金属労協第44回大会 古賀議長挨拶
挨拶する
古賀議長

金属労協・IMF-JC第44回定期大会にお集まりの皆さん、大変ご苦労様です。
また、先ほど司会、議長からもご紹介がございましたが、公私とも大変お忙しい中、本大会にご来賓として連合から草野事務局長、そして今年5月のIMF世界大会時に書記次長に任命されましたIMF本部・鎌田書記次長にご臨席いただいております。
日頃の金属労協に対しますご指導とご鞭撻に心より感謝申し上げますと共に、改めて会場の皆さん全員の拍手でお礼に代えさせていただきたいと思います。
本日は誠にありがとうございます。

大きな環境変化の中で問われる金属労協の意義
さて、私が言うまでもなく私たちを取り巻く環境は、大きくしかも激しく変化しています。グローバリゼーションの激化、IT社会の進展、人口減少・少子高齢化、雇用構造の変化、一方では、地球環境保護や循環型社会への要請の高まりなどの様々な環境変化は、日本の政治、経済、社会、産業、企業などあらゆる組織やシステムの構造的課題を顕在化させています。もちろん、労働組合・労働運動とて決して例外ではありません。

かつて私たちが経験したことのないこの大きな波は、私たちの働き方や暮らし方、生き方にも数々の影響を及ぼしてきています。このような大きな環境変化の中での金属労協としての存在意義や新たな組織目的を改めてどう構築していくのかが今問われています。

このような視点から、私たちは昨年の第43回定期大会において、「経済・社会の中期的変化に適合する金属労働運動の追求と運動基盤の確立」をキーワードとして、五つの運動項目を柱にした向こう2年間の運動方針を確認し、活動を推進してきました。この一年間、金属労協の活動を支えていただいた構成組織の皆さんに、心から感謝申し上げます。

 本大会は中間年の大会であり、昨年度確認した運動方針の補強を議論する場ですが、この一年間の運動・活動の報告と評価、並びに本年度の運動方針で提起する具体的な補強については後ほどの提案と皆さん方の議論に委ねることとし、幾つかの課題について若干の所見を述べさせていただきます。<頁のトップへ戻る>

節目となった5月のIMF大会

まず、先ほども触れましたが、今年5月に4年に一度のIMF世界大会が開催されました。本日の定期大会参加者の中にも、この世界大会に参加された方も多いと思います。
この大会における主議題は向こう4年間のアクションプログラムの論議であり、議論の大半は、一言で言ってグローバリゼーションにおける国際労働運動の課題でした。グローバリゼーションには光と影があり、その影の部分をどう克服していくかに議論が集中しましたが、私たち金属労協としても、よりグローバルな視点で、この課題にどう取り組んでいくのか、とりわけ経済・産業の結合度が極めて大きくなり、益々関係が深くなるアジアの中で、国際労働運動の観点からどのような役割と責任を果たすべきかについて、従来に増して深掘りした論議と具体的行動の必要性が浮き彫りになったと受け止めています。

また、IMFとしては初めて大会前に第一回女性会議を開催したことや、IMF本部執行委員として現行にプラスして6名の女性執行委員枠を設け25名体制としたこと、さらに大会期間中に開催した執行委員会において、会長不在の場合の対応としてIAM会長のブッフェンバーガー氏を副会長として選任したことが特徴として挙げられます。加えて、私たちIMF-JCとしては、先ほども紹介しましたが、30年間IMF本部に派遣しご活躍いただいている鎌田さんが書記次長に任命されたことは特筆すべきことだと思います。鎌田さんの今後益々のご活躍を心より祈念申し上げます。<頁のトップへ戻る>

「総合プロジェクト会議」の中間報告について

次に、昨年確認した運動項目の中でも、極めて重要な課題である「求心力ある金属労働運動の確立と運動基盤の構築に向けて」検討している「総合プロジェクト会議」についてです。
この一年間、金属労働運動が抱える様々な課題や問題点についてフリー議論からスタートし、それぞれの運動項目の必要性や分野別の運動課題を整理してきました。その上で、見直すべき方向を模索し、後ほど中間報告として特別報告の項で提起させていただきます。
これからの一年は、この中間報告をベースとしながら、産別との連携のあり方や金属労協本部の機能のあり方、もちろん運動の基盤となる財政のあり方など、大きな検討課題に向けて論議を進めていくことになります。また、この中間報告では、分野によっては様々な具体的活動についても言及しています。運動ごとの細部検討については、各専門委員会での検討も並行して行っていきたいと考えています。

金属労協は5産別間の運動を調整しつつ、先見性をもって金属全体の運動を推進していく役割を担っています。それと同時に、私たち自身がどのような考え方に立脚し運動展開を図るのかは、金属以外の産別にも影響を及ぼすことになると認識しておく必要があります。これから1年間の議論によって、労働運動全体を牽引できるような運動方向や体制が確立されるよう、是非、最終答申に向けて皆さんの積極的な議論への参画をお願いしておきます。。<頁のトップへ戻る>

JC共闘の共闘軸をどこに求めるのか

3点目は、労働政策分野についてです。
今2005年闘争は、昨年9月の定期大会で確認した第2次賃金・労働政策での「大くくり職種別賃金水準の形成」「JCミニマム運動」「総合労働条件の改善」などの取り組みにより、「生活との調和と自己実現をめざす多様な働き方」の実現に向けた第一歩と位置づけ取り組みを展開しました。その評価と課題については、後ほどの提案に委ねますが、今後の検討の主軸は、何といっても金属労協・JC共闘の共闘軸をどこに求めるのかということです。

総合プロジェクト会議「中間報告」の中でも、次代を担う新たな共闘体制として、賃金水準の社会的相場形成、社会的賃率形成を目指し、これまでの「賃金の引き上げ幅」という共闘基準から脱皮し、絶対額の賃金水準を重視してきた経過を踏まえ、「絶対水準」(個別賃金水準)を機軸に共闘を編成する必要があるとの認識を示し、参考としての具体的な「共闘軸」のイメージも提起しています。

この共闘体制構築のためには、調査機能の強化を初めとして、解決すべき様々な課題はありますが、環境条件の大きな変化は新たな体制構築を不可欠にしていると考えます。これからの皆さんの建設的な議論を要望しておきます。<頁のトップへ戻る>

最低賃金の取り組みについて

労働政策分野の二つ目に、未組織労働者にも影響を及ぼす最低賃金の取り組みについて触れさせていただきます。
2005年度の地域別最低賃金額改定の目安は、中央最低賃金審議会において4年ぶりに有額の目安を示すことになり、この目安審議結果を受けて、全地域で有額改定を引き出すことができました。今、産別最低賃金の引き上げに向けたご努力を各地域で行っていただいています。

一方では、「最低賃金制度のあり方に関する研究会」は、今年3月に、産業別最低賃金の「廃止を含めた見直し」を盛り込んだ報告書をまとめました。これらを受けて、今年6月からは、労働政策審議会・労働条件分科会に最低賃金部会が設置され、最低賃金制度のあり方に関する検討が開始されています。本格的審議はこれからですが、金属労協としては、産別最低賃金の持つ役割・機能、すなわち「労使交渉の補完・代替機能」「産業別に形成される賃金の下支え」「公正競争の確保」という重要性を改めて認識し、産業別最低賃金の継承・発展の基本姿勢を堅持しつつ、具体的には、何を継承し何を発展させるべきかの論議を積み重ねていきたいと考えています。<頁のトップへ戻る>

「民間・ものづくり・金属」関連政策に特化した政策・制度要求

4点目は、政策・制度の取り組みについてです。
2005年4月に策定した金属労協の2005年政策・制度要求は、取り組み項目を見直し再整理しました。
言うまでもなく、これまでも、そしてこれからも政策・制度の取り組みは金属労協の運動の大きな柱の一つです。しかし、一方では、今日までの経過の中で、金属労協の政策・制度の取り組みの幅が相当広がり、金属労協の取り組みとしての独自性がややぼやけてきたという面も指摘されていました。

昨年9月に開催した定期大会での今期の運動方針において、政策・制度要求について『「民間・ものづくり・金属産業」に働くものの観点に立って、大胆な絞り込みを行う』ことを確認し、昨年来、考え方の整理と具体案の策定を進めてきたところです。

具体的には、政策・制度要求の領域を「民間・ものづくり・金属」関連政策に特化したということです。連合および各産別との役割分担を整理し、働く者全体に関わる課題は、原則、連合の取り組みにゆだねる、その一方で、各産業固有の課題については、各産別が取り組むこととしました。
また、当然のことながら、要求は策定するだけではなく実現に向けた取り組
みがもっとも重要です。政党・行政や経営側への要請活動、あるいは社会へのアピールなど、検討すべき課題は数多くありますが、ひとつずつその課題解決に向けた活動を推進していきたいと考えます。<頁のトップへ戻る>

労働組合として果たすべきCSRの取り組み

さらに、CSRの取り組みについても重要な課題です。
  企業には収益性の強化という経済性と、コンプライアンスや企業倫理、環境経営などの社会性の両立が求められています。ここ数年、法令違反などの企業の不祥事、災害・事故の多発や安全性の課題などCSR(企業の社会的責任)の取り組みが不可欠となっています。そのような状況の中で、金属労協は2004年3月に「CSR推進における労働組合の役割に関する提言」を策定しました。その後のCSRをめぐる動きは早く、大きな状況変化も生じてきています。その動向に対応するために、本日特別報告として、昨年3月の提言の「改訂版」を提起させていただき、CSRを本格的に推進していくために、労働組合として果たすべき、より個別的・具体的・実践的な活動内容について提案させていただきます。各構成組織におかれましては、この提言を参考にしていただき、その具体化に向けて、それぞれの状況に応じて検討を進め対応いただくことをお願いしておきます。

 尚、懸案となっておりますCOC(海外事業の展開に際しての企業行動規範)の取り組みについても、昨年12月の協議委員会で確認いただきましたように、中核的労働基準の遵守は、当然のことながらCSRの範疇に含まれるものであり、CSRへの対応の必要性が高まる中で、その労使締結を図るべく、引き続き粘り強い取り組みの強化をお願いいたします。。<頁のトップへ戻る>

民主党への政権交代へ向け共に行動を

最後に、今週末11日・日曜日に迫った衆議院議員・総選挙についてです。
  今日本は市場万能主義・自己責任主義が蔓延し、4年余の小泉構造改革は「二極化」と「社会不安」を深刻化させています。国民の3分の2が生活に不安を持ち、将来に希望が持てない若者が増え、自殺者も大幅に増加する社会となっています。
小泉政権は、今回の総選挙の争点を「郵政民営化に賛成か反対か」という二者択一に矮小化、単純化することで、これまでの失政を覆い隠し政権を維持しようとしています。ご存知のとおり、選挙戦中盤での各種調査結果は、小泉劇場と称されるマスコミ・メディア報道が国民の目を引き、残念ながら自民優勢・単独過半数の勢いが報道されるなど、民主党には強い逆風が吹いています。
しかし、今回の総選挙は、財政再建・社会保障制度・外交など山積する課題を如何に解決し、日本を再生させようとしているのかを見極める選挙です。決して、イメージ戦術に惑わされて個別課題に埋没し、判断を誤ってはなりません。

 この総選挙はまさに民主党の政権の選択をかけた戦いです。民主党が働く者の視点に立った政策を軸に、国民の信託を得られるよう民主党への政権交代へ向け私たちも共に行動を起こさなければなりません。
金属労協・政治顧問7名の必勝はもとより、全国各地での民主党政権交代へ向けた取り組みに、残された期間全力を挙げようではありませんか。

限られた時間ですが皆さんの真摯で活発な議論をお願いし、本部を代表しての冒頭の挨拶といたします。
ご清聴ありがとうございました。<頁のトップへ戻る>