連合を動かしているのは間違いなくJC
笹森清連合会長 |
皆さん、おはようございます。IMF−JC43回定期大会、40周年の記念の大会、連合を代表してごあいさつを申し上げたいと思います。
いつもながらのことでありますが、鈴木議長のごあいさつ、横で伺っておりまして、大変感銘を受けました。連合としても、今、鈴木議長のほうから言われた内容に全く同感であり、その内容について、ナショナルセンターとして全力を挙げていくことをまず申し上げておきたいと思います。と申しますのも、JC前議長の草野さんを連合の事務局長に送り出していただき、連合の三役会の中では、今そこに並んでおりますが、古賀さん、加藤さん、小出さんとJC副議長5人の内の3人の方が副会長としてご活躍をいただき、さらに中執はじめ、連合の本部事務局に多数の役員をJCの仲間の皆さんから送り出していただいている。言ってみれば、日本の労働運動、ナショナルセンター・連合を動かしているのは、まさにIMF−JCだと私自身は思っております。
そういう意味で、日ごろのご協力と、そして、これからの連合労働運動の発展に対して、さらなるご尽力を皆様方にお願いを申し上げておきたいと思います。
きょうは、時間的制約もありますから、3点に絞って申し上げたいと思います。<ページのトップへ>
共感の得られる労働運動を
まず1つは、鈴木議長の言葉の中にも入っておりました「共感の得られる労働運動」ということです。私自身は連合事務局長に1997年に就任をし、2期4年務め、2001年の大会で21世紀最初の連合会長を仰せつかりました。3年経過をしました。既に皆さん方ご承知のように、私は就任をした直後、「連合の姿が見えない、労働運動の求心力がない」と言われてきた日本の労働運動、ほんとうにそうなんだろうか。いろんなアンケートをとれば、「労働組合無用論」がマスコミを通じて出てくる。まさにそうなのかな、そうじゃないだろう、しかし、我々自身が思い上がっているんじゃないかということを含めて、これは労働運動に関係ない人たちにも直接会っていろんな意見を聞いてみようと思いました。
ご承知のように、「アクションルート47」と名づけて、全国47都道府県を就任直後、9カ月かけて一巡をしました。何回もいろんなところで申し上げておりますから、この話はわかっていると思いますが、知事、市町村長、行政官、そして、地方の経営者、労働組合に関係のないNPOやNGO、さらには、同じ職場で働いている非典型雇用のパートやアルバイトの方々、派遣の方々、いろんな方々と話し合いをしてきました。すべての人が、「労働組合は必要だ」と言ったんです。「今こそ、労働組合がやること、たくさんあるじゃないか。地方から見ていて、中央政府や行政機関にいろんな政策をぶつけて、それを実現するという役割を負っているのは、地方から見ると連合しか見えない。連合、頑張ってくれ」、こういう声をたくさん寄せられたんですよ。
私は、あの9カ月かけて全国を行脚した中で、極めて感動的な体験をしました。その中で、その体験を通じて、今の労働運動を変えなきゃいけないという思いを切実に思ったということを3つ申し上げておきます。
1つは、パートの方々との集会を各地でやりました。最終的に、中央で集会を行ったときに、連合本部でやりましたが、200名のパートの方々と100名の組合の役員、300人が会場に入りました。私だけが労働組合の代表として壇上に上がり、いろんな討論をやったんですが、だんだんそれが連合本部の事務局に内容が伝わっていって、みんな仕事の手をやめて、その会議室に来たんです。いつの間にか立ち見がいっぱい出た、「連合会長、つるし上げられてるよ」と。
結論的に言えば、パートの方々に言われたのは、これはグサッときましたね、「あなた方は」と、私に言うんです、「経営者よりひどい存在だということを自覚していますか。私たちの労働条件の上にあぐらをかいて搾取していると、私たちは思っていますよ」、こう言われたんです。必ずしもそうではないと私は思うけれども、フルタイマー、正規型雇用社員、ユニオンショップに守られている組合員のことを、我々はやってきた。同じ事業所、同じ事務室に机を並べて、同じ仕事をやっている非典型雇用の人たちに、我々は今まで手を差し伸べて一緒に闘ったことがあるか。「目をつぶってたと言われても仕方がない。」この思いが1つ。
2つ目は、回っているうちに、景気状況が悪いから、どんどん企業破綻が起きる。会社更生法、民事再生法が適用されている事業所に、地方連合が入ってくれという。何カ所も入りました。そのときに、経営側からも、組合役員からも、そして、JAM傘下の新潟鉄工に行ったときには、千人集会もやっていただき、いろんな意見を聞きました。異口同音に言われたのは、「連合や労働組合が掲げている方針には、確かに立派なことが書いてある。雇用問題についても書いてあることは間違いない。しかし、会長、あなた自身が、そして、連合の役員や組合の役員が、いつ自分が首切られるかという恐怖におびえたことがあるか、ご自身が。肩たたきをされるという恐怖感におびえたことがあるか。書いてあること、言っていることは立派だけれども、現実、そういうことに直面をし、どうにもならない局面に追い込まれている立場から見れば、切実感も切迫感も感じられないよ。もっと運動というのは、心の底からどうするんだということを、本気でやってくれるかどうか、そのことの行動をしてくれるかどうかじゃないんですか」と言われた。
3つ目は、大阪に行ったときに、あの大阪城公園で、ブルーテント生活を余儀なくされているホームレスの方々、その世話をしているボランティアの方々と話をしました。その中の1人が、ビニールに入ったものを大事に持ってきて見せたんです。何が入っているかと思ったら、プレスされたワイシャツ、背広、ネクタイ、靴下、きれいに入れてありました。「何で?」って聞いたら、「これは私の心の支えなんだ。どうしても社会復帰したい。これがなくなったときに、私は生きているよすががない」、本人の口からこういう言葉が出ました。「私たちは、社会のぼろでくずです。しかし、ほんとうに社会復帰をしたいと思っている人もたくさんいるんですよ。そういう人たちに、労働運動は目を向けてくれないか」という話をされた。
この3つの体験と、地方を回ったときに、いろんな言葉を寄せられたときに、私は何としても「労働運動が社会を変えていく、笑顔で安心して暮らせる日本をつくり出す、その牽引役、原動力になるべきだ」と痛感した。となれば、戦後50年、我々がやってきた運動すべてが間違っているわけではない。けれども、変えなければならないことを、ほんとうに大胆に改革しなければ、無用の長物だと言われかねない。その変えることに本気で取り組もう。これが、去年の10月、第2期目に選出をされた大会の中で掲げたスローガン、「組合が変わる、社会を変える」というスローガンをかけたわけですよ。この思いの中で、私は内部評価だけをしていた労働運動、世間一般の人から見たら、どういうふうに思われているんだろうということを、本気で問いただしてみたい。ご承知のように、中坊公平さんを座長とする連合評価委員会をつくりました。
ついこの間、その評価委員会の委員を務めていた朝日新聞OBの早房長治さんが1冊の本を出しました。評価委員会の論議も克明に入っています。そして、どういう思いの中でこういうことをやり、委員がどういうかかわり方をしたか。その上で、労働運動の再生はあるかなということを書いた。タイトルは極めて厳しい。『恐竜の道を辿る労働運動』、絶滅するよというタイトルなんです。しかし、中身は非常に温かい我々に対するエールを送っていただきました。
あの中で言われた評価委員会の提言、「不条理に立ち向かう労働運動」、「社会の弱い立場の人たちの側に立って行う労働運動」、そして、「その不条理に対して怒りをもって行動できる労働運動」、このことの展開ができるかどうかということ。このことをやり遂げるためには、意識の改革と行動の改革をやらなければいけない。その意識と行動の改革をするために、「アクションルート・パートU」、全組織との直接対話をこの2月から始めさせていただきました。
一番最初にやったのが、電機連合17中闘の委員長たちとの意見交換でした。2時間、予定時間を大幅に越す討論をさせていただき、本音の話が出て、終わった後、古賀委員長のほうからは、「うちの委員長たちはああいうことを言ったり、ああいう考えを持っていたのか。びっくりしたな」という発言も出ました。今、15回、終わったところです。1回では足りないから、2回、3回と入れてくれる組織もあります。どんどん現場に近い人たち、現場の人ともやっている。その中で、「やっぱり労働運動というのをみんなで大事にしていこう」という思いが出てきた。私は、全組織との対話が終わったときに、間違いなく連合労働運動は変えられると確信をしています。
その中で、もう一つだけ申し上げておきたいのは、この経過の中で、3月、4月の春闘をめぐって、12チャンネル、テレビ東京が、「ガイアの夜明け」というスペシャル番組を連合の労働運動に対してつくりました。見られた方もいられると思います。あれは、春闘なんて、もう労働組合やってないんじゃないか、労働運動なんて職場の役に立ってないんじゃないかというのが、あのテレビ東京のスタッフが最初考えて取材に入ろうとした意図なんです。現場の春闘交渉を直接取材に行き、各単組、産別のいろんなやっていることを見る。そして、やはり労働運動の総本山は連合だということで、連合に最後に取材に来て話をしていたら、2週間密着取材をさせてくれということで、朝昼晩ずっとつきっきりでテレビが私の前で回り続けました。
最後に、クルーが、役所広司さんのせりふに、我々は頼まなかったんだけれども、皆さん方の現場でやっていることを酌んで、こういう発言をしたんです。「労働組合って、やっぱり必要なんだよね。働く仲間の人たちは、やっぱりこの中に入ろうよ。労働組合があることが大切なんだ」、最後に役所広司さんがそのせりふを言ったんですよ。私は非常にありがたかった。
しかし、その中で、取材をしたクルーの人たちが、ある集会をやったときに、これは3月の上旬、明治公園で、年金改悪阻止3万人集会をやりました。あの後、皆さん方も参加していただいたと思うけれども、新宿までデモ行進をやった。ずっとカメラが追っかけてきて、街の人たちにもインタビューをしていった。終わったときに、クルーの人が私のところに来て言ったんです。「会長、今の集会の目的は何だったんですか。集会やることですか、デモやることですか」、「違うよ。政府の年金改悪阻止やるための集会じゃないか」、「いや、それはわかる。街の人たちにも聞きました。『このデモ、何でやってるかわかります?』って言ったら、『書いてあるし、叫んでるじゃないか。年金改悪阻止だ。確かに大切なことだ』と言ってましたよ。だけど、『このデモに参加したいと思いますか』、三十数人インタビューをした。一人も参加したいと言った人がいない」と言うんですよ。「デモで歩いている人を映した。早くゴールに着かないかなと、すれ違う人に、歩いているデモ隊1人1人が、街の人たちにビラを配った、声をかけた、その光景は1つもありませんでした。訴える気迫が感じられないんです。それで改革できると思うのですか、目的は何なのかということを明確にしてください」。
その思いが伝わらなければ、これが共感の得られる労働運動をやれるかやれないか、自分たちが形をつくっていれば、それで済んでいた時代じゃないんだから、夢や理想を語り合えて、そのことで過ごしていても、答えがもらえた時代はあったんだ。これからもあるかもしれないけれども、今、先ほど言ったような現実に直面している人たちに、今のことをどう解決するかというのが、私は今のナショナルセンター、連合の役割だと思う。
そのために、いろんなところで申し上げているけれども、旧来型の建前はやめましょうよ。言いっぱなし、やりっぱなし、やめましょうよ。要求を突きつけて、その答えがもらえなければ、経営は無責任、無理解だ、政府は国民のことを見てない、与党は横暴だと言っていて済んでいる間に、どのぐらい仲間から路頭に迷う人たちが、国民が悲惨な目に遭うのか。そのことを今、現実問題として、我々みずからの力で1つでも2つでも、必ず答えを出すという労働運動を、今連合はやらなければいけない。私は今、そう思っています。そういう思いの中で、JCの皆さん方に大変協力いただいていることを心から感謝を申し上げます。
そして、具体的な活動については、2つだけ、申し上げたい。<ページのトップへ>
社会保障制度の問題こそ労働組合の最重要課題
1つは、政策の中の社会保障制度の問題。これは、社会保障の在り方懇談会が設置をされて、労働側から私が参画をしました。閣僚6人、民間人6人、12名の構成になっています。前国会の中ではいろいろありました。しかし、政治はあの体たらくです。しかし、その政治に対して、圧倒的絶対過半数を与えているのは、国民がそのツケを今負わなければならない。しかし、そのツケを負わされて、とんでもない制度、これが五十年、百年の国家の大計だと言われて、「ああ、そうですか」と言えるしろものじゃない。だとすれば、生活の根幹にかかわる社会保障の問題について、これ以上のテーマは労働組合にないでしょう。その政策課題に対して、労働組合がその中に入り、みずから国家の制度をつくり上げるという役割、これはリスクも負うし責任もあるけれども、私は連合がなし遂げなければならない役割だと思う。
そういう意味で、国会で、与党、野党がどうあろうが、成立しようがしまいが、ほんとうに中間層が、これならば大丈夫だと安心をし、信頼を寄せられる制度は、この機を逃してつくるチャンスはない。このことを、年金カンパを通して、その重要性について訴え、今、国民世論を喚起をしながら、連合案で、私はつくり上げる役割を貫徹したいと思っています。ぜひ協力をいただきたい。<ページのトップへ>
中小を全面に出した春闘改革は一定の成果
もう一つは、鈴木議長の話にも触れられていた春季生活闘争の問題。1955年、ちょうど今から50年前になります、春闘がスタートしました。いろんな変遷がありました。連合もここ四、五年、春闘改革を模索してきました。しかし、今年の春闘の中で、これは小出さんが、もう中小、中小、ことあるごとに中小ということを言われた。私はこのことは、連合として、今回の春季生活闘争の方針を立てた中で、春闘改革の一端が見出せた春闘ではなかったかと思います。それは結果的に微々たるものではあったけれども、大手と中小の格差が拡大をし続けた中、やっととまったんですよ。100円、200円の単位だけれど、縮小することができたんです。
だから、その前面に押し立てた連合の戦略は間違っていなかったと確信をしています。その上で、連合の組織率、日本の労働組合の組織率、19.6%、2割を切った。しかし、これは5,300万雇用労働者の中の労働組合の組織をされている人数の比率なんですね。企業比率からいったらどうなのか。このことをぜひ考えた組織拡大と、これからの政策課題とその実行に対しての思いを共通にしていただきたい。
日本の企業法人数は270万社です。連合加盟企業別組合は2万8,000組合です。組織企業数からすると、1%強しか組織してない。戦前も戦後もこの比率は変わりません。この99%は、圧倒的に300人未満の中小零細といっていい。そしてそれが、全部地方にある地場の企業だと。ここに労働運動はかかわり合いが直接的には持たれてこなかった。しかし、連合、あるいは、労働団体が今まで決めてきたそういう相場については、波及効果を与えてきた。
しかし、格差が広がる中で、さらにまたその格差が2極分化、3極分化をすることに対して、中小の労働運動と中小の政策と、そして、中小の春季生活闘争を前面に押し立てることが、99%の働く人たちに対する大きな影響力を持つという、その役割がナショナルセンターがとり切れるか、とり切れないか。私は先ほど言ったように、改革の1つの方向の一端が見出せたと思っています。この先導役を果たすのは、私はJCしかないと期待をし、そのことをお願いをしておきたいと思います。
鈴木議長との思い出
最後に、鈴木議長みずから触れられたご勇退と、議長の退任の問題については、今までのご活躍に心から敬意を表したいと思いますし、感謝を申し上げたいと思います。
私と鈴木さんは、1980年代、東芝の書記長と東電の書記長同士でのつき合い、これが役員としてお互いに公式、非公式の場で始まった触れ合いでありました。「えらいやつがいるな」というのが最初の印象でした。そして、単組から産別、連合、同じ道を歩みながら、鈴木さんのいろいろな発想、そして、感性、ずっと影響を受けてきました。今回、大変残念なことに、JC議長を退任ということになったようでありますが、引き続き、労働運動の周辺でお仕事をしていただくという予定にもなっておりますので、これからの鈴木さんの一層のご活躍と、皆さん方のご支援・ご理解をお願い申し上げて、連合会長としてのごあいさつにさせていただきたいと思います。
40周年、おめでとうございます。(拍手)
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