金属労協第44回大会 来賓挨拶

IMF加盟組合から兄弟・姉妹として全面的な信頼を

獲得するに足るような取り組みの展開を期待!

鎌田 普 IMF書記次長

古賀IMF−JC議長、役員の皆さん、そして本大会に出席の代議員の皆さん、そして傍聴の皆さん、IMF本部を代表して一言ごあいさつ申し上げたいと思います。

 本来ですと、マルチェロ・マレンタッキIMF書記長が登壇しまして、皆さんにごあいさつ申し上げるところですが、先ほど議長団から紹介がありましたように、中間年の大会には海外来賓は招かないということですので、私がその代役を務めさせていただくことになりました。

 本年5月に開催されたIMFの中央委員会でIMFの書記次長に任命いただきました。この任命に際しては、歴代のJCの議長、役員の皆さん、それから今回は特に古賀JC議長、團野事務局長をはじめとして、有力IMFの加盟組合に働きかけをしていただきまして、そして書記次長への任命ということに至ったわけです。この場合をお借りして、先輩諸氏、そして同胞の皆さんに厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 ちなみに役職の役は変わりましたが、職については変わっておらず、職責が重くなったということです。非力ではございますが、今後も精いっぱいIMF労働運動の推進に力を注いでいきたいと考えております。皆さん方の今後も変わらぬご支援とご指導をお願いいたします。

 本日は、グローバルな経済市場の拡大に対してIMFがその組織機構をどのようにしていくかということに的を絞ってお話しさせていただきたいと思います。

 ご案内のようにIMFというのは非常に小さな所帯でして、IMFだけでいろいろな物事を解決することは不可能です。したがって、IMFと同じような国際産業別組織ですとか、ICFTU、それからOECD−TUACといった組織との協力、共同関係が非常に重要になってくるわけです。<ページのトップへ>

ICFTUのGUFを支配下に置く動きに対してIMFは反対の立場

この点との関連で、ICFTUを頂点としてGUFをいわばその支配下に置いて、ピラミッド型の世界レベルでの労働組合組織の立ち上げを図るという動きが見られます。IMFはそのような考え方にはくみいたしません。GUF、産業別労働組合の間で、またICFTU、OECD−TUACとの間で問題別により緊密な協力、共同関係を築いていくというところに重点を置いていくのがIMFの立場であり、屋上屋を重ねるということには反対といった立場を取っています。

 10年前にIMFは、アジア、太平洋、ラテンアメリカ、アフリカといった地域に地域機構を立ち上げました。4年前には中・東欧においても地域の組織機構を立ち上げました。10年間になりますけれども、その間、IMFの重点活動や地域別の特別な問題を議論し、情報交換を行うという点では一定の役割を果たしてきているといえますが、情報交換、議論をベースにして国内、地域レベルで実際にアクションをとるといったことになると、ほとんどの前進が見られていないのが現状ではないかと思います。

これはIMFとしての反省を含めて、皆さんにお話しさせていただいているところです。したがって、IMF−JCが直接関与している東アジア地域の委員会、そしてアジア地域会議の機構そのもの、それから活動の内容について全体的な見直しが必要になってきていると考えています。<ページのトップへ>

欧州金属労連(EMF)の成功の理由

 皆さんご存じのようにヨーロッパには欧州労連(ETUC)ですとか、欧州金属労連(EMF)といった組織があります。欧州金属労連で見た場合には非常に順調に組織が運営されているわけですけれども、これはひとえにヨーロッパ社会の均質性ですとか、労働組合運動の均質性、それからEU政府のもろもろの指令によって、方向性のある運動が可能になるという側面があるからだろうと思っています。

また、加盟組合が総体的に平等な財政負担を行っているという点も見逃してはいけないと思います。そして、EU政府から制度上の財政的な援助が受けられるといったこともあります。こういった状況があってはじめてEMFという組織、ETUCという組織が運営できるわけです。ですから、このような形のものがアジアにそっくりそのまま適用できるか否かということは、皆さんお考えになってもおわかりになることだと思います。

ラテンアメリカ金属労連の失敗の原因

 一つの例を挙げますと、ラテンアメリカで15年ほど前にラテンアメリカ金属労連というのが立ち上げられました。しかし、運動方針が非常に不明確である、核もない、それから財政的な措置も講じられなかったということで、二、三年活動をしただけで事実上休眠状態に入っているという状況があります。

経済のグローバル化とそれがもたらす負の側面を克服するためには、労働組合員もグローバルな組織機構を構築しなければいけないということはIMFのアクションプログラムでもうたっています。グローバル化の一環として、二国間、または地域内での経済協力関係の強化ですとか、経済統合が進んでいるわけです。したがって、組合のグローバル化は必然的に二国間、地域、そして世界レベルといったレベルでの対応が必要になってくるわけです。<ページのトップへ>

地域レベルでの対応のあり方

 金属産業の観点からした場合に、世界レベルでの対応は加盟組合の参加を得ながらIMFが行って、二国間レベルでは各国における加盟組合が対応するという構図になりますけれども、問題は、地域レベルの問題をどう扱うかということになると思います。これは、古賀議長もJCがアジアの中でどういった役割を担っていくべきかという観点から若干触れられました。

第1のオプション:IMFの組織機構を見直し地域問題に対応できるよう整備

 その点について見てみますと、地域レベルでの対応という意味では、第一のオプション(選択肢)としては、IMFが現在持っている組織機構を見直して、地域問題に対応できるように組織を整備するということだと思います。現在のIMF規約上の組織機構といえばIMF本部とIMFの地域事務所になるわけですけれども、本部、地域一体というのがIMFの原則ですから、こういった現状からすると、地域問題をIMFの中でどのように位置づけていくか。そして、本部、地域事務所がどのような役割を担うかといったことを真剣に議論していかなければならないと思っております。

第2のオプション:IMF地域委員会、地域会議の有効活用

 第二のオプションですが、さきにも触れましたIMFの地域委員会、地域会議の有効活用です。地域機構はIMFの規約上の機構ではありませんが、IMF活動に対する認識の共有ですとか、グローバルな問題、地域の問題に関する意見交換、討議という点では、先ほど申し上げたように過去10年間、一定の役割を果たしてきたと言えます。しかし、発足当初目標として掲げた、一定地域における加盟組合自身による地域組織機構の自主的な運営という点から見た場合には、残念ながら、現在までのところ全く前進が見られていない。10年たった今でも全く前進が見られていないという状況です。

 こういった中で、ラテンアメリカ、アフリカ、アジア・太平洋という地域で見た場合には、アジア・太平洋地域が一番可能性があると私は見ているのですが、ぜひIMF−JCのほうからもイニシアチブをとっていただきたいと思います。<ページのトップへ>

第3のオプション:加盟組織による地域独自の組織の立ち上げ

 次に、第三のオプションですが、加盟組合による地域独自の組織の立ち上げになります。これは先ほど例を挙げましたEMFですとか、FLACTIM(ラテンアメリカ金属労連)といった二つの例がありますけれども、自分自身で組織を立ち上げて運営していくということになりますと、人的にも金銭的にも非常に大きな負担が伴ってくるわけです。

IMF−JCが行動を起こすときは是非ともきめ細かい対応を要望

 アジアということで見てみますと、JCが主体になって進めていくことになると思いますが、日本の立場というのは、皆さん方のほうから見るとあまりよく見えないと思うのですが、日本の立場というのは非常に突出しているわけです。ですから、日本が寡占状態といったような目で見られるようなこともしばしばあるわけです。したがって、このような状況に反発する組織も出てきます。そのいい例がEMFですけれども、EMFの中でIGメタル(ドイツ金属労組)が非常に警戒感を持って見られているという状況も確かにあります。ですから、IMF−JCが行動を起こすときには、その対応は非常に微妙ですので、ぜひともきめ細かい対応をしていただきたいと思います。<ページのトップへ>

地域問題をIMFの中でどう位置づけるかのIMF全体での論議が大切

 3つのオプションを述べさせていただきましたけれども、私自身の観点からすると、まずIMF全体で地域問題をどういう形でIMFの中で位置づけるかということをまずしっかり議論することが大切だと思います。そして、地域組織機構の機能の強化を図っていくことが一番有効、かつ現実的な選択ではないかと思います。

 例えば中国問題。これは今やグローバル化対策の一環ということでとらえられていますけれども、中国問題がIMFの執行委員会、それから世界大会で前向きな形で議論されるようになったのは、まさにIMF−JCが東アジア地域でイニシアチブをとり、それをアジア全体に広げ、そしてIMF全体の立場でそれを議論するようになったということです。ですから、これは地域組織を上手に使ったやり方の結果であると思います。<ページのトップへ>

労使紛争の対処方法ではJCは全面的な信頼を得られるように努力を

 最後に、1点つけ加えたいと思います。日系企業の海外の事業活動の展開に伴いまして、近年かなり頻繁に紛争が発生しているという現状があります。紛争の対処方法などについては、関係者の置かれている立場が違ってくる。したがって、双方の言い分ですとか、対処方法に違いが出てくるのは必然的な結果だと思いますけれども、日本の労働組合がネガティブ(否定的)に受けとめられるということは絶対あってはならないことだと思います。

 ネガティブと申しますのは、日本の労働組合は企業別の労働組合をベースにしてできているわけですけれども、いわゆる欧米の組合は産業別をベースにした労働組合です。ですから、こういった組合からネガティブに日本の活動がとられるということであっては絶対ならないと思っております。JCと加盟産別、企業連、単組は、IMF加盟組合から親子ではなくて兄弟、姉妹として全面的な信頼を獲得するに足るような取り組みを展開することがJC、日本の組合自身の意思を全世界に向けて発信する最も有効な手段であると思います。

 相互信頼をベースにした労働運動の構築がアジアに、そして世界に求められていると思います。JCはアジアの労働運動の中心、そしてIMFの労働運動の中心的な存在です。ですから、今後も積極的に発言され、行動されることをIMFとして期待しております。

 以上、非常に雑駁ではございましたけれども、私見を含めて見解、意見を述べさせていただきました。

 本大会に提起されますJCの活動方針が、国内外におけるJC運動の改革の大きなステップとなることを祈念いたしまして、IMFを代表してのあいさつとさせていただきます。(拍手)<ページのトップへ>