第39回労働リーダーシップ上級コース開催

ものづくりの共通土俵で、組合と職場の課題解決に向けて
熱心な討議と研さん行う
〜ゼミナールと講義、ケースを通して〜
夕陽を背に全員で記念写真

第39回労働リーダーシップ上級コースは、2005年11月14〜26日までの期間、加盟産別・単組から8名の組合役員が参加し、開講された。受講生は、講義・ケース、ゼミナールを通して、ものづくりの共通土俵で、組合と職場における課題解決に向けて、問題意識を養うと共に、熱心な議論を行った。

目   次
開講式
1週目―明治学院大学キャンパスで
2週目―全員合宿で葉山・ICP生産性国際交流センターで
ゼミナール担当講師のコメント
産別役員のコメント
全体まとめ
閉講式
 
参加者感想

開講式

 11月14日午前に港区白金台の明治学院大学記念館で若松英幸・金属労協事務局次長の司会の下、開講式を行った。
 開講式には、来賓として大塩武・明治学院大学学長、太田俊明・厚生労働省政策統括官が臨席された。
加藤議長挨拶
 主催者を代表して、冒頭挨拶に立った加藤裕治金属労協議長は、「金属労協が結成されて本年で41年目を迎えるが、金属労協は、結成3年目で、ここ明治学院大学との提携による労働リーダーシップコース・東日本コースを金井信一郎先生中心にスタートした。その2年後、関西の京都で、竹中正夫先生を中心に西日本コースをスタートさせており、高度成長期を引っ張るものづくりのユニオンリーダーの育成を行ってきた。30周年を機に、東日本コースを、課題解決型の実践コースとして上級コースに改編、少数精鋭での変革期を担うユニオンリーダーの育成を行っている」と、本コースの歴史と意義について述べ、有意義な研修となるよう激励した。
大塩武明学学長
 来賓挨拶では、明治学院大学の大塩武学長は、「143年の歴史を持つ明治学院大学の創立者であるヘボン博士は、日本最初の和英辞典を執筆すると共に、眼科医として日本の医療活動に大変な貢献をした。ヘボン博士の『他の人のために尽くすDo for others』は、明治学院大学の伝統となっている。是非、今回参加された受講生の皆さんも労働組合リーダーとして、他の人のために尽くす人生であってほしい。研修の成果を期待する」と激励された。
大田俊明
厚生労働省政策統括官
 続いて、厚生労働省の大田俊明政策統括官は、日本経済における、ものづくり・金属産業の重要性を述べると共に、現下の経済状況と労働行政の課題と取り組みについて述べた。特に労働組合に期待することとして、「働き方の多様化の中での労組の役割が重要である。働き方・所得等で格差が拡大。非正規労働者の増大(全体で3割。女性では5割)。経済・社会全体としてマイナス効果。・日本の優秀性はチームワーク。働く人の意欲とやりがい。労働者の能力開発や意欲向上に取り組んでいる企業では、社員の満足度は高い。労働者の能力開発や意欲向上は、一企業でなく、社会全体で取り組むべき課題である。ここに労働組合の課題がある。均等処遇の実現に向けて、労働組合としてより多くの労働者の声をくみ取って努力をお願いしたい。その意味でも、このリーダーシップコースは重要である。2週間の成果に期待する」と挨拶した。
大平浩二明学教授
 続いて、運営委員長の大平浩二・明治学院大学経済学部教授が挨拶に立ち、「1週目はここ明治学院大学のキャンパスで、2週目は葉山の生産性国際交流センターで合宿となる。この2週間は、日常の多忙な組合活動を離れて、新たな発想を養ってほしい。徹底した議論を通して、新たな気づき、発想を養ってほしい。1週目は、明治学院大学のキャンパスを是非大いに活用してほしい。この2週間、受講生一人ひとりが、何らかの視野の拡大につなげてほしい」と述べた。






1週目―明治学院大学キャンパスで
講義をする加藤裕治議長 清家篤慶大教授 大畠章宏衆議院議員 開講講演

1週目(11月14〜18日)は、港区白金台の明治学院大学キャンパスで、「労働者を取り巻く環境の変化」について研さんした。第一部「日本の大きな変化を読む」では、加藤裕治金属労協議長の「新たな時代の労働運動と運動課題」、清家篤慶大教授の「人口減社会への対応」、大畠章宏衆議院議員の「民主党の政策とものづくり戦略」、跡田直澄慶大教授の「小さな政府と行財政改革」の各講義、第二部「企業の変化を読む」では、「組合戦略づくり」、「労使交渉に向けた業績評価の仕方」、企業のアジア進出戦略と課題」、「コーポレートガバナンスとCSR」の各講義を受講するとともに、3つのゼミナールに分かれ、担当講師の指導のもと、組合・職場における課題解決に向けた実践的な議論を行った。
石井ゼミ 神田ゼミ 大平ゼミ
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2週目―全員合宿で葉山・ICP生産性国際交流センターで
小島正剛
JC顧問
丸山浩典
厚生労働省課長補佐
石田光男
同志社大学教授
 2週目(11月20〜25日)は、神奈川県葉山にある生産性国際交流センターで、合宿制のもと、取り巻く環境変化を学んだ上で、「労働組合はどう対応すべきか」を考察した。具体的には、「グローバル化への労働組合の対応」(小島正剛・金属労協顧問)、「ワークライフバランスを考える」(丸山浩典・厚生労働省労働基準局課長補佐)、「新しい賃金処遇制度へどう取り組むか」(石田光男・同志社大学教授)の講義を受けると共に、新たな試みとして、「日本の雇用について考えよう−雇用形態の多様化」をテーマに一日討論を行った。

大福真由美
電機連合書記長
佐藤博樹
東大教授
神田教授の司会で「みんなで討論」
 一日討論では、第1部「雇用実態・取り組み事例」(大福真由美電機連合書記長、輪島忍日本経団連労働政策本部雇用・管理グループ長)、第2部「請負・派遣労働者について」(佐藤博樹東京大学教授)の後、第3部「みんなで討論」では、神田良明治学院大学教授の司会のもと、講師を交えて全員で活発な討論を行い、日本の雇用について問題意識を高めた。

田中京子講師
 また、2週目では、ゼミナールでの議論を更に深めて、その成果を総括シンポジウムで各人が発表した。また、第2週には、「プレゼンテーション」(田中京子講師)の技法についても学んだ。


 11月25日午前から午後にかけてゼミナール総括発表を行い、受講生が2週間のゼミナールを通じて各自の組合・職場での課題について議論・研究してまとめた成果を発表した。各受講生のまとめたレポートのテーマは以下の通り。

第1部 ワークライフバランスを実現する
1.時間外労働の減少に向けた工夫 竹田和之 パイオニア労働組合
2.慢性的な高残業時の組合のサポートのあり方 清水 敬 三菱重工労働組合
3.年次有給休暇の取得率向上に向けて 高橋英人 昭和電線労働組合
4.新組織移行に伴うライフサポート活動 鮫島栄造 日産労連リック事業部
第2部 労組価値を高める
5.休暇を使った能力開発 前田千章 いすゞ労働組合
6.OCAユニオン・社員会統合に向けて 下間啓明 沖電気カスタマアドテック労働組合
7.組合活動の再構築 向井伸行 三菱重工労働組合三原支部
8.企業の持続的成長を可能にする
  労働組合の新たな経営対策
成尾昭一 三洋電機労働組合
竹田和之 清水 敬 高橋英人 鮫島栄造 前田千章 下間啓明 向井伸行 成尾昭一

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ゼミナール担当講師のコメント
◎石井康彦・高千穂大学助教授
皆さんの報告を聞いていて、景気が良くなってきたことを実感する。お金の使い道を含めて、組合として何をやるべきか考える時に来ていると感じる。こういう研修の場に来ると内容がとんがった話になる。ここで出た角はなるべく大事にして、角を磨き維持するように努力してほしい。組合は、WIN WINでどちらも勝てる道を探す立場にある。労組は、義務でなく、自発的にみんなが参加できるような活動をしてほしい。「北風」政策でなく、「太陽」政策でいってほしい。皆さんは、保守的な組合活動に、「新しい風」を是非吹き込んでほしい。



◎神田良明治学院大学教授
違った視点からモノを見て、判断し考えるようにすることが大切である。具体的な考え方も大事であるが、根本の問題を突き詰めて考えるやり方を学ぶことに意義があった。
第1部の「ワークライフバランス」の中の「ワーク」に問題があることがわかった。今まで「ワーク」のことは、どちらかと言うと経営に任せてきたが、労働組合として、いよいよ「ワーク」に取り組むべき時が来たと言える。組合役員自体が一番ワークライフバランスが取れていないことに問題がある。組合役員自体がワークライフバランスを実践していることを示していく必要がある。その上で、みんなでやろうと言えば説得力がある。
第2部では「労働組合価値を高める」を内容とした発表があった。同じ労働者なのに、働き方が違う故に組合に入らない人たちがいる現実をどう考えるのか。根本にある問題は、昔、日本の企業の最大の武器は、内部労働市場の活用であった。雇用形態の多様化の中で、分社化の中で、外部労働市場化が進んでいる。日本のかつての価値であった内部労働市場をいかに再構築できるか。その点で、皆さんの報告は、大きなトレンドを踏まえて、意義のある内容であった。労働組合の内部労働市場化が課題として改めて浮き彫りになった。

◎大平浩二明治学院大学教授
2週間のゼミの総括として、今回大きく「ワークライフバランスを実現する」と「労組価値を高める」の二つに分類した。皆さんの問題意識が非常に斬新であり、企業がこの10年大きく変化している中で、労組の課題解決への道をそれぞれ探求した。組合の資源をいかに活用して、現状を変革していくか、非常に前向きな姿勢を感じた。これから、各人の職場に帰るが、是非、課題解決に向けて、「すぐやる」「明日やる」、できるところから、身近なところから「すぐやる」姿勢を大切にしてほしい。
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産別役員のコメント
◎高浜昌之 電機連合中央執行委員
 広報を担当しており、電機ジャーナルの新年号では、「会社人間が会社をつぶす」というテーマの新春対談を企画している。こういうコースだから、もっと途方もないテーマを考えてもよいと思うが、5月のフォローアップ研修の時には、是非さらに大胆な改革の議論ができることを期待したい。終了後の受講生同士の日頃のコミュニケーションを是非大切にしてほしい。

◎佐藤浩一 自動車総連事務局次長
 私も東日本労働リーダーシップコースの卒業生である。皆さんの報告を聞き、昔の組合活動を思い出した。私は弱い人が好きである。弱さと優しさは無縁でない。皆で支え合うことが組合の原点である。労組役員にはかけ算、割り算はない。あるのは足し算と引き算だけである。階段を一歩一歩上るだけである。労働組合の原点を忘れず、教育の"妙"を積み重ねて、人と人の絆を大切にして進んでいってほしい。



◎田嶋一美 全電線中央執行委員
 皆さんの報告を聞いて、私自身、とても勉強になった。「労組の価値を高める」ために、このコースで考えたことを是非各自の立場で実践していってほしい。



◎若松英幸 金属労協事務局次長
 一人一人の報告を聞いていて、非常に問題意識の高さを感じた。ものづくり産業がこの国の経済を支えているのは確かである。「毎日が初演」との姿勢で、これからもここで学んだ問題意識と友情を育みながら、活躍していってほしい。




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全体まとめ
◎團野久茂 金属労協事務局長
 本日の受講生の皆さんの発表を聞いて、内容は別にして、皆さん一人ひとりがいろいろな課題について悩み、考えた過程がよく理解できた。見る眼は、複雑に考えるのでなく、シンプルに考えることも大切である。大きな方向性を間違えなければよい。大きな変化を読むと言うが、これが難しい。自分自身の問題意識をきちんと持っていなければ、変化を読むことができない。我々の労働組合の運動は保守的と言われているが、一歩一歩の積み重ねを大切にして、改革を進めていきたいので、受講生の皆さんも、それぞれの立場で日頃の改革を地道に進めていってほしい。


閉講式
修了証授与 受講生答辞
 閉講式では、最初に主催者を代表して、團野久茂金属労協事務局長が挨拶し、「この2週間で培ったものを是非、これからの組合・職場で活かしてほしい。課題解決への実践はそれほど簡単ではないと思うが、是非新しい労働組合活動を切り開くために努力してほしい」と激励した。この後、團野事務局長から受講生一人ひとりに修了証が授与された。
 運営委員の大平・神田・石井先生から餞の挨拶が述べられ、大平運営委員長は、「明学のキャンパスで、そしてここ葉山の生産性本部国際交流センターで過ごしたことをこれからの人生の思い出として大切にしてほしい。来年5月のフォローアップ研修でまたお目にかかれることを楽しみにしている」と激励した。最後に、学生長を務めたパイオニア労組の竹田和之さんが、これからの決意と友情を深める答辞を述べ、2週間にわたる第39回上級コースを閉講した。
 終了後、産別役員も交え、打ち上げの懇親会を行った。

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