第12回日韓金属労組定期協議報告
1.開催日時: 2003年6月23日(月)09:30−18:00

2.開催場所: 韓国・ソウル「ソウル教育文化会館」

3.出 席 者: 韓国側:イ・ビョン・ギュンFKMTU委員長以下6名、ベク・スン・ワンKMWF委員長以下5名
日本側:鈴木勝利IMF−JC議長以下IMF−JC副議長、事務局長8名、オブザーバ5名、IMF−JC事務局2名
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4.概  要: 定期協議はまず各組織の代表からの挨拶によって開会された。イ・ビョン・ギュンFKMTU委員長は前回の定期協議の際に討議された中国問題について、非常に有益でありさらに議論を深めたいとの期待が表明され、ベク・スン・ワンKMWF委員長からは、両国の政労使関係について議論を行いたいとの意向が述べられた。鈴木勝利IMF−JC議長からは、東アジアの金属産業労組として中国を無視し続けることは無理であること、IMF執行委員会の場でも中国との関係についての議論を開始するべきであるとの考えが示された。

議題1「両国の金属産業の状況を含む政治・経済・労働情勢」
 韓国側報告(KMWF):国内の資本市場が外国資本の投機の場となっており、直接投資は全体の5%にも満たないような状況であること、財閥の強化による独占体制が進み貧富の差が拡大していること、正規職労働者の50%の賃金である非正規職労働者が全体の雇用の56%を占め、さらに増加していること、企業の投資が設備投資ではなく株式と不動産に向いており経済成長の雇用創出効果がないことなどが挙げられた。また3.6%の物価上昇が見込まれており、医療費の増額も予定されており、労働者の実質賃金は低下していくという懸念が示された。
 盧大統領の新政権は国政課題として12の課題を挙げたことを紹介した。基本は金大中政権を継承する新自由主義政策を採るとしているとのことであった。公約に掲げていた非正規職労働者対策は後退し、同一労働同一賃金の問題は先送りされ、不法派遣労働や最低賃金制度については言及されなかった。また発電所や鉄道などの「ネットワーク基幹産業」の私有化を進めている。国際労働基準については、国内の状況は国際基準に程遠いという認識を盧大統領は示したが、一企業内複数労働組合の解禁など具体的な言及はなかったとの報告がなされた。
 両国の報告の後の討議では、民営化への労働組合の対応の両国労組の相違、非正規職労働者の増加、少子高齢化問題、賃金制度の問題などが話し合われた。

議題2「労使関係及び政府との関係と労働組合の対応」
 韓国側報告(FKMTU):盧新政権は自らの労使関係政策を「社会統合的労使関係構築」とし、労使関係制度の先進化、自発的・創意的な労使パートナーシップ事業支援、法と原則が尊重される労使自治主義定着などと定め、労働組合から見て労働弾圧状況の深刻性を認識し、改善意思を明らかにしたことは転換的であるとしている。その上で労働側と政府の間の争点として、労働時間短縮問題、移住労働者(外国人労働者)雇用許可制、公務員労組問題、非正規職労働者保護対策および退職(企業)年金制度問題を挙げた。
 討議では、韓国の労使政三者構成会議は法律によって規定されており、このような制度は日本にはない。参加を拒否するのではなくうまく活用する方法を考えていくべきとの指摘がなされた。これに対し韓国側は、以前のこの三者構成会議で合意された約束が必ずしも履行されてこなかったため、信頼性が失われているとの発言を行った。外国人労働者問題については、韓国の企業が外国人の研修制度を悪用しているとの説明があった。日本側からは、外国人労働者の導入については、社会的な影響を考慮し慎重な対応を使用者や政府に求めていくべきであるとの指摘がなされた。

議題3「2003年度労使交渉・春季賃金闘争」
韓国側報告:2003年度労使交渉について両労組からそれぞれ報告が行われた。FKMTUからは、ナショナル・センターであるFKTUの要求基準として、賃金引上げ11.4%、賃金・労働条件低下のない週5日制獲得、非正規職賃金格差縮小、法定最低賃金の現実化と制度改善が紹介された。FKMTUではこれをうけて、ゴム労組連盟、石油労組連盟、出版労組連盟、化学労組連盟で形成する共闘組織「製造連帯」で、賃金引上げ12.0%(103,957ウォン)要求を、業種別、企業別の状況を勘案した10.5%から13.5%までの要求範囲の提示とともに掲げている。FKTUの要求項目以外には、雇用安定委員会設置など雇用安定のための制度定着、労働者経営参加実現などを要求している。
KMWFでは、闘争方針を産業別単位組織である金属労組の支部別闘争と、業種別大工場労組闘争の二本立てで進められているが、交渉権の産別への委任による産別レベルでの交渉を進めることは困難であり、また支部別闘争と業種別闘争の共同行動も、組織活動の質的な違いと、各事業所の懸案問題などにより、共同行動として結集できていないとしている。2003年闘争の要求は、産業別・賃金水準別偏差を考慮した9.1%から13.1%の範囲での賃金引上げ、社内下請け労働者と元請労働者の賃金格差解消、同一労働同一賃金の団体協約条項確保を掲げている。そのほかに労働条件後退のない週40時間制の2003年7月(即刻)実施、非正規職労働者の正規化と直接生産工程への下請け投入禁止、筋骨格系職業病予防対策、経営参加および韓国農産物供給の労使合意を求めている。
その後の討議では複数年協定について、韓国の春闘方式について、雇用安定のための整理解雇や希望退職への対応、一時金の業績連動方式について、韓国の賃金闘争の際の要求策定基準についておよび最低賃金制度などが話し合われた。

議題4「グローバル化の課題、中国問題」
 韓国側報告(FKMTU):韓国に進出した多国籍企業での労使関係について、近年労使紛争が増加傾向にあることを指摘し、企業撤退の際の紛争も発生していることに言及した。中国への韓国系企業の進出については、2002年度に金額、件数ともに史上最高を記録し、特に繊維・衣服、電子通信、機械設備が大きく、IT産業分野では2000年から中国進出が開始され、非常に大きな速度で増加していることが述べられた。
 討議の中で中国進出に伴う国内雇用への影響についての質問が日本側から韓国側に投げかけられた。韓国側からはLG電子について、すでに本社機能を北京に移したが、韓国国内でも製造を続けており、それは国内の雇用を守るために生産が継続されているとのことであった。

議題5「その他」
 これまで議論された内容の追加的な討論が行われた。ここでは非正規職労働者の増加への労組の対応、中国との関係、特に中華全国総工会との交流について話し合われた。
中華全国総工会に関しては、韓国側から、総工会は普通の労働団体ではなく、政府を代表しているという面もある。現在総工会から団体協約についての問い合わせも多く、労働者の利益になると考えているが、自国の利益を保護するために利用するかもしれないという懸念を表明した。
日本側から、総工会は共産党の指導の下にあることは確かだが、労働者の利益を代表する組織としても活動している。総工会への支援は、労働者代表制度への対応、労働条件の向上および公正な富の配分を求める活動などに焦点を当てていくべきであるとの指摘があった。

閉会
 次回の会議を日本で開催すること、日程については今後事務局間で調整を図っていくことが確認された。
 閉会に当たって、韓国側から、民衆のための政治を掲げた金大中政権は5年間続いたが結局労働側は裏切られたと考えており、新政権は政策と改革を掲げているが、個別の問題への介入などの対応を行って、労働者対策としているようであるが、実のところ労働者全体にかかわる問題について対応がまったくなされていないとの指摘があった。
 日本側から、より具体的に深刻な問題について討論ができ、三者三様に考え方があることを相互に理解していくべきであるとの提起、および中国との関係についてはIMFでは否定的であるが、東アジアの労組は、それ抜きでは産業、企業の問題も解決できず、組合員の雇用も守れないとの指摘、さらに早期に日韓中金属労組定期協議が実現できるよう国際連帯を促進するべきであるとの提案がなされた。<ページのトップへ>