2004年度活動方針

《目 次》
T.2004年度の活動推進にあたっての基本的考え方
1.時代の変化に即応した、金属労働運動のさらなる強化と発展の追求
2.日本経済・社会の本格的再生とものづくり産業の基盤強化に向けた運動の展開
3.勤労者に安心・安定をもたらす雇用をはじめとする生活基盤の確立
4.国際労働運動のさらなる強化・発展をめざした対応
5.金属労協本部機能の強化と財政基盤の確立


U.2004年度の重点課題と具体的な運動展開
1.金属産業の発展基盤確立と社会的合意形成の持続的な展開
1)金属産業の発展基盤確立に向けた政策・制度の取り組み
2)金属産業労使会議と事務レベル会議の充実
2.デフレの解消・経済の本格的再生のための政策・制度の取り組み展開
(1)デフレ解消に向けた取り組み
(2)経済の本格的再生に向けた構造改革の取り組み
3.新たな共闘軸の構築とJC共闘機能の強化
1)新たな共闘軸の構築によって2004年闘争を強力に推進
2)JCミニマム運動の強化と最賃センターの充実
3)「第2次賃金・労働政策(仮称)」
4.海外事業展開にあたっての「企業行動規範」締結に向けた取り組みの推進
(1)「企業行動規範」締結に向けた労使協議の再開
(2)法令遵守経営、企業倫理を中心とした企業の社会的責任確立のための社内体制づくりへの取り組み
5.アジアを重点地区とした国際労働運動の追求とJCの主体的な役割の遂行
1)経済のグローバル化時代における国際労働運動とJCの主体的役割の遂行
2)海外労使紛争などに対する基本的な対応スタンスの確立
3)国際政策の立案検討の開始
4)国際的労働運動の取り組み推進
6.部門別運営の強化と金属労協機能の一層の強化
1)金属部門連絡会の各県単位設置に向けた取り組みの継続
2)国際局機能など金属労協機能の一層の強化
3)政策討論集会の開催など、政策・制度実現に向けた連合との連携強化
4)事務所移転の具体的対応の実施
5)中期財政確立に向けた取り組み
6)結成40周年記念行事の実施に向けた取り組み

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T.2004年度の活動推進にあたっての基本的考え方
 −変化に適応した運動基盤の確立を追求し、求心力ある金属労働運動の構築をめざす


日本経済は、量的金融緩和の拡大と輸出の好調により、2002年春以降、きわめて脆弱ながら景気回復過程に入りました。しかしながら、2002年秋から2003年春にかけて、金融緩和にブレーキがかかったこと、イラク情勢の緊張により世界経済・アメリカ経済に対する不安が高まったことなどから、景況感は急速に悪化、日経平均株価は一時プラザ合意後最安値を記録し、深刻なデフレ・スパイラルへの突入が懸念される状況に陥りました。こうしたことから、日銀は再び緩和拡大の姿勢に転じ、またイラク戦争後の世界的な株価反発などの流れもあって、景気後退懸念はやや緩和される状況となっています。
 一方、世界的な経済のグローバル化・市場経済化の進展は、日本経済・社会に対して抜本的な構造改革を迫ると同時に、産業レベルにおいては激化する市場競争に打ち勝つための事業構造の転換が必至の状況を生み出しています。しかし、それは勤労者の雇用と生活への大きな圧迫要因ともなっています。労働組合としても単なる現状への対応だけでなく、今後の雇用・労働のあり方を見据えた的確な取り組みを推進していかなければなりません。
 また、経済のグローバル化は、日本的労使関係を基礎におく日本の労働運動に対しても新たな対応を求めると共に、中核的労働基準を世界であまねく確立することがますます重要となっています。最適生産立地を求める企業の海外進出や生産拠点の再編が進行する状況のもと、日系企業をめぐる労使紛争も漸増しており、IMF(国際金属労連)を軸とした国際労働運動の一層の強化が不可欠となっています。
 金属労協(IMF-JC)は、2003〜04年度の運動推進の基本的考え方(5本柱)を堅持し、更なる運動の発展を期して取り組みを推進します。そして、この1年間の具体的な運動の展開にあたっては、新たな情勢の変化も加味し、求心力ある金属労働運動の構築をめざし、大産別としての金属労協(IMF-JC)運動を推進します。

1.時代の変化に即応した、金属労働運動のさらなる強化と発展の追求

 取り組み環境の時代的な変化は、金属労協にも従来型の運動路線を打破し、新しい観点に立った運動の強化を求めています。この1年間の議論経過や運動の成果を踏まえ、下記の取り組みを中心として、引き続き金属労働運動の強化と発展を追求していきます。
@ 労使合意による社会的合意形成のための運動展開
A 連合の部門別運営強化に向けた金属労協機能の一層の強化
B 金属労協の新たな運動展開を支える組織強化の対応


2.日本経済・社会の本格的再生とものづくり産業の基盤強化に向けた運動の展開

 日本経済の脆弱性は今もなお解消されていません。特に不良債権処理が構造改革の最優先課題と位置付けられてからは、それと一体的に遂行されるべき産業再生策、デフレ対策の欠落が産業・企業の一層の疲弊を招くこととなっており、経済の本格的再生への道を見出すことが最大の課題となっています。そのためにはものづくり産業基盤の維持・強化が不可欠であり、政策・制度課題の解決とあわせ、一層の取り組みの強化を図っていきます。
@ デフレスパイラルの危機からの早期脱却と安定成長の実現
A 構造的諸課題の克服など政策・制度課題の解決に向けた取り組みの実践
B 新産業政策の実践と金属産業・ものづくり産業の発展基盤の確立
C COC(海外事業展開に際しての労働・雇用に関する企業行動規範)の締結の取り組み


3.勤労者に安心・安定をもたらす雇用をはじめとする生活基盤の確立

 これまでの議論経過を踏まえ、新たな働き方やライフスタイルの確立と共に、雇用と生活不安の解消をめざし、新たな共闘軸のもと雇用をはじめとする生活基盤確立の取り組みを進めます。
@ JC共闘の強化と新たな共闘軸の構築
A 新たな働き方に対応したワークルールの確立
B 雇用保険、年金・医療・介護などのセーフティーネットの整備・強化


4.国際労働運動のさらなる強化・発展をめざした対応

 中国をはじめとする生産拠点の海外移転の増大や、国境を超えた企業再編などの変化に対応し、アジアをはじめとする国際労働運動の一層の強化・発展をめざしていきます。
@ IMF運動への積極的参画とJCの主体的な運動の推進による役割と責任の遂行
A 時代の変化に対応した国際労働運動展開の基本的考え方の再整理


5.金属労協本部機能の強化と財政基盤の確立

 引き続き本部機能の強化を行うと共に、全体の運動を支える財政基盤の確立を図ります。
@ 各種会議・委員会の効果的配置と各産別との一層の連携による内容の充実強化
A JC事務局機能の強化と運動を支える財政基盤の確立

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U.2004年度の重点課題と具体的な運動展開
 
2003〜04年度の「運動推進の基本的考え方」を堅持したうえで、この1年間の取り組みの経過に基づき、向こう1年間の「重点運動課題」を設定し、取り組みを推進していくこととします。そして、求心力ある金属労働運動の構築をめざし、金属労協・各産別との一体的な取り組みを推進します。
 また、連合との連携を強化し、金属全体の中長期的な労働運動の新たな発展基盤を構築すべく、課題ごとに更に問題点を掘り下げ、各種会議・委員会ならびにJC事務局相互の連携のもと、具体的な取り組みの推進にむすび付けていくこととします。


1.金属産業の発展基盤確立と社会的合意形成の持続的な展開
 
 日本経済が長期に低迷しデフレの進行に歯止めがかからない状況のもとで、金属産業の持続的な発展基盤の確立は、国際競争力の維持・発展といった産業労使の課題としてだけでなく、国民生活を含むマクロ経済の観点からも急務の課題となっています。特に中国問題については、金属労協として喫緊の課題となっており、国内ものづくり基盤の確立の観点から今後の対応を検討していきます。
金属労協は、金属産業労使会議におけるこれまでの議論経過を踏まえ、事務レベル会議において幅広く議論を求めると共に、金属労使会議との連携を強化していきます。また、こうした課題を産業全体のものとし、「日本経団連」など経営者団体への働きかけを含め、金属産業を代表する労使会議の形成にむけて、「労使合意による社会的合意形成」運動の着実な進展をめざします。

1) 金属産業の発展基盤確立に向けた政策・制度の取り組み

(1) 産業インフラコストの削減
 デフレが続くなかにあっても、もともと国際的に高い水準にある非競争分野・規制分野の価格は下がるどころか、むしろ上昇する例すら見られます。このような産業インフラコストの内外価格差は、金属産業の国際競争力の再強化にとって大きな障害となっており、とくにエネルギー分野および輸送分野の高コスト引き下げ、内外価格差の解消を図るべく、以下の取り組みを中心に強力に推進します。
@ 電力・ガス事業における小売全面自由化の早期実現と内外価格差の解消。
A 高速道路等民営化による輸送コストの引き下げ。
B 公共事業における、需要予測方式の抜本的見直し、発注方式の全面的転換。

(2) 自由貿易体制の堅持・拡大
 WTOのドーハラウンド交渉、FTA交渉、セーフガード発動などにおけるわが国の保護主義的な対応が、輸出産業にとって大きな打撃となっています。貿易立国たるわが国として、自由貿易体制を堅持・拡大する方向で通商政策が展開されるよう、取り組みを強化していきます。
@ WTOのドーハラウンドの交渉促進。とりわけ農業交渉については、農業交渉議長原案に沿った解決をめざすよう働きかけていく。
A 特定国・地域との関税撤廃に関する協定に際して、農林水産物を対象から除外せず、WTOのルールを厳守したFTA(自由貿易協定)として締結するよう要求していく。
B わが国が、今後WTOのルールに違反したセーフガードを発動しないよう注視していく。
C WTOドーハラウンド交渉において、中核的労働基準を協定に盛り込むよう主張していく。

(3) わが国金属産業の国際競争力強化に向けた中国プロジェクトの立ち上げ
2000年度以降加速した金属産業の中国における生産拠点の展開に関しては、その成否や問題点などが次第に浮き彫りになってきている段階にあります。中国の金属産業に関し、情報を収集し、問題点を抽出していくことが、わが国金属産業の国際競争力強化に向けた産業政策活動の推進にとって不可欠となっています。政策小委員会を中心に、関連する委員会との連携のもと、「中国プロジェクト」を立ち上げていきます。
現地資本・欧州系・日系の比較調査の観点から、企業グループにおける中国生産拠点の位置づけ、中国市場におけるシェア、輸出競争力、製品のレベル、技術・技能の水準や自動化のレベル、賃金・労働条件、雇用・人事、労使関係などについて分析・調査を行っていきます。

(4) 小学生を対象としたものづくり教室
技術・技能の継承・育成、将来の国内ものづくり産業の基盤強化のためには、健全な職業観の育成など、人材育成が何よりも重要であり、戦略的なものづくり教育の構築が必要です。金属労協は、その具体化の1ステップとして、小学生に対するものづくり教育の拡充に焦点を絞り、労働組合として、それぞれの地域において、ものづくりや科学の楽しさを子供たちに直接訴えかける活動を展開します。
具体的には、各産別・地域と連携を図り、ものづくりあるいは科学分野の工作・実験などを小学生と共に行う「ものづくり教室」(仮称)を試行的に実施し、さらに他の地域にも広げていく取り組みを進めていきます。

2) 金属産業労使会議と事務レベル会議の充実

金属労協は、産別の枠を超えて金属産業の労使が共通の課題について論議する場として、94年に金属産業労使会議を設置し、10回の開催を重ねてきました。2002年度は、金属産業の国際競争力強化の観点から、労使によるワーキングチームを設置し、約半年の検討を経て「金属産業の国内生産基盤強化に向けて」をとりまとめました。さらに、この報告書に基づき、各産別の労使においても論議を深めることができました。
2003年度は、ワーキングチームを拡充し、事務レベル会議として常設することとし、産業の抱える課題について幅広く論議を進めています。今後は、さらに会議の充実を図り、国際競争力強化に向けた金属産業共通の課題を整理し、一定のとりまとめを図ることをめざしていきます。また、事務レベル会議における論議経過を金属産業労使会議の論議素材とするなど連携を強化し、金属産業労使会議の充実も図っていくこととします。
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2.デフレの解消・経済の本格的再生のための政策・制度のとりくみ展開

 90年代における日本経済の長期停滞は、実体経済の低迷と平行して持続的な物価の下落、すなわち「デフレ」が進行したことにあり、金額ベースの国内総生産(名目GDP)は97年をピークに縮小を続けています。また、資産価格・地価の下落も著しく、まさに、日本経済は歴史的なデフレに陥っている状況にあります。
将来の所得や増税、社会保障制度の持続性に対する不安などが勤労者の消費意欲を強く抑制すると共に、企業は債務圧縮を最優先し、新たな借り入れによる設備投資を回避する傾向を強めており、国内投資抑制の要因となっています。失業率も依然として5%台の高止まりの状況にあり、政府の適切な政策遂行が喫緊の課題となっています。
 金属労協は従来から、わが国経済の本格的再生に向けて、構造改革が不可欠であるものの、デフレ解消と景気回復なき構造改革は、健全な産業企業をも破綻に追い込み、国民生活の破局を招く危険性すらあると主張してきました。
政府がデフレの解消と景気回復によって雇用と生活を守り、その中でわが国に山積する構造諸課題の解決と産業の再生に邁進していくよう、政策・制度の取り組みを強化します。

(1)デフレ解消に向けた取り組み
わが国経済の本格的再生のためには構造改革が不可欠ですが、デフレ(一般的な物価水準の継続的な下落)は、名目GDPのマイナス成長を招き、名目GDPのマイナスは日本全体の総額人件費の圧縮圧力となるため、雇用情勢が悪化して雇用吸収力が失われ、非競争・規制分野の構造改革にも抵抗がより大きくなります。資産価格の低下により、金融機関の不良債権処理はより困難となり、税収が増えず、歳出削減も難しくなるため、財政再建も進みません。金属労協は政府・金融当局に対し、従来の「デフレ克服」政策から、「デフレ解消」政策に転換し、もって構造改革の推進に努めるよう、強力に働きかけていきます。
具体的には、名目GDP成長率を少なくとも2〜3%(GDPデフレータは0〜1%)とすることを目標に、マネタリーベースの拡大による量的金融緩和の一層の推進を要求していきます。また同時に、産業の再生・活性化に向けた金融面での仕組みづくりを求めていきます。
デフレ解消策の一環としての財政政策としては、「多年度税収中立」ではなく、政府が行政改革の強化を国民に約束し、その成果によって減税財源を捻出する「行革減税」を求めていきます。

(2)経済の本格的再生に向けた構造改革の取り組み
構造改革の取り組みとしては、2004年度に不良債権半減という政府公約が確実に達成されるよう求めていくとともに、金融機関における合理化の断行を主張していきます。一方、貸し渋り・貸し剥がしを防止し、金融機関が地域で集めた資金が、適切に融資として還元されるよう、日本版「地域社会資金還元法」の制定をめざし、取り組んでいきます。
郵政三事業の民営化については、これまでのところ頓挫の状況となっていますが、官業による民間圧迫、肥大した財投の不良債権化が懸念されているという点で、まさにわが国構造改革の根幹であり、引き続き粘り強く取り組んでいきます。
税制改革では、喫緊の課題として、消費税における内税方式への強制を阻止すべく、関係方面と連携しつつ、強力に取り組みます。公的年金、医療、介護など社会保障制度に関しても、民間産業に働く者の立場から、負担と給付のバランスに留意した持続可能な制度の構築に向け、積極的な発言を行っていきます。
規制の整理・撤廃の一層の推進を求めていくとともに、「構造改革特別区域計画」で実施される規制緩和に関し、わが国経済の活性化にとって重要なものについては、内容の一層の拡充と全国展開が図られるよう、要求していきます。
最悪の雇用情勢が続くなか、失業率2%時代の雇用保険制度では、もはや対応できないことは明らかであり、場当たり的な対応ではなく、雇用保険の抜本的拡充を求めていくとともに、不良債権処理に伴う雇用問題の発生に対処するため、「美しい日本再生事業団」の創設を要求していきます。
さらに、勤労者自らのライフスタイルを抜本的に見直すきっかけとして、サマータイムの導入を求めていきます。
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3.新たな共闘軸の構築とJC共闘機能の強化

春季総合生活改善闘争は、グローバル化による国際競争の激化や、デフレやマイナス成長という環境変化のもとで、求心力を持ちうる「JC共闘」の構築が大きな課題となっています。金属労協は2003年闘争において、マクロ経済指標に準拠して全産業が一律的な賃金の引き上げを行うことは困難になっているとの認識から、闘争を推進するとともに、新たな共闘軸の構築に向けて論議を深めてきました。
これらの論議経過を踏まえて、第42回定期大会で報告した「第2次賃金・労働政策(仮称)中間報告」では、金属産業を取りまく環境や、労働市場の変化、勤労者の意識の変化などを踏まえて、「新たな働き方」を支える「安定雇用」と「公正で社会的な賃金決定」の実現を目指した課題を整理するとともに、その実現のためのJC共闘のあり方についても提起しています。
今年度は、この政策の成案に向けた論議をさらに深めつつ、2004年闘争においては、JCミニマム運動強化への対応とともに、その実現にむけて、新たな共闘軸のもとJC共闘をさらに強化していきます。

1) 新たな共闘軸の構築によって、2004年闘争を強力に推進

2003年闘争では、春季総合生活改善闘争をとりまく環境変化を踏まえて、「今後のJC共闘の基本的な取り組み方向」を整理しつつ、労働条件全体への適正な配分の追求を通じた、総合労働条件改善のための闘争と位置づけ、改革に向けた第1ステップとしてJC共闘を推進しました。
2004年闘争では、これまでの論議経過を踏まえ、産業ごとの多様性を相互に理解しつつ、金属産業にふさわしい総合労働条件の確立に向けて、新たな共闘軸のもとでJC共闘の強化を図っていきます。具体的な取り組みについては、第46回協議委員会において「2004年闘争の推進」を決定します。

2) JCミニマム運動の強化と最賃センターの充実

(1)JCミニマム運動の取り組み強化
国際競争の激化やデフレなどを背景に、経営側による労務コスト削減の圧力が強まっており、また雇用形態の多様化に対応した均等処遇確立の観点からも、ミニマム運動の必要性はますます高まっています。2003年闘争では、生活不安の払拭、雇用形態の多様化に対応した公正処遇の確立などの観点から、新たにJCミニマム(35歳)、企業内最低賃金協定の締結、法定産業別最低賃金の取り組み連動など、金属産業勤労者の賃金水準の底支えを図るべく、取り組みを強化しました。
今後さらに、JCミニマム運動の充実・強化を図るべく、JCミニマム(35歳)については、2003年末までに金属労協傘下組合の賃金実態を把握し、これ以下の水準をなくしていくための運動強化に向けて検討を深めていきます。また、最低賃金協定については、企業内における賃金の最低規制の基本であるとともに、法定産業別最低賃金の取り組みの基礎ともなっていることから、すべての組合での協定締結をめざすといった取り組みの抜本的強化を図っていきます。

(2)「最賃センター」の充実による法定産業別最低賃金の取り組み強化
金属労協は、2002年9月に「最賃センター」を設置し、法定産業別最低賃金の取り組み体制強化を図りました。今年度は、JCミニマム運動の柱の一つとして、未組織労働者も含めた金属産業全体の賃金水準の底支えを図るべく、さらに活動を充実していきます。
具体的には、全国会議を開催し、各都道府県における課題の把握や次年度の取り組み方針を論議するとともに、連合地方ブロック最賃担当者会議と連携して、地方連合金属部門における最賃担当者会議を開催するなど、取り組みを強化していきます。また、ホームページの充実を図り、最低賃金制度の理解促進のための制度紹介や、最低賃金の取り組み状況の情報提供などを行っていきます。

3) 「第2次賃金・労働政策(仮称)」

97年に策定した「賃金・労働政策」以降、急速なグローバル化の進展や、そのための企業再編・生産拠点の海外移転、失業率の高止まりや雇用形態の多様化など、金属産業勤労者を取りまく環境は大きく変化をしています。
 「第2次賃金・労働政策(仮称)中間報告」は、こうした環境を踏まえて、「新たな働き方」を支える「安定雇用」と「公正で社会的な賃金決定」をめざし、@創造性豊かな「新たな働き方」の構築に向けた課題、Aヒューマンな長期安定雇用を基本とした雇用の維持・創出に向けた課題、B社会的に公正な賃金・労働条件の形成、C魅力ある賃金・処遇制度の確立に向けた課題の4つの課題を整理するとともに、その実現に向けたJC共闘のあり方について提起をしました。
2004年度は、賃金の国際比較の充実など、関連資料を整備しつつ、成案に向けた論議を深めていきます。


4.海外事業展開にあたっての「企業行動規範」締結にむけた取り組みの推進

2001年12月にイタリアのメルローニ・エレトロドメスティチ社における労使締結を皮切りにして、ヨーロッパを中心に次々と労使締結が実現する状況にあります。一方、日本においては、経営の理解が容易に進まない状況のままとなっており、わが国金属産業が国際労働運動、あるいは国際ビジネス社会のなかで、特異なものとなってしまうことが懸念される状況にあります。
経済のグローバル化・市場経済化の進展は、一方でグローバルスタンダードに沿った企業経営を求める流れとなっており、中核的労働基準を労使協力のもとで達成していくことは、新たな労使フレームワークにもつながる重要な取り組み課題となっています。
金属労協はこうした考え方のもと、日本経団連など経営者団体への働きかけをさらに強め、締結の促進にむけた労使交渉の下地づくりに努めていくこととします。
2003年秋より、「日本版モデル」を基本に協議を再開することとし、産業・企業の事情を踏まえた柔軟な対応姿勢のもと、締結にむけた取り組みを推進していくこととします。

(1)「企業行動規範」締結に向けた労使協議の再開
IMF−JCは、2001年11月に開催した第30回IMF世界大会を最初のめどとして、「海外事業展開に際しての労働・雇用に関する企業行動規範」労使締結に向けた協議を進めてきましたが、具体的な成果を見るに至りませんでした。その後、仕切り直しの状況となっていましたが、各企連・単組は、産別の指導のもと2003年秋より協議を再開し、2004年春をめどとして労使締結をめざしていくこととします。
IMF−JC本部としては、日本経団連への要請、金属産業労使会議における働きかけなどをさらに強め、経営者団体としても労使での締結を促進するよう、その姿勢転換を促すなど、労使交渉の下地づくりに努めていきます。各産別としても、産別労使会議などの場において、引き続き経営側に対する働きかけを強化していきます。
一方IMF本部も、新たに「国際枠組み協約(IFA)」として全世界的な活動につなげるために運動強化を図ろうとしています。IMF−JCとしてもIMF本部と連携し、国内の実態を考慮しつつ活動展開を行っていきます。

(2)法令遵守経営、企業倫理を中心とした企業の社会的責任確立のための社内体制づくりへの対応
企業不祥事の続発をきっかけに、各企業は法令遵守(コンプライアンス)経営、企業倫理(ビジネス・エシックス)を中心とした企業の社会的責任(CSR)に関する社内体制づくりを加速化させています。こうした動きは、われわれがこれまで展開してきた企業行動規範の取り組みが、CSRのなかに含まれる分野でもあることから、2003年6月にIMF−JCとして確認した「企業の社会的責任(CSR)に関する社内体制づくりに際しての、IMF−JCの考え方」に則して活動を展開していきます。
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5.アジアを重点地区とした国際労働運動の追求とJCの主体的な役割の遂行

グローバル化の進行は、日本の金属産業にも大きな変化を迫っています。熾烈を極める企業間競争のもとで各企業は、生き残りをかけてコスト削減を追求すると同時に、東南アジアや中国への海外事業展開を急速に推し進めています。
一方、アジア各国は外資を積極的に導入し、それをテコに輸出主導により急速に成長を遂げてきています。最近は、特に中国沿岸部の経済発展が著しく、アジアの消費市場として発展の可能性に注目が集まっています。
しかし、経済・社会基盤は未だ脆弱なままであり、労使関係も不安定なものとなっています。日系企業における労使紛争も増加の一途をたどっており、IMF−JCとしても主体的な役割の遂行が必要不可欠となっています。
IMF−JCは、こうした認識のもと国際労働運動の基本的な考え方を再構築すると共に、アジアを中心に主体的な役割を担いつつ、国際労働運動の一層の発展を追求していきます。

1)経済のグローバル化時代における国際労働運動とJCの主体的役割の遂行

(1)海外のIMF加盟組織との協力強化
海外のIMF加盟組織も経済のグローバル化の影響を強く受けており、その対応策を模索しているところです。そのような組織に対し要請に基づいて協力活動を進めていきます。

(2)IMF本部・地域事務所との協力強化
2001年11月のシドニー世界大会で採択されたIMFアクション・プログラムに沿って、IMF本部方針を踏まえた活動を展開すると共に、特にIMF東南アジア地域事務所との連携を強化し、東南アジア各国におけるIMF加盟組織の強化、発展、確立に尽力します。

(3)中国の労働組合(工会)との関係構築
アジア地域における労働運動の重要性が高まる中で、中国の総工会や産別工会との関係強化は極めて優先度の高い課題となっています。IMF−JCとしてはこうした観点から新たな段階の構築に向け、工会の変革を促すべく強力に働きかけると同時に、IMF本部に対しても交流促進に向けた運動の拡大を要請していきます。また、労使関係の変化など中国の労働事情の把握も行っていきます。

2) 海外労使紛争などに対する基本的な対応スタンスの確立

(1)海外の労使紛争への国際的取組み強化
海外に進出した日系企業での労使紛争の増加や、OECD多国籍ガイドラインに沿った対応である日本のNCP(ナショナル・コンタクト・ポイント)への問題提起という新たな状況に対応するため、海外労使紛争に対する基本的な対応スタンスを確立し、同時に平行して海外のIMF加盟組織と協力して、安定した労使関係の確立のための支援活動を行っていきます。さらには日本のNCPに問題提起が行われた場合についても連合や産別・単組とともに、日本のNCPが十分に協議を尽くし、しっかりとした判断を行うよう取り組んでいきます。

(2)海外労使紛争へのIMF−JCの取り組み強化
IMF−JC全体で海外労使紛争に対する基本対応スタンスを確立し、「現地で発生した問題は現地労使の話しあいによって解決」できるよう、環境条件の整備に努めると共に、産別や単組との緊密な連携のもと、ILOの中核的労働基準をよりどころとして、IMF−JCとしての役割を一層発揮すべく取り組みを強化します。

3) 国際政策の立案検討の開始

世界的な取り巻く環境の大きな変化は、日本に対しても国際運動の強化を求めており、このためにはIMF−JCとしての「国際政策」を早期に確立し、その考え方のもとで取り組みを着実に推進していくことが不可欠となっています。IMF−JCはこうした観点から、連合の対外政策や産別の国際政策を踏まえ、政策の確立にむけて検討を開始することとします。

4)国際労働運動の取り組み推進

(1)2003年度に延期された計画の実施
イラク戦争やSARSの影響などにより延期された計画の実施を検討し、各種調査団、専門調査団および海外でのセミナー開催などの再開を目指します。

(2)海外IMF組織への支援活動強化
 支援活動については、金属労組研修生の受け入れや金属連帯セミナーの開催に加え、海外のIMF加盟組織が企画する研修団・訪日団の受け入れや状況把握のための派遣など柔軟に対応し、日常の情報交換をより緊密なものとします。

 (3)国際労働運動に対する調査活動の強化
 日常の情報交換も含めた情報の収集、海外日系企業についての調査を行うことによって、情勢分析はもとより将来の問題発生にも備えたデータベースや資料作成を進めます。

(4)国内のGUF(グローバル・ユニオン・フェデレーション)との連携強化
 日本国内に事務所や協議会組織を有する国際産業別労働組合組織との連携強化のため、定期的な協議の場の設定に取り組んでいきます。
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6.部門別運営の強化と金属労協機能の一層の強化

金属労協は、この2年間の運動方針に基づき、これまでの検討経緯をふまえ、金属労協本部事務局機能の強化とともに、地方活動を各県単位の活動へ移行すべく、連合本部や地方連合の理解を求めつつ、すべての地方連合内に「金属部門連絡会」の設置をめざし、取り組みを推進してきました。今期もその考え方のもと、地方ごとの具体的な運動展開も含めて、一層の取り組みを推進します。
また、年ごとに国際労働運動推進の重要性が増してきています。産別との連携強化によって、どのように機能強化をしていくのか、国際運動面における主体的な役割の遂行を含め、検討を進めます。様変わりする取りくみ環境は、金属労協に対しても求心力ある運動遂行を求めています。今後とも、連合との一層の連携強化を図りつつ、運動の発展をめざしていくこととします。
こうした運動を推進していくためには、本部事務所の機能や効率の向上が不可欠です。そこで安全管理上の問題解決も考慮し、事務所の移転も含めた本部機能強化に向けた取り組みを、産別の理解を求めつつ進めていきます。

1) 金属部門連絡会の各県単位設置に向けた取り組みの継続

これまでの取り組みの中で、地方連合金属部門連絡会の設置状況は、地連解散以前からすでに地方連合内に金属部門連絡会がある県を含め29都道府県となっています。
今期は、部門連絡会が設置されていない県に焦点をあて、設置に向けた取り組みを展開するとともに、設置された金属部門連絡会の強化を行います。

(1)金属部門産別のあるすべての未設置県の金属部門連絡会の立ち上げに向け、JC地方ブロックと連携し、積極的なアプローチを行います。

(2)すでに金属部門連絡会を立ち上げた組織に対しては、地方連合との一体的な取り組み強化に向け、具体的な活動展開ができるようサポート体制を強化します。
@ 春季総合生活改善闘争における情報交換会や勉強会の開催
A 政策・制度要求実現に向けた勉強会の開催
B 最賃センターを基軸にした最賃運動の全国展開

(3)金属部門連絡会の全国展開に向けたネットワークの構築を検討します。
中央の金属部門連絡会と各県の金属部門連絡会の活動を一体的に行うための全国組織のネットワーク構築を具体的に展開していきます。

(4)中央の金属部門連絡会(金属労協が事務局機能を果たす)の役割と機能の強化をめざします。
今後の金属労働運動の強化・発展に向け、金属部門連絡会の各構成産別及び連合本部と連携しながら、中央の金属部門連絡会の役割を見直し、活動基盤の強化を図ります。

2) 国際局機能など金属労協機能の一層の強化

  企業の海外進出や生産拠点の再編が進行する中、日系企業をめぐる労使紛争が激増する状況にあります。また、経済のグローバル化は、日本の労働運動に対しても新たな対応を求めており、各産別との緊密な連携のもと、国際運動窓口としての役割をいかに果たすかなど、国際局機能の抜本的な強化の対応が必要不可欠となっています。
  この問題は、早急な対応を要する課題でもあり、新たな役員派遣のあり方や各産別との連携の抜本的な強化策など、年度内を目途に書記長会議を中心に検討し、方向性を固めていきます。

3) 政策討論集会の開催など、政策・制度実現にむけた連合との連携強化

(1)金属労協の掲げる政策・制度要求の一層の実現を図るため、政策・制度「中央討論集会」を2004年5月に開催します。

(2)政策・制度要求実現にむけ、組織内議員との連携を強化します。具体的には政治顧問との政策実現に向けた懇談会を実施します。

(3)各政治顧問ならびに政策秘書の方々の専門分野を活かした政策実現への具体的なプロセスの検討を開始します。

4) 事務所移転の具体的対応の実施
求心力ある金属運動の再構築が求められる中、業務遂行の効率化を図るなど、事務局機能の強化をめざすと共に、職場安全上の課題を考慮し、結成40周年を契機に事務所移転の具体的対応を図ります。
   なお、移転にあたっては、財政効率の向上を含め、移転ならびに事務所運営費用の抑制に努めます。具体的な財政措置は、2004年度予算で実施します。

5) 中期財政確立に向けた取り組み

金属労協は2002年9月大会において、2003〜2005年度の「中期財政施策」を確認し、この財政施策を踏まえて、財政基盤の強化と運営の効率化を図ってきました。引き続き、金属労協の機能強化をめざし、2004年9月の大会までに、効率的かつ健全な財政運営に向けた新「中期財政施策」(2006年度以降:2005年9月から)の検討を行います。

6) 結成40周年記念行事の実施に向けた対応

金属労協は、2004年5月16日に結成40周年を迎えます。この対応として、総務財政担当者会議を中心に、40周年にふさわしい記念行事等の検討を行い、実施に向け展開します。