した第8回会議において、長年にわたる本会議の成果を振り返りつつ、今回第9回を以て本形式による開催に一つの区切りをつけ、発展的に解消することを全員で確認した。 ついては、中核的労働基準の確立と遵守、良質な雇用・ディーセント・ワークの実現に向け、金属産業を含む、バリューチェーンを繋ぐ強力な国際産業別組織が不可欠とのインダストリオール・グローバルユニオン結成の主旨に基づいて、今後私たちは、世界の成長センターたるアジァ太平洋地域に対する期待とインダストリオール時代に相応しい新たな開催の枠組みを求めていくことをここに確認する。 以 上 |
この結語の採択を受けて、ライナ書記長と相原議長がコメントした。ライナ書記長は、「アジア金属労組連絡会議が本部・地域事務所との緊密な連携のもとで実施されてきた」ことに触れ、「それがIMFやインダストリオールの地域活動の大きな支えとなってきた」と述べた。その上で、「今後インダストリオールは今回の提案について継続的に議論していくこと、地域の代表が本部や地域事務所と政策的協議を行い、地域の活動に活かしていくようにする」とコメントした。
相原議長からは、各国の金属労組に対しこれまでの協力に感謝の意を表した。また今後については、「今回インダストリオールの時代にふさわしい形で継続していくことに合意ができたことを確認し、今後JCMがインダストリオールとの調整を行っていく」とコメントした。
閉 会
最後に、ライナ書記長が第2回インダストリオール世界大会の準備状況について報告し、相原議長がアジア太平洋地域の執行委員の調整状況についての報告と併せて、閉会の挨拶を述べ、終了した。