2009年闘争シンポジウム 中村労働政策委員長挨拶要旨

2009年闘争を取りまく情勢について、経済情勢については、アメリカ発の金融危機から世界同時不況の様相を呈し、今後実体経済への影響が懸念されている。とりわけ、円高は金属産業に大きな影響を及ぼすこと、すなわち、金属産業、企業の利益の大幅な下ぶれ要因になっていくことが懸念される。日本のGDP成長率は、政府見通しで、名目で0.3%実質1.3%だが、大幅な下方修正がなされるだろう。日銀では、実質経済成長率を1.2%から0%に下方修正し、民間調査機関では平均で名目−0.2%実質0.6%となっている。一方生活実態はというと、賃金は1997年から2007年までの10年間のうち9年で減少、物価は連合で2%程度、政府で1.7%、日銀で1%台半ば、民間調査機関で1.9%程度のそれぞれ上昇の予測、可処分所得は7年間で6.3%の減少となっている。したがってそれらを総じていえば、賃金は下がり、可処分所得も下がり、一方物価は上がっているという生活実態にある。雇用情勢については、9月の完全失業率は4%、有効求人倍率は0.85倍まで低下した。非正規労働者は1732万人・31%であり、年収200万円以下の労働者は2204万人・34%となった。労働時間については、金属労協主要組合の平均値が年間の時間外労働で約280時間、年間総実労働時間で約2060時間となっており、高止まりしている。また、年休の取得日数は年間で14日と、依然として低位にある。
2008年度の金属産業の業績動向は、中間決算時に発表された年間業績の見通しによれば、金属労協の企業全体では約20%の大幅減収、約40%の大幅な減益となっている。自動車産業や非鉄金属産業で減収・減益の幅が顕著に大きい。
このような取りまく情勢の中で、連合は2009年春季生活闘争基本構想で、@賃金カーブ維持を前提として、物価上昇に見合うベアによって勤労者の実質生活の維持・確保することを基本として、マクロ経済の回復と内需拡大につながる労働側への成果配分の実現を目指す。また中小の格差是正、非正規労働者の処遇改善に向けて、産別指導の下取り組みを展開するA労働時間の取り組みと要求については、割増共闘を継続し、割増率の引き上げに取り組む。具体的内容については今後連合割増共闘を中心として詰めていくという形になっている。
一方金属労協の基本的考え方と具体的取り組みは、現在金属労協の各種委員会で論議を重ねているが基本的な考え方は3点。@金属産業にふさわしい賃金水準の追求と実質生活の維持。実質生活の維持については、物価の上昇に見合う要求を行う。連合基本構想と同じ考え方。A非正規労働者の雇用の安定と労働条件の改善に取り組むB年間総実労働時間短縮のための具体的施策の取り組みとして、時間外割増率の引き上げを連合の共闘方針を踏まえ、2008年闘争結果と法律改正の動向を勘案し取り組む。としている。
具体的取り組みとしては、金属産業にふさわしい賃金水準の追求と実質生活の維持の項目では、賃金改善の取り組みとして大くくり職種別賃金の水準形成により金属産業にふさわしい賃金水準を目指す、賃金実態の把握と賃金制度の確立を目指す、一時金の取り組みとしている。ワークライフバランスのとれた働き方に向けての取り組みでは、年間総実労働時間短縮に向けた具体的な施策の実施として所定労働時間1800時間台の実現、時間外割増率の引き上げに向けては連合方針を踏まえて取り組む。また、仕事と家庭の両立支援の充実に向けても取り組んでいく。さらに非正規労働者の労働条件の改善として、JCミニマム運動による賃金の底上げ、企業内最低賃金協定の締結拡大と水準の引き上げ、法定産業別最低賃金の機能強化について具体的に取り組む。加えて、その他の労働条件の改善についても積極的に取り組んでいこうという考え方で今まとめている。

最後に金属労協の当面の日程について、11/25に開催する常任幹事会で闘争方針原案を確認し、12/3に協議委員会を開催、今時闘争の方針を確認する。さらに12月中の日本経団連との懇談、金属産業労使懇談会を経て来年1/27〜28に開催する中央討論集会につなげていきたい。最大の山場である集中回答日は、今回から連合の拡大戦術委員会で調整することになっており、金属労協ではそれを踏まえて、3月第3週を目途にして、戦術委員会で集中回答日を決定したい。なお、金属労協全体としては、3月月内決着の取り組みをさらに強化し、中小組合を含めた相乗効果を求めていきたい。